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毎日の仕事の中で、自分の成長を感じられることほど楽しいことはありません。特に、キャリアの初期段階にあり、やる気とエネルギーに満ちた若いビジネスパーソンにとって、チャレンジングな仕事に取り組む機会はなによりも貴重な成長の糧。こうした機会に恵まれることは、毎日を刺激的で豊かなものにするのではないでしょうか。
デジタルエージェンシーTAMの引野文也さんは、入社1年目にして大手企業の新サービスのブランディングに参画し、そのサイト構築・運営、ソーシャルメディアマーケティングまでを一貫して担当。顧客から信頼されるWebディレクターへと成長しています。難しい課題も前向きに取り組む、引野さんのモチベーションや仕事風景を伺いました。
学生時代にECに魅せられ、入社初日からいきなり現場へ
―TAMに新卒で入社して3年目。入社した経緯は?
もともと「お金」が好きで、大学では経済学部だったんです。ただ、入学してから自分は商学系に興味があることに気づいたのでほとんど大学には行かず、自分の時間はマーケティングを学ぶことに振り切っていました。
そのとき居酒屋でバイトもしていたんですが、接客してお客さんに追加でビール1杯頼んでもらうのが嬉しくて。自分のモチベーションの原点はここにあると思います。
そこから始まり、もっとお客さんを呼ぶためにインスタグラムを運用したり、メニューのポップを工夫したり、ポスターやチラシをつくったり…… なんとなく自分の領域を広げる中で、その居酒屋のECサイトを立ち上げる機会があったので、自力でやってみたんですね。
居酒屋の店舗だけだとキャパシティーが40席にかぎられるけど、ECだと一気に世界に価値のあるものを届けられる。それがすごく面白くって。一時期は「店長になれ」と言われて居酒屋に就職することも考えたんですが、もっとECを知りたい、学びたいと思い、TAMに入りました。
―大学時代からECサイト立ち上げの経験があったんですね。入社後のお仕事は?
入社して初日に大手下着メーカーの展示会に行き、モデルショーを取材、見学したのがTAM人生のスタート。そのLP(ランディングページ)を作るのが初仕事でした。
そうしてディレクターとしていろんな企業のLPを作ったり、サイトの更新をしたり。そこからだんだんと独り立ちすることが増え、少しずつ先輩の信頼を得られるようになると、新しい領域の仕事も与えられるようになりました。
今はメンバーが20人ぐらいいるECチームのディレクターの一人として、クライアントのECサイトの課題解決とか、サイトリニューアルのお手伝いなどをしています。
クライアントのパートナーとして、ECをリニューアルする場合は一年ぐらいの間、ずっと担当者の方と毎日電話をしたりして、一緒にサイトを作っていきます。
―最近は「洋服の青山」の新サービスのWebサイトを作ったと伺いました。
洋服の青山さんが運営する新しいレンタルサービスのブランディングプロジェクトに携わりました。Webサイトの公開が今年(2021年)の1月で、プロジェクト開始はその1年前。入社して1年目の後半ぐらいでした。
このレンタルサービスはもともと「洋服の青山オンラインストア」のECサイト本体にあったのですが、それを独立させて展開していきたいというご要望をいただいて、サービス名「ハレカリ」の立案からサイト構築、デザイン、運用までお手伝いさせていただいています。
最初から一貫してクライアントと一緒に作っているので、迷ったとしてもお互いの共通認識が一つあるという感じ。サイト構築やページデザインで、間違った方向には進まないというか。ずっと一緒にやってきて、クライアントとの信頼関係を感じながら仕事をしています。
「本音の」インタビューからコンセプトづくり
―実際にブランディングというのはどんなことをするんですか?
「結婚式で着る服をレンタルサービスする」というのは決まっている事実なので、そこにどういった価値をユーザーは求めているのかを見つける作業をします。
まずは、いろんな軸で他社と比較した今のサービスのポジショニングを聞いたり、「Google アナリティクス」の定量的なデータに基づいてユーザーの行動を把握したりして、現状を分析します。
あとは定性的にユーザーがどんなことを求めているのか、というのを知るために、まずはクライアントとわれわれTAMのメンバーで、女性用パーティードレスをレンタルするときにどういったマインドがあるかな、というのをずらっと書き出して、それを分類したり投票したりして、こんな価値があるんじゃないか、と話し合います。
その一環で、実際に顧客になり得る方にインタビューして、潜在的なニーズも集めます。
―ペルソナがどんな人かもTAMや引野さんが決めるんですか?
はい。今回は大枠「若い人」というのはあったんですが、それを顧客像にまで落とし込むところは、クライアントと相談しながらわれわれでやってます。今回で言えば「前田瑠偉ちゃん」、28歳。
「目黒区で一人暮らしをしていて、仕事は銀行員。1年付き合っている彼氏がいるが、結婚の予定はまだない。最近、高校・大学時代の友人が立て続けに結婚しており、焦りを感じている。対人では少しだけ背伸びをする傾向がある」。
地元は広島だったかな、大学で上京して。ちょっとプライド高そうな感じではあるんですけど(笑)。年収も含めて細かく設定することで、ユーザーの心理や行動を浮き彫りにします。
―実在しそうですね(笑)。こうした顧客像に近い人を対象に、ユーザーヒアリングをするんですね。
そうですね。実際にパーティードレスをレンタルしたことのある人とか、同じ年代で顧客像に近い方にインタビューさせていただきました。
そこでは結構、本音というか、サービスにつながるような直接的なことだけでなく、その周辺や奥深くにある心理や潜在的な動機を聞き出すことが一番の目的だったりします。
なので、レンタルに限定して話を聞くのではなく、「結婚式に呼ばれると嬉しい?」とか、結婚式当日の気持ちとか、その前後、周辺のマインドを聞き出すようにしています。
そうすると新しい気づきが見えてくるし、それがサービスの打ち出し方につながることも大いにあるので。
いろいろ深掘っていくと、「実は自分がかわいいと思われたい」とか、「ここで出会いがあるかも」とか、「仕事ができる人に見られたい」とか、そういう本音が出てくるんですよ。
―エグいですね(苦笑)。そうした要素を元に、次になにをするんですか?
そこでなんとなく顧客像の傾向が出てくるので、それを「社会的価値」「機能的価値」「情緒的価値」の3つの枠に分けて、集まった要素を整理します。例えば、「場違い・目立ちすぎはNG」とか、「褒められたらうれしい」とか。
そして次に、さっき出た要素から、さらに「顧客が本当にしたいこと」を深堀りしていきます。その結果、レンタルドレスを利用しようとしている人は、「『いい結婚式だったね』を作りたい」というのが心の奥にあるというインサイトを定義づけました。
そして、それはすなわち「自分も楽しまないと、いい結婚式にはならない」し、自分が楽しむために、もしくは結婚式をいいものにするために、「場になじむ」といったマインドが強いよね、と。
こうしたコンセプトを今度はユーザーの体験に落とし込んでいきます。例えば、「『いい結婚式だったね』を作りたい」を叶えるには、サイトで使う写真は「結婚式の中の自分」であるべきだ、と。SNSのイメージや写真の方向性、サイトの構造など、具体的な作業に落とし込んでいくんです。
―そうしてようやくECサイトのお話になっていくんですね。
そうなんです。こうしたコンセプトづくりとは別に、「ドレスを買わずにレンタルする」という需要も深掘って、「レンタルサイトというのはこうあるべきだ」ということも話をしていきます。
その結果、「ハレの日に、最高の一着をかりよう。」という、ブランドのキャッチコピーが生まれました。このキャッチコピーからずれないクリエイティブにしよう、ということで、サイトもこれにあったデザインや構造になっています。
海外支社にいる先輩の背中
―そうしたブランディングの技術はどう学んだんですか?
今回ブランドを立ち上げるに当たって、オランダにいるグループ会社「Tamsterdam」の先輩、飯島章嘉さんにも参加してもらい、その背中を見て勉強させてもらった感じですね。
特にコンセプトづくりには、なにか型があるわけではないんですが、現状の課題分析や競合比較にとどまらず、モノごとをいろんな角度から多面的に見て、プロジェクトの目的の本質を掘り下げ、最後はそれを「ドン」と言葉にしてまとめる力が重要なんじゃないかと思います。
まとめ力、共通項探し力、傾向を見破る力…… 今はまだパッと彼のようにはできないけど、もう少し経験を積んでいけば、見えるようになると感じています。
―先輩が海外にいても画面越しでも学ぶことができるんですね。
そうですね。飯島さんとは海外とのやり取りなので、いつもZoom越し。直接会ったことがないので、身長がどのぐらいかすら知らないです(苦笑)。
それでも、例えば僕はプロジェクトマネジャーでもあるので、「いつまでに提案が必要」というのがあったとしたら、Zoomミーティングではここをゴールにして……みたいな、どうしてもスケジュールが気になってしまうんです。
だけど、彼の場合は、「本当にそうなの?」「ああも言えないか、こうも言えないか」とずっとやっていて、それで最初は締め切りが心配になるんですけど(苦笑)、だけど、最終的にはそれが顧客も思っていなかった課題の発見やアイデアにつながったりして、ハッとさせられることが多い。
クライアントやTAMの色んな人と一緒に仕事をするなかで、自分も前より視野を広げるようにもなりました。例えば、今までアパレルのECサイトを作るときには、ほかのアパレルECサイトを参考にしていましたが、今はWebにかぎらず雑誌とか、もっと別のものを見る、みたいな。
第2新卒世代は「成長できる」環境を
―コロナ禍でリモートワークが中心になって、難しさを感じることがあるかと思いますが、なにか心掛けていることはありますか?
楽しく仕事をしたいと思いますし、クライアントにも楽しく仕事をしてもらうというのは大切にしています。
一緒に案件を作って、一緒にサイトを作っていくという関係性においては、会社は違えど目指すべきところは一緒なので、まずは「仲間である」というのが前提。そこで締切を過ぎたり、なにかミスが起きたときに、「だれが悪い」と追及するのは違うよな、みたいな。
ついつい「修正指示がくるのが遅かったので、納期が遅れました」となってしまいがちなんですが、あちらの事情もあるし、こっちの事情もあるし、お互いがいいようにやっていくというのが、結果として一番いいものができるんじゃないかな、と思っています。
―引野さんのような第2新卒世代は転職を考えている人も多いと思いますが、第2新卒世代のキャリアで大事なことはなんだと思いますか?
「成長できる」が大切だと思います。そういう意味で、TAMは同世代みんなにオススメできます。
大学時代の友人とかにたまに会ったりすると、やっている量も濃度も僕のほうが圧倒的に濃い。最初から現場に「ポン」と出されるので、すごくしんどいですが、成長する速度は速いと思っています。
少し背伸びしないと頑張れないというか、結構ジャンプしないと乗り越えられない仕事ばかりなんです。常に新しい仕事、難しい仕事……だからこそ、どんどん成長していける。なによりそのほうが楽しくて、僕自身、求めてしまうんですよ。
株式会社TAM ECアーキテクト / ディレクター 引野文也
1997年京都生まれ。学生時代、アルバイト先の飲食店でECサイトの立ち上げを経験。そこでECの可能性や楽しさを感じ、新卒でTAMに入社。現在はプロジェクトマネジャー・Webディレクターとして大規模ECサイトの構築や運用に関わる案件を担う。
[取材・編集] 岡徳之 [構成] 山本直子 [撮影] 藤山誠