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数々の大企業に対して「コンサルティングxクリエイティブ」で領域不問の課題解決を行うJBA。でも「JBAって何屋さん?」と聞かれると、一言では答えにくいんです。そこで、実際のお客さまとの具体的なプロジェクトを通して、担当した社員は、何を考え、どんなことをしたのか。やりがいや苦悩や仕事観に至るまでをリアルにお伝えする「事例紹介」シリーズです。
こんにちは、2018年入社のコンサルタント、大森です。JBAは、お客さま企業の周年事業のプロデュース力に定評がありますが、今回は、私が携わった事例として、「全く違う価値観を持つ現場が、同じ未来に向かって視線をあわせた」周年サポートのご紹介をします。
2拠点の周年イベントのコンセプトをどうまとめる?
2018年の春。飛行機エンジンの製造会社であるX社さまの担当者さまから「周年のイベントを考えたいのだけれど、何をしたらいい?」とのご相談が寄せられました。仙台の工場が30周年、東京の工場が25周年を迎えるため、その2つの工場の周年を同時に祝うイベントのコンセプトを考えたいというのです。
ゼロベースからのご相談でしたから、まずは担当者さまや、工場長の方へのヒアリングを奨めました。それですぐに分かったのは、地理的な隔たりだけではなく、2つの工場間の交流が全くないということ。作っているモノも違うし、歴史も違う。同じ会社であるにもかかわらず、その文化には大きな隔たりがありました。
年表発表ワークショップを通して、共通の足場を固める
そこで私たちは、まず、周年のコンセプトを決める前に、各工場の幹部候補生20名を集めて、月に1~2回のワークショップを開催することにしました。最初のステップは「自分たちが歩んできた歴史を振り返り、互いの共通点を見つける」ことです。
チームに分かれて各工場の年表の発表をしてもらったところ、「同じところで苦労したんだ!」「扱うモノは違うけど、工場の課題や改善のプロセスは似ているね」と、互いに頑張ってきた共通点がいくつもみつかり、相互に親近感が生まれました。
各工場2,000人の社員をまとめるトップ20名の時間をとることは、その間、現場の生産ラインが1つ止まるくらいの影響があります。そのため、工場長から通達文を出していただいたり、2回目のワークショップの後に懇親会を行ったり、入念な根回しで現場理解を得ることに気を使いました。
「未来を考えよう」の前に、世界一の認識を呼び覚ます
それで仙台・東京の溝がなくなってきたころで、次のステップに進みました。この先、自分たちがどのように社会に貢献していくかを具体的に想像してもらい、それを周年事業のコンセプトにしようという狙いでした。
ところがここで壁にぶつかりました。皆さん優秀な方ばかりなのに「未来を考えましょう」と促しても全く議論が進みません。私は冷や汗が出ましたが、そこで誰かがつぶやいた一言で、ハッと気が付きました。
「部品をどうやって改良するかとか、作業効率をあげるためにどんな工夫をするかとかなら、いくらでも考え付くんだけどな・・・」
工場の現場で、日々、目の前のモノの改善に焦点を当てている参加者のみなさんは、これまでは、そんな問いかけをされたことはなかったのです。突然「未来を考えよう」と促されても「はあ?」となるわけです。そこで、アプローチを変えることにしました。
実は、X社さまはその分野の生産量が世界一なのです。しかし、工場で扱う部品しか見ていない社員の多くはその事実を知りもせず、会社に対する誇りも希薄な印象でした。
まず「自分たちは世界一の会社なんだ」ということの凄さを客観的に理解してもらいたくて、私は、自分が歴史記念館に足を運び、社史・業界紙も読み込んで感銘を受けたことを皆さんに伝えました。他社の社史や取り組み事例などの情報も提供し、「自分たちはすごい会社で、すごいモノを作っているんだ!」ということを認識してもらおうとしました。
そのうえで、「皆さんが仕事でしたいことはありますか?」「どうやったらもっと良い製品を世の中に生み出せますか?」と問いかけたところ、行き詰っていた場が一気に盛り上がったのです。
「人手不足で困っているんだ…」
「いい物を作っているから、もっと世間から認知されたいな…」
その課題をどう解決するか、誰に何を伝えれば改善できるのか、意見がどんどん出始めました。こうしてようやく、コンセプトをまとめられる最後のステップに突入したのです。
現場の方の言葉には神様が宿る
お客さまの理念をまとめる時に、私がいつも念頭に置いているのは、コンサルタントである私たちが言葉を選んだりコンセプトを決めたりするものではないということです。
モノづくりの会社の精神は工場に宿ります。現場の方のお話を聞いていて、モノに対しての愛着やメイドインジャパンの誇りが言葉の端々から溢れるとき、私はそこに神様が宿っているように感じることもあります。ですから、今回は特に、お客さまの言葉でコンセプトを作りたいと私は思っていました。
ワークショップで飛び交った彼らの意見をメモし、録音を聞き直します。そこで生まれた言葉は、お客さまの工場のなかでは、まだ出たことがない言葉。価値ある意見の一つひとつを分析して、主なポイントを要約します。それを次のワークショップの冒頭で共有して、そこからまた皆さんの議論を進める。これを繰り返すことで、言葉がどんどん研ぎ澄まされていき、最終的に「世界一を背負っている」というコンセプトが誕生しました。
今では、仙台・東京の双方の工場の全社員が「世界一を背負っている」という、同じ仲間としての共通のコンセプトを持っています。
「自分たちが作ったエンジンで、世界中の飛行機が飛んでいるんだ!」
「その飛行機は、世界中の人をいろんな場所に送り届けてるんだ!」
フォローアップで取材をした現場の声からは、自分たちの仕事が、世界になくてはならない素晴らしいものなのだという誇りと、未来に続く意気込みが感じられました。
周年はきっかけ、というJBAの信念
プロジェクトが終わった後も、X社さまの中では自主的なノウハウ共有会の継続的な開催や、工場間で技術連携を行って1つの製品を生み出す「ドリームライン」の企画が進んでいるようです。「これまでほとんどコミュニケーションがなかった部署間でこんな連携がとれるようになったのはJBAさんのおかげ」と、担当者さまにも喜んでいただけました。
周年事業と言えば、表面的には、会社が〇周年を迎えたことのお祝いです。けれど、私は自分がこの仕事に携わるときには、必ず、それをきっかけに、お客さまが企業課題に立ち返えり、良い方に変っていけるようなサポートをしたいと考えています。永続的に実務に携わることができないコンサルタントだからこそ、お客さまに納得いただけるものをまとめ、プロジェクト終了後も変わらぬ信頼をいただき、自走していただける流れをつくることも意識しています。
JBAは10年以上にわたって多くの企業の周年イベントを手掛けてきた経験から「周年プロジェクトを通して会社は変われる」という信念をもっています。今回ご紹介した、ワークショップによる魅力の掘り起こしや未来への想いの言語化も、そんなノウハウのひとつ。
私は、お客さまと一緒にその企業の素晴らしさを見つけ、未来を考えるこの仕事が大好きなのです。