前回のインタビューはこちら
第一回目「管理栄養士からみたおいしい健康の魅力」について
第二回目「おいしい健康のサービス開発における管理栄養士の役割」について
ー第三回目は、おいしい健康のレシピ開発について聞いていきたいと思います。おいしい健康では、製薬会社向けのBtoB案件とユーザーさん向けレシピ開発がありますが、北村さんはどのような仕事をしているのでしょうか。
北村
私は主に製薬企業に向けて、患者支援を目的とした食と栄養に関するソリューション提案をしています。具体的には、製薬企業がMR活動で利用する食事提案リーフレットや患者さん向けのレシピ動画などのレシピ開発や食事提案をしています。
最初はレシピ開発がメインでしたが、最近は企画営業として、クライアントの課題やニーズをヒアリングし、テーマや切り口を考えてコンテンツを作り、どんな手段を使って拡散するかというコミュニケーションの部分までご提案し、制作物を作成して納品するところまで一貫して手がけています。
医療における患者支援・食事領域における専門性、医療業界や規制への基本的な理解、おいしい健康を背景としたDX・ビッグデータの活用実績が当社の強みなので、それを生かしたアウトプットを心がけています。
福尾
例えばレシピ動画は世の中にたくさんありますが、病態に合わせた専門性の高いレシピ動画はまだまだ少ないですもんね。
北村
そうですね。食と栄養のニーズは高いけれども、専門家として語れる人はまだまだ少ないと思います。コンテンツは医療の専門家から医療知識を提供いただきながら、私たちの持つレシピ開発の知見やデータを生かして作っているので、医療領域については私も学ぶことがたくさんです。
コンテンツの形は紙のレシピ資材、レシピ動画もあれば、リアルタイムのオンライン料理イベントの開催などもあり、常に新しい手法の開拓が求められています。ガイドラインもマニュアルもない中で、新しい取り組みを行う場合もあり、その難しさはありますが、そこがやりがいにも繋がっています。
患者さんが求めるものは食や栄養、健康に関する正しい情報です。そして、企業としては商品やサービスを通して健康価値を届けたいけど、どうしたらいいかわからない。そこを繋ぐのがおいしい健康の役割だと考えています。
ーおいしい健康のコンテンツとしてのレシピ開発はどのように行われているのでしょうか。どんな経験が求められるのでしょうか。
北村
私は献立作成から調理にも関わる給食管理業務から特定保健指導など、管理栄養士としては一通りの経験を経てからおいしい健康に入りました。ある程度の料理がこなせる自信もあったので、レシピ開発もなんとかなるかなと、やや軽く構えていたのですが、いざ関わると考えが甘かったことに気づかされました。料理の世界は自分が考えている以上に奥深く、その後はひたすら開発をしながら、色々なメンバーからフィードバックをもらい、試行錯誤を繰り返しながら、数年かけてようやく「かたち」が見えてきたかなという感触です。
開発には、日頃から食に対する興味・関心を高く持ちながら、インプットに励み、試作を重ねながら創意工夫することが大切で、そういったことが好きなメンバーが活躍しているな、と感じています。
ーレシピ開発に携わるメンバーはお料理や食が本当に好きでライフワークになっている人が多い印象です。北村さんはこれまでたくさんのレシピを作っていますが、そこで大切にしていることは何ですか?
北村
レシピを開発する時に大切にしているのは、「今日作りたいと思ってもらえるようなものが考えられているか」ということ。
社内のキッチンでレシピを見ながら、さらにその料理の試食もしているメンバーに「伝わらない」ことが起こるのは、何だろうとしばらく悩みました。
試行錯誤をするうちに私が欠けていた要素のひとつは、レシピを手にする「相手の気持ち」のイメージが出来ていなかったんだな、と後になって気づきました。
現在意識していることは、管理栄養士が教えたいレシピではなくて、それぞれのターゲットが誰なのかを想像して、その方が作って食べたいと思うレシピにすることを心がけています。例えば、一人暮らしで料理経験の乏しい高齢者の患者さんがスーパーで無理なく買うことができる材料でレシピが考えられているだろうか、など。こういうターゲットのイメージは、実際に患者さんに向き合われている医療関係者や専門家や、患者会の皆さんなどから定期的にヒアリングして情報を得ています。そこをベースに常に自問自答しながら、ターゲットの方にあうレシピに落とし込んでいきます。
福尾
管理栄養士の知識は付加価値ではあるけど、それだけでみんなが食べてくれると思ったらちょっと違う、ということはありますよね。
北村
そうですね。知識や栄養面を全面に出すのではなく、ターゲットの方に響くポイントをしっかりレシピに取り入れて伝えることが大事だと思います。さらに、おいしそうな盛り付け、写真やインパクトも大切です。そういった視点を取り入れるため、料理研究家の先生と一緒にレシピ開発をしたり、先生方が持つレシピ開発のコツを取り入れるようにしていますし、料理編集の経験のある方を募集しているのもそこに意図があります。管理栄養士は必ずしも料理のプロではないので、料理のプロと栄養のプロがコラボレーションすれば、おいしい健康の目指す「おいしく」て「健康」なレシピに進化させられるのではないかと、様々な視点を取り入れながら、工夫を続けています。
杉林
病院では、栄養価の数値合わせにプライオリティが置かれ、料理を通して伝えたいことや背景を考えるということはしていませんでした。その感覚のままユーザーさん、患者さん向けのレシピ開発ができるかというと、そうではないですね。レシピ一つ一つのおいしさ、魅力をとことん追求する姿勢が大切です。
福尾
難しいけれど、ユーザーさんや患者さんにとって、ちょうどいいものを持って来れることが大切ですね。盛り付け、写真などの見せ方も大事ですし。なので、私も料理に固執せず、洋服やインテリア、お花など、幅広く興味関心の幅を広げるようにしています。
ー次回の第四回目は最終回になります。おいしい健康が考える管理栄養士の未来について語っていきたいと思います。
次のインタビュー記事はこちら→第四回「おいしい健康がつくる新しい管理栄養士のかたち-”Data nutritionist”」について