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転職先では人事を志望する、人事未経験の人たちへ。

2018年は、HR業務に携わる人たちによる本音を交えた情報発信が、Twitter等を通じて盛んに行われた一年でした。しかし、ウォンテッドリーの人事チームでビジネスTribeの採用を担当する小池 弾は、こうした情報発信熱の高まりとは裏腹に、「人事未経験者の間には、依然として“人事”というポジションに対する誤解が存在している」と語ります。

その誤解とは、一体なにか。採用担当として、人事へのキャリアチェンジを志望する方と会話をする機会も多いという小池が指摘するのは、意外にも「人事 = 目の前の社員を幸せにする仕事」という誤解でした。

この誤解は何を原因に生じているのか、そして、その誤解を解消した上で納得のいくキャリアを選択するためにはどうするべきか......小池との対話を通じて、考えていくことにしましょう。

その転職動機、ちょっと待った。

なぜ、人事の職務内容にキラキラしたイメージを持つことが間違いなのか。その理由の一端は、企業の中で専任の人事チームが組織されるまでの過程にもあると小池は語ります。

小池:
同じ人事として、「人が好きで、社員に貢献したい」「働いている人の支えになりたい」といった目的のために人事を志すというモチベーション自体はわからなくはありません。ですが、人事の職務領域は多岐に渡りますし、人事になったからといってその最初の動機が満たされるとは限りません。

それどころか、僕個人としては目の前の社員に貢献するために、人事というキャリアはかえって遠回りになると考えている。結論から言えば、もし本気で「組織をよくしたい」「メンバーみんなを幸せにしたい」と考えるのであれば、事業部サイドの責任者、ないしは事業に影響力の高い地位をまずは目指すべきです

このことについて掘り下げて説明するためにも、スタートアップ企業における「人事」の立ち位置について、大きく3つのフェーズに分けて考える必要があります。人事の職務内容は、常に事業部との関係性の中で決まる以上、その立ち位置もまた、事業のステージによって大きく変化するからです。

創業期〜成長期:専任の人事ポジションが存在しない

小池:
事業がまだ立ち上がりのフェーズでは、限られたリソースで試行錯誤しながら収益モデルを構築しなくてはいけません。もちろん、そんなフェーズでも人事タスクは発生しますが、「労務周りは外注化、組織づくりや採用に関しては創業メンバーのマンパワーでなんとか回す」というのが一般的で、専任の人事はチーム内に存在しないことがほとんどです。

しかし、事業の勝ち筋が見えてくるのに伴って、組織も少しずつ拡大をしていきます。それに合わせて追加の人的リソースが明確に必要となり、短期的な事業計画に合わせた人員補充が求められるようになります。

とはいえ、このフェーズでもまだ専任の採用担当がいる企業はそう多くありません。人事タスクを事業部内で兼務する人が出てきて、スタートアップならではのハードワークでなんとかやりきるというのが慣例ではないでしょうか。

拡大期:専任チームが発足するも、「社内受託」的役割に

小池:
さらに業務が拡大していくと、片手間で人事をすること自体が困難になります。事業部サイドの関心ごとは組織マネジメントやメンバー教育に移行し、結果として人事タスクの中でも特に採用に関する業務を専任で受け持つ人員が必要となります。

このフェーズになってようやく採用に特化したチームが組織されますが、その業務内容は、日程調整や候補者フォローなど、「採用を回す」ためのオペレーションがほとんど。その結果、事業部の人員計画に対するアウトソース機能として、事業部サイドがやりたくないことを任されるだけの「社内受託人事」としての側面を強く持つことになるのです。

「組織をよくしたい」人が、事業サイドでリーダーを目指すべき理由

「社内受託人事」の実務内容は、HR業務にまつわるキラキラした幻想をあっけなく打ち砕くほどタフなもの。しかし、それはあくまでも「事業部の理解が足りない人事にはそういう仕事しか与えられない」という話。では、事業部の理解を深めるためにはまず何をすべきか? 小池の答えは極めてシンプルなものでした。

小池:
ここで最初の話に戻りますが、「組織づくりに貢献したい」と考えている人こそ、何よりもまず事業部における責任者のポジション、ないしは事業に影響力の高い地位を目指すべきだと僕は考えています。

これは逆説的に聞こえるかもしれませんが、「事業があるところに業務が発生し、業務を遂行する能力を持った人が集まって、組織やチームが形成される」という企業の成り立ちについて考えれば、実は非常にシンプルな話だとわかります。事業が成功するということは、すなわち組織が成功するということと等しい。ということは、事業をよくする意識を持てないと、組織をよくすることなんてできないんですね。

ともに働くメンバーに最短距離で貢献するという目的を掲げている人こそ、事業部サイドでリーダーシップを発揮してほしい。そして、メンバーが生き生きと働くための目標を設計し、それに基づいて適切な評価をすることで、組織に成功をもたらす立場になってほしい。それこそが、目の前の人たちに向き合う上で最も大切なことだからです。「社内受託人事」として働いている限りでは、到底そのステージには上がることができません。

事業部も採用のオーナーシップを発揮する時代

小池:
多くの人が「人事=会社にいる人たちを幸せにする仕事」だと誤解しがちですが、実際はそうではないケースも多々あります。「目の前の人たちが幸せに働ける環境」を作りたいという目標と、採用のオペレーションをひたすら回す「社内受託人事」としての実務内容とは往々にして乖離してしまうものだ、というのがその理由の1つ。

そして、強い事業部を作れるリーダーこそが「メンバーの働く環境を作る」役割の中心にいるべきであり、目の前の採用課題についても、事業部サイドと人事との間で短期目標を共有した上で共にコミットした方が成果が出やすいというのがもう1つの理由です。近年では、事業部がメンバー採用についてオーナーシップを持っている企業が増えていることも、それを裏付けていますね。

では、人事は必要ないのか?

ここまで、事業部こそ組織づくりの主体だと語ってきた小池。では、事業部との関係において、人事部門にはどんな役割が生じることになるのでしょうか。

小池:
では、人事は事業部に付随するオマケ的なポジションなのかといえば、決してそうではありません。事業部視点での組織づくりには「短期的な視点に陥りやすい」という欠陥があるからです。要は、目先のリソース不足に振り回されて、ヘッドカウント的な思考に陥りやすいということですね。最も数字責任を追わなければいけない組織だからこそ、長期視点での組織づくりへの視点が欠けてしまうのは、ある程度仕方がないことでもあります。

そこでようやく、組織づくりにおいて「人事」というポジションが、本質的な意味において必要とされることになります。何故ならば人事とは本来、中長期で持続する組織づくりを行うためのプロフェッショナル集団であるからです。

もちろん、事業部の直近のニーズに応える採用活動が行えない企業に未来がないのも明確です。だからこそ、人事も「事業の成功」のために短期視点では何が必要かを理解した上で、事業ミッションの実現に向けた組織のデザインに中長期的視点で取り組むような、異なるタイムスケールを行き来しながら施策をうっていく柔軟性が求められることになります。

どちらにせよ、「事業の本質的な理解」が必要な人事という仕事においては、事業部の理解を欠いたまま人事タスクを請け負うようでは、その本質的な役割を担えるわけがありません。繰り返しになりますが、転職して人事になりたいと思っている人は、最初から人事というポジションに固執しすぎず、まずは事業部でスタートし、仲間との成功のためにバリューを発揮することを目指してみてはいかがでしょうか。

編集後記 〜もっと人事に優しくなろう〜

小池の語る言葉の節々から感じられたのは、「人事という仕事は“優しさ”だけでは成立しない」という事実。ですが、ともに働くメンバーの一人として、小池の優しさを噛みしめる瞬間が数え切れないほどあることも、ここに付記しておきます。

幸いなことに、ウォンテッドリーのビジネスTribeには、全国各地の人事部門で奮闘する小池のような採用担当者をサポートするという、素晴らしい仕事がたくさん! 今後もWantedly Blogを通じて、その仕事模様についてお伝えしていきたいと思います。

(犬)

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