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アプリ『Mirrativ』は、スマートフォン一台で配信を楽しめる、ゲーム配信プラットフォームです。そして、その配信体験をより楽しむための機能のひとつが、3Dアバター機能『エモモ』です。自分の好みの衣装に着せ替え、視聴者さんとの交流をより豊かにするエモモは、『Mirrativ』の要の機能ともいえるでしょう。そんなエモモを作る現場と3Dデザインチームについて、3Dデザインチームのマネージャーである下原雄大と、3Dデザイナーの加藤準也が語ります。
●下原 雄大 / Yudai Shimohara
大阪芸術大学を卒業後、株式会社DONUTSに新卒入社し、3Dデザイナーとしてゲーム運営・新規開発に従事。
2018年12月にミラティブにジョイン。現在は3DチームのMGRとしてマネジメントや新規開発を担う。
●加藤 準也 / Junya Kato
株式会社白組にて、フルCG映画制作部に10年在籍し、モデリングとコンポジットをメインにプロジェクト参加。主な作品は『STAND BY ME ドラえもん』『シン・ゴジラ』『ドラゴンクエスト YOUR STORY』等。2019年6月にミラティブにジョイン。3Dデザイナーとしてアイテム制作や、ディレクション、イベント制作等を担う。
目次
- コミュニケーションツールとしてシナジー効果を発揮するエモモ
- ユーザーさんの個性を発揮できるように――エモモ作りの現場
- ミラティブの3Dデザイナーが感じる、他にはない魅力
- 変化を楽しみながら、ユーザーさんがより自分らしくなれるエモモを目指して
コミュニケーションツールとしてシナジー効果を発揮するエモモ
――はじめに、エモモとはどんな機能なのか教えていただけますでしょうか。
下原「エモモはアプリ『Mirrativ』のユーザーさんが使える3Dアバターです。2017年ごろから出てきていたVTuberブームの流れを受け、顔出ししないでゲーム配信できる『Mirrativ』の強みをよりわかりやすく伝えよう、という狙いから作られました」
加藤「海外プラットフォームに比べて、日本の配信者さんは顔出しに抵抗がある人が多いと思います。エモモは日本に馴染んだアニメ風のキャラクターデザインにしていることもあり、そうした日本のユーザーさんの配信にもマッチしていると思います」
下原「そうですね。大前提として、エモモはアバター機能というより、コミュニケーションツールなんです。まったく姿が見えない相手とのコミュニケーションよりも、配信者さんの姿がそこにあって、モーションや表情が加わっているほうが、視聴者さんは感情やメッセージを受け取りやすいですよね。エモモは『Mirrativ』のユーザーさんのコミュニケーション体験を豊かにする手法として開発されています」
――エモモがいることで、どんな効果が生まれていますか?
下原「最近はエモモのアイテムが“思い出”になっているのかな、と思います。エモモのアイテムの一部はキャンペーンやイベントに参加することで入手できるのですが、それは配信者さんとその視聴者さんが協力した証ともいえるんですよね。いわばエモモがユーザーさんのナラティブ体験を形作っているのかもしれません」
加藤「そのとおりですね。あと、ゲーム配信できることが『Mirrativ』の主な機能だと思うのですが、エモモに強く興味をもって、そのために配信を始めてくださる方もいることが僕はうれしいです。自分の好きな衣装やアイテムがそろってくると、よりエモモを自分好みにしたい気持ちが生まれてくるので、それが配信のモチベーションになる配信者さんも一定数いますね」
下原「うん、うん。それで、結果的にエモモが配信レベルを上げてくれるんですよ。ただテキストが流れる配信よりも、かわいいエモモがいるほうが魅力的なコンテンツになりますから。それは実際の数値にも結果として出ていて、エモモの衣装にこだわりがある配信者さんのほうが、サムネイルを見て配信を訪れる視聴者さんが多いんです」
――エモモには配信者さんに安心感やモチベーションを醸成したり、配信のコンテンツ力を高めたりと、さまざまな効果があるんですね!
ユーザーさんの個性を発揮できるように――エモモ作りの現場
――エモモを作っている3Dデザインチームの体制について教えてください。
下原「マネージャー兼テクニカルアーティストとして僕がいて、エモモの動きを作るモーションデザイン担当の方が2名、衣装やアイテムの3Dモデルを作る方が8名という体制で社内のチームを組んでいます。加えて、外部で3Dモデル制作に協力してくださっている方がいます。
エモモの衣装・アイテムは毎月約140点リリースされています。この数量をリリースしつつ新たな表現に挑戦していくため、社内外でうまく連携しながらリソースを確保している形です」
――3Dデザイナーの具体的な仕事の内容をお聞きしたいです。
加藤「イベント用のエモモのアイテム制作が主な仕事です。ただ衣装のモデリングをするだけではなく、手から火が出るなど動的なエフェクトも作っているので、さまざまな技術を組み合わせて表現していきます。
デザインの過程では、衣装デザイナーさんの三面図を見ながら表現したいイメージを質問して、3Dにしたときにどんな表現が最適か考えたり、僕のほうからデザインを提案したりと、チーム内で試行錯誤しながら進めています」
――エモモを3Dデザインするときに難しいことを教えてください。
加藤「衣装それぞれの着せ替えがうまくいくように調整するのが難しいです。例えば、トップスとボトムスの組み合わせを変えてもはみ出さないようにする、帽子をかぶってもツンツンの髪型が飛び出さないようにする……といったところですね。
すべての髪型や衣装の枠組みを制限してしまえば、これらの悩みは解決しますが、一方で表現の幅は制限されてしまいます。ユーザーさんのクリエイティビティや個性を阻害してしまわない仕様を目指して、日々工夫を重ねています」
下原「せっかく頑張って衣装を手に入れたのに、自分が気に入っているパーツに合わなかったらショックですからね」
加藤「そうそう。あと、視聴者さんからプレゼントされるというパターンもあるので、せっかくいただいたのにつけられない、という体験をできるだけ避けたいんです」
――なるほど。では、逆に3Dデザイン面でのエモモの魅力を教えてください。
下原「僕はモバイルゲーム制作の現場からミラティブに転職してきたので、ポリゴン数が多い点は魅力だと思っています。モバイルゲームでローポリのものだとおよそ数千頂点であるのに対し、エモモは約10万頂点。その分、表現の幅が大きく広がります。
この違いは、『Mirrativ』の場合エモモの描画だけに注力できることから生まれています。一般的なゲームは、キャラクターのほかに背景なども描画する必要があり、なおかつゲームのプログラムも処理しなければならないので、キャラクターに割けるリソースが限られるんです」
加藤「これは、キャラクターデザインに携わる3Dデザイナーとしてはとてもうれしいポイントですね。アセットをなめらかに制作することができるので」
ミラティブの3Dデザイナーが感じる、他にはない魅力
――エモモを作っていてやりがいを感じる瞬間を教えてください。
加藤「やっぱりユーザーさんが喜んでくださる瞬間が、何よりうれしいですね」
下原「そう、その瞬間を見られるんですよ。これは他ではなかなか体験できないことだと思います。
例えばゲームの場合ですと、ユーザーさんが手に取った瞬間を作り手が見る機会はほとんどありません。SNSで感想を検索して、ようやくユーザーさんの声を知ることができます。一方『Mirrativ』は、エモモを手に取った瞬間の喜びを配信者さんが配信してくれていますからね」
加藤「今までで一番うれしかったのは、僕がよく配信を見に行く配信者さんが、僕が作ったエモモのアイテムを気に入ってずっとつけてくれていたことです。もちろん僕はミラティブの社員だとは明かしていませんが、『ありがとうございます!って言いたい!』って思いました(笑)」
――すてきな話……。では、サービスとして面白さを感じているところを教えてください。
下原「多様性のあるサービスという点に面白さを感じます。『Mirrativ』ってなかなか一言で説明しづらいサービスですよね。ゲーム配信があって、エモモがいて、コミュニケーションを楽しむ場で。もちろん、ユーザーさんの楽しみ方も千差万別です。
最近はエモモRUNやエモバトなど配信しながら遊ぶことを前提としたオリジナルゲームもリリースして、さらに遊び方の幅が増えました。配信ありきのゲームというジャンルは、ここ数年でニーズが生まれてきたものですが、こうした新しい表現を自分自身が作り出していけることも楽しいです」
加藤「僕が入社したとき、『もっとカオスにしたいんだ』とCEOの赤川さんが話していたのが印象的でして。実際にエモモは衣装やアイテムが増えるにつれて、どんどん多様性が生まれて“エモモらしさ”みたいなものが消えていきました。
例えば、世に出ているほとんどのサービスやデザインは、一定の品質やブランド、“らしさ”みたいなものを担保しようとします。一方エモモはその枠さえも越えて、表現の幅を広げようとしているところが面白いと思います」
下原「確かに。担当するデザイナーによってエモモの印象が違いますよね」
――エモモの表現もサービスの振れ幅も広がって、楽しみ方がより多様化しているんですね。
下原「はい。最近はエモモから新たな文化が生まれつつあることもうれしいです。
ある配信者さんがエモモのモーションを活用して、オリジナル楽曲のMVを作成していたんです。この使い方は、正直僕らも想像していませんでした。こうした活用のされ方を目の当たりにし、文化として根付いていく手応えを感じました」
加藤「ファンアートの文化が盛んなのもおどろいていることです。エモモは固定のルックスがあるわけではないですが、そのときどきのルックスに愛着をもって、視聴者さんがイラストを描いたり、それを贈ったりしてくださっていることがうれしいですね」
変化を楽しみながら、ユーザーさんがより自分らしくなれるエモモを目指して
――今後エモモで挑戦したいこと、解決したい課題を教えてください。
下原「コミュニケーションツールとしての機能を強化したいです。現在エモモは、主に配信者さんの表現手段として利用されているのですが、今後はギフトに自分のエモモを表示する機能などを通じ、視聴者さんの顔としてもエモモが役立つようにしたいです。配信者さんと視聴者さん、双方のコミュニケーションをより楽しむための手段として、エモモを進化させたいですね」
加藤「僕はやはり、表現面での課題を解決していきたいです。組み合わせによって衣装が埋まってしまったり、はみ出してしまったりといった部分を調整し、ユーザーさんがエモモを着替える楽しさをもっと豊かにしていきたいです」
下原「そうですね。あと表現のところで言えば、もっと男性視点に立った“カッコよさ”も追求していきたいですね。今は全体的に“かわいい”に寄せているので。ただ、単にリアリティを突き詰めればいいかというとそうでもないので、バランスは難しいところです」
――では最後に、今後チームで共に働きたい人材像を教えてください。
加藤「仕事を淡々とこなすだけでなく、主体的に意見を伝えていける人のほうが向いていると思います。現メンバーもそういう人が多い印象です。
あと、変化を楽しめる人がいいですね。ミラティブはまさに成長期ですから、半年後には今とは違う状況になっていたり、また新しいことに挑戦したりしているかもしれません。それを楽しめるかどうかは重要ですね」
下原「僕も加藤さんと同じで、変化を楽しめるというポイントがまず浮かびましたね。加えて、今回お話してきたような多様性のあるサービスに興味があって、新しい価値を創ることに意欲がある人とは、ぜひ一緒に働きたいです」
加藤「一般的な3Dデザインの現場には、アートディレクターがいて、デザイナーがその指示に対して忠実に作るという流れが多いと思います。一方、ミラティブはクリエイタードリブンな組織なので、立場を問わず、全員が対等に意見を出し合います。その環境を活かしてより良いものを目指していける人が、ミラティブに向いていると思います」
ミラティブの大きな柱のひとつであるエモモ制作を通じ、新しい文化の種を撒いている3Dデザインチーム。ユーザーさんの表現や配信の魅力を支えるエモモは、今後コミュニケーションの幅をさらに拡げるきっかけとなっていくのでしょう。