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東京藝大を卒業後、映画監督を目指し映像制作を行った彼が、外資系物流企業→商社を経て、次の舞台に「地方共創」を掲げるFoundingBaseを選んだ理由とは?

吉井 和之(Yoshii Kazuyuki)/Contents Director / 平生team
1982年生まれ。大阪府藤井寺市出身。
北海道大学卒業、東京芸術大学大学院修了後、フリーランスにて映像制作活動。
その後、外資系3PL物流企業2社を経て商社の物流部門企画職に就く。
2022年10月にFoundingBaseへ入社。山口県平生町にて関係人口創出事業に携わる。

藤井寺市から札幌市へ。北の国に憧れて。

走る車は和泉ナンバーの大阪府は南河内、夜毎暴走族が我が物顔で町を占領し、警察が取り締まることの無意味を悟った藤井寺市の片隅で高校卒業までを過ごした私には夢がありました。
雪国で暮らしたい。出来るだけ治安のよろしい、シンとした美しい街で 大学4年間をエンジョイしたい。免許を取ったら憧れの札幌ナンバーのレンタカーで北海道を回ってみたい。このようにして1年間の浪人生活を経て私は北海道大学へ進学しました。

大学では映画研究会なるサークルに所属し、勉学よりも映画制作こそ学生の本懐と勘違いし、来る日も来る日も映画のことを考えて過ごしており ました。

そろそろ北海道の寒さにも嫌気が差してきた3年生の冬、映研の第二の部室になっていた居酒屋のテレビから、東京藝大にて映像研究科創設なる一報が筑紫哲也のニュース23に乗って私の耳に届きました。
ニュース画面に映る錚々たる教授陣の中に黒沢清の名前を見つけた私は、この人に師事出来るならと、サラリーマンになることよりも藝大生になることをその瞬間選択していました。

一部札幌の映画制作仲間の中で注目されつつあった(と記憶している) 田舎者の私は、東京の映像作家なんぼのもんじゃい精神を武器に大学院試験と称した異常な実技テストを見事潜り抜け、面接で憧れの作家はと問われ目の前の黒沢さんですと答えた蛮勇が功を奏し、国立大学としては最低の就職率であることを誉とする東京藝大へと進学いたしました。

札幌市から横浜市へ。映画監督さなるべ。

東京は上野ではなく、神奈川県横浜市の馬車道に映像研究科の校舎はあります。自らを「はまっこ」と称す横浜市民の一員となった私にとって、大学院での2年間はまさに映画スタジオで寝泊まりするかのような、映画漬けの日々でした。

藝大120周年を記念した日韓合同制作の監督に選ばれ鼻を高くしていた私は、大学院卒業後も疑うことなくプロの映像作家として生きていけるとタカを括っておりました。
文化庁が推進する映像作家育成事業にも選抜され映画を撮る機会に恵まれたまでは良かったのですが、如何せんフリーランスの映像作家として食べていけるほどの仕事にはありつけていません。

普段はアルバイトを掛け持ちしながら、映像の仕事があればそれに集中する。そんなふうにして過ごしていると、いつの間にか20代も後半に差し掛かっておりました。

学生時代の友人や後輩たちが、立派に社会で活躍 しており、年末になると結婚しましたやら子供を授かりましたやらのおめでたい年賀状が手元に届きます。いつしかおせち料理の味も忘れ、映画という夢を食べてさえいればお腹いっぱいになれるのも年齢制限があるらしいことを学び、私は今更ながら立派なサラリーマンに成りたいと考えるようになって おりました。
吉井君もそろそろ社員になってみない?とバイトリーダーを務めていた私に外資系物流企業からオファーがかかります。映画監督に成りたいという夢を一旦保留とし、私は時給ではなく月給で働く社会人になりました。

フィリピン、関東を転々と。行ってみたいな、海外駐在。

川崎にある巨大物流センターで、某アパレルメーカーの入荷・出荷作業を現場管理して忙殺される日々が続きます。
月に100時間を超える残業を繰り返し、これが月給で働くということなのかとサラリーマンとしての洗礼を強烈に浴びました。定時は都市伝説であると偽りの教義を刷り込まれる前に、次なる人生のステップに臨むべく語学留学と称しフィリピンへと脱国を果たします。

留学先のフィリピンで30歳を目前に、後の妻(日本人)と出逢います。
20 代は映画を道標に歩いてきました。次の10年は、立派な勤め人として人並みの収入を経て、家庭を築き、定年前にマンションのローンを返済するという目標が新たに現れました。

帰国後は物流✕語学力(疑わしい)を肩書きにして、DHLサプライチェーン株式会社に転職します。勤務先に合わせて転々と横浜市→品川区→大田区を経て、千葉県は柏市へ転居。子供が生まれると年賀状にマイホームで撮った家族写真を載せ、おめでたい気持ちを友人たちと共有することができるようになりまし た。

物流現場を走り回るということが一通り板についてくると、顧客コンサルティングを通して企業課題の抽出・あるべき姿の設定・数値指標に沿った事業計画策定といった管理業務を任されるようになっていました。
現場マネージャーとしてキャリアを築いていくのか、それとも新たな挑戦をするのか迷った矢先に、海外物流拠点での現地駐在職という商社からのオファーが舞い込んで来ました。それも悪くない。フィリピン以来全く使っていない錆びた語学力(そもそも鈍刀)で、海外にチャレンジしたいという気持ちが芽生えます。

柏市から平生町へ。地方共創って何ですの?

2019年12月に東京飯田橋にある株式会社ミスミグループ本社の物流部門企画職に転職。年明けから始まる海外と日本を往復する生活を見据えスタサプ英語アプリでイメトレを繰り返していたところを、コロナ禍に見舞われます。

海外拠点から続々と社員が引き上げ、日本から新たな駐在員の派遣は当面凍結。私の勤務先は飯田橋から自宅リモートワークとなり、半年でサプリは解約となりました。
電車通勤が当たり前だったこれまでの生活がいっぺんし、家族との時間、食や健康への取組みなど今まで私が疎かにしていたものに注意を向けるようになりま した。家族にとって自分自身にとって理想の環境を考えたとき、地方での生活風景が頭に浮かびます。

「自由」をアップデートするという一風変わったミッションを掲げた地方共創ベンチャーを知り、大阪の母と珍しく人生について相談します。
私が映画を諦めたとき、後悔はなかったかと母が問います。藝大同期の友人がアカデミー賞を受賞しオスカーを手にしている姿を目にしても素直に納得できたこと、これまでに築いたキャリアと結婚し娘を授かった選択に間違いはなかったと答えながら、すでに心は地方共創に移っていることを自覚しました。

FoundingBaseでの面接の際、住むなら暖かいところがいいと無邪気に答えた結果、2022年10月からの生活は山口県の平生町ということになりました。
単なる地方創生ではなく共創としている点にFoundingBaseならではの価値と面白さがあります。千差万別の地域が抱える課題の本質を、実際に移住し生活する中で発見し言語化する。行政と民間の顔を使い分けながら、あるべき地域の将来像を描きその差分を埋めるために自らの手足を動かすという刺激的な日々を、穏やかで自然豊かな平生町にて送っています。
地域とともに自分自身の人生に変化を起こし、その過程を愉しむことに仕事の魅力があります。平生町の美しい夕日を眺める何気ない瞬間に、自分なりの「自由」がまた一つアップデートされた気がしました。


現在の役割と描く未来

2023年4月からGM職としてスペース&ツアー事業を管掌することになりました。山口県平生町以外に、京都府宮津市、北海道富良野市、北海道美幌町が同じ事業組織となります。道の駅事業でも観光事業でもなく字面だけだとなんだか実態がつかみにくい事業ですが、私達は事業MISSIONを「共創の起点となって生産人口を最大化。地域課題を“魅力“に変えて、地域との接点を創る」と定義しています。
 スペースとは定住人口に向けて何か始めてみようというきっかけを提供する事業。ツアーとはそのきっかけをコンテンツに変えて交流人口に向けて発信する事業。この2つの事業をぐるぐるまわすことで、関係人口(=地域のプレーヤー、生産人口)を最大化し地域の活性化に貢献するというVISIONをもって活動しています。

 事業に取り組む中で気づいたこと。それは、私達が真に取り組むべきは顕在化した地域の魅力を広めることではなく、実際に地域に移り住まないと見えてこない潜在的な地域課題をいかにマチと共創して新たな魅力へと変えていけるのかという挑戦の中にこそあるということでした。そんな問題意識を持って自らが住むマチを眺めた時、人気がない限界集落のバス停や荒れ果てた耕作放棄地の中に、思いも寄らない地域活性化のきっかけが隠れていることに気づかされます。

FoundingBaseの社員はみな関係人口という立場で地域に入り、地域おこし活動に携わります。地方共創を行いながらも、いかにその地域に根付き継続した収益性のある事業を起こしていけるのか関係人口で有り続けることが出来るのか、その戦略を描くことにGMとしての責任があります。入り口は関係人口創出を掲げてマチと関わることになりますが、3年後の事業の姿(出口戦略)は地域によって実に様々です。
地域商社のように地元の事業者の流通を支える仕組みを構想したり、未発掘の観光資源を掘り起こしたり、教育や道の駅事業に幅を広げたりと、地域の数だけ出口=“未来“は異なります。
GMという立場から見える「“自由“をアップデートする」意味とは、より多様な地域の未来を描き、選んだ未来への道筋を示すことにあると考えています。

株式会社FoundingBaseでは一緒に働く仲間を募集しています
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