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「納得感」がキャリアの分岐点に。マーケからエンジニアに転身した私の挑戦の軌跡

freeeのエンジニアとして、プロダクトの機能改善や社内向けA/Bテスト基盤の改善を担当する立花 美幸は、新卒でマーケティングに配属された後にエンジニアに転向した異色の経歴を持ちます。立花の決断を支えた価値観とは。そして未経験のエンジニアとしてどのように壁を乗り越えてきたのでしょうか。

何のためにその事業をやっているのか──納得感を持てる企業を探した

(▲大学時代。立花は左から二番め)

東京大学の教養学部に進学した立花。専攻した表象文化論と、ベネズエラ音楽を演奏するサークル活動に夢中になり、充実した学生生活を過ごします。

就職活動ではある経験から、ベンチャー企業を志望しました。

立花 「サークルは創設から日が浅かったので、『なんでもやれる自由な雰囲気』を魅力に感じ活動に没頭していました。なので大企業に就職し既にできあがっている事業や組織に馴染むより、比較的組織が新しく自由度の高そうなベンチャー企業が自分に合ってるのではないかと考えました」

また立花は、表象文化論を専攻したことやベネズエラ音楽に夢中になった経験から、「主流じゃなくても自分が好きだと思うことをやりたい」という志向があることにも気づきました。それもベンチャー企業を志望するようになった要因だと振り返ります。

立花 「業界は特に絞っていませんでしたが、いろいろと話を聞いているうちに、事業の核となるプロダクトを持っている企業がいいなと思うようになりました。何のためにその事業をやっているのか、企業としての目的や存在意義がわかりやすい方が、納得感を持って仕事できるなと」

そんな中、イベントを通してfreeeに出会います。

立花 「ベンチャー企業が集まる説明会に参加した時にfreeeに出会い、調べてみると自社プロダクトもあり、条件にもマッチしていたので、採用ページから申し込みました。

また親がスモールビジネスをしているので、ご飯が終わった後にポチポチと会計ソフトに入力する姿を子どものころから見てきました。freeeの具体的な事業内容はわからなかったけれど、ざっくり『経理業務を効率化する』ということに関しては興味がありました」

立花はfreeeの面接で印象に残っていることがあると言います。

立花 「『学生時代に夢中になったこと』というテーマでベネズエラ音楽のことを熱く語ったのですが、面接官に『音楽をやったことない私に、ベネズエラ音楽をやりたくなるように勧めてみてください』と言われました。

プレゼンが終わると『やってみてどうだった?』と尋ねられたので、反省点を述べると、それを活かして再度トライすることに。他社の面接では質疑応答が中心だったので、いきなり実践的な営業のようなことをしたのが印象的でした」

立花は内定が出たfreeeに入社することを決意します。

立花 「freeeのミッション『スモールビジネスを、世界の主役に。』や、自由度の高そうな社風のほか、決め手となったのは働いている“人”です。

もちろん面接を通して数人しか会っていませんが、ベンチャーの割にはイケイケ感も少なく、根が真面目な印象を受けました。ここなら私に合ってそうだなと感じました」

マーケで感じたモヤモヤ。自分の想いと正直に向き合い未経験のエンジニアに

(▲入社式で自己紹介する立花)

2018年4月、freeeにビジネス職として新卒入社した立花。マーケティングチームに配属され、約2年間、オンライン領域を中心としたマーケティング業務を行ってきました。

立花 「小規模事業者や個人事業主向けのマーケティングを担当してきました。『freee会社設立』『freee人事労務』『freee会計』を担当し、運用型広告を得意領域としていました。

Web上でインターネットユーザーとの接点を作り、ユーザーの行動を数値化できるところや、広告ロジックを踏まえて工夫したポイントが成果に現れるところに面白さを感じていましたね」

そんな立花に、しだいに気持ちの変化が訪れます。

立花 「広告は、端的な表現で『freeeって良さそう!』って思ってもらわないといけません。

しかしそこにはデザインや文字数制限の都合上、伝えきれないことがあります。例えば『○○するとあっという間に業務が終わります!』というフレーズを使ったとして、それが正しいとしても、『○○する』以外の部分にユーザーが難しさを感じる場合もあるじゃないですか。

そんな『間違ってはないけれど、他の側面も考慮したら100%そうとは言い切れない』ものを日々扱っていることに、心のどこかでモヤモヤが溜まってきたんです。そんな気持ちに目を瞑りながらマーケティングを続けるより、プロダクトを良くする事に直接関われるエンジニアになりたいと思うようになりました」

入社して2年が経とうとしていたころ、立花は自分の気持ちをジャーマネ(※)に打ち明けます。

(※freeeにおけるマネージャとは、単にメンバーの上に立つ者のことではなく、”タレント”であるfreeeのメンバーを叱咤激励し、成長・活躍をサポートする役割。その想いを込めてジャーマネと呼んでいます)

立花 「『エンジニアになりたいです!』ときっぱり言いました。すると当時のエンジニアの全体責任者である平栗に伝えた方が良いと言われ、その場でミーティングをセットしました」

立花は一度は厳しめのことを言われたものの、最終的には転籍にトライする許可をもらいます。

立花 「平栗には、最初は『最近は未経験の新卒も採ってないし難しい』と言われました。『自分が同じ立場なら、安い給料でも未経験を採ってくれるベンチャーを探す』とも。

しかしもう一度話す機会をもらえたときに、改めて自分の気持ちを伝えると、課題をクリアしたら研修を受けさせてもらえることになりました」

進む先は壁、壁、壁 ──諦めない気持ちが乗り越える原動力に

(▲立花が携わった画面)

出された課題は『一週間以内にツイッターみたいなアプリを作る』というもの。立花は昼間はマーケティングの業務を行いながら、夜、仕事が終わると課題に取り組みました。

立花 「それまでは初心者向けの基礎レベルの学習を少しかじっていた程度。一週間で一気に学習を進めながら課題に挑みました。『ツイッターみたいなアプリ』をどう解釈しどこまでやるかは自分で決めることができたので、そのときにできる精一杯をやったつもりです」

なんとか課題をクリアした立花。研修を受ける許可をもらい、その後の見極めも通過し、晴れてエンジニアとしての第一歩を踏み出すことになりました。

2020年5月、立花がアサインされたのはエンジニアのグロースチームでした。

立花 「グロースチームでは既存プロダクトの機能改善と新機能のリリースを請け負っています。扱うプロダクトは時期によって異なるほか、機能横断的な施策や特定のユーザーセグメントに着目した施策に取り組むことが多いので、幅広い知識が必要になります。

また、ABテストをはじめとした『仮説検証→グロース』の知見があるので、それを全社的に行えるような基盤や仕組みづくりも行っています」

グロースチームに入った当初は、経験したことのあるコードとの規模の違いに戸惑いを感じます。

立花「自分が触ったことがあるコードと規模が違いすぎて、どこからどう読んでいいのかすらわからない状態でした。特に『freee会計』など歴史あるプロダクトだと、若干古い書き方や知らない技術も混在していて、何がどうなって目の前のコードが構成されているのか理解できなくて」

それでも少しずつ、業務を通して必要な技術や知識をキャッチアップしていった立花。しかし、さらなる壁が立ちはだかります。

立花 「プランニングポーカーで全く発言できないことが続きました。わからないことをクリアにしたいけれど、どう質問していいのか、そもそも何がわかっていないのかがわからなくて。また元々自分に自信がないのに加え、こんなことを聞いたらレベルが低いと思われるかもしれないという恐怖もあり、質問しやすい環境にもかかわらず、勇気を出せないことが多くありました」

それでも立花は前向きな努力を続けました。

立花 「プランニングポーカーの録画を何回も見直したり、PullRequestやそれに紐づく関連ドキュメントを読み漁ったりして、とにかく知識と技術を向上させることに努めました。それでもわからない時は質問に行くようにしました。

また、質問しやすく、フィードバックをもらいやすい関係性を作ることが大切だと考え、チームの振り返りのタイミングで『このレビューが学びになりました』と共有し、感謝を伝えました」

そのころ、ジャーマネから言われた印象的な言葉があるといいます。

立花 「『魚を取ってもらうのではなくて魚のとり方を学ぶことが大切。答えだけを求めるのではなく、どうやったらその答えを見つけられるのかを学んでください』と言われました。

思考が身についていると、初めて出会う問題に直面した時も仮説が立てられて、対処に再現性を持たせられるんです」

正面からぶつかる怖さを乗り越え、自分の意見を主張する大切さを学んだ

(▲趣味の登山)

徐々にミーティングでも発言することができるようになってきた立花は、さらなる課題に直面します。

立花 「次に悩んだのは『自分の意見が伝えられない』ということです。『Aだったらこうで、Bだったらこうなります』とまとめられるけれど、自分がどっちを良いと思っているのか熱量を持って主張することは難しかったです。それに中立的な立場でいても良いとさえ思っていました」

しかしジャーマネとの対話を通して、立花のマインドが変わります。

立花 「立場を明確に振り切る方が、議論が進みやすいと言われました。そこで勇気を持ってトライしてみると、主張したからこそ引っ張りだせた相手の意見やフィードバックが増え、目に見えて議論が深まりました。

それからは『主張することに意味がある』と受け入れ、多少迷いがあっても、あえて自分の意見をぶつけるようにしています。それを続けることで、間違うことに対する恐れも減ってきたように感じます」

エンジニアに転籍し2年がたった立花は2022年現在、機能改善やA/Bテスト基盤の改善など、さまざまな業務に携わっています。

立花 「現在は新設法人や開業したい人に向けて、『freee会社設立』『freee開業』の利用促進や体験の向上のための機能改善を行っています。また社内向けに、A/Bテスト基盤の改善にも着手しています。チーム全体でOKRを導入し、年間のロードマップの大枠を決め、PMやUXと連携を取りながら励んでいます。

エンジニアになってからは、以前にも増して『これをするとユーザーに価値を届けられる!』と納得感を持って毎日の業務を行うことができています。会議でも『プロダクトがどうあるべきか』を常に考えており、そういう働き方は自分にフィットしているし、望んでいたものだと感じます」

以前にも増して生き生きと業務にあたる立花の次なる目標とは——。

立花 「正直、この2年間は未経験だから丁寧に教えてもらえた部分もあり、それに甘えた部分も多少あったと思います。これからは自分が主導しながら難しい課題を突破できるエンジニアに早くなりたいですね。またこれまでたくさんのフィードバックをもらって成長してきたので、早く与えられる側の人間になりたいと思っています」

一人前のエンジニアとして活躍できる日を目指して努力を惜しまない立花。これまで多くの人々からもらった恩を未来に還元すべく、立花の挑戦は続きます。

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