2019年冬、ウォンテッドリーが開催した採用と組織づくりをリードするオンラインイベント「FUZE 2020」。
今回は、前身となった「Wantedly Award」からのリブランディング、およびオンラインでの視聴体験の作り込みについてイベントデザインの観点から紹介したい。
「FUZE」ブランドに込められた想い。
2020年に事業領域を拡大させたウォンテッドリーでは、例年通り「採用」をメインテーマに据え利用企業の表彰を行うイベントではなく、「エンゲージメント」に関連するテーマも扱う一大イベントを実施することになった。そしてコンテンツの多角化により従来のWantedly Awardとは異なる訴求が必要になったこと、オンライン開催による参加者増も見込まれたことからイベントのブランドを刷新することに。
そこでデザインチームが中心となり、登壇者・参加者の「熱」が新しいムーブメントの触媒となるという意味を込め”FUZE”(起爆装置)というイベントタイトルを考案した。イベントの顔となるロゴは、若々しくスポーティーなタイポグラフィと、イベントタイトルに由来する導火線のモチーフを組み合わせてデザインされている。
FUZE 2020 logo: Mao Sugaya (Design)
また、FUZE 2020は多種多様なゲストを迎える大型カンファレンスとして企画されていたため、イベントのテーマカラーにはウォンテッドリーのコーポレートカラーである青を基調に鮮やかな虹色のグラデーションを用いることで、多様なアイデアが混じり合う様子を表現した。
同時に「集まれ。感じろ。走り出せ。」のメインコピーを軸に熱気とインパクトのあるイベントスローガンを策定。このスローガンには「参加者がFUZEで得たフィードバックをもとに組織づくりのリーダーシップを発揮し、コロナ禍の閉塞感を打ち破ってほしい」という想いが込められている。
FUZE 2020 slogan : Ken Kasei (Writing)
FUZE 2020 website : Mao Sugaya (Design)
イベントの全体メッセージを軸に制作したOpening Movieでは、モノクロの都市風景にイベントのテーマカラーでもある鮮やかなグラデーションを掛け合わせることにより「現状からの突破口」を切り開く様を演出。映像・メッセージに合わせてBGMの盛り上がりを作ることで、未来へと向かう加速感を表現した。
FUZE 2020 Opening Movie : Yusuke Mochizuki(Creative Direction), Mao Sugaya(Art Direction), Buddha, Inc.(Production)
オンラインイベントの視聴体験をデザインする
オンラインイベントは離脱が起こりやすいという特性を加味し、いかにオンラインイベントと同じように「特別な空間にいる」と思わせるようなリッチな視聴体験を作るかが焦点となった。
その工夫のひとつが、イベント内のコンテンツ間の「つなぎ」の演出だ。待ち時間にもBGMを切らさないことはもちろん、各コンテンツの導入となる短いアタックビデオを制作。間延びした印象を与えないようメリハリをつけながら、イベント全体の世界観を統一した。
また、配信画面の構成においてはテロップデザインなどを通じて日常のオンライン会議とは異なる空間であることを示唆する必要がある。しかし同時にアニメーションなどの動的な表現を増やすと配信容量があがり、参加者の視聴体験を損なってしまう。
結果、FUZEでは最小限の表現を通じて画面上の情報を整理するというアプローチをとったが、今後イベントのオンライン開催が一般的になるに伴い、視聴画面のデザインにもより一層の洗練が加わっていくことが予想される。
イベントのメインコンテンツのひとつであるAwardセクションでは、画面越しでも賞の名前をしっかりと視認できるように各賞の名称を大きくあしらった賞状を制作した
新型コロナウイルスの影響が長期化する中、2021年もこうした小さな工夫の積み重ねを通じて「ニューノーマルに最適化された新しいイベントデザイン」の形を模索していきたい。