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古代ローマ帝国から学ぶ、スタートアップが思い込みを避ける方法

※この記事はログラスCEO・布川が投稿したnote記事です。

古代ローマ帝国から学ぶ、スタートアップが思い込みを避ける方法|布川友也 | ログラスCEO
🐳この記事は「ログラスサマーアドベントカレンダー2023」の最終日の記事です。 全42日間にわたり継続投稿してきたログラスサマーアドベントカレンダーの最後は、代表である私が締めくくらせていただきます。 こんにちは、ログラスの布川です。 良い景気を作るため、日々組織拡大のために採用活動を頑張っています。 ...
https://note.com/loglass_fukawa/n/n916eb69a46b8


🐳この記事は「ログラスサマーアドベントカレンダー2023」の最終日の記事です。

全42日間にわたり継続投稿してきたログラスサマーアドベントカレンダーの最後は、代表である私が締めくくらせていただきます。

こんにちは、ログラスの布川です。
良い景気を作るため、日々組織拡大のために採用活動を頑張っています。

ログラスも既に100名を超える組織となり、次は1,000名組織までの拡大を見据えて事業・組織設計をしていかなくてはなりません。もちろん、まだまだ組織のためだけに戦略を練るようなフェーズではありませんし、戦国時代だと思ってやり続けていきますが、1,000名までには確固たる組織イメージを作り上げていく必要はあります。

大変ありがたいことに、先輩経営者から組織作りについて学ぶ機会をいただくことも多く、大変勉強になったと同時に、ある疑問が湧いてきました。それは

なんか組織作りってみんな違うこと言うぞ・・・??

ということです。

それもそのはずで、人がそれぞれ違うように、組織も会社ごとにそれぞれ違う特性を持っています。私はCoralさんがまとめている以下の記事はかなりまとまっていると思っております。元の文献である「『Organizational Blueprints for Success in High-Tech Start-Ups: Lessons from the Stanford Project on Emerging Companies』(ハイテクスタートアップにおける成功する組織の設計図―、新興企業に関するスタンフォード・プロジェクトの教訓)」も読みました。

スタートアップの組織設計図の5類型と、その失敗率 | Coral Capital
スタートアップの組織の「設計図」を帰属理由、採用基準、管理・運営の3軸で類別し、その成功・失敗を8年に渡って追跡調査した米国のレポートがあります。見いだされた5類型のうち、IPOに至る確率が最も高かったのは「コミットメント型」だそうです
https://coralcap.co/2020/03/organizational-blueprints/

しかし、100年、1,000年続く組織作りのためにはもっと本質的な、何か歴史から学べるようなエッセンスはないんだろうか?と考えることも多くありました。ある意味、江戸幕府は歴史的にも大成功した政権であり、古くはローマ帝国等も成功事例だと思います。こうした大成功した政権には当然、成功するだけのエッセンスがあるはずであり経営者としては一定学ぶべきものがあるのではないか?という興味です。

私は決して歴史の専門家ではないので、まともな記事になるか不安ですが、とりあえず最近考えていることをアウトプットしてみて、興味がある人がいればいいなぁ・・・ぐらいの気持ちで世に出してみようと思います。

今回触れたいのは、目の前の現実から逃げずに組織・事業を拡大していくために、「スタートアップが思い込み(確証バイアス)を避ける方法」についてです。

スタートアップはある意味、「誰も知らない真実」を見つけ、思い込み、ミッションを信じて戦うことで大企業に勝利できる。という定説があります。でもそれはイノベーションを生み出す0→1のフェーズではそうでしょうが、既に一定大きくなりつつある会社だとそうではないのでは?と思ったりもしますよね。

かのマイクロソフトも、ナデラがCEOに着任するまでは株価が低迷し続けましたが、Officeのクラウド版である「Microsoft365」を世に出し、Azureにも積極的に投資しました。これは決して、創業期からの思い込みやミッションだけでは成しえない大転換・大成功をもたらしたと思います。なんか興味出てきましたよね。

では歴史的にはどんな失敗と成功があったのでしょうか?

オリンピック発祥の地、アテネも陥ったフラット組織の難しさ

皆さんも世界史で最初の方に学んだかも知れませんが、現ギリシア共和国の首都でもあるアテネという都市(ポリス)の話です。
3、400年以上の歴史があり、パルテノン神殿はあまりにも有名です。

引用:パルテノン神殿|アテネのアクロポリス|世界遺産オンラインガイド(https://worldheritagesite.xyz/contents/parthenon/)

アテネが隆盛した時代の前後関係は以下の年表が分かりやすいです。

引用:アテネ | 世界の歴史まっぷ(https://sekainorekisi.com/glossary/%E3%82%A2%E3%83%86%E3%83%8D/)

ポリス社会のギリシアではかの有名なスパルタ、アテネといった強いポリスがいくつも現れた時代です。その中にあって、アテネは特に政治に強い都市であったと言われています。

例えば、クレイステネスの改革と呼ばれる大規模な民主政の改革は今の民主主義にも影響が残るような制度を作り上げました。

引用:アテネ | 世界の歴史まっぷ(https://sekainorekisi.com/glossary/%E3%82%A2%E3%83%86%E3%83%8D/)

しかし、アテネでは徹底した民主政を実現することによって、ペルシア戦争(アケメネス朝ペルシアvsギリシアの対外戦争)で実際に活躍していた平民・下層民の発言力が高まったとされています。これはある意味で貴族・平民・下層民という過去に存在した階級がフラットになる、今のスタートアップで言えば、経営から現場まで発言力が均一なフラット組織みたいなイメージになったと言えます。

しかし、このフラット組織による政治はやはり難しかったようで、以下のペロポネソス戦争(アテネvsスパルタのギリシア内紛)の際のエピソードは非常に興味深いです。

前 431 年に始まったペロポネソス戦争(対スパルタ内戦)は、前 421 年に一時休戦条約の締結をみる(ニキアスの平和)が、それはごく短期間のことで、改めて開始された戦闘は本編の上演当時ひとしきり熾んであった。前 416 年夏から冬にかけてメロス島事件2が起こり、前415年初夏にはアテナイ海軍の艦隊がシラクサ攻略を目指してシケリア島遠征に出発した(出発前夜に謎の“ヘルメス像破壊事件”が起こり、市民の間の戦時ヒステリーを一挙に増幅せしめた)。
しかしこの遠征は大失敗に終わり、アテナイ市民は戦局の推移にかつてない恐怖と狼狽を味わうことになる。前 413 年に敗戦の報告が届いたときのアテナイ市民の混乱ぶりを、歴史家トゥキュディデスは以下のように記している。
アテナイ本国にやがてこの報が伝えられても、長い間、市民はこれを信じようとはしなかった。実際にこの作戦に参加していて難を免れた正真正銘の兵士らが、ありのままの真相を報告するのを聞いても、それほどに徹底的な、一兵ものこらぬ全滅に陥ることなどありえようか、と疑ったのである。
しかしこれが真実であることが判明すると、市民たちは、自分らが決議の投票をなした主体であることを忘れたかのように、この遠征挙行を声をそろえて積極的に支持した政治家たちに対して非難をあらわにし、また神託師や予言者など、遠征軍出航に先立って、神慮天意を理由にシケリア遠征成功の夢を市民らに植えつけた誰かれに対しても、憤りをなげつけた。どちらを見ても、四面市民を苦しめることばかりであり、かくの如き事態の出来をまえにしてかれらを襲った恐怖と狼狽は、如何なる経験にも比べようがなかった」(『歴史』巻 8,1)
出典:アテナイ― 喜劇『リュシストラテ』を透かして見るその都市像 ―丹下 和彦 関西外国語大学外国語学部教授

当時のアテネは、後世のローマ時代の哲学者達に「衆愚政治」であったと批判されるような状態でした。(要は大衆による愚かな政治ということです)

この衆愚政治の代表的な課題点に、「思い込みが強く、現実を見れなくなる」という点があります。戦争の敗北という現実を直視できず、真実を認められないことで意思決定が大幅に遅れるということが起こったのです。もしスタートアップで意思決定が遅れ、競合の強さを認められず、戦略を変えなければ潰れるしかないですよね。それぐらい大きな問題が国レベルで起こっていた、これがアテネの歴史なのです。

社会的な判断力が不足している平民・下層市民が直接政治参加できる当時の民主政では議論が停滞したり、扇動者(デマゴーゴス)の意見に必要以上に振り回されて本質を見失ったりしやすい状況であったとされています。スパルタという超トップダウンの軍事国家との戦争でフラット組織であるアテネが意思決定が全くできず、大敗したという歴史は個人的には大変興味深いなと思っています。現在の民主主義では政治家を選挙で選び、間接民主制という形で改善はされています。(ここは専門家に任せます)

決して、フラットな組織が悪いと批判したい訳ではありません。しかし、明確なリーダーが不在の組織はリスクが取れなくなります。知識を十分に身に着けており、責任を取る覚悟がある人間が組織にいないと、課題の先延ばしや偏見や恐怖の蔓延が起こるということは歴史的にも証明されているのではないかという示唆は得られます。全員が意見を出して、それを全部反映するマネジメントは絶対に上手くいかないということを歴史からも確信できるのではないかと私は考えています。スタートアップはどうしても革新的なことを組織でもやろうとするため、例えばティール組織を目指してみたりするのですが、事業と組織でそれぞれ冒険するというのはやはり難易度が高いようで、明確な成功と言えるフラット組織というのはあまり聞かないものです。
※ここも賛否のある話だとは思っていて、私のスタンスを強く出しているポイントかも知れません

では、どうすれば思い込みを排除して、理想的な組織設計ができるんですか!

と思いますよね。ということで、次はかの有名なローマ帝国について見ていきましょう。

思い込みを徹底的に排除した、古代ローマ初代皇帝の手腕

ローマ帝国を知らない人は2023年現在においてもほぼいない!
それだけローマ帝国というのは凄かったわけです。まず広さがとんでもない。

時期にもよりますが、現在の西ヨーロッパ全域に加え、トルコ等の地域も含む広大な支配を実現していました。

引用:ローマ帝国|Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E5%B8%9D%E5%9B%BD)

また、文化についても凄まじい成果が残されています。現在のイタリアではコロッセオ等の2,000年以上残るようなハイレベルな建造物が観光地にもなっており、未だに世界中から人が訪れています。

このローマですが、初代皇帝はアウグストゥス(オクタウィアヌス)という人が務めました。ラテン語で「尊厳ある者」という意味らしく、かっこよさが際立っています。かの有名なカエサルの姪の息子でもあります。

引用:アウグストゥス|Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%82%B0%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%A5%E3%82%B9)

アウグストゥスの凄さは、共和政から帝政に移行した後に構築した「思い込み、確証バイアス」を徹底的に避ける仕組みにあると私は考えています。

その中でも興味深いのは「プリンキパトゥス(元首政)」という制度の確立です。このアウグストゥスが構築したプリンキパトゥスを理解するのには以下の文言が一番分かりやすいです。

「権威において万人に優越していても、権力においては同僚たちを凌駕しない」
出典:『神君アウグストゥスの業績録』

なにこれかっこいい・・・。

プリンキパトゥスとは、見かけ上としては共和政ローマのような選ばれた代表者が国を治める官力を一定もっているように見えるが、実態としては皇帝たるアウグストゥスが中心的な権力を保持しているという体制のことを指しています。

プリンキパトゥスの政治体制では、元老院等の機関も存続させ、アウグストゥス自体も顧問からの意見を受け入れていたといいます。並行して、法制度や地方への権限委譲も整えました。

帝政ローマ初期におけるアウグストゥスの功績を敢えて、会社組織に応用するとすれば以下のようなことが言えるのではないかと思います。

①効率的な意思決定
先に述べた通り、プリンキパトゥスでは、最終的な決定権が皇帝にある程度一元化されていたため、迅速な意思決定が可能でした。衆愚政治との対比で見ても、リスクが取りやすく、トップが素直である限りは多角的な知識から正解を導きやすい構造であると言えます。

応用: スタートアップや急成長する企業では、CEOが迅速に意思決定できる環境を作ることが有用であると言えそうです。経営会議や取締役会はもちろん重要ですが、非連続かつリスクが高いように見える意思決定はプリンキパトゥスを参考にCEOが最後は決められる状況を作り上げることが合理的であると言えます。CEOは他者の意見をしっかり聞いて反映する意思は重要であり、周りの経営陣や社外取締役はCEOが意見を聞いた上で意思決定したならば、全力で支援するということが重要です。

②安定性
プリンキパトゥス体制下では、皇帝が中心となって統治することで、政治体制が安定していました。「パクス・ロマーナ」(ローマの平和)と言われる程の安定がこの体制によって築かれ、衆愚政治と呼ばれたアテネ対比で見ると成果は一定あったと言えます。

応用: 組織内でのリーダーシップが明確であれば、社員も安心して働けます。明確なミッションや指針を出すことで、企業文化を安定させることが可能であると言えそうです。逆に言えば、経営会議等で合議で決まる世界にどんどんなってきて、リーダーシップが欠如してくると実は自社の強みや機動性が気づかぬうちに消えているということになりかねないということです。合議で決めることになれて、リーダーシップを失った瞬間に、イノベーションは起こらなくなり、誰もリスクを取れなくなるともいえます。

③包摂性(多様性の包含)
プリンキパトゥスでは、元老院などの既存の機関にも一定の権限がありました。これにより、多様性を尊重し、多角的な意見を受け入れることができる仕組みを構築し、各会議体のメンバーが意見を出せる心理的安全性があったのではないかと考えられます。共和政ではなく元首政であることが重要なので、あくまで議会は究極の意思決定はしないと割り切っていたことで、包摂性の内包と強い意思決定が共存していたと言えます。

応用: 企業では、従業員やステークホルダーの意見も尊重しながら、最終的な決定は経営陣が行うという方式が一般的ではあります。経営会議等の構築は、一定の規模ではどんな会社であっても必要性が出てきます。場合によっては取締役会等も同様であり、一般的に行われている会社の会議体の意味もここにあると考えると自然に受け入れることができます。決してCEOは元老院たる取締役会や経営会議をないがしろにしてはなりません。しかし、最終的にはCEOが厳しい意思決定はする、仮にそれが間違っていてもリーダーシップを取って意思決定できる、という状態を作り上げることとセットで初めて元首政は機能します。経営会議参加者の人は権力は持っている、但し、究極の選択はCEOにあり、それをサポートするんだという意思を持つことがポイントでしょう。加えて、アドバイザーや社外取締役の重用もローマ初期から学べば合理的であり、これもスタートアップではあまり取り組んでいない会社も多いと思います。

歴史って凄い、AI使おう

たいへん月並みな感想なのですが、ギリシア・帝政ローマ初期だけでもこれだけの学びがあり、昨今はChatGPTという最強のツールが登場したことで歴史から学ぶスタートアップ経営みたいな論議がAIとできてしまう時代になりました。今回の記事もごく一部活用しています。

私のプロンプト力が低いことでまだ浅い議論しかできませんが、ChatGPTが既に学習している範囲に歴史は必ず含まれているので、いわゆる検索のような使い方に比べるとかなり良い精度で議論できた印象です。

ただ、議論の出発点はどうしても人間が作る必要があるので、歴史を改めて学んで、沢山の学びを得るには基礎学習がまた必要だと思います。

もし私が他のテーマで考えるとしたら、
・ローマ帝国やモンゴル帝国といった大規模に支配を拡げた国の歴史から、組織や事業領域の拡大を思考する
・江戸幕府から学ぶ後継者育成とサクセッション
・どうすれば経営者は大胆になるのか、アレクサンダー大王とシーザーの気持ちになろう!
・キングダムの世界において、秦の昭王はなぜ凄まじい絵を描いて多くの法律家を雇用できたのか。スタートアップの採用力にどう応用できるのか

とか訳の分からぬテーマでChatGPTと会話するかもしれません。もう少しプロンプトを作りこんでもっと良い示唆が出る方法を考えたいものです。

まだまだ事業そのものに向き合うフェーズではありますが、たまに歴史を考えると各時代の主人公たちと比べてなんて小さいレベルで悩んでいるんだ・・・と絶望しつつ、やる気が出てきますね!

歴史を学び、考え、事業を伸ばす。


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