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今が一番つらくて、ラクな日は訪れない? 仕事と育児の両立のリアル、TAM社員が赤裸々に語る

「女は家で家事育児、男は仕事に邁進」の昭和型役割分担で万事丸く収まっていた(ように見えていた)時代は記憶のかなた。「20代後半から30、40代くらいまでの子育て期と、働きざかり期がどうしても重なる問題」は、私たちすべてに立ちはだかり得る課題となりました。

今しかない子どもとの時間は何者にも代えがたい一方、わが子のためにも経済的な安定は欠かせないし、キャリアの構築やステップアップの最中で仕事にも手を抜けない。さらに働き方の変革により、子育て期とキャリアの模索期が重なるケースも増えてきています。

一人ひとりがいろんなベクトルに引っ張られながら試行錯誤するこの時期を、デジタルエージェンシーTAMで働く先輩たちはどう潜り抜けてきたのでしょうか? 子育てをしながら仕事での活躍も目覚ましいお二人に、赤裸々に語っていただきました。


株式会社TAM ディレクター 伏見ゆず
1980年横浜生まれ。エンジニア、NPO職員を経てWebデザイナーの道へ。前職はインハウスデザイナーとしてデザインから構築、運用など幅広く担当。TAM入社後はデザイン・コーディングから徐々にディレクションに業務の軸足を移し、第3子の産休・育休復帰後からはディレクター専業に。現在は主にコープこうべ様のDXプロジェクトでプロジェクトマネージャーを担当


株式会社TAM フロントエンドエンジニア 田力洋子
1981年福井県生まれ。新卒で車関連の会社へ入社しオートバイの完成車設計を経験。転職して2社目では半導体の生産装置の開発も経験。夫のシンガポール駐在のために退職し、家族とともに帯同。滞在中に興味のあったWeb制作の勉強をスタートし、縁あってTAMシンガポール法人のTAMSANへ入社。フロントエンドエンジニアとしてWordpressの構築、LP制作などに関わる。帰国して現在は時短勤務

子育て中のリアルなスケジュール

―お二方それぞれ、現在のお仕事と社会人歴、お子さんの年齢を教えていただけますか?

伏見 今、大阪オフィスでディレクターをしています。メインのお客さんはコープこうべさんで、DXプロジェクトのマネジメントをしています。

私は長く学生をやっていたので、今社会人15年目です。その間に、現在小5・小3・年中の3人の産休をはさんでいるので、キャリアとしては正味12、13年といったところでしょうか。前職在職中に2人、TAMに来てから1人産んでいます。

新卒からしばらくエンジニアとして、NPOやインハウスの職場などでWebの仕事を続けていましたが、2018年に3人目の産休から復帰したところで、専門性を変えようと思い、今のディレクターの仕事を始めました。

田力 私はTAMSAN(TAMのシンガポール法人)に所属しています。職種はフロントエンドエンジニアで、主にシンガポールのお客さんのLP(ランディングページ)やワードプレスの構築などを静岡からリモートでやっています。

社会人歴は約16年になります。前職退職後、夫の駐在に帯同するために現在小6・小2の2人の子どもを連れてシンガポールへ行き、現地でTAMSANに入社しました。


―お二人はお子さんがいながらスキルアップがすばらしいと伺っています。平日はどのようなスケジュールで過ごしていますか?

伏見 3人目の育休から復帰したあと、 ディープラーニングG検定上級ウェブ解析士の資格を取りました。もしかしたら、そのあたりを評価してもらっているのかもしれません。

ディープラーニングG検定は趣味的な感じなので置いておくとして、ウェブ解析士は「割と仕事になりそうだな」と思って勉強して、実際に仕事につながっています。「必要に駆られて」というよりは、「勉強したい!」と思って、ついでに資格も取った感じです。

最近は納期間際なので、結構仕事に振り切っています(笑)。朝子どもを学校に送り出したら仕事を始めて、夕食を用意する日は週の半分くらい。夜の6、7時台もミーティングが入るので、「食べといて」になっちゃったり。土日も半分くらい仕事をしちゃっているかも。

田力 私は子どもを学校に送り出してから、たいてい8時半くらいに仕事を始めますが、5時くらいには上がらせてもらっています。その後は家事をしたり、家族とご飯を食べたり、翌日の学校準備や宿題チェックをしたり。

子どもたちが小学校に入ってからは昼間は少しだけラクになりましたね。夏休みなど長期の休み中も子どもたち同士で遊んでいるので、私は仕事をしています。仕事がピークで焦っていたりするときは、夜8時半くらいからまた少し仕事をする日もありますね。

子育て、一番つらいのは「あのとき」

―一言で「仕事と育児の両立」といっても、フェーズや子どもの個性によって違ってくるかと思います。一番大変だったときやそれがどう変遷していったか、どんなことを覚えていらっしゃいますか?


伏見 2歳くらいまでが一番で、生活するのでいっぱいいっぱいになりますね。

一番きつかったのは授乳していたときかな。夜中もちょいちょい起きて授乳しますが、私が寝られたかどうかに関わらず朝は来て、仕事が始まる。子どももですが、私も風邪を引きやすかったし、仕事ができる時間が限られていました。でも、3人目のときは育休の最中に授乳を卒業してしまって、睡眠時間をとれる状態で復帰したので違いました。

田力 私はシンガポールに移住して、プログラミングの勉強を始めたころが一番大変でした

基本、小さい子って「かまってちゃん」じゃないですか(笑)。テレビも観ていてくれないし、一人で遊びも見つけられない。幼稚園に行っても昼過ぎで帰ってくる。上の子は小学校に行ってくれても、下の子が5歳になるくらいまでは手がかかりますよね。勉強もしたいし、仕事もあるし、やりたいことはいっぱいある一方、この小さい子の相手もしないといけないのに十分にできていないという罪悪感。

でも、小学校に上がってしまうと自分でタブレットも触れるし、そっちのほうが面白くなっちゃったみたいで。こちらから声をかけても反応が薄いし、友達が来ても一緒にゲームをやっているだけで手もかからない。仕事する時間もできちゃいましたね(笑)。

―そういった体力的な限界や、子どもの相手をしなければという罪悪感と仕事のジレンマにはどう折り合いをつけましたか?

伏見 そのときは、ひたすら必死すぎる感じで日々が過ぎていきました(苦笑)。

ただ、一番上の子の育児のタイミングでTwitterにハマり、そこで育児情報を仕入れたりもしましたが、それとは別に同じ業界の人の発信を見たりすることで、ある意味キャッチアップ的なことができました。今の仕事には、マーケティング的な情報が必要なんですが、それってTwitterとか日々の生活の中にこそ転がっているんです。

そういう意味では、「浅く広く」が求められるディレクターは、今の自分の生活に合っていると思います。そこに仕事を絞るまでの間にはいろいろ葛藤もあったし、子どもが小さいうちは夫と大喧嘩もしましたが。

田力 私はそのジレンマに折り合いは結局つきませんでした。

子どもが保育園に行っていれば、「夕方までママは仕事」と割り切れるのかもしれませんが、私の子は幼稚園に行っていたので、昼からは子どもの相手もしないといけないという思いも強くて。幼稚園だとまわりのママたちの多くが専業主婦なこともあって、「私は仕事をしなくては」という葛藤が常にありました。

でも、当時は対策というほどの対策も取りませんでしたね。よほど焦らないかぎり、勤務時間以外に仕事もしませんでした。それが、子どもが小学校に入って余裕が出てきて、その手の葛藤は自然となくなりました。

―そうした一番大変だった時期を越えてから今に至るまで、仕事と育児の両立はどう変化していきましたか?

伏見 実は、精神的には今が一番つらいんです(苦笑)。子どもが反抗期でめっちゃ大変…いや、しんどい。正解がないし、どうしたらいいか分からない。

子どもが小さいときって、やることは「お世話」と決まってるんですよ。今は、一人の人間にどう向き合うか、みたいな部分を求められるのがつらい、というか、難しい。感情的に怒ってしまうとこっちが自己嫌悪になったり。

反抗期の子どもは口も立つし、「子どもの言うこと」では済まされないようなすごく理不尽なことを言ってきたりもするので、「なんでそんなこと言うねん!」みたいになったり、判断が難しいんですよ。

たとえば、子どもがYouTubeで観ているコンテンツがちょっと心配な内容だった場合とか、それにどう向き合うかとか。怒る…まで行かなくとも、「なにかしなければ」と夫とも話すんですが、結論は毎回出ないです。

力でも子どもに敵わなくなってくるし、だからいろいろ「追いつかれてきてる感」がありますね。「家の中での自分の言動に気をつけないと」というのは、小さいときより思います。

お子さんが中学や高校受験をする友達なんかは、見ていると本当大変そうですよ。受験は情報戦でもありますし、親がしないといけないことが多い。子どもが大きくなって手が離れても、親の悩みや大変さの総量は変わらない気がします。仕事は「何をすべきか」が明確なので、むしろいい息抜きです(笑)。

田力 子育てにはそれぞれの時期の大変さがあって、「ラク」にはなりませんよね。子どもが家を出るまではこんな感じじゃないですかね。長いですよね(苦笑)。

仕事と育児の両立で「一番大切なこと」

―そうした時期を経ながら、ご自分のキャリアや今後の展望はどう変わってきましたか?

伏見 私は「自分には時間もスキルも足りていない」と思いながらやってきたんですが、最近はそんなこと言っててもしょうがないなと思ってきました。

60歳まで働くとして、まだ20年近くありますし、たぶんいつまでたっても「足りた」とは思えないんですよ(苦笑)。なので、自分に足りないことは置いといて、「今やれることをやろう」と思うようになりました。その意味で、「新しいことを避けずにやっていこう」とは思っていて。

それから、チームの中でも次世代を育てる役割が増えてきて、自分は「人を育てるフェーズ」に入ったのかなと思っています。トップを目指すよりも補佐のほうが自分には向いていることもあり、みんなが気持ちよく仕事できるように外堀を固めるというか。TAMには若くして優秀な人がたくさんいますが、そういう人たちのために環境を整えていきたいと思っています。

田力 私は「仕事をしたい」という思いは一貫しています。前職を辞めた後、すごく葛藤があって、やはり自分は仕事していないとダメだと思ったので。

Webの勉強をして、それを仕事にして、すごく面白いんです。ここ1、2年は関わるプロジェクトの規模もだんだん大きくなっていますし、自分なりのペースで成長はしているかなと。「ゆくゆくは人に頼らずに自分でアプリを作っていけたらいいな」と、そして、60歳を過ぎても仕事をしていたいので、新しいスキルを身につけられたらいいなと思っています。

でも、家庭とのバランスを見ながらですね。今も週末はパソコンを開かないとか、夕飯の時間になったら仕事は切り上げる、など心がけています。子どもはまだ「仕事だから」と理解してくれるないときもあり、私が「YouTubeばっかり!」と注意すると、「お母さんはパソコンばっかり!」と言い返されたりするので(苦笑)。本当はもう少し仕事をしたい日もありますし、自分で調整できたらいいなとは思うのですが、なるべく反面教師にならないように、という気持ちです。

―なるほど。そう考えると、子育て中かどうかに関係なく、「自分がどう働きたいか」という個人の課題になるのかもしれませんね。

伏見 それはすごくあると思います。子どもが手がかからなくなっても、今度は親の介護の問題が出てきたり、どのライフステージであっても仕事以外にいろいろ起こるわけで、子どもがいるかどうかは、実はあまり関係ないのかなと思っています。

結局、「自分がどうしたいか」なのかもしれません。私は仕事が好きだから仕事をしている。昔の親ってよく「お前のために働いている」と言いましたが、私はそれを子どもに言いたくないんです。あくまで、自分がしたいから仕事している姿を子どもに見せたい。

夫婦間でも常に腹を割って話すことが大切だと思っていて、たとえば今なら「10月の納品まではこの感じで仕事させて」みたいなことを伝えるようにしています。昔は夫が飲み会の予定を勝手に入れてしまったり、気になることがありましたが、「こういうものだから」とか「妻が我慢すればいい」とか思わずにその都度調整してきました。規範は置いておいて、自分はどうしたいかを考える。

うちは夫婦がどちらも仕事をしたい人なので、調整してイーブンにしておくことは大切だと思っています。「どちらのほうが稼いでいるから」とかは関係ない。だって、どのくらい稼げるかって、正直、能力や勤務時間と関係ないじゃないですか。勤める企業や業界と自分とのマッチング的なことで決まるものなので。

田力 私も、原動力はやはり「仕事をしたい」という気持ちです。仕事と育児の両立や、夫との分担をめぐってはいろいろ思うところがありましたし、今もありますが、とにかく「自分が仕事したいからやっている」ということを忘れなければ、そんなにストレスもたまりません。

―最後に、今子育てをしている人、これから子育てをする人たちにアドバイスをお願いします。

伏見 人生、何が起こるか分からないし、社会も変わります。子どもがどう育つかも、「出たとこ勝負」な部分もある。なので、どれだけ計画を立てても、計画倒れにしかならない可能性もあって、結局、構え過ぎずに飛び込んでやってみるしかないと思います。

田力 私は「子育てしながら仕事もしなきゃ」と気負っていたので、「仕事しなきゃ」ではなく、「仕事をしたら幸せになるから気負わずにとりあえず始めてみよう」と言いたいですね。

それから、出産や夫の駐在への帯同のように、なにかしらの事情で仕事を一度休まざるを得ない人もいると思うんですが、そういう方には「私のようにまたお仕事に恵まれたケースもあるので、諦めずに頑張って」と伝えたいです。

[取材] 岡徳之 [構成] ウルセム幸子 [撮影] 藤山誠
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