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https://www.famitsu.com/news/201803/06152203.html
皆さん、ジョブチェンジしてますか?
あ、すみません。ご想像いただいているような神殿やらクリスタルやらは関係ないんです。いま尋ねた のはゲームじゃなくて現実の話。つまり「転職経験はありますか?」という質問です。
先の質問に答えるなら、筆者はジョブチェンジ経験は0。なんとな~く興味はあるけど、現状維持でいっ ぱいいっぱいです。
さて、そんな私が聞きかじったところによると、転職で大切なのは“キャリア”を考えることらしいです。なるほど。さっぱりわかりません。
いや、うっすらとは知っているんですよ。職歴、スキル、そんな意味の言葉でしょう? ゲームの場合はシンプルです。“強さ”こそがキャリア。履歴書に書くスコアはDPS。 DPS=Damage per Second
ですがここは現実。じゃあ、キャリアって具体的にどういうこと……? 業績? 年収? 地位? 能力? 現実のジョブチェンジシステム、チュートリアルが不親切すぎでは……?
ということで、ゲーム業界を専門にしている転職エージェントにお話をお聞きします。
今回お話をお伺いするのはクリーク・アンド・リバー社の安藤さん。長年ゲーム業界を担当しており、数多くのクリエイターのキャリア相談を受けてきたそうです。インタビュー中は終始さわやかな空気を纏っていました。風属性のエージェントです。
賢者が遊び人になってもいい!? キャリアは理想の人生のためにある
――今回は「キャリアってなんなの?」「どんな転職が理想なの?」という疑問を解決すべくやってきました。よろしくお願いします。
安藤さん よろしくお願いします。
ーーさっそくですが、“キャリアアップ”ってなんなんでしょうか。初歩的な質問ですみません……。横文字のビジネス用語は“意識高いワード”の引き出しに封印して生きてきたので……。
安藤さん ものすごく端的に答えるならば、ひとりひとりが考える理想の生きかたに近づくことです。
ーー理想の生きかた……?
安藤さん “キャリア”という言葉を使うときは、業績や能力といった“職務経験”を指す場合が多いのですが、趣味や人間関係など“仕事以外のプライベート”も入れてしまっていいと思っています。なぜなら、人が働くのはより良い人生を送るためだからです。
安藤さん どんな人生を“良い”と感じるかは人それぞれです。たとえば、仕事を通して自己実現したい方なら、自分のやりたいことに近づけるスキルや社会的地位を獲得するのがキャリアアップといえます。
ーーゲーム業界なら、「自分のセンスが爆発したゲームを作りたい」、「あの大作シリーズに関わりたい」みたいな感じでしょうか。ざっくりですが。
安藤さん そうですそうです。前者ならディレクターを目指したキャリア計画を、後者ならまずは大手で通用するスキルを身につけたいですね。
ーーなんとなくわかってきました。同じ職種や肩書でも、個々人が抱える目的・目標に応じて、キャリアアップの内容も変わってくると。
安藤さん 一方で、仕事を離れた趣味の世界で夢を叶える生きかたもあります。そうした方の場合は、自己投資するのに充分な収入がもらえたり、副業に理解のある企業ではたらくことが目標になるのではないでしょうか。
ーーインディーや同人の分野といえますね。SNSのおかげで個人の活動をブランディングしやすい時代ですから、独立して趣味を本業にすることを目標にしている人も多そうです。
安藤さん 筆者さんはどんな働きかたを目指していますか?
ーーなるべく働きたくないです。
安藤さん なるほど! 「ボランティアのような社会貢献に時間を使いたい」、「介護や子育てのような家族との時間を大切にしたい」という方も多いですし、理解のある企業も増えています。
ーーいい感じに捉えていただいて恐縮なのですが、いっぱいゲームしたいだけです。
安藤さんあ、はい。
ーーぼくの理想は「激しい『喜び』はいらないが、かわりに深い『絶望』もない、『植物の心』のような人生」なんですが、こういう消極的な目標でキャリアを考えてもいいんでしょうか?
安藤さん いいと思いますよ。先ほどの話とも関連しますが、プライベートでの活動が思わぬ成果に繋がることもあります。考え抜いた結果“仕事量を減らす”という選択にたどり着いたなら、我々エージェントも尊重させていただきます。
ーーじゃあ、どんな魔法も使えてめちゃめちゃ忙しい“賢者”から、時間的余裕のある“遊び人”に転職する……なんて、ゲームとは真逆のキャリアプランもOKってことですか?
安藤さん OKです! それに、転職しても賢者としての経験が失われるわけじゃありませんから。培った人脈やスキルも活かしつつ、“元賢者の遊び人”としてセルフブランディングするのも面白いかもしれませんね。
ーーありがとうございます! なんとなく“キャリア”について理解できました。転職をくり返しながら、理想の人生に向けてステップアップすればいいわけですね!
安藤さん えっと、その考え方は危険だと思います。むしろ我々は……
安藤さん 簡単に転職なんてするな! と思ってますからね。
転職なんてするな! そのジョブ、本当にマスターした?
ーーえっ、どういうことですか?
安藤さん 転職だけがキャリアアップの手段じゃない、という話です。もっと突っ込んだ話をするなら、転職することで理想から遠ざかるパターンもたくさんあります。
ーー???
安藤さん ゲームのクラスチェンジも、現職の技やスキルをマスターしてから行う場合がほとんどではないでしょうか? たとえば、レベル1のペガサスナイトが、いきなり上級職のドラゴンナイトにはなれませんよね。キャリアアップのためには、それ相応の熟練度が必要なんです。
ーーゲームのタイトルも含めて、完全に理解しました。ファ
安藤さん名前は出さなくて大丈夫ですよ。
ーー経験を積まずに転職しちゃうと、キャリアは据え置きか、むしろ下がっちゃう可能性があるんですね。そうなると、数年後にはまた同じ理由で転職を考えていそうな気が……。
安藤さん その通りです。それに、転職の経験がデメリットになることもあります。正直に申し上げて、転職回数が多くて採用担当の心象が良くなることは少ないでしょうね。
ーー面接で挽回はできないんでしょうか?
安藤さん 一部の企業は、採用の条件に“転職回数○回まで”といった数字が明確に決まっているので……。
ーーひぇえええ。書類選考で足切りされちゃうんですね。ちなみにゲーム業界だと……?
安藤さん △△さん(超大手)とか、××さん(めちゃめちゃ人気)ですね。
ーー誰もが知ってる名前が出てきた! 最終的な目標にしてる方も多そうですね。
安藤さん はい。転職はキャリアアップの大きなチャンスですが「ここぞ!」というタイミングを選んで出すべき切り札なんです。転職というカードに安易に飛びつくのではなく、キャリアのために現職でできることは残っていないか、冷静に俯瞰してみることをオススメします。
ーーちょっと気になるのは、「キャリアのため」というよりも「とにかくしんどい」というネガティブな理由で転職を考えている方も多いと思うんです。現職でがんばる余裕のない方はどうすればいいんでしょうか?
安藤さん おつらいですよね……。ただ、辞めたい気持ちが先行しすぎると、焦りや不安で、自分の本当にやりたいことが見えなくなってしまいます。そんな状態で転職しても、満足のいかない結果に終わりがちなのも事実です。
ーーやっぱりそうなんですね。いざ自分を見つめる余裕がうまれたときに、今度はキャリアへの不満が出てきてしまう可能性があると……。
安藤さん ですから、お辞めになる前に少なくともキャリアプランはしっかり立てておいたほうがベターかと思います。
転職先の紹介だけだと思ってない? エージェントは “キャリア支援サービス”
ーーキャリアを考える大切さはわかったのですが……。
安藤さん はい。
ーー自分ひとりで正解に辿り着ける気がしねえ。というのが正直なところです。さっきの話にしても、現職でもっとがんばるべきかどうかの判断なんて、社会人なりたての方には難しい気がしますし……。心身ともにネガティブな状態でキャリアを思い描くのも簡単じゃないように思うんです……。
安藤さん ごもっともだと思います。
ーーこのあたりの悩みって、エージェントを頼れば、うまいこといくんでしょうか?
安藤さん うまいこと、
安藤さん いきます。
ーーやったああああああ!
安藤さん 弊社のエージェントとの面談は、キャリアについてのカウンセリングから始まります。「10年後どうなっていたいですか?」「そのために必要なものは何ですか?」と質問をくり返しながら、本当にやりたいことは何なのか、そのために今何をすべきか、いっしょに紐解いていく。
ーーいきなり求人を紹介するわけじゃないんですね。
安藤さん はい。面談の前後でキャリアプランが変わることも多いですし、その結果として転職そのものを考え直す方もたくさんいらっしゃいますから。
ーーん? エージェントに相談してから「やっぱ転職やーめた」もまかり通るんですか?
安藤さん もちろんです! むしろ「いま転職するとこういうデメリットがある」と正直にお伝えすることもあります。初回の面談だけで結論が出なければ、2回目、3回目とカウンセリングを続けていくことも可能です。
ーーえ、そこまでしてくれるんですか? 無料なのに?
安藤さん 誤解されやすいのですが、エージェントは単なる“求人紹介”ではなく、総合的なキャリアサポートを行うサービスなんです。登録してくださった方への助言は惜しみませんし、かといって「転職しましょう」「転職はやめときましょう」なんて強要するようなこともありません。
ーーなるほど……。ということは、自分のキャリアを考える目的で、むしろ面談を目当てにエージェントに登録する……なんてのもアリなんでしょうか?
安藤さん ぜひ、そうしていただけたら嬉しいです! 我々の役割は、皆様の人生がもっと幸せになるお手伝いだと思っています。ご協力させていただけるなら、むしろエージェント冥利に尽きるくらいです。
自分のキャリアを組み立てるうえで、あるいは組み立てたキャリアを客観視するうえで、エージェントの経験と慧眼は必ず頼りになります。
もちろん、初対面の相手に全幅の信頼を寄せるのは難しいでしょうし、「みんなが親身になってくれるわけじゃないでしょ?」と疑う人もいるかもしれません。だけど考えてみてください。毎日のように求職者のキャリアについて考えているエージェントが、自分自身のキャリアを突き詰めていないなんてことがあるでしょうか。つまりエージェントという人種は、考えに考え抜いたうえでその仕事を続けている人ばかりなんです。だったら、ご出演いただいた安藤さんのように、求職者の成功を心から喜んでくれるエージェントに当たる可能性も低くないはず。
もしキャリアについて抱え込んでいるものがあるのなら、エージェントに吐き出してみてはいかがでしょうか。笑顔で前を向けるようになって、自分の歩むべき道を見つけられるかもしれませんよ。