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2017年8月28日にリリースした女性からはじまる恋アプリ『Torte(トルテ)』。
従来のマッチングアプリにはない「女性主導」というサービスコンセプトを掲げ『Torte』が誕生しました。その舞台裏には、「数字には熱を込めるべき」と語るマーケティングプランナーと若手社長の熱き創業ストーリーがありました。
山口 裕平 (やまぐち ゆうへい)
メディア統括本部 メディアマーケティング本部
マーケティングプランナー
2009年新卒入社。メディア事業のプロデューサーを経て、モバイルゲームの分析部署の立ち上げを行う。全社会議で、自身で提案したゲーム案が決議されたことを機にゲームプロデューサーに転向。スマートフォン向けレシピゲーム『mogg』の運用や、新規ゲーム立ち上げを経験した後、経営本部に異動し管理会計業務に携わる。2017年4月からはメディアマーケティング本部にてマッチングアプリの分析に従事。
飯島 徹子 (いいじま てつこ)
株式会社トルテ
代表取締役社長
2014年新卒入社。ゲーム事業に配属され、スマートフォン向けレシピゲーム『mogg』のプロデューサーを経て事業責任者に。マッチングアプリの事業提案が決議されたことをきっかけに、トルテを設立。17年8月、世の女性の恋愛や結婚を後押ししたい想いから『Torte』をリリース。
先輩後輩プロデューサーだった二人が、マーケティングプランナー・事業責任者として事業立ち上げに挑む
--- お二人は『Torte』の立ち上げ前から、先輩後輩プロデューサーという関係だったそうですね。
飯島:そうなんです。もともと山口さんとは、お互いプロデューサーとして関わりがありました。私が新卒で担当したスマートフォン向けレシピゲーム『mogg(モグ)』の、3代前のプロデューサーが山口さんでした。
当時のサービスのギネス記録を更新した伝説のプロデューサーとして、山口さんは時期の被っていない私に伝わるほどに、そのサービスの中で存在感がありました。初期からいるチームメンバーからは「ぐっさん(山口)という敏腕プロデューサーがいてね」と、当時の逸話をよく聞いていましたね(笑)
そんな中、新卒プロデューサーのサービス改善提案の会議の時に、当時山口さんが担当していたサービスへの提案を相談させてもらったのが最初の接点です。
山口:それが2〜3年前の話ですね。当時僕は別のゲームのプロデューサーをしていました。その後2年間は経営本部の経営推進室というところで管理会計の経験を積んでいたのですが、今回それぞれマーケティングプランナーと事業責任者という立場で一緒に仕事をすることになったんです。
ジョインしたタイミングでコンセプトや仕様は大枠決まっていたので、まずはそれを細かく把握した上で課題点を洗い出しました。数字的に見えてくるウィークポイントがどこにあるかとそれを補うための改善施策を提案し、さらに中長期のロードマップを作成しました。1年後にかかげている売上目標がある中で、達成するためにどういった時間軸でどのようなKPIを達成していくべきかを示すためのものです。
飯島:開発日数とリソースが限られている中で、改めて山口さんが他者視点で指摘してくれたロードマップをもとに機能の優先順位を決めました。
山口:クリティカルに影響しないであろう機能に関しては、リリース日を優先して諦めたものもあったね。
飯島:大小関わらず、当初から変更した点はたくさんありましたね。
「最初は正直、やばいと思った。」マッチングアプリの固定概念をくつがえす“女性主導”は成立するのか?
--- 山口さんが『Torte』の担当に決まり、最初にサービスコンセプト・仕様を見た時はどう思いましたか?
山口:正直言うと、やばいなと思いましたね(笑)
『Torte』はマッチングアプリの固定概念とは真逆をいっていたんですよ。マッチングアプリって基本的には男性から積極的にアクションすることを想定していて、『Torte』のように“女性から全部始めます、マッチングしても女性からしかファーストメッセージは送れません”という「女性主導」をコンセプトに掲げているサービスは国内にはありませんでした。
まずは、ここが課金周りでネックになるなと思いました。日本のマッチングアプリの多くは男性が女性にメッセージを送るために課金するシステムで、女性は無料で利用できるものが多いです。女性からメッセージを送らないと、課金した男性がメッセージを送れないというのは前例がないので、この部分に関しては参考になるデータがないし、僕の感覚では「女性からは送らないだろう」と。
飯島:確かに最初は「女性主導なんて成り立つのか!?」と言われましたね(笑)その部分に関しては私から「女性の気持ちはこうです」「こういう感覚になればこういう行動をすると思う!」と女性の気持ちを一生懸命プレゼンしたのを覚えています。
最後の方は「いや〜本当に大丈夫かな?」と言いつつも思想を尊重してくれて、作りたいものを後押しするための数字やリスク、リスクがあった場合の計画を立てるところまでを一緒にリリース前に話し合うことができました。
---お二人は意見を言い合うと、どういう感じになるのでしょうか?
飯島:山口さんは、超速球をストレートで投げてきますね。ドッチボールだったら命がいくつあっても足りないくらい(笑)とはいえ、私も同じような感じですね(笑)
山口:お互い言いたいことは直球で投げ合うよね(笑)僕も、自身のプロデューサー経験から作り手の思考や気持ちはわかるので、提案された施策の大半は面白いと思いました。でもマーケティングプランナーとして提案された施策を見たとき、数字的にかなりのリスクがあるからやめた方がいいと。
飯島:そうですね。「その考えは好きだしわかるけど、数字はこう物語っている。それでもリスクをとるか?」というコミュニケーションをしてくれるのが山口さんの良いところです。
山口:正論をいうのが役割だと思っているけれど、正論ばかりでは面白いものは作れない。だから、プロデューサー視点やユーザー視点とのバランスを取るのが大事だと思います。
飯島:一旦議論中は正論をメインに言ってくれますが、議論が収束すると、そのあとはちゃんと山口さんの一意見を言ってくれますよね。「データはこうだけど、データは別としてその考えは面白いと思う。難しいと思うけどチャレンジしてみるのはいいと思うよ」と背中を押してくれます。
数値分析と提案をセットでリアルタイムに共有。そのスピードが、サービスの高速PDCAを支えている
--- トルテがリリースされて3ヶ月が経とうとしています。リリース前とくらべて、現在の状況はどうでしょうか?
山口:当初一番危惧していた「女性主導のアクション」というKPIは全く問題なく、むしろ女性がかなり活発に能動的にアクションしてくれています。
飯島:こんなに女性からメッセージが来るものなのか?と男性が驚くくらい、女性がアクティブですね。今はこの女性のアクティブさを活かして、男性にもっと早く女性の気持ちを届けるための改善に取り組んでいます。
ビジネス職の定例会議も設けていますが、山口さんとは会議体関係なく毎日コミュニケーションを取りながら進めています。
山口:特に立ち上げ期のサービスはスピード感が大事だからね。会議体に縛られていたらスピードが落ちてしまうので、分析結果をリアルタイムで共有できるように、今は席も隣同士です。
飯島:山口さんのデータ出しの速さは異常なんですよ(笑)しかも必要な数字だけではなく、見解までセットですぐに出してくれます。
山口:そこはきっと、プロデューサーの経験が活きているんだよね。プロデューサー時代に様々な意思決定をするという経験をしているので、事業責任者が意思決定をする際に、どういう数字が必要かという感覚が身についてます。
あとは、数字を出すときにはまず仮説を持っています。マーケティングプランナー自身が仮説を持っていない状態で、言われた通りにただ数字を出している場合、本来必要ではない数字まで出すことになる。そして出した数字を見ても「なぜこの数字を出したんだっけ?」と、そこから見解を考えるのにさらに時間がかかってしまうんです。
飯島:確かに、こういう数字を見たいというといつも「なぜか?」と聞かれますね。「それだったらこっちの数字をみた方がいいよ」というところまで提案した上で持ってきてくれる。とても心強い存在です。
「自分が出した数字には熱を込めろ」事業を成長へ導くマーケティングプランナーとは
--- 事業責任者として、マーケティングプランナーに求めることはどんなことですか?
飯島:マーケの立ち位置って事業部があってその補佐役と思われることも多いですが、事業部関係なくチームの一員として入ってきて欲しいですね。意見やアイデアを「言い過ぎちゃったかな?」と気にせず、事業はみんなで創っているもの。プロデューサーの意思を尊重しすぎる必要はないと思います。どっちみち、プロデューサーは意思が強い人が多いですしね(笑)
プロダクトを作る側からすると、遠慮されていいことなんて何一つないです。作業者だったら誰でもできるのですが、サイバーエージェントのマーケティングプランナーとして一緒にやるなら、どんどんきて欲しいです。
山口:僕もマーケになった時に役員から「斜に構えるな。チームに入っていけ」と言われましたね。チームの一員としてやっていく感覚がないと、自分が出した数字に熱が込められないです。数字ってそれ自体が無機質なものなので、ただ「課金転換率5%」とか目の前に出されても意味がない。数字に熱を込めるためにも、チームの一員という意識が重要だと思います。
--- マーケティングプランナーのやりがいや、目指している理想像を教えてください。
山口:僕自身ゆくゆくはまた事業責任者をやりたいと思っているので、経営層や事業責任者と仕事をしながら、遠慮さえしなければ対等に意見を交わせるというのはやりがいの一つだと思っています。あとはやはり、自分で仮説を立て・分析し・その結果から提案、実行した施策によって数字が上がった時が一番やりがいを感じる瞬間ですね。
マーケティングプランナーは、事業がどの方向に進むべきか迷ったときに、正しい方向に導いていける羅針盤のような役割を担っています。単純に数字を分析することはある程度経験を積めばできますが、隠れていて見えなかったサービスの金脈を見つけ出せるマーケティングプランナーが理想で、僕は今そこを目指しているところです。
--- 最後に、どういう人がマーケティングプランナーに向いていると思いますか?
山口:第一に、数字が好きというのは大事ですね。ただ、数字によりすぎてユーザー視点を忘れてしまったり正論を振りかざすだけの人より、バランス感覚を持っている人が向いていると思います。あとは、自分からどんどん提案したいとか、事業をよくしていきたいという熱い想いを持っていることも大切。先ほども言いましたが、“数字に熱を込められる人”ですね。
飯島:そうですね。当事者意識を持っていて、コンサルという立場よりもっと踏み込んでいきたいと思っている人は、サイバーエージェントのマーケティングプランナーの仕事はとても楽しめると思います。