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新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、多くの会社がリモートワークへの移行を余儀なくされています。しかもこの4月は、新年度を迎え、ちょうど新入社員の研修期間とも重なりました。
人材育成は対面であっても難しい課題。それを今年はリモートで、ついこの間まで学生だったビジネス未経験者が対象となると、途方に暮れてしまいそうなほど難度が高く感じられるのでは?
そんな中、「私はむしろリモートでよかったと思う」と話すのは、デジタルエージェンシーTAMで新人デザイナー育成を担っている豊田久美子さん。
この春に入社した渡辺美有さんを、たった3カ月という短期間で、しかも一度も会うことなく一人前に育てるためのカリキュラムを作成し、手応えを感じながら進めているそうです。
今回はそんな豊田さんに、TAM流の「リモート人材育成」の中身について、渡辺さんと、チームのオンボーディングを支援している宮原楓子さんを交えて、話を聞きました。
「先輩の圧」を感じさせない? リモート人材育成の利点
ーどのような準備をして、新人研修をリモートへと移行しましたか?
豊田 当初は千葉在住の渡辺さんに大阪オフィスまで来てもらい、研修を受けてもらうつもりでした。1カ月分、マンスリーマンションもすでに押さえていたんです。
それが直前の3月末にリモートへの移行が決まり、そのまま研修が始まることに。結局、このインタビューの実施時点まで渡辺さんとはお会いできていません(苦笑)。
移行が決まり、まずは急いで渡辺さんの自宅にパソコンのモニターを送りました。事前に東京オフィスに送ったつもりだった課題書籍が届いてなかったというトラブルもあったんですけど。
それと、デザイナーは素材画像やデザインファイルなど容量の重いデータをあつかうので、外づけハードディスクも2つ送りました。1つはバックアップ用、もう1つはデータ管理用。コロナの事態が収束したら、作業拠点が自宅から大阪・東京オフィスに変わることも見越して軽量なものを。
ー率直に・・・・・・リモートでの新人研修はとても難しそうに感じるのですが。
研修が始まってまだ2カ月しか経っていないので、そのことが渡辺さんの成長にどう影響しているかは分からないのですが、実は、今となっては「むしろリモートでよかったな」と感じているんです。
まず、分かりやすくこれまでとの違いでいうと、Zoomのようなビデオ会議だと「画面共有」ができますよね。これが新人研修でとても便利なんです。
これまでは、新人の席まで行き、イスを並べてモニターを指差したり、口頭だけで伝えきれない部分は後輩のマウスを手にとって動かしたりしながら、教えていました。
ただ、そのやり方だと先輩の顔色を伺いながら、少し要素を動かしては「これで合ってますか?」「こうですか?」と自分で考えなくなってしまう。
また、力を発揮できないどころか、ミスも起こって当然。今では自宅にいながら、相手の画面を見たり、自分のマウスカーソルを操作したりして、「先輩の圧」をかけずに教えられるのはいいですね。
それに対面だと、ダメ出ししたあとも隣り合って作業しないといけないじゃないですか。先輩としても新人としても、私だったら気まずくて耐えられない(苦笑)。
「ああ、今私に言われたことできっとモヤモヤしているんだろうなあ」「ちょっとどこかで時間を作って明るい話題でフォローしないと」みたいに変なことを考えてしまいます。
これがSlackのようなチャットだと、ビデオ会議でダメ出しをしたあともそこまで気まずくならずに会話できる。渡辺さんが課題に取り組んでいるときは、私は他の作業もできますし。
ーリモートで研修を受けてみて、渡辺さんはどう感じていますか?
豊田 私がいたら、答えにくいよね(苦笑)。
渡辺 大丈夫です(笑)。私も「リモートになります」と言われて、最初は正直どうなるんだろうと思っていたんです。
特に豊田さんのような先輩が、近くに、見えるところにいるわけではないので、なにか課題でつまずいたことがあったとしても聞きにくいのかな、とか不安を感じていました。
だけど、いざ始まってみたらそんなことはなくって。Slackだと簡単に聞けるし、それに一日の終わりに一度、豊田さんが直接話す時間を設けてくれているのもいいなあと感じています。
私には対面での研修との比較はできないけれど、あんまり「リモートだからどうこう」ということは、よくもわるくも意外とそんなにないのかなあと。
育成カリキュラムは「KPTA」で泳ぎながら変えていく
ーどのようなカリキュラムで研修を進めているのでしょうか?
豊田 デザイナー育成のカリキュラムは、リモートへの移行が決まる前までにある程度組んでいたものを少しカスタマイズしただけなので、「リモートならでは」みたいな内容ではありません。
研修期間は3カ月を想定。「3カ月でクライアントと協働できるデザイナーになる」を目指して、毎月テーマと課題を設けて進めています。4月、初月のテーマは「仕事の流れを知る」でした。
いきなりデザインを作るのではなく、クライアントのWebサイトを実際にさわって、サイトマップに落とし込み、サイト全体がどんな構造になっているかを理解してもらうことから始めました。
その後、サイトの更新コンテンツを制作課題にし、SketchやXD、Photoshopなどのデザインツールの基本操作や、BacklogやinVisionを使ってチームメンバーとやりとりする方法を徐々に覚えていってもらい、なるべく早く実案件にふれることを目指しました。
そうやって研修を進めていく中で、「こういうところに気がつくんだ」「こうやって色つけして人に伝えようと思うんだ」とか、渡辺さんのデザインセンスや独自の視点など、気づかされることがたくさんありました。
一日の終わりには、毎日30分、「KPTA」というフレームワークにのっとって、二人で振り返りをしています。
「KPTA」とは、Keep(続けること)・Problem(問題点)・Try(試してみたいこと)・Action(次の計画)の略で、続けるうちにできることが増え、問題点もレベルアップしていくんです。
次の2カ月目は、「実践を重ねて、自分の引き出しを増やす」をテーマにしました。バナー広告を30本分模写してもらったり、クライアントとの実際のビデオ会議に同席してもらったり。
渡辺 毎日の振り返りでフィードバックをもらうことで、自分のデザイン力には今なにが足りないのか、知ることができます。
振り返りでは雑談もしていて、豊田さんから「経験が大事。今は悩んでも仕方ないよ」とアドバイスをもらって、「今はとにかくいろんなものを見て、自分なりにやってみよう」と思えました。
豊田 渡辺さんはこれからの人。これからよくなる可能性しかないじゃないですか。どんな失敗もプラスに捉えてもらえたらなによりです。
3カ月目のテーマは今のところ、「リードデザイナーとしてプロジェクト全体の流れを習得する」にして、クライアントのサイトのリデザインだとか、新規案件に擬似的に参加してもらおうかなと。
ただ、前に一度、渡辺さんがプライベートで作った作品を見せてもらったことがあって、一旦仕事を離れるととても自由なレイアウトを考えることができるんだと知って、それが面白かった。
いつかは渡辺さんの持ち味を取り入れたサイトも作ってもらいたいと思っているので、毎月のテーマや課題の内容は、そのときの彼女の状況を踏まえて、柔軟に決めていくつもりです。
カリキュラムって一度作り込んでしまうと、それをこなすことが目的になりがち。新人がつまずかないよう、先回りして細かく準備をすればするほどこなしたくなるもの。
そうじゃなく、カリキュラムは「泳ぎながら変えていく」のがいいんじゃないかなと思っています。
分からないときは「分からない」と言えるように
ーチームのオンボーディング担当としてはどのようなことを意識していますか?
宮原 渡辺さんのような新卒社員の場合、会社でなにかをすること自体、はじめてのこと。緊張しすぎずに伸び伸びと過ごしてもらうためにはメンタル面を支える場づくりが大切なのでは、と思っています。
私自身もTAMに入社してまだ半年ですが、大阪で研修を受けたとき、先輩の温かさにふれてすごく安心したんです。
なので、今後メンバーや案件が増えてチームの規模が大きくなっても、渡辺さんのように新しく入ってくるメンバーが安心して各々の強みを発揮できるように、サポートする仕組みづくりをしていきたい。
豊田 リモートであっても、渡辺さんを迎え入れる雰囲気を作ろうということで、とりとめもない話ができる場として「よもやま会」という雑談の会を開いたりしてくれましたよね。
それと、いろんなメンバー同士で「オンラインランチ」をする場も設けてくれました。大阪オフィスと東京オフィスの物理的距離を超えて集まれたのは、リモートならではでよかった。
渡辺 たしか私が初めて参加したオンラインランチは、同じチームの女性メンバーで集まりましたよね。
豊田 そうそう。Zoomに部屋の中が映り込むのが気になるし、デリケートな話も気軽に話せたらということで、あえて男性メンバーには外れてもらいました。
渡辺 そういう気づかいにはとても助けられました。みなさんと話せたおかげで、チームはもちろん、会社全体の雰囲気もつかむことができてありがたかったです。
宮原 それはよかった!TAMでは毎日Slackで日報を共有しているのですが、渡辺さんはいつも、身のまわりで起きた面白い出来事なども積極的に書いてくれていて。私自身、毎日楽しみに見ていますし、他の先輩もよく反応して盛り上がっています。
直接顔を合わせづらい環境の中でも、こうしたやりとりが毎日のちょっとした雑談のいいきっかけになっているかもしれませんね。
日々の積み重ねでお互いの人柄を知り、距離感を縮めることで、なにか困ったときに自分一人で無理やり解決しようとせず、分からないことは「分からない」と気軽に相談できるチームにしていきたいと思っています。
「顔が見えない」不安が募ったときこそ本人と話す
ー先輩として「相手の顔が見えない」ことで苦労することはなかったのでしょうか?
豊田 ありましたよ。リモートだと、ビデオをオフにしている間は相手が何をしているか分からないじゃないですか。
だから、「課題終わりました」と急に言われたときのために、「常に次の課題を用意しておかなくては」「渡辺さんを暇にさせてはいけない」と、そればかり考えていました。
それに、渡辺さんを疑っていたわけではないんですが、「課題をちゃんとやっていなかったらどうしよう」みたいな、起こっていないことへの不安が浮かんできたこともあって。
それで一時は、自分の仕事と人材育成の仕事とで一杯一杯になって、むしろ私のほうがテンパってしまったことも・・・・・・(苦笑)。
それが振っ切れたのは、4月半ば、研修が始まって半月が経ったころでした。
一日の終わりの振り返りで、渡辺さんに「最近、課題の量はどう?」って聞いたら、「大丈夫ですよ」と。課題が早く終わった日は自習しているんだと、最近のデザイントレンドをまとめたエバーノートを画面共有で見せてくれたんです。
豊田 「もしサボっていたら」とか、ネガティブなことは考え始めたらキリがないですし、そもそも離れているから、無理やりやらせることもできないじゃないですか。
だったら、相手が新人であろうと経験者であろうと関係なく、相手を信頼して進めたらいいんだと。先輩として焦りすぎない心構えがリモートでは大切だと思います。
この歳であれなんですけど、私、人と話すのが少し苦手で・・・・・・。ビデオ会議をつないでも、「あんまり話さない子だったらどうしよう」とか、勝手に想像して不安になるくらい(苦笑)。
だけど、実際はまったくそんなことはなくて、渡辺さんとは毎日振り返りでいろいろ話せて、人柄も分かっているつもり。
よく考えてみれば、振り返りだって、リモートだから毎日やっているのかも。これが対面だったら、常に隣に座っているのに、さらに一日の終わりに振り返りまでやるなんて濃すぎます(苦笑)。
デジタルネイティブは「大人な若者」が多いから気をつけて?
ーデジタルネイティブ世代の渡辺さんと接するうえで意識していることは?
豊田 当たり前ですけど、まずは「上から目線」にならないこと・・・・・・。
以前は「ちゃんと先輩らしくしないと!」と思っていたんです。だけど、今はまだ私のほうが知っていることは多くても、これからどんどん吸収して、自分のボロがすぐに出てきてしまうだろうし。
それに、今の若い人たちって自分が若いときと比べて明らかに賢くないですか・・・・・・?(笑)。
情報を得るのが速くて、私が知らないこともたくさん知っている。研修でも、アプリの設定とかもっと戸惑うのかなとか思っていたのに、なんでもスマートにこなしていてすごいなと。
宮原 たしかにデジタルネイティブ世代の人たちは、肝が座っていますよね。
私だったら、結構人がいるSlackだと、メッセージ一つ投稿するのに緊張するんです。文章を緻密に考えて投稿したのに、後から編集して直したり。
でも、渡辺さんたちは昔からチャットというものに慣れているからか、ものすごく伸び伸びと使いこなしている気がするんです。
豊田 それに最近入社してくる若い人たちってちゃんとしてますよね(苦笑)。まだオンラインでしかやり取りしたことないですが、「ありがとうございます」「申し訳ありません」とか礼儀正しい。
「あの人にSlackで聞いてみたら?」とアドバイスしたらすぐに行動できるし。いつか超えられるだろうから、今変に先輩風を吹かせないようにって。逆に頼りないかもしれないですけど(苦笑)。
だから、他のチームリーダーと新人研修について話すときによく言うんです。「私たち、気をつけないとあかんな」って。
「なんでもできる子」と、本当は若いってことをこっちが忘れて、次々と難しい課題を与えたくなる。だけど、もしかしたら無理してこっちに合わせてくれているだけかもしれないわけで・・・・・・。
渡辺 そんなふうに思ってくれていたんですね(笑)。たしかにSlackでもどこでも、自分が「素」でいられることが多い気がします。それくらいオープンで、私も今の状況が気に入っています。
株式会社TAM クラウドサービス連携開発 デザイナー 豊田久美子
1979年大阪生まれ。求人広告制作会社から映像・WEB制作会社を経て、2009年よりTAMに在籍。EC・キャンペーン・コーポレート系など多くのWEBプロジェクトに携わり、現在では大規模サイトのUI設計・デザイン・ガイドライン制作に従事している。
株式会社TAM クラウドサービス連携開発 デザイナー 渡辺美有
1999年生まれ。物心ついた時から夢見ていたIT業界への就職とデザインや物づくり好きが相まってWebデザイナーを目指し始める。高校卒業後、専門学校で2年間Webデザインを学んだ後、2020年に新卒デザイナーとしてTAMに入社。
株式会社TAM クラウドサービス連携開発 ディレクター 宮原楓子
1994年生まれ。学生時代にオーストラリアのデジタルエージェンシーで働いた経験をきっかけに、WEBの世界へ。WEBサービスの企画や開発ディレクション、デジタルマーケティングに携わり、TAMではディレクションをメインで担当。三度の飯よりゲームが好き。
[取材・文] 水玉綾 [企画・編集] 岡徳之 [撮影] 三浦千佳・藤山誠