新しく入社したデータサイエンティストが語る、ウォンテッドリーにおける推薦の魅力とは。| Cross Talk / Data Chapter
今回は、ウォンテッドリーにデータサイエンティストとして入社した市村さんにインタビューを実施した。インタビュアーは、データサイエンティストのTech Leadの合田さん。「推薦」という観点から見る魅力とは何なのか、率直な想いを語ってもらった。
◆登場人物
- 市村 千晃(Profile)/ Data Chapter・Visit Recommendation Squad
2017年に新卒で日鉄ソリューションズに入社。システムエンジニア、プロジェクトマネージャーとして金融機関向けのシステム開発に従事した後、データサイエンティストとして、顧客のデータ利活用の支援やデータ分析技術に関わる研究開発を行なう。2024年3月にウォンテッドリーへ入社し、データサイエンティストとして推薦システムの開発に携わっている。
- 合田 周平(Profile)/ Data Chapter・Visit Recommendation Squad(Leader)
2019年にデータサイエンティストとしてウォンテッドリー株式会社に中途入社。以来、会社訪問アプリ「Wantedly Visit」の推薦システムの開発・運用に従事している。2022年からは、テックリード及びプロダクトマネージャーの役割を担っている。
興味がきっかけで切り開いたデータサイエンティストへの道
(合田)まずは自己紹介をお願いします。
(市村)大学院を修士で卒業後、いわゆるSIerと呼ばれる受託開発系の企業に入社しました。入社して最初の約4年間はシステムエンジニアやプロジェクトマネージャーとして金融機関の顧客向けのシステム開発に従事していました。
その後、徐々にデータ分析に対する興味が出てきました。その時は転職も考えたのですが、コロナ禍で情勢が不安定だったこともあり、社内異動をしてデータ分析の業務に関われる職種にキャリアチェンジをすることに決めました。その後は異動先の研究開発部門でデータサイエンティストとして約3年ほど働いた後にウォンテッドリーに転職したという経歴です。
(合田)前職でデータサイエンティストにキャリアチェンジすることを決めたきっかけはありますか?
(市村)最初のきっかけは会社で実施されていたデータ分析の研修でした。データを使ってあるサービスの需要を予測するタスクを解くような研修に参加して「データ分析面白いな」と思ったのが最初のきっかけでした。そこから、Kaggleのようなデータ分析コンペにも参加するようになりました。趣味だけでなく、仕事としてデータ分析に取り組みたいという思いから、キャリアチェンジを考えるようになりました。
(合田)もともと機械学習などのハードスキルは持っていたのでしょうか?
(市村)全くありませんでした。大学院ではプログラミングこそしてはいましたが、主に天体現象のシミュレーションをする研究をしていたので、機械学習のスキルや知見はありませんでした。そのため、社会人になった後にKaggleなどのコンペに参加しながら、機械学習やデータ分析のスキルを少しずつ身につけていきました。
人の意思決定を支える「推薦」に、コンペではなく実務で取り組んでみたかった
(合田)転職をした理由を聞かせてください。
(市村)技術という観点で、機械学習の中でも自分は推薦技術が好きなんですよね。だから、推薦という技術に本気で取り組んでいて新しいチャレンジができるところにいつか行ってみたいな、という漠然とした思いから転職を意識し始めました。
(合田)推薦という技術に対して強い興味を持ち始めたきっかけは何かあったのでしょうか。
(市村)きっかけは、初めて参加した推薦タスクのコンペのKaggleで H&M が主催していたものでした。その後もECサービスが主催したコンペや旅行サービスのコンペなどに参加しました。最初の入口は業務ではなく、このようなコンペでした。
(合田)推薦コンペは他のタスクに比べて、やらなきゃいけないことが多くて大変ですよね。一見とっつきにくいものですが、推薦の魅力はどこにあるんでしょうか?
(市村)データを見ていると、 人がどういうことを考えてその行動をとっているのかが垣間見えて面白いです。この面白さが推薦の魅力ですね。そして、その意思決定の根拠を、モデルが解釈できる情報として取り込むことで、モデルが改善されると「やっぱり人の行動の裏にはこういう考えがあったんだな」と理解できます。このプロセスを通じて、人の意思決定を支援する技術として、推薦の面白さを感じますね。
(合田)確かに推薦そのものがユーザー体験として成立するものなので、ユーザーに寄り添ったアプローチが重要になりますよね。
(市村)そうですね。コンペは楽しいんですが、実務もまた違う難しさと面白さがあると思っています。コンペは、言ってしまえば基本的に過去のデータに対して、ひたすら精度を高めていくものです。実務でレコメンドを使って人の意思決定をサポートしようと思うと、モデルを磨くこと以外にもやらなくてはいけないことが沢山あります。
例えば、推薦結果をどのようにユーザーに表示して渡すかといった見せ方や推薦の公平性や多様性など、プロダクトが多くの人に信頼して使われるために考慮しなければいけないこともあります。技術的にチャレンジングな要素が結構あるというのは推薦のことを調べる中で知っていきましたね。そこから、コンペに出るだけではなく、実務としてこの技術に取り組みたいと思ったのも、転職を意識した理由の一つだと思います。
選考での対話を通じて強まったウォンテッドリーへの想い
(合田)推薦を軸に転職活動をしていたと思うのですが、その中でウォンテッドリーを知ったきっかけは何かありましたか??
(市村)サービス自体は昔から知っていましたが、転職先として意識するようになったのは、2022年の人工知能学会です。ウォンテッドリーが登壇やブース出展をしていて、推薦に力を入れていることを知ったことがきっかけでした。
その後、ウォンテッドリーの社員の X をフォローして、RecSysという推薦系の学会にチームで参加していたり、推薦に関する色々な発信をしているのを楽しく見ていました。特に印象に残ったのは、近年コンペでよく使われる “Two-Stage Recommendation”という技術を業務に活用したブログ記事です。この技術が、実務で役立っていることを知り、感動しました。その記事を引用リツイートしたことがきっかけで、合田さんからカジュアル面談に誘っていただいたという流れでしたね。
(合田)RecSysに行って良かったです!最終的に入社する意思決定につながったウォンテッドリーの魅力はありますか?
(市村)いろいろありますね。まず思いつくのは、選考の体験がすごく良かった点です。通常、面接というと自分が評価される側にいるという印象が強いですが、ウォンテッドリーの面接は対話を通じてお互いの理解を深めながら進める面接でした。合田さんとも技術面接をさせてもらいましたが、その中でも評価される側の居心地の悪さのようなものがありませんでした。面接が進んでいくにつれて、対話を通じて自分自身の考えを見つめ直したり新しい発見があったりと、何だかカウンセリングを受けているような不思議な感覚でした。
また、内定後にもらったオファーブックも、入社の決め手になりました。内定の理由や配属予定のチーム構成などが具体的に書いてありました。自分が特に嬉しかったのは、入社後半年で取り組む業務と更に数年後に期待される役割が明確に書かれていたことです。それを読んで「この会社なら自分のやりたい事が実現できる」という確信を持つことができました。
最後に、データサイエンティスト以外の職種の方達ともお話をして、プロダクトをグロースさせる組織としての強さと、職種間の距離の近さを感じたのも大きな魅力でした。プロダクトを成長させるにはデータサイエンティストだけではなく、プロダクトの戦略を決める人、システムを実装する人、サービスをユーザに届けてサポートする人など、沢山の人の協力が必要です。ウォンテッドリーにはこれら全てのメンバーがいて、異なる職種であっても近い距離感で協働できる点も、入社を決めた理由の一つです。
「実験を重視する文化」の本当の意味
(合田)入社してギャップに感じていることはありますか?
(市村)入社前からカジュアル面談などで「実験を重視する文化」について聞いており、その文化に対する認識のギャップがありました。当初は、試行錯誤を何度も繰り返し、試行回数の多さが重要であるというイメージを持っていました。しかし、実際に入社してみると、実験を重視する点は変わりませんでしたが、想像していた「闇雲に実験を回す」スタイルとは方向性が異なることに気づきました。
ウォンテッドリーでは、推薦の施策を行う際、まず仮説を立て、解決したいユーザーの課題を定義します。次に、オフライン評価で実装した解決策が意図した変化を起こせるかを確認し、その上で最終的にオンラインでユーザーの反応を見るというプロセスを踏みます。このように、一つ一つのプロセスを丁寧に行うことで、実験の質を高め、得られる学びや成果を最大化しています。そのため、「実験を重視する」とは、ただ無計画に様々なことを試すのではなく、各実験の質を高めた上でユーザーに向けて実施する文化なんだと理解しました。
(合田)ウォンテッドリーでは、まさにそのような「User Obsession」という価値観を大事にしています。ユーザーの本質的な欲求を見極めてシャープなプロダクトを作っていきたいですね。
Wantedly は想像していたよりも複雑でチャレンジングな環境
(合田)実務でやる推薦の複雑さについて、実際どのように感じていますか?
(市村)入社前に想像していたよりも複雑だなと感じています。Wantedly が扱う推薦は仕事を探すユーザーと、募集を出す企業の双方を考慮したもので、多くの配慮が必要です。それが難しさでもあり、逆にやりがいを感じる部分でもあります。
具体的に言うと、ある施策を考える時に片方にとっては良い体験だとしても、もう片方にとっては問題がある場合があります。例えば募集を出している企業は要件にマッチする候補者が多く応募してくれたら嬉しいと思います。しかし、候補者から見ると、もっとチャレンジングな募集を推薦されたいと思っているかもしれません。このように、ユーザーが求めているものと、企業が求めているものが必ずしも一致しないことがあります。
(合田)その非対称性をいかにすり合わせていくかが難しくも面白いポイントですね。単に片方だけではなく、双方が良い体験を享受できる形を目指す必要があります。ちなみに、このような双方向の嗜好を考慮する推薦は過去に取り組まれたデータ分析コンペのタスクとは異なりますが、ギャップを強く感じましたか?
(市村)たしかにギャップはありましたね。ただ、双方向の推薦を、企業からユーザーへの推薦とユーザーから企業の推薦へ分解し、それを集約したタスクであると捉えれば、今までコンペで得られた知見を活かすことができると考えています。
企業と個人の両者が満足する最適なマッチングを目指す
(合田)ウォンテッドリーで技術的にチャレンジしたいことについて教えて下さい
(市村)データを活用し、より最適なマッチングを実現することです。現在のWantedly Visitの推薦システムは、企業とユーザー間のやり取りをマッチングとして扱い、それを最適化しています。しかし、ウォンテッドリーのミッションを考えると、最終的なゴールは企業に入社した人が活躍し、その結果、企業と個人の両者が満足することです。そのため、Wantedly Visitだけでなく、入社後の社員の活躍をサポートするEngagementなどのプロダクトも導入しています。これらのプロダクトの情報を活用して、さらに最適なマッチングを実現したいと考えています。
(合田)最後に、今後のキャリアにおけるチャレンジについて教えてください。
(市村)推薦や機械学習といった技術への興味が強いので、これらの分野をさらに深め、ユーザーにより良い推薦を提供していきたいです。将来的には技術を軸にして、プロダクト戦略を立てたり、チームマネジメントを行うプロダクトマネージャーとしての役割を担えるようになりたいです。