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後藤 颯人(ごとう はやと)
LITALICOジュニア駒沢教室 教室長/理学療法士
大学卒業後、神奈川県の療育センターで理学療法士として勤務。 2018年に株式会社LITALICOに入社し、児童発達支援、放課後等デイサービスの事業所で指導員を2年間経験。その後教室長へ。マネジメントの立場からお子さま、保護者さま、スタッフの包括的な支援を目標に活動中。
「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、お子さま一人ひとりに合わせた支援を提供する教室(児童発達支援や放課後等デイサービスなど)を運営しているLITALICOジュニアでは、現在 一緒にお子さまの支援と向き合う22新卒の仲間を募集しています。
この連載では、LITALICOジュニアで働く様々な職種の5人のストーリーをお届けします。
▼指導員、教室長、採用広報。マルチに活躍するプレイングマネージャー
「支援を必要としているお子さまや保護者さまに対して、その人が本当に求めている支援にちゃんとアクセスできる環境をつくりたい」
迷いのない目で熱く想いを語るのは、LITALICOジュニア駒沢教室の教室長で理学療法士(PT)の後藤颯人。
教室長として駒沢教室の児童発達支援、放課後等デイサービス、※保育所等訪問支援の3つの事業の運営やスタッフのマネジメントをつとめながら、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(PT OT ST)などの専門職人材のための採用広報活動や社内の研修の企画などに取り組んでいる。教室長の業務の枠を超えて活躍する中でも、現場で直接お子さまや保護者さまと接する機会を大切にしている。
※保育所等訪問支援(https://junior.litalico.jp/service/visit-support/)とは、児童福祉法に基づくサービスで、児童発達支援や放課後等デイサービスと同じ「障害児通所支援」の一つです。保育所(保育園)や幼稚園、小学校など、お子さまが普段生活している場に支援員が訪問し、集団生活への適応をサポートします。
「実は業務全体の3割くらいは、指導員としてお子さまの指導や保護者さまの相談支援をやらせていただいています。関東の教室はプレイングマネージャーが多いんですよ。マネジメントをやりながら、お子さまへの指導や保護者支援にも幅広く業務として経験できるのはありがたいですね。」
2018年にLITALICOに中途入社。入社後2年で教室長に抜擢された。
ビジョンに真っすぐで、面倒見がよく、現場が好き。社内ではロールモデルとして後輩から慕われることも多い。そんな後藤に天職とも思える支援の仕事を選んだきっかけを尋ねると、そこには家族の存在があった。
▼先生から子どもの支援の話を聞いた時、これは自分自身が経験してきたことだと思った
「うちの家族が、父も祖父も放射線技師で病院で働いてたんです。なので昔から病院に行く機会があって、子どもの頃はレントゲンのベッドで寝たりしてました。(笑)病院が身近にあったので、なんとなく将来は医療系の仕事に就くんだろうな、でも自分は機械より人間とたくさん関わってコミュニケーションできる職種がいいなと考えていました。遊びに行ってた病院に理学療法士の存在を知って、この仕事なら人としゃべるし面白そうだなと思いました。」
幼い頃から医療の現場が身近にあって自然と人を助ける仕事に興味を持つようになっていた。ただ、理学療法士の道を選んだことについては、大学入学当初はそこまで深い動機はなかったという。
後藤が支援者として自分のやりたいことに目覚めたのは大学1年生の終わりのことだった。
「最初は何の疑問もなく学生生活を送ってたのですが、1年生の終わりにゼミがあって、そこで小児分野の先生と出会いました。その先生から子どもの支援の話を聞いているうちに、どうもこれは自分自身が小さい頃から経験してきたことだなと思ったんです。」
「というのも、うちには障害のある弟がいるんです。子どもの頃からリハビリの施設に通って、普通級、特別支援級、特別支援学校、就労移行支援B型を経て、現在はグループホームいるんですけど、家族としてその姿をずっと見てきました。だから先生の話を聞いて、子どもの分野の支援って自分がこれまで見てきたことだなって。そう思ってからは、ずっと子どもの分野一本でいくと決めました。」
▼過去の自分自身に支援を届けたかったのかもしれない
「子どもの分野で支援の仕事がしたい」支援者としての軸が定まってからは、持前の行動力を発揮する。4年のゼミでは発達障害の研究をするなど大学の中でも児童分野の勉強に打ち込んだ。また、PTの学生協会のイベントや実際の支援の現場にも積極的に顔を出した。
当時からPTとしてのキャリアにはそれほどこだわりがなくて、とにかく子どもの福祉に関わる分野で働きたいと思っていたという。
一方、理学療法士の世界において、児童福祉分野での就職は決して簡単ではないという現状があった。求人の大半はリハビリテーションの病院や整形外科のクリニック、大学の同期のほぼ全員が病院に就職をするという環境だった。
「やっぱり小児は特殊な分野、いや、特殊だと思われている分野と言ったほうが正しいかもしれません。だから就職を考える時は、『病院に行ったほうがいいよ』とか、『医療機関で経験積んでからのほうがいいよ』って声が多かったですね。実際に就職先が少ないという問題があって、特に新卒の募集となるとかなり限られてくる。そこに絞ったら就職先がなくなっちゃうので、興味があってもなかなか踏み込みづらいですよね」
就職活動を進める中で自分が逆境に立たされていることをひしひしと感じた。しかし、後藤は最後まで子どもの支援の仕事をするという目標を曲げなかった。どうしてそこまで、こだわりを持っていたのだろうか。
「過去の自分自身に対して、支援を届けたかったのかもしれません。障害のある弟が近くにいて、なんであの時もっとこうしてやれなかったんだろうと思うことがあるんです。小さい頃はやらせたらなんとかなると思って強く当たったこともありました。その時にもうちょっと支援の知識があったり、社会資源と繋がっていたりしたら、もっとできることがあったんじゃないかなって。だから、今の自分から昔の自分の困りに対してどうにかしたいって想いが強くて。それが明確だったからブレなかったんだと思います。」
▼障害が「ある」前提で支援を考えるのではなく、「ない」社会をつくっていきたい
就職活動では、子どもの分野で募集が出ているところに手あたり次第履歴書を送った。努力のかいあって、地域の療育センターで理学療法士として働く機会を得ることができた。療育センターでは、幅広い年齢層の児童を対象に1対1の支援に取り組んだ。
「一番小さい子だと6か月とかのお子さまから、上だと18歳まで。個別の1対1のリハビリをしていました。週1回もしくは2週に1回の頻度で来ていただいて、1対1で1時間くらい支援するというケースが多かったです。たまに施設への訪問支援もやっていました。地域の近隣の施設にも行かせていただいて、椅子を調整したり、運動とか、足のこととか保護者さまの相談を聞いたりしていました」
支援の仕事はやりがいにあふれていて、充実した毎日をおくっていた後藤だが、しだいに1対1の支援だけではなく施設の集団や地域に対して幅広く支援のアプローチができないかと考えるようになった。1年間働く中で挑戦してみたいと思ったことを企画書にまとめて所長に直談判したが組織の腰は重かった。
そんな時に、ふと頭によぎったのがLITALICOだった。
もともと、施設の利用者さんから名前を聞く機会は多くなんとなく気になっていたという。会社のHPを調べてみると「障害のない社会をつくる」という企業ビジョンが目に飛び込んできた。
「児童福祉の施設って『障害のあるお子さまの人生や生活を支援しよう』みたいな理念を掲げているところが多いと思うんです。でも、LITALICOは『障害のない社会』をつくろうとしている。障害を『ある』ものとして付き合っていく方法を考えるのではなくて、障害が『ない』ものになる社会を目指していく。そのお子さまにとって、社会との間にある障害をどうやってなくしていくかという視点に立って働いてみたいと思いました」
転職を思い立ってから行動までは早かった。3月頭にエントリー、すぐに面接を受けて、その月には退職の意向を伝えた。そのまま4月末に退職、5月にはLITALICOの教室で指導員となっていた。
▼誰もがその時必要な支援にアクセスできる社会をつくりたい
LITALICOに入社後は、支援者としてのスキルを磨きながらPT OT STなど専門職人材の採用や現場で活躍するための仕組みづくりに精力的に取り組んでいる。2021年の障害福祉分野の報酬改定を背景に、児童福祉分野でのPT OT STなど専門職人材の活躍が期待されている。一方、児童福祉分野の施設での専門職人材の採用や育成、登用などは、まだまだはじめたばかりというところが大半で、課題を抱えている施設も多い。
「専門職人材、PT OT STや心理職の人たちがたくさん入社してきてくれて、専門的な支援がLITALICOジュニアのスタンダードの中にしっかりと入ってくれば、より多様なお子さまの困っている悩みを解決していけると思います。今の福祉の現状は、たまたまいい支援者に出会えたという人がいる一方で、そもそも支援にアクセスできない人も多い。幅広く誰もがちゃんと求めている支援にアクセスできる社会をつくっていく必要がある。そのために自分ができることとして、専門職人材の採用などに取り組んでいます。」
後藤がLITALICOで実現したいと考えているのは、1人の支援者に依存することなく、誰もが等しく必要としている支援にアクセスできる世界である。
「LITALICOの支援のいいところって、その人に依存しない支援をつくっていることだと思うんです。たまたまその人がいたからとか、たまたまPTの僕がいたからとか、そういうことじゃなくて。通所してきたお子さまたちみんなに同じ支援を届けられる施設が全国で100拠点以上あるって大きなことだと思っています。その中に、僕たちセラピストの専門性も組み込んでいけたらいいなと思っています。結局、どんな支援者も一人で一生お子さまを見ることはできないじゃないですか。だからまずはスタッフ同士の連携からはじめて、いずれは地域や家族を巻き込んで、みんなで同じ支援を届けられる世界がつくれたらいいなって思ってます」
▼向かっていく方向が一緒であればルートはいろいろあっていい
明確なビジョンと目標を持ってひたむきに突き進む後藤だが、キャリアについては多様な可能性があってもいいのではないかと考えている。
「支援としては、幅広い人に必要な支援をしっかり届けていくためのスタンダードを確立することが重要だと思うのですが、キャリアは多様であっていいと思うんです。いろいろな人がいろいろなスタンダードをつくってくれたら、スタンダードの幅が広がるんじゃないかと思っていて、僕自身もそういう可能性をちゃんと見せられたらと思って、早期での教室長への挑戦や教室長と採用業務の兼務など色々挑戦してきました。そういったキャリアの幅をこれから入ってくる人たちにどれだけみせられるかだなって。」
PT OT STなど専門職人材の中で、児童福祉分野の認知度はまだ低く、どんな仕事ができるのか、どんなキャリアが描けるのか分からないという人は多い。後藤は、児童福祉分野の中で、専門職人材が活躍できるチャンスはまだまだたくさんあると感じている。現場の潜在的なニーズを拾い上げて、専門職人材が関わることでもっといい支援を届けられるということをこれからも発信していきたいと考えている。同じビジョンに向かって歩む仲間を探すための旅はまだはじまったばかりだ。
「向かっていく方向が一緒であれば、どんなルートで行ってもいいんです。逆にそこはみんなが同じより、いろんなルートがあった方が幅があって面白いと思ってます。」