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「新NISA」社員の積立てを会社がサポート、新制度に込めた願いと「お金と幸せの関係」を語る

「新NISA」、今年2024年から始まった新しい制度で、読者のみなさんも一度は耳にしたことがあるのでは? 株式や投資信託など金融商品に投資し、それらを売却して利益や配当を受け取った場合でも、1,800万円を上限に非課税となる制度です。

クリエイティブ・テックエージェンシーのTAMではこの2月から、「毎月積立て20%上乗せサポート」制度を開始。その名のとおり、社員が新NISAで積立てをする際、会社が毎月の積立額の20%を上乗せするもので、すでに多くの社員が活用し始めています。

社員の資産運用を、非上場企業が会社としてサポートするケースはまだまだめずらしいですが、その背景にはどのような思いがあるのか? 代表の爲廣さんと、TAMで積極的に資産運用を行っている若手代表として立川翔大さんにお話を聞きました。

すでに社員の半数が始めている「新NISA」

ーー「新NISA」、盛り上がりを感じていますか?

爲廣 控えめに言って、「ダダ盛り上がり」じゃないですかね(笑)

立川 日本って「投資が根づいていない」みたいなイメージがあったと思うんですけど、金融市場に一気に資金が流入している、みたいな記事を最近よく見ます。

ーーお二人はどのような資産運用をされていますか?

爲廣 僕が投資を始めたのは3年前ですね。最初は右も左も分からなかったんですけど、「とにかくなんでも試してみる」ということで、株だけじゃなく米国債券を買ったり、ファンドを買ったりして、どれが得して、どれが損するのか、”授業料” を払って学んでいって。

それで3年くらい続けてきたんですけど、「投資の才能はあまりなくて、企業の個別株への投資ではなかなか勝てない」ことに気づいたので、今は新NISAとか投資信託に絞っています。時間もなく、基本放置したいので、積立てていくか、ファンドを買って長期間置いておくやり方です。

立川 僕の場合は、個別株の売買を繰り返すみたいなことをやっています。積立てに比べて、リスクは高いけど成功したときのリターンも大きくて、夢があるというか。

株式会社TAMTO フロントエンドエンジニア 立川翔大
1995年生まれ。業務系エンジニアを経て、2022年8月にTAMに入社。コーポレートサイト、LP、ブラウザゲームなど幅広いプロジェクトを手掛ける。2022年から株式投資を開始。中長期で個別銘柄に投資

ーー個人の新NISA活用を会社としてサポートするのはめずらしいのでは?

爲廣 そうですね、僕はあんまり聞いたことがなくって。

旧NISAのときから、「会社としてサポートできないか?」という話をもう半年くらいする中で、社員が新NISAで積立てる金額を給与から天引きして、そこに会社が上乗せしてサポートできるようにしている証券会社さんを見つけたんです。

それで、「毎月6万2,500円までは、会社が20%上乗せして積み立てることができます」という制度を始めました。また、どこの証券会社で新NISAの積立てをしてもサポートできる仕組みもGoogleフォームなどを活用しながら作りました。

新NISAの口座はあくまで個人のものなので、TAMを辞めても自分のもの。1カ月で止めるのも、30年続けるのも自由です。

立川 最初はびっくりしたというか。投資ってリスクがあるので、お金が絶対に増えるわけではないし、もしかしたら減るかもしれない。それを非上場企業が後押しするのはめずらしいなと。

だけどそこには、今の円安だったり物価高のせいで、給料の上昇だけではやっぱりお金が増えていく状況にはないよねっていう、爲廣さんからのメッセージがある。

爲廣 この制度を利用して、「自分の資産は自分で築いていってくださいね」と。

ーー社内の反応はいかがでしょう?

爲廣 この制度ができる前からすでに新NISAを始めていた人がたぶん50人くらいいて、これを機にさらに40〜50人が「始めます」と言っていて、実際にすでに20人弱が新たに始めました。

立川 TAMは資産運用をする人が多いイメージですね。「投資って難しい、分かんない、めんどくさい」みたいな、どうしてもネガティブなイメージがあると思うんですけど、会社がサポートすることによって、それが払拭される。かなりいい制度なんじゃないかなと思っています。

「資本主義の終わりの始まり」を生き抜いてほしい

ーーこの新NISAの制度を始めようと思った背景は?

爲廣 「新NISAが始まります。1,800万円までは非課税です。税金は取りません」、これって国策じゃないですか。

裏を返せば、「もう先のことは国も分かりません。インフレや円安が進んで、ますます格差が広がっていくかもしれません。そんなリスクがある中で、自分の資産は自分で築いていってくださいね。その代わり、税金は取りませんから」っていう、国からのメッセージだと明確に受け取りました。

立川 たぶんそのとおりだと思います。国も正直お手上げで、これからは株式だとか、不動産だとか、インフレでも価値が上がっていくものを持っていないと、相対的に資産が減っていってしまう。

「日本人は貧乏」みたいに言われますけど、実際にはお金持ちはお金を持っていて、持っていない人は持っていないという両極端な状況。投資している人とそうでない人の差が広がっていく今の流れについていきたいなら、「投資する」以外の選択肢はないという認識が、日本でも当たり前になりつつあるんじゃないかなと。

爲廣 TAMの理念に「モノもココロも幸せになろう。」というのがあるんです。

昔、(京セラ創業者の)稲森(和夫)さんとか、有名な経営者が「物心両面において従業員の豊かさを」って言うてましたよね。ちょっと言い方が堅いなと思って、25年前くらいに自分で言い直したんですけど。今回の制度は、その一環ですね。TAMで働くかぎりは、金融リテラシーを自分で身につけていってほしいなと。

大口を叩くつもりは全然ないんですけど、おそらく今って、資本主義の「終わりの始まり」かなと思っていて。(経済学者のトマ・)ピケティさんもベストセラーで、「資本主義では、資本のリターンが労働のリターンを上回り、格差が拡大する」って言ってましたよね。まさにそんな状況が日本にもとうとう来てしまうなと。

だって今は、IPOとかイグジットとか、株式を売却した人がお金持ちになるっていう、「株式資本主義」が顕著な社会じゃないですか。それが良いとか悪いとかじゃなくって、そういう人が影響力を持つ世界になっている。だったら自分たちも、「そんな世界でも堂々と道を切り拓いていけるようになっていこう!」と。

立川 まさに「勝手に幸せになりなはれ」っていうTAMの行動指針が今回の制度にも現れているなと思いますね。

これからお金で幸せになるために大切なこと

ーーお金の面で「勝手に幸せになる」ためのヒントがあれば。

爲廣 新NISAって、「5万円を1年間貯めたら60万円、30年間貯めたら1800万円だけど、それをコツコツ積立投資していったら、2〜3倍くらいにはなってるのとちゃいますか?」みたいな設計になっていると思っていて。

だから新NISAは「コツコツ積立てていってください!」という国の制度だと割り切って考えるといいと思っています。

積立投資のコツは「S&P500ファンド」とか「インドファンド」とか、浮き沈みが少し激しいものに定額積立を長期間していくと、株価が下がったときに多く口数が買えるので、タイミングさえ味方してくれれば株価の上昇フェーズで利益につながっていきます。短期にはまったく向きませんが。

個別株投資をやるんだったら、「100万円」だとかきちんと限度額を決めて試して、ギャンブルならすぐに止めて、そうでないならのめり込んで勉強して、投資家として成長していってください、と。個別株投資は「勉強しないなら止めておいてね」と社員に何度も言いました。

立川 前提として、「投資をして幸せになるのか、そうでないのか」というのはあると思っていて。

特に20代は、モノや体験にお金を使うことが重要な時期。だけど、投資をするとなると、コツコツ節約しないといけない以上、そういう体験ができない。その「若いときの貴重な経験」をどう捉えるかは、投資を始める前に考えないといけないと思います。

そういう若いときの機会を多少捨ててでも、30歳とか早い段階でまとまったお金を作りたいなら、個別株にベットして(賭けて)、1〜2年で1.5〜2倍のリターンを目指すのは、決して無理なことではないのかなと。

それに「短期で億を稼ぐ」というのは、労働ではほぼ不可能なんですけど、投資をやっているかぎり、なにが当たるか分からない。

もし投資をするなら、早いうちにリスクを取ったほうがいいのかなと。最悪、100万円を失ったとしても、若かったら働いて取り戻せばいいので。これが50歳とかになると、体力的、精神的にきついと思います。

結局、世の中で成功している人、起業家だったらお金を借りたり、インフルエンサーだったら顔出ししたり、どれもリスクだと思うんですが、それをやらないかぎりは自分の今の状況は変わらない。

せっかく国が後押ししてくれているので、少額でもいいので始めてみて、合わなかったら止める。小さいことでもいいので、自分の世界を変えられるようなことを

爲廣 経営者でも、インフルエンサーでも、投資家でも、共通しているのは、「リスクを取る」ということなんですね。

立川 そうだと思います。ただ、正しいリスクを取る必要があると思うので、投資であればインデックスは手堅いのかな、と思います。

「自分が取りたい選択肢を取れるようになるために」

ーー立川さんのまわりでも投資をする人は増えているのでは?

爲廣 立川さんは社内のSlackで「#個別株投資研究会」っていうチャンネルをやってくれているんですよ。そこに情報を投げてくれるんですけど、めっちゃ勉強になる。

「今日のこの大引けは調整が入ったせいですよ」とか、「今朝のFRBの発表ではCPIがまだ高止まりなので、利下げには向かわないでしょう」とか。「経済評論家かいな!」と思いますよ、すっごい助かっています。

立川 実際、自分と同じチームの何人かが投資を始めて、「とりあえず、NVIDIAの株を買っといたらいいんじゃない?」って言ったら、1年くらいで株価が2倍くらいになって感謝されました(笑)

爲廣 これから立川さんはどんなふうに働いていて、「仕事」というものにどう向き合っていきたいですか?

立川 ええと、これはあんまり爲廣さんに言うのはよくないと思うので、怒らないで聞いてほしいんですけど・・・(苦笑)

爲廣 いやいや、全然ええよ(笑)

立川 仕事だけやって終わる人生は嫌だなと、思っており、なので仕事も趣味も大切にしたくって。

プログラミングは好きなので、もちろん日々、仕事でレベルアップしていきたいんですけど、それと同時に、イラストを描く趣味の活動も好きなので、そっちもやっていきたい。

「週5日働いて、週末は休んで」だと、この人生寂しいなと正直思っているので、仕事は週3日くらいにして、その減った分の給料を投資で作ったお金でまかないながら暮らして、余生を過ごしたい、みたいな夢があります。

爲廣 めちゃめちゃアリありですよ。それこそが、「自分で自分の道を切り拓いていってください」っていう、僕のメッセージそのものですから。

TAMはそういう会社なんです。今みんな、「週5で働く」のが当たり前みたいになっているけど、全然当たり前でもなんでもない。「あんたの勝手」。会社が社員の一生を保証するわけでもないんやから。

逆に、僕は週7日働いていたいんですよ。それはお金がどうこうとかじゃなくって、お金があろうがなかろうが、「しんどいことも含めて仕事はおもろい」と思っているから、働きたい。

立川 経営者の方ってそういうイメージがあります。「仕事が本当に楽しいから、ずっと仕事をしていたい」みたいな。

つまり、自分が取りたい選択肢を取れるようになるために、お金を増やしていく必要があるんだと。その第一歩として、今回の新NISAの制度はとてもいいと思います。そして、その先で、社員がそれぞれ、人生の分岐点を迎えていくんでしょうね。

[取材・文] 岡徳之 [撮影] 藤山誠
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