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ミシュラン1つ星の予約困難店「シンシア」のオーナーシェフとして知られる石井真介氏が、新店舗のオープンに際して、クラウドファンディングに初挑戦しました。
海の環境資源を考慮し、適切な方法で獲られた「サステナブルシーフード」を多くの人に楽しみながら知ってもらうことをテーマに、2020年9月に原宿にオープンしたのが、新しいビュッフェスタイルのレストラン「シンシアブルー」。
このレストランのプロジェクトは、最終的に応援購入総額が18,979,000円、サポーター数が860人という記録的な成功を収めることができました。
今回、クラウドファンディングを軸とした、プロモーションのサポートを務めた弊社スタッフが、石井氏にお話を伺いました。
クラウドファンディングに挑戦した理由と、その効果。そして、いまの飲食業界が抱えている数々の問題点への提言について、前編と後編にわけてお伝えします。
シェフの領域を超えて精力的な活動を続ける、石井氏の力強いメッセージをぜひお聞きください。
社会貢献を掲げるお店のコンセプトがクラウドファンディングで広く告知できた
──新店舗「シンシアブルー」のオープン、改めておめでとうございます。開店より半年近く経ちますが、現在の状況はいかがでしょうか?
石井 緊急事態宣言前までは、毎日、満席で2回転していました。2ヶ月先まで予約を受け付けていますが、週末はもう埋まっている状況。サステナブルシーフードが認知される、いいきっかけを作れたのではないでしょうか。
──それは素晴らしいですね。これまでにないコンセプトのお店ですが、実際のお客様の反応は?
石井 「未利用魚」の存在を知ってもらったり、知らない魚種を食べたりといった、未知の体験に対する喜びが伝わってきています。しかも、客層は新規のお客様が大半なので、「シンシア」や僕のことを知らなかった方々が応援購入してくださっている。「おいしく楽しく食べながら海の未来を守る」という、社会貢献としてのお店のコンセプトがしっかりしていたので、その点を支持していただいたのは間違いないです。やっぱりクラウドファンディングの本質は支援・応援なので、本質的なメッセージが伝わる社会活動は共感されやすいのかもしれません。
──今回、クラウドファンディングに初挑戦されましたが、その効果はいかがでしたか?
石井 結果として、約1900万円という購入総額には驚きましたが、それ以上にお店のPR効果が高いと感じました。今回のプロジェクトが注目を集めたことをきっかけに、取材依頼が多数あり、これまでにテレビが13番組、雑誌は30媒体近くの取材を受けました。この露出の連続は、かなりいい反響を呼んだといってもいいのではないでしょうか。
──通常は、飲食店のオープンがここまでメディアの注目を集めることは稀ですよね。今回のプロジェクトには6万ビューものアクセスがありましたので、認知度の高さは屈指でした。
石井 実際には、クラウドファンディングのページをしっかりと作り込んだことで、メッセージをきちんと打ち出すことができました。これは、見る側も分かりやすかったと思います。もしこれと同じ内容を、お店のホームページやSNSに書いたところでは、ここまでの拡散力は望めなかったでしょう。クラウドファンディングという形で、広く告知できたことにこそ、意味があったと感じます。
支持された事実は、数字に現れる。そのことが自信につながった
──そもそも、なぜクラウドファンディングをやろうと思ったのでしょうか?
石井 知り合いの料理人がクラウドファンディングを活用してブレイクした事例を知ったことがきっかけです。料理人がこういう方法で成功を収めることは、いままでは存在しなかったので、情報の拡散能力が抜群にあるのではないかと注目していました。そういう面で「シンシアブルー」は、高級店である「シンシア」の客層とは異なり、より多くの属性の人に認知してもらうことが大事だったので、そこがクラウドファンディングの拡散力と合致したと感じています。そして、単にお店を知ってもらうだけではなく、水産資源の問題に取り組んでいる、僕たちの活動への認識をも広げることができました。
──ご自身がチャレンジされるまで、クラウドファンディングに対してどのようなイメージを持っていましたか?
石井 実際のところ、クラウドファンディングでいつも話題に上がるのは「何千万円集めた」という金銭面のことばかりなので、若干インチキくさいイメージを持っていたことは否めません。自分がプロジェクトを立ち上げたときに、資金集めが目的だとは思われたくないという懸念はありました。
──で、実際にやってみての感想はいかがでしたか?
石井 なによりも、自分の自信につながりました。そもそも「シンシアブルー」のような、サステナブルシーフードを扱ったレストランは日本では前例がない。もちろん、内容には自信を持っていましたが、そこまで日本のお客さんがエシカルな活動にお金を出してくれるのか、正直なところ確信が持てなかったんです。その点、クラウドファンディングで支持された事実は、数字に現れるので分かりやすいですね。これは成績表みたいなもので、購入総額やサポーターの人数が多ければ多いほど、僕たちの活動に賛同してもらえた証になる。同業者に対しても、こういうお店のコンセプトが評価された事例を作ることができたのは、大きいと思っています。
本質的な価値があるのに注目されないお店がPRできる絶好の機会
──飲食店がクラウドファンディングを利用する際に、あらかじめ、こういう心構えが必要だという点はありますか?
石井 それはなによりも、支援をいただいたあとのお客さんのケアに尽きます。「活動レポート」をこまめに更新したりとか、お客さんからもいろんなメッセージをいただくので、僕が直接返信しています。このクラウドファンディングを通じてお客さんとダイレクトにつながるわけですから、支援をいただいた後に不満を持たれないようにすることが大事です。そして、お客さんには一回来てもらったらそれで終わりではなく、きちんと喜ばせて、リピートしていただくこと。せっかくクラウドファンディングでお店をPRする絶好の機会を得たのに、お客さんをリピーターにできなかったら意味がありません。ですから、初訪問のお客さんのアフターケアをあらかじめ考えておく必要があります。
──今回の経験から、どういう飲食店にクラウドファンディングを薦めたいですか?
石井 飲食店のなかには、ものすごくおいしかったり、楽しい時間が過ごせるのに、PRがちゃんとしていないせいで、集客に苦労しているお店が多いと感じます。そういう、本質的な価値があるにもかかわらず、これまで日の目を見なかったお店が注目される機会につながればいいですよね。もしくは、今回の僕のケースのように、前例のない店を作るとか、新しいチャレンジに取り組んでいる人。「このプロジェクトが成功すれば、こういう未来が見れます」という、きちんとしたビジョンを提示することができれば、すごく効果的だと思います。
今回の記事を読んでクラウドファンディングに興味を持った方は、ぜひこちらからご連絡ください。業界屈指の成功率を誇る弊社が、貴店のチャレンジをサポートさせていただきます。
後編の記事では、現在の飲食業界が抱えている労働環境の問題点などについて、石井シェフが鋭い提言をされています。こちらも併せて、ぜひお読みください。
※後編はこちら 『ミシュラン1つ星「シンシア」石井真介が語る、これからの飲食店が目指すべき指針』
聞き手=坂口高貴、松隈 剛(リディッシュ株式会社)
文・写真(石井シェフ)=小笠原 格