今回、ウォンテッドリー株式会社 Engagement Tribe Leader 橋屋 優理 (はしや ゆたか)にインタビューを行った。橋屋は、新卒で大手メーカーで法人営業と営業企画を担当し、医療系コンサルティング企業に転職。以降、新規事業の責任者を複数経験したのち、2022年にウォンテッドリーにジョイン。現在は、ウォンテッドリーの新規事業であるEngagement Suiteの事業責任者として活躍している。
不確実性の高い新規事業、ともすればメンバーへの負荷も高い環境の中、Engagement Tribeのリーダーの表情は常に明るい。そんなチームを作り、新規事業を推し進める橋屋が、どんな想いでマネジメントを行っているのかを語ってもらった。
ウォンテッドリーの新規事業 Engagement Suiteとは
ーー橋屋さん、本日はお時間をいただき、ありがとうございます。Engagement Suiteの説明からお願いしてもよろしいでしょうか?
はい、Engagement Suiteは、2020年に立ち上げた事業です。福利厚生を提供する「Perk(パーク)」、従業員サーベイの「Pulse(パルス)」、Web社内報の「Story(ストーリー)」と3つの機能を内包した、従業員のエンゲージメントを高めるためのサービスです。
数名規模の会社から、1000人規模の会社まで、幅広いお客さまにご利用いただいています。直近、非常に順調なペースで事業を伸ばしています。
Engagement Suiteをより多くのお客さまに届けるために、チームの全員で日々、新規事業ならではの面白さを感じながら前向きに取り組んでいます。
ーーそんな、チーム全員で前向きに進める秘訣もお伺いしたいです。よろしくお願いいたします!
ムーンショットの目標は、掲げた瞬間に必達目標になる
ーーまず、目標設定から教えていただけますでしょうか?
数字の積み上げというよりは、まず目標を定め、そこから逆算をしてマイルストーンを置いていくようなイメージです。
大前提ですが、目標値を決めるとき、新規事業においてはあまり基準がありません。そしてわたしたちは、この事業を早くウォンテッドリーの強い柱にしたいと思っています。
だからこそ自分たちに厳しく、ムーンショットな目標を設定します。従来のやり方の積み重ねでは、到底達成し得ないチャレンジングな数字です。そしてムーンショットでありつつも、掲げた瞬間に必達目標となります。達成率99%で妥協するのではなく、必達です。
この目標を達成するためには、”進化”が必須になります。ここで言う”進化”には、プロダクトの進化、営業プロセスの進化、メンバーひとりひとりの進化など、あらゆる進化を含みます。進化のためには、大量のチャレンジと、それに伴う失敗が必要です。
トライとエラーを繰り返しながら、荒野を切り開いて道を作っていく。そんな取り組みを、メンバーと一丸となり進めています。
あえて回り道もする、目標必達のために必要なことは凡事徹底
ーームーンショットの目標を達成するための、トライとエラーの繰り返し…どのように取り組まれているのか教えていただけますか?
まずリード獲得から受注・利用期間の過程において、課題となり得るものを総ざらいします。その中で出てきた一つ一つの課題に対して仮説を立てて、プロダクトの開発も含めて解決策を試す。この繰り返しです。
新規事業は派手に目標を掲げるんだなと思われるかもしれません。一方で、一つ一つの施策は地道なことばかりであり、やるべきことを粛々とやることにつきます。
ーー現実的な施策に、粛々と取り組む。もう少し具体的に教えてください。
たとえば、福利厚生サービス「Perk」のリリース直後、サービスの特徴や導入メリットを、網羅的に説明をしていました。そんな中で、首都圏の企業にはすごく喜んでもらえるものが、地方企業にはまったく受け入れてもらえないことや、企業の年齢構成によって説明したときのリアクションが異なることが見えてきました。
そこで、過去の成約案件と未成約案件を全てひっくり返して、顧客特性やサービスの強み、訴求ポイントなどの指標を用いた相対表を作成しました。これを付け合わせたことで、顧客のニーズに個別で合わせたご提案を、チーム全員ができるようになる、ということがありました。
ちなみに検証時には“非効率にボリュームをこなす” ことにこだわっています。最短距離を行きたくなりますが、回り道をしないと拾えない、ちいさなメダルにも活路を見出しています。
費用対効果がわかりにくいからこそ、先回りで最適解を出し続ける
ーーEngagement Suiteを広めていくために、お客さまと向き合いながら、ありとあらゆる施策を行い続けているんですね。事業ならではの課題はありますか?
エンゲージメント領域のサービスは、価値貢献がやや間接的になる中で、その重要性を言語に落とす点が難しさと認識しています。
例えば業務支援ツールは、いかに業務を効率化できるかが選定基準になるかと思います。これはある程度、費用対効果が測りやすい側面があるといえます。
一方で、エンゲージメント領域のサービスは導入時のROIが測りにくかったりします。例えば福利厚生を介して売上が倍になった、と言うことは少し考えにくいですよね。
効果を想像しにくいが、実は経営において重要な役割を担うという相反に、難しさとやりがいがあります。その相反がもたらすズレにアジャストして、正しい判断軸を提供できるよう、開発・ビジネスの両面で事業開発を進めています。
判断軸が複雑になりやすいことが分かる現象として、決裁者の独断では決められずに、従業員の意向を汲み取ってから導入可否を決めたいというケースが多く生じます。
例えば、福利厚生サービス「Perk」をご案内した後、代表の方には絶賛いただいているにもかかわらず、従業員の方への説明が正しくされないためにお見送りになってしまうケースも多くありました。
そこで、営業メンバーと従業員の方向けにサービスの魅力を伝えるための1分間の説明動画を作成しました。手作り感が満載の動画でしたが、これをお渡しすることで受注率が大きく改善しました。
このように判断軸が安定しにくい分、細かく生じる課題に先回りしながら、リーンに最適解を出すことを求められる機会が多くある事業です。
個人的にはこの細かい対処がうまくいったときに、醍醐味を感じたりしますね。
ちなみに、この手作り動画は効果が観測できたので、デザインチームと連携して新規のものを作成し、今はスタイリッシュな動画に生まれ変わりました。よかったらぜひ見てほしいです。
新たな課題はマイナスの出来事ではなく、進化の証
ーー教えていただいた仮説検証を、日々繰り返しているのですね。途方のないような数の課題が出てきているかと思うのですが、正直辛くなることはないのでしょうか?
もちろん、不確実性の高い中で思考と試行を繰り返すことには、メンバーにも負荷がかかっていると思います。ひとつ課題を解決すれば、次の課題が2つも3つも出てくるような、もぐらたたきのような状況なので。わたしたちの活動に終わりはないんです。
ここで考えたいことは、新しい課題が出てきたということは、この一個前の課題を解決できた証だということです。
例えば、これまでにはいなかった属性の利用企業様からのご要望に対して、解決策を新たに提示する課題に直面したとします。それは、これまでよりサービスの提供範囲を広げられたからこそ出会える課題です。その課題を解決すれば、そのお客さまに貢献できますし、より多くのお客さまに貢献できる可能性が広がります。
新しい課題が出てくることは、マイナスな出来事ではなく進化の証。そして、伸びた先でまた新たな課題が出てくる。課題は連続しています。
実際、1年くらい前を振り返ると、定量・定性それぞれで随分と進んできたなぁと思いますね。この「課題の連続性」のおもしろさを、メンバーと謳歌したいと思っています。
一人ひとりが自律して、課題解決プロセスを楽しむ
ーーEngagement Tribeのメンバーは、日々課題と真剣に向き合いながらも、すごく楽しそうに見えて。モチベーションを保つようにどのようにはたらきかけているんですか?
基本的にメンバーはみんなエネルギー値が高いんですよね。各々が自律して、今自分が何をすべきなのかを考え続けています。わたしがそこに何かはたらきかけているわけではないですね。
はたらきかけとは違うかもしれませんが、同じ目線で課題に向き合うのが自分のスタンスではあります。少なくともわたしはそのプロセスを楽しめているので、それがメンバーの当事者意識に作用してたら嬉しいですね。
ーー チームとして楽しく事業を進めるために大切なことはなんですか?
これは「成果」に尽きると思います。開発のアップデートも、日々の愚直なセールス活動も、お客さまに喜んでもらえれば報われますね。
その喜びを知ってるメンバーが集ってますし、そこから目をそらさずに進んでいきたいです。
失敗に向き合わない限り改善はない。失敗に笑顔で向き合う強さ
ーーEngagementメンバーは、事業を伸ばし続けてきたことを糧にポジティブに課題に取り組んでいるんですね。橋屋さんが思う、チームの強みを教えて欲しいです。
失敗を笑顔で共有できる点ですね。
0から1を生み出す新規事業において、受注した理由と失注した理由、どちらに再現性があるかというと、失注理由だと思っています。浅い事業フェーズでの受注理由はお客さまによりけりだと思うんです。一方で、失注の理由は、改善しない限りはその失敗を繰り返すと思っています。
失注理由はプロダクトの機能不足であったり、訴求ポイントを誤っていたり、お伝えの仕方がマッチしていなかったり、資料の内容であったりと様々です。失注の理由にたどり着くためには、案件の中で自分がどのようにお客さまと関わったのか、真剣に向き合う必要があります。
自分の失敗に向き合う作業は、一般に苦しいもの。避けたい、隠したいと思うこともあるかもしれません。ただ、失敗に向き合わない限りは改善はありません。
メンバー単位でも、みんながコトに向かえているので笑顔で報告をくれますし、その失敗をチームとして歯を食いしばって取り組める雰囲気があるのは、強みと言えるかと思います。
「Engagement Suite」というプロダクトがメンバーの名刺代わりになることを目指す
−−最後に、これからのEngagement Tribeについて教えてください。
ここ最近、プロダクト開発が一気に進み、お客さまにサービスを紹介したときの反応が、明らかに変わってきたと感じています。プロダクトが営業をリードし始めた状況です。
次は、進化したプロダクトを営業側がいかに広めていくか、ビジネスとして最適化するにはどうすれば良いのかを考え、前進させるフェーズです。これまでのEngagement Tribeの取り組みを、飛躍的に進化させるチャンスが来ていると思います。
仮説を立てることもこれまで以上に難しくなりますし、施策の難易度も上がっていくでしょう。ただ、難易度が高いからといって怯むのではなく、難しさを面白さと捉え、ポジティブに進んでいけるメンバーが揃っているのが、わたしたちEngagement Tribeです。
わたしはこのチームであれば、現在のフェーズを乗り越えて、ムーンショットの目標の達成を勝ち取ることができると確信しています。乗り越えた先で、さらに道を切り開き、進み続けていくことを、このチームで楽しんでいるだろうと信じています。
進み続けた先で、Engagement Suiteが世間のみなさまにより広く認知されて、更に進化を遂げたプロダクトがメンバーそれぞれの名刺代わりになるような、そんな未来を作っていきたいです。
さいごに
積み上げていくだけでは達成し得ない、ムーンショットな目標を立て、チーム全員が進化することで達成を勝ち取る。その過程には、果てしない数の課題がある。ひとつひとつの課題に愚直に向き合いながら仮説検証を繰り返し、道なき道を切り開いていく。
仮説検証が多い分、失敗の数も増える。それを笑顔で振り返り、次の挑戦の糧とする。笑顔で自己に向き合える強さが、Engagement Tribeの飛躍を支えている。
橋屋が率いるEngagement Tribeがつくる未来が楽しみでしょうがない。