今回は、2018年上半期にベストマネージャー賞を受賞した、経営企画室のマネージャー 柳沢 和徹のインタビューをお届けします。グッドパッチに入社するまで、デザインは表面を美しくするための装飾だと思っていたと話す柳沢が、グッドパッチでどんな気づきを得たのか。また、マーケティング会社から転職してきたからこそ分かるグッドパッチの魅力や、やりがいについても聞くことができました。
地球環境に関心を持っていた学生時代
中学生のときは地球環境問題に関心を持っていました。もともと生き物が好きだったこともあり、中学の卒業文集では「地球の医者になりたい」なんてことを書いていました。学びたいことが決まっていたので、中学高校と一心に勉強を重ねて、念願叶って環境問題を学べる大学に入学しました。「これがやりたい!」と思ったらずーっとそれを言い続け、追いかけ続ける性格なんです。
大学では学ぶことの楽しさを実感して、充実した毎日を過ごしていました。いわゆる受験のための勉強よりも、正解が決まっていない学問のほうが自分に合っていたのかもしれません。しかし、勉強していくうちに「政治や経済の力を使わずに、環境問題にはアプローチできないんじゃないか」と思うようになりました。ゼミに入るころには領域がかなり細分化され、化学や地学、生物などから専門をひとつ選ぶような状況になり「ちょっと違うかも」という感覚を持つようになってきました。情熱だけを燃やして入学した学生が、現実を見たという感じですね。
そんな中で私が選んだのは、環境情報学という領域です。
例えば、「○○という物質は人体に有害である」という情報があったとします。公的な研究機関がそれを言ったなら信憑性は高いかもしれませんが、インターネット上にそのような情報があった場合、ソースによっては必ずしもそれが信頼できるものとは限りません。
実際に薬品を混ぜたりして化学物質の毒性や分解の過程について実験をし、得られた結果とインターネット上の情報はどう違っているのか、それがなぜ発生するのかを突き詰めるような研究をしていました。
こうした研究の中で統計学を扱い、人の気持ちや行動のモデル化に挑戦することを通じてマーケティングに関心を持つようになりました。人がモノを買ったり、ブランドを好きになるという現象をモデル化できたら超おもしろいだろうなぁ、と思ったんです。
修士課程まで進学したのですが、そのままドクターまで進みたいという気持ちもありました。いろいろ悩んだ末に就職活動を始め、ご縁があってマーケティングリサーチの会社に入社することになりました。
新卒で社会に出て気づいた、チームの偉大さ
新卒で入った会社には、その後10年間在籍することになります。アンケートの集計部門にはじまり、M&A後の経営統合プロジェクトや人事、新規事業、経営企画など幅広く挑戦の機会をもらいました。海外赴任を含め、10回以上の異動を経験しましたが、これはなかなか珍しいケースだと思います。
僕の考え方の基礎を作ってくれたのは、最初の配属先での仕事です。ざっくり表現すると案件をたくさんこなして個人売上を上げる、というのが基本的なミッションなのですが、面倒なことが嫌いでミスも多かった僕は「機械に仕事をさせよう」という発想で、ちょっとしたプログラムを書き、ツールを作って作業を効率化しました。
せっかくなのでチームにこれを共有してみたら「チーム全体に貢献する仕事だ」ということでけっこう褒められたんです(笑)。自分一人のがんばりより、チームの力を高める仕事には何倍も価値があるということに気づかせてもらって、それ以来、組織づくりを意識するようになりました。
「小規模、未上場、IT系」で見つけたグッドパッチ
新卒で入った会社での社会人生活は本当に楽しく、今でも感謝していますが、10年間務めたタイミングで転職を決意しました。上場企業で複数の部門を経験し、深さよりも幅広さにやや寄った自分が貢献できそうな会社ということで、「まだ規模が小さく、今後上場を目指している会社」という条件で会社を探していました。そこで出会ったのがグッドパッチです。
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実はそれまで、グッドパッチのことはよく知らなかったのですが、「デザインの力を証明する」というミッションがシンプルにおもしろそうだったので入社を決意しました。僕のような、いろいろな部門を渡り歩いた人間は、会社の規模やミッションによっては、器用貧乏で使いづらい人材にもなり得ると思うのですが、グッドパッチはそこをポジティブに捉えてくれたんです。なので、組織のことでも事業のことでも、これから会社をよくしていくために期待されていることは全てやり抜こうと思っています。
デザインは、本質への道のりを作り上げる技術
グッドパッチに入るまでは「デザイン」という言葉の意味を完全に誤解していて、表面的な装飾のことだと思っていました。美術系のバックグラウンドを持っている人がやるものだと。でも、グッドパッチで仕事をしたり、社内のメンバーの働きぶりを見る中で、デザインは真の目的にたどり着くための道のりを設計する技術だと考えるようになりました。
意識をしていないだけで、実は誰もが日常的にデザインをしているんです。意図した成果を得るためのやり方を考える。何かをお願いして、人に動いてもらうための伝え方を考える。これらもデザインなのだと思います。
グッドパッチのデザインプロセスは現状を深く理解することから始まりますが、「本当の目的は何だっけ?」「今ユーザーは何を感じているんだっけ?」と考えることで、単にタスクとして処理するだけではたどり着けない本質を見つめるチャンスが得られます。グッドパッチのメンバーが日々のデザインワークの中で当たり前にしている会話の中に、10年働いても得られなかった気づきがあったんです。
異なる環境が、自分自身の幅を広げてくれた
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前職で使っていたPowerPointやExcel、メールや内線といったツールは、グッドパッチではほとんど使われていません。これに慣れるまでは少し苦労し、メンバーからはしばしば旧人類扱いをされています(笑)。一方で、ツールを介したコミュニケーションが中心になるとミスコミュニケーションが起きやすくなることもあり、「なるべく対面で話そうぜ!」という使い古されたコンセプトが思いのほか受け入れられたりもしており、個人的には双方のよい部分を実践できているような気もします。
グッドパッチに入って思うことは、本質的な議論をする機会が多いということです。フラットなカルチャーに支えられているためか、新卒などの若い世代でも自由に意見をぶつけ合い、「会社や上司が決めたから」「クライアントに言われたから」などの理由で思考を止めずに、本質を追いかけ続けるのがグッドパッチのメンバーの特徴であり、魅力だと思っています。グッドパッチで働くようになって、自分自身も物事に対する当事者意識をより高めることができたと思います。転職に求めていたことのひとつはこの新鮮さなので、よかったです。
これからはグッドパッチで、環境の変化に耐えられる組織基盤を作りたいと思っています。開発中の新規事業の立ち上げにも携わりましたが、そちらは以前インタビューでご紹介した中村や中込など、現場のメンバーに全て任せています。今後は会社としての重要事項にフォーカスしようと、代表の土屋と話して決めました。
日本ではデザインが狭義に捉えられ、そのポテンシャルをまだ完全には引き出されていない、ということは土屋が常々話しています。
我々がデザインのポテンシャルを引き出した時、世の中にどんなインパクトを与えられるのかを考えるとワクワクした気持ちでいっぱいになります。グッドパッチはまだまだ発展途上にある会社で、未熟な点も多いですが、次代を担う若い世代と「市場を創っていく」ことに挑戦できる環境はなかなかなく、非常にやりがいがあると思っています。