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「組織にいながら、地方で働く」TAMディレクターの”幸せな”ワークスタイル、リモートで首都圏・大企業案件に対応

クリエイティブ・テックエージェンシーTAMのディレクターを務めるお二人、田中航さんは北海道に、松田拓也さんは熊本にそれぞれ暮らしながら、東京など首都圏や大企業のクライアントとリモートでやりとりし、案件を進行しています。

都会での仕事を辞めて故郷へと戻った理由、リモートで案件を進行し、クライアントや社内メンバーとコミュニケーションする上で行っている工夫、そして「組織にいながら、地方で働く」のに適した人材像などについて、お二人に伺いました。

東京にしかない仕事だと思っていた

―まずは現在のお仕事について教えてください。

田中:私は主にWebまわりの大規模構築に携わるディレクターとしてのキャリアが長いので、今もそういった仕事をすることが多いです。

例えば、企業の7カ国にまたがる海外サイトをリニューアルするプロジェクトに昨年から携わっており、現地語でページを作ることも。

他にも複数の企業のサイト運用も行っていて、記事制作やSEO対策はもちろんのこと、クライアントとTAMをつなぐ営業のような動きをすることもあります。

手に職の付いたデザイナーやエンジニアではなく、私のようなコミュニケーションのハブになるディレクターが地方にいるのはめずらしいのかなと感じています。

株式会社TAMUNO ディレクター 田中航
北海道在住、30歳。北海道の大学を卒業後、東京都内のWebマーケティング会社で勤務。退職し、札幌にある制作会社での勤務を経て、TAMグループに2022年に入社

松田:私もディレクターとして、企業やブランドの主にEコマース支援を行っています。最近だと、D2CブランドのEコマースサイト立ち上げに携わっています。

株式会社OHTAM ディレクター 松田拓也
熊本県在住、30歳。神奈川県の大学を卒業後、都内のアパレル企業に就職し、EC業務に従事。退職し、熊本でのデザイン講師などを経て、TAMグループにに2022年に入社

―お二人とも一度は東京で勤務し、その後地元へ戻る決断をされたのはなぜでしょうか?

田中:元々、大学時代から北海道で働きたいと思っていたのですが、デジタルやクリエイティブな仕事は当時、地方には少なく、東京や大阪、名古屋など都市圏でないと見つからない、というのが理由で東京で就職しました。

それでもやはり、自分がずっと東京に住み続ける未来は見えませんでした。東京と北海道の気候が違いすぎたのが、私にはきつかった。「仕事のために東京にいる」みたいな、出稼ぎのような感じでした。

そのような状態でコロナ禍に突入し、約半年間、家にこもりっぱなしに。当時のクライアントもリモートになっていく中で、「家で仕事ができるなら、別に東京にいなくてもいいんじゃないか」と思うようになり、2020年にUターンしたんです。

松田:私も元々、アパレルの仕事がやりたくて東京で働いていました。だけどあるとき、父親から急に「母親が難病になった」と知らされて、「熊本へ帰る」という選択肢が現れました。

ただ、決断は簡単なものではなく、仲間たちは当時、東京で目指すものがあるのに、自分だけ戦線離脱するのは辛かった。でも、「本当に東京にいないとできない仕事なの?」と自問自答してみると、必ずしもそうでもないのかもと思って。

退職してUターンしたのを機に、アパレル企業に勤めていたときに携わっていたWeb構築について学び直したり、得意だったデザインの講師をしてみたり。TAMに入社するまでの3年間で、Webに関する知識やスキルを身につけました。

熊本に戻ったのは2019年でしたが、「地元に帰るというのは、すごくいい決断だったのかな」と、4年経った今、ようやく思えるようになりました。

―地元に帰ってよかったと思うのは、どんなときですか?

松田:家族の時間を楽しく過ごせるときですね。それはやはり、近くにいられるからこそですし。

対照的に、東京は働く場所であり、「戦場」みたいなイメージがあります。でも、だからこそ、良きタイミングがあれば、「またそこで戦うチャレンジをしたい」とも思っています。

田中:私も、兄弟や友人と会いやすくなったのはよかったなと思います。逆に、「やっぱり東京がよかったな」とは、あまり思わないですね。

東京にいたときは、「自分の未来予想図」を描きにくかったのですが、東京から一緒にUターンをしたパートナーと入籍し、家や車の購入など、将来のことをより具体的に考えられるようになりました。

だけど、これは結局、TAMでリモートであってもディレクターとして仕事を続けられているからこそ、そう思えるんだと思います。必要なときには、東京や大阪に出張させてもらっていますし、「自分だけ遠いところから仕事をしている感じ」がしないんです。

「ディレクターにリモートは無理」は思い込み

―クライアントとのやりとりが多く発生するディレクターとして、地方からリモートで働くことについて苦労はないのでしょうか?
 
田中:TAMに入社する前は、「クライアントと直接会わずにディレクターとしての仕事ができるのか?」と疑問に思っていました。が、今は、ディレクターはむしろリモートワークと相性がいいと感じているくらいです。

TAMのディレクターは、プロジェクトマネジメントも仕事のうちで、「プロジェクトを終わらせること」が、その役割。そのために、クライアントの相談に乗りながら、デザイナーやエンジニアの人に仕事を振って、進捗を管理するわけです。

私の場合、週5でオフィスに出社して社内メンバーとリアルで会っている空間だと、プロジェクトを進めにくいと感じたことがありました。プロジェクトがバタバタしているのに、「一旦いいや。今日は飲みに行こう」みたいなノリで、後回しにしたり。

リモートの働き方では自分自身の予定も管理しやすく、むしろプロジェクトを終わらせることにコミットしやすい。要は、「ディレクターってなに?」という問いに立ち返れば、「どこで働くか」はそこまで制約にならないと思っています。

もちろん、私も人と会うのは好きですし、クライアントと一度も直接会うことがないのはさすがに良くないと思っているので、プロジェクトの立ち上げのときなどは出張して訪問しています。それは、社内のメンバーやパートナーの方々も同じです。

―松田さんは、ディレクターとして、地方からリモートで働くことについて苦労はありませんでしたか?
 
松田:私の場合はむしろ、今のお話を伺って「えっ、ディレクターの仕事って人と対面しないとできないものだったの?」と思いました。

それは、TAMに入社する前、Web領域のディレクターとしての経験があまりにも少なかったからかもしれませんが、実際、「絶対にクライアントと会わないと進められない」と感じたことは一度もないですね。

プロジェクトが始まるときの顔合わせで、クライアントと一度は直接お会いしたり、進行する中で、必要に応じて出張したりはしています。TAMでは、そうした判断も自分主体でできるので、それはすごくありがたいですね。

―お二人ともリモートと「直接会う」ことをうまく使い分けているのですね。

田中:ディレクターとリモートは相性はいいとは思っているのですが、「地方にいる」ことをクライアントには感じさせないようにはしています。

これは別に、北海道に住んでいることを隠すわけではもちろんなく、「コミュニケーションのハブとなる人との物理的な距離が遠いこと」によって、クライアントを不安にさせないということです。

つまり、「いつでも会いに行けますよ」という柔軟性やフットワークの軽さを伝えることが大事。実際、今年の5月ごろは、新規クライアントとの打ち合わせのために、毎週大阪に出張していました。

その他にも、クライアントからのメールには即レスしたり、社内メンバーに対しても、Slackでたくさん反応するようにしています。「地方にいるんですね」と残念に思われたくないですから。

リモートでも出社でも関係ない、働くうえで大切なこと

―「地方からリモート」に向いている人など、適性のようなものはあると思いますか?

田中:逆に、若手社員など、まだ他の人の働き方を見て自分が学んでいくフェーズの人には、リモートワークは難しいのかなと感じています。

出社していれば、分からないことがあったときに、わざわざ質問しなくても、先輩のやっていることやその人のパソコン画面を見たら分かることもありますが、リモートだとそれは難しいですよね。それは、教える側からしても然り。

とはいえ、教わる側と教える側の相性の問題は、出社していてもありますよね。教わる側が質問しやすい状況を作るとか、教える側から声をかけるとか、心の距離を感じさせないようなコミュニケーションを取ることを意識しています。

例えば、TAMのSlackには「Bunpou」という社内Twitterのようなチャンネルがあるのですが、そこに自分が普段考えていることなどをざっくばらんに投稿するなど、「自己開示」をするようにしています。

他の人と物理的な距離があるからこそ、「自己発信」していかないと存在感もだんだん薄れていってしまいますし。

                   田中さんのBunpou

松田:そのとおりですね。私も、Slackのプロジェクトごとのチャンネルに思いついたことを投稿するようにしています。

リモートの場合、対面で会うよりどうしても相手の表情や感情が読み取りにくくなりますから、「自分が考えていることを相手に伝える」を意識的にやれる人は、出社という選択肢じゃなくても生きていけるんじゃないかなと思います。

それに加えて、「息抜きや集中力の継続」が上手な人はリモートに向いていると思います。人に囲まれていないと、自分のコントロールが上手くいかないことも。昼休みや散歩の時間を設けるなど、「ちゃんと休む工夫」は大切です。

―最後に、20代など若くして、お二人のように「地方で働く」を叶えたい人へのメッセージを。

田中:いや、むしろ、今の20代のような若い世代の人ほど、「リモートかリアルか」をあまり気にしていないのかもしれませんよ。

例えば、今の大学生とかって、リモートで授業を受けたり、映画やゲームにしても、同じ空間ではなく、友人とそれぞれの自宅から通信して楽しんだりしていますよね。

先ほど、松田さんが「えっ、ディレクターの仕事って人と対面しないとできないものなの?」とお話しされていて、それが今日一番の衝撃でした。「ディレクターは対面でないできないもの」という先入観が自分にはあったんだと気づかされて。

松田さんのお話に「たしかに」と思って、このインタビューの短い時間の中でも、自分の考えが変わりました。やっぱり、相手も自分と同じ軸や感覚を持って生きていると思って向き合うべきではないですね。

松田:「いろんな人がいる」というのは、地方やリモートで働いているからこそ、私も日々感じていたり、あらためて認識しているところです。結局は、「一人ひとりに合わせた働き方を考えていく」のが必要なんでしょうね。

田中:本当にそうですね。一人ひとりとちゃんと向き合って、考えて、お互いに対応しながらやっていくことが大事。それができれば、自分が地方にいようが、どこにいようが、だれとでもうまく働けるはずです。

                    松田さんとご家族

[取材] 岡徳之 [構成] 星谷なな

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