正社員かフリーランスか、ではなく、Anywhere。|きわ|note
正社員かフリーランスか。よくそれぞれのリスクがまとまった記事とか見かけますよね。私も以前はそんな記事を読んでは悩んでいた1人です。でもAnywhereという第3の選択肢を見つけたんです。今日はその経緯と入ってみてどうだったかを書こうかなと。 今年の4月に3年間務めた会社を辞めました。きっかけはGoodpatch ...
https://note.com/ki_b0u/n/na2014403e79a
Goodpatch Anywhere(以下、Anywhere)でUIデザイナーとして働く三浦貴和子。彼女は奈良県の南端に位置する大自然に囲まれた十津川村からUIデザインを手がけています。「デザインの力で人を幸せにしたい」という信念をもつ彼女は、Anywhereの未来を「デザイナーの働き方のロールモデルになって欲しい」と語っています。その思いが生まれてきた理由を訊いてみました。
もともとはデザイナーではなく生物学の研究者を目指していたんです。その夢を叶えるために大学進学を機にアメリカの大学に進学しました。ですが、医療の研究者になるためにはどれくらいのお金がかかるのか、全く調べずに渡米してしまい、その道は早々に頓挫してしまいました。その時、キャリア担当の先生から転科を進められました。私は人を幸せにしたいから研究者になりたいと思っていたのですが、その手段が医療だっただけで、他の方法もあるのではないかとアドバイスをもらったのです。その先生から勧めてもらったIDEOの『クリエイティブ・マインドセット』という本がきっかけで、デザインの面白さを知りました。そして、デザインなら夢だった医療に関わるところで仕事ができると思い、すぐにデザイン学部に移りました。在学中には、現地の会社でブランドロゴデザインのインターンも経験しました。生物学をやっていた時は、楽しいというより「やらねば」という感覚が強かったのですが、デザインをやっていると純粋にワクワクするんです。それでデザイナーになろうと心に決めました。実は、母がファッションデザイナーで、家にアートやデザインが溢れてはいたのですが、それまではあまり関心がなかったんです(笑)。
大学を3年で卒業した後、現地のWebデザイン会社に就職しました。私はかっこいいものを作りたいという欲があまりなく、人のためになったり、人が喜んだりするものを作りたいという思いがあるんです。それで、実際に誰かが使ってくれるものをデザインするWebデザインの会社での仕事を選びました。
帰国後は、旅行ガイドのマッチングサービスを提供するスタートアップ企業に就職しました。留学していた時、外から見た日本がとても魅力的に感じたんです。素晴らしい日本の文化や歴史をもっと学びたい、人に伝えたいと思い観光業を選びました。加えて、英語も使えるし、デザインで人を幸せにすることもできるやりがいのある仕事だと思いました。
そこでの3年間は、社内のデザイン業務を一手に任され、とても充実感のある日々だったのですが、ある時、パソコンの前で頭が真っ白になってしまったのです。一人で3事業分のデザインを担当していたために、キャパオーバーに陥っていました。デザインが大好きなのに、一人でできることには限界があり、「デザイナーに向いていないのではないか」「もうデザイナーはやめよう」というところまで思いつめていました。それで、ひと呼吸おこうと1ヶ月間のヨーロッパ旅行に出ることにしたんです。
旅行中に次にやりたいことを探していたところ、Goodpatch Anywhereと出会いました。“自由”や“デザインで人を幸せにする”というキーワードで検索していたと記憶しています。ですから、Anywhereが掲げていた完全フルリモートという新しい働き方や、Goodpatch本体の「デザインの力を証明する」というミッションに、「これかも!」と思いました。その一方で、デザイナーとしての自分の力量や、パソコンの前で頭が真っ白になってしまった時のことを振り返ると不安が拭えず、飛び込むことを決めきれずにいました。すごく悩んだ結果、デザイナーをやめる前に一度環境を変えてみようと思い、まずはひとつ案件をやることにしました。不安もありましたが、事業責任者であるけいたさん(齋藤恵太)がスタートアップのデザイナーの働き方に理解があったことで安心感が生まれたのです。
最初の案件は北海道、東京、ロンドン、東京(時々イタリア)のメンバーで構成された短期案件で、本当に楽しかったです。はじめは自分のデザインを提出することにとにかく緊張していました。ですが、毎日のオンライン会議でアウトプットを見せ合い、他のメンバーのアイディアに刺激されてさらにアイディア出し合うことを繰り替えしていくうちに、少しずつ自信を取り戻せ、デザインがまた楽しくなっていき、ここで仕事を続けていきたいという強い思いが芽生えてきました。
また別の案件では、たまたま私以外は自分でデザイン会社を経営されているようなすごいメンバーばかりでした。そういう方達の仕事の仕方を直に学べるAnywhereはとても刺激的な環境です。北海道や大阪、ベルリンなど、世界各地でフリーランスでデザインに携わっていたり、本業を持っていたり、会社を経営していたりするメンバーもいます。そのように、色々な経験を持った人が集まっていることに強く惹かれています。多様なメンバーが一つのチームで働くことに魅力を感じたのです。逆説的ですが、Anywhereでチームの一員として働くために、フリーランスになったようなものなのです。
Anywhereのように、全員がリモートワークという環境は初めてですが、リモートの不都合さを感じたことは全くないです。また、Anywhereでは毎朝オンラインで朝礼をやったり、定期的にミーティングが行われたりしているので、毎日実際に会っている気持ちになります。コミュニケーションの密度がとても高いんです。Anywhereには「困ったらいつでも相談」、「リアルタイムでどんどん修正する」といった文化がありますが、それがデザインのアウトプットを柔軟にしていると感じています。ですから、デザインに行き詰まった時には、すぐにオンライン上でメンバーに相談します。「いつでも相談して良いよ」という空気が醸成されているので、オフラインよりも密にコミュニケーションをとって作業を進めることができますね。ですから、リモートで離れていてもアウトプットに齟齬が生じることがないんです。
また、相談はUIデザイナーだけでなく、UXの人にもするなど、多面的な意見を取り入れてデザインを構築できるのもAnywhereならではだと思います。Anywhereのメンバーは、それぞれの経験に多様性があることも強い魅力の一つです。結果的にアウトプットを出す速度も上がりますし、クオリティも高まっているのを感じています。
▲相談したいことや困ったことあるときは、ZoomやDiscordを繋いですぐにメンバーと繋がれる環境がある。
フリーランスデザイナーとしてジョインしている別の事業の一環で、奈良県の十津川村に移住する決断ができたのもAnywhereの自由な働き方があったからです。十津川村はコンビニはなく、スーパーも夜7時には閉まってしまうような田舎ですが、田舎という環境がAnywhereの業務にさし障ることは全くありません。時々、山の中でインターネットの接続が悪いくらいで(笑)。Anywhereなら、世界中どこにいてもデザインの仕事ができると確信しています。
Anywhereはせっかくのフルリモートなので、海外も含め、色々な地域の案件が増えていくといいなと思っています。Anywhereメンバーの多様性のように、案件の幅にも広がりが生まれることが理想です。私自身も、アメリカと日本でしか仕事をしたことがないので、他の国でもAnywhereの仕事をやってみたいという思いがあります。
また、Anywhereのメンバーはデザイン以外の面でも経験の幅が広いので、私も人としての幅を広げていきたいですね。仕事の面でもそれ以外の経験の面でも、Anywhere以外の面が充実すればするほど、Anywhere内の知識の蓄積も充実してくると思うので。今はまだ新しい知識やナレッジをもらってばっかりなので、私もどんどん還元ができるようになりたいと思っています。
それは、メンバーに還元するだけではなく、Anywhereの外に提供することも含まれます。私は今Anywhere以外に、Huber.という訪日外国人旅行者を対象にした事業を複数行なっているスタートアップとPOTLUCKという定額制テイクアウトサービスを提供する会社2社で業務委託を受けています。その2社の案件でAnywhereで学んだやり方を実践してみているんです。私だけではなく他のメンバーもどんどんAnywhereで培った経験を外に広げていけば、日本のデザイナーの働き方がより良い方向に変わっていくのではないかという思いがあります。
今はどうしても、正社員かフリーランスという選択肢になってしまいます。「正社員でしかチームで働けない。だから大きい案件をやるには正社員になるしかない」や「フリーランスは孤独。ひとりだから成長しづらい」といった働き方の悩みや、地方にはなかなか大きな案件がないといった場所の選択肢の少なさは、デザイナーなら一度は経験したことのあるものではないでしょうか。Anywhereは「どこにいてもデザインはできる」「フリーランスだけど孤独じゃない」という働き方を目指して生まれたチームです。Anywhereの働き方が浸透していけば、デザイナーの抱える悩みが解決されるのではないかと感じています。Anywhereの働き方が日本のデザイナーのロールモデルになれるように、色々な実践をしていきたいのです。