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私たちが、各地域で実際に事業を進めていく中で、とても大切にしているスタンスが、「地方共創」です。アドバイザーでもコンサルタントでもない私たちは、一人のプレーヤーとして実際に地域に移り住み、モノ・サービスの創造や活用といった地域経済を創り出すことに取り組んでいます。
今回ご紹介する事例は、岡山県吉備中央町で運営している、町営塾kii+と町内の方の偶然の出会いから始まり、共に創り上げていった「公開探究授業〜音楽編〜」についてです。
吉備中央町内で2020年に音楽事務所をオープンされた、山名明日香さんと森安高廣は、これまでにどんな経験をして、今どんな想いを持って活動されているのか、また、kii+がイベントを開催する上で大事にしたかった考え方、についてお伝えします!
山名明日香さんは、ご両親が吹奏楽をしていた関係で、幼少期〜大学時代にかけて、様々な音楽のジャンルに触れて育ちました。
小さい頃の山名さんが、スーパーの買い物カートの上で、店内に流れるBGMに合わせてリズムを刻んでいた様子を見たお母さんは、すぐに娘を音楽教室に連れて行ったそうです。
長い年月をかけて音楽の楽しさや魅力を感じていた一方で、自分よりも遥かに才能のある人たちに囲まれ、だんだんと音楽を前のように心から楽しめないようになっていきました。さらに、大学の卒業、就職、出産を経る中で、日々の多忙さに追われ、山名さんが音楽活動に関わる機会はどんどん減っていきます。
家族と子どもがいる人生はもちろん幸せでしたが、一緒に生活している子どもも自分も、どこか幸せになりきれていないと感じていました。そんな時に、山名さんが思い出したのは、自分がまだ小さかった時のお母さんの姿です。
趣味を我慢して子育てに専念している母の姿や自分の好きなことを我慢して過ごしている母の姿を見ていると、どこか申し訳なく、もっと自由に生きてほしいと心から願う気持ちになっていたそうです。
思い返せば、今まさに自分は小さい頃に見ていた母と同じ背中を子どもに見せてしまっている、ということに気がつきました。まずは自分が幸せに生きている姿や、自分の好きなことに熱中している姿、を見せることが子どもの幸せに繋がる、ということに気がつきました。
こうして再び音楽の世界に夢中になり始めた山名さんは、音楽を通して自分を表現すること、そして、自分が好きなことに真っ直ぐ向かう人を増やすこと、を目指して、日々活動されています。
小さい頃から自分が好きなことには迷わず突き進むタイプだった森安高廣さん。
中学時代の吹奏楽部では、トロンボーンを演奏していた森安さんですが、コンクールやコンサート会場で、いつも注目していいたのは「指揮者」でした。心のどこかでずっと指揮者に憧れを抱いていたのか、家で自作の指揮棒を作り、音楽に合わせて指揮の練習をしていたそうです。
この頃から、自分は音楽のプロとして活躍をしていきたいと考えていた森安さんは、大阪の音楽大学へと進学し、実力者が揃う非常に厳しい音楽大学の環境の中で、授業のわずかな合間をぬって、毎日8時間以上の練習に励み続け、オーディションの前には吐くまで練習を繰り返したと言います。
森安さんの地道な努力が実り、大学卒業後には、ついに、プロのオーケストラとして活動することになりました。自分の夢を叶えるために、ひたすら努力を積み重ね、道を切り拓いていった結果、掴み取ったプロのチケットでした。
プロとして活動していた森安さんが実家に帰省をしたある日、たまたま大学時代の恩師と再会をし、高校の吹奏楽部の指導者の提案を受けます。
県内でも弱小だった中学校で始まった指導でしたが、森安さんの熱い指導の元、2年目には県の代表まで勝ち上がれるように。これまで積み重ねてきたプロとしての知見と経験を生徒にどう伝えるのか、そしてどう日々の練習に繋げていくのか。そこを常に考えながら、コンクールという大きな目標に向かって走り切るビジョンを立てていたそうです。
そんな経験を重ねていく中で、森安さんは、プロの演奏者から指導者へと少しずつ軸足を移していきます。
そんな想いと経験をもったお二人は、2020年に、吉備中央町で「山名音楽事務所」を設立します。お二人が音楽イベントをいくつも開催する中で、参加者の方々に伝えたいことは、
「あくまでも音楽は一つのツールであり、人々の繋がりを作り出してくれる存在である」
ということです。
様々な角度から音楽に触れてきた山名さんと、プロの世界でしのぎを削ってきた森安さんは、多くのマナーを重視することなく、障がいを持った子どもや赤ちゃんを連れた保護者など、誰もが楽しく自由に音楽を楽しめる場所を自分たちで作り出し、「音楽の聞き手側の多様性を拡げること」を目指しています。
音楽づけの日々を送られてきた山名さん、森安さんとkii+の出会いは、町内で開催されたあるイベントでした。
もともと町内の子どもたちにも活動の輪を広げていきたいと考えていたお二人。
「難しく考えず、もっと気軽に音楽に触れてほしい。自分を表現する一つの方法として音楽を楽しんでほしい。」町内の子供たちに対して、そんな思いを抱かれていたお二人とお話させていただく中で、町に対する熱い想いを感じ、もともとkii+で企画していた「公開探究授業〜音楽編〜」での協働を提案しました。
日常的に町内の生徒に向けて、「どうして?」「なんで?」という好奇心を刺激し、科目授業とは異なる切り口から社会のワクワクを届けているkii+と、音楽の世界で、プロとして活動されてきたお二人が共にコンテンツを創り上げることによって、参加してくれた生徒や町の方々に、音楽というものをより身近に、そしていつもとは違う角度から一緒に考える時間を提供することができたのではないかと思います。
表面的な関係性で終わらせることなく、自分たちの想いを相手に正しく伝えること、相手の想いを汲み取って協働できる道を探していくこと、このような日常に転がっている小さなやりとりを、大きなチャンスと捉え、一つ一つ信頼を積み重ねながら「仲間」を増やしていくことを大事にしています。その小さな信頼を重ねていくことが、地域の未来を町全体で「共創」していく土台を創り出す一番の近道だと思っています。
私たちはあくまでも、一人のプレーヤーとして日々活動しています。
正直、私たちの力だけで町全体を動かすことはとても難しいです。しかし、今回のイベントのように、町にいる「仲間」たちと共に未来を創り出していくことで、道が拓けると考えています。
kii+ではこれからも、町の方々の魅力を活かしながら、よりよいコンテンツを生み出していきます。そして、kii+を介して交わる生徒と大人の繫がりの中で、生徒が日常的に関わる大人以外の姿や人生を見せる機会にしたいと思っています。