「私はチャレンジが大好きなんです。とにかく難しいことを解決したい。怖いという気持ちがないわけではありませんが、それが全く気にならないほど、チャレンジしたい気持ちが強いんです」
エクサウィザーズで活躍する”ウィザーズたち”を紹介するストーリー。
中学生にして壊れたパソコンを自分で直してしまうなど、ものづくりに夢中だった香港出身のエンジニアWingKitさん。カナダのスタートアップやビズリーチを経てさまざまな規模の現場を経験してきたWingKitさんは現在、エクサウィザーズでAI予測分析ツール「HR君 Analytics」とAI利活用やDXを推進する法人向け会員サービス「エクサコミュニティ」のテックリードを務めています。開発において大切にしていること、今後挑戦したいことを聞きました。
■ プロフィール CHAN Wingkit(ちゃん・うぃんぐきっと) 香港科技大学で計算機科学を専攻。京都大学に交換留学。その後、香港科技大学で情報技術理系修士の学位を取得。次に香港のスタートアップ 会社Corbel Systems Limited ソフトウェアエンジニア として入社し、職場管理システム「Workplace」ゼロから作り上げます。次に日本のビズリーチに移り、採用管理システム「HRMOS採用」のシステム開発などに携わる。2019年、エクサウィザーズへ。
ものづくりを愛し、自作PCにはまった中学時代 ゼロからものをつくりたい──。
ガンダムが好き。プラモデルが好き。2019年10月にエクサウィザーズにジョインしたエンジニアWingKitさんは、ものづくりを愛するごく普通の少年として香港で生まれ育った。
頭角を表したのは、WingKitさんが中学生の頃。動画編集がまだ一般的なスキルではなかった1990年代に自ら動画編集ソフトを開発。卒業生の写真や動画を集めて編集し、大勢の前で上映したことがあるそうだ。
また、使っていたパソコンが壊れると、必要な部品を購入してたった一人で修理してしまった。それがきっかけで自作PCの製作に夢中になり、今も会社支給のノートPC以外はすべて自ら組み立てたPCを使用している。
そんなWingKitさんがエンジニアを志し、香港の大学の工学部へ進学したのは自然な流れだった。彼が日本と深い接点を持ったのは、京都大学への半年間の交換留学だった。日本に来たのは、エンジニアリングとは別の理由があったという。
「日本のアニメが好きだったんです。特に、SFやロボットが登場する、『ガンダム』や『コードギアス』、『PSYCHO-PASS』などです。日本にきた一番の理由はそれでしたが、実際に生活してみると、アニメ以外にも日本の好きなところをたくさん見つけました。例えば、香港よりも賃貸の部屋は安くて広い。礼儀正しい人が多いので、安心して過ごせる。卒業後にもし機会があったら、いつか日本で働いてみたいと思いましたね」
大学生のWingKitさんの心に、日本での暮らしは深く印象に残ったのだろう。「学生寮から大学までの20分間、鴨川沿いを毎日自転車で通っていたのですが、あれは本当に気持ちよかったですね」と、懐かしそうに当時を振り返っていた。
魅力的なのは「ゼロからものづくりができる環境」 WingKitさんが1社目に選んだのは、業務管理システム開発を手掛けるカナダのスタートアップCorbel Systems Limitedの香港拠点だった。
「立ち上がったばかりのスタートアップなら、ゼロからものづくりができるはずだと思った」とWingKitさん。その言葉通り、WingKitさんはシステムをゼロからつくり上げていく。その後、開発チームのリーダーとなり、技術選定やアーキテクトの構築を担当。徐々に安定稼働のフェーズへと移行していった。
入社して6年、WingKitさんの心の中には「同じシステムを扱い続けるのではなく、場所を変えて新しい勉強がしたい」という挑戦心が湧き上がっていた。WingKitさんが次なるステージに選んだのは、エージェントに紹介されたビズリーチだ。
「私が転職した2016年は、ビズリーチがちょうどATS(Applicant tracking system:採用管理システム)の「HRMOS採用管理(現HRMOS採用)」を立ち上がったばかりで、またシステムをゼロからつくり上げていけそうでした。あの頃の私は新しいチャレンジに飢えていたことに加え、できるだけ難易度の高い業務がある職場で働きたかった。それができるのは日本であり、ビズリーチだと思ったんです」
日本で働くという学生時代の夢を叶えたWingKitさんは、AIをシステムに組み込むノウハウを得て、初めての大規模開発も経験。プロジェクト管理やスクラム開発のスキルを高められたのは、特に大きな収穫だったという。
しかし入社してしばらくは、日本語のコミュニケーションの壁に苦しんだ。意図が誤って伝わってしまうようなことがあれば致命傷になりかねない。大規模開発ならなおさらだ。
「当時は今ほど日本語が話せませんでした。今でも覚えているのが、ある会議で『期限』を『キケン』と発音してしまったこと。参加メンバーに『何がそんなに危険なんだろう?』と思わせてしまったんです。その後はできるだけテキストを併用して正確に伝えるようにしましたが、コミュニケーションには本当に苦労しましたね」
難しい日本語に苦労しながら、大規模開発にチャレンジし続ける。一体何がWingKitさんの原動力だったのか。そう聞くと、あっさりとこんな答えが返ってきた。
「 私はチャレンジが大好きなんです。とにかく難しいことを解決したい。怖さががないわけではありませんが、それが全く気にならないほど、昔からチャレンジしたい気持ちが強いんですね 」
根底にあるのは、他のエンジニアへの思いやり WingKitさんの中で再び新たなチャレンジへの意欲が高まり始めたのは、ビズリーチで3年が過ぎようとしていた頃だった。
AIやIoT、ブロックチェーンなどの新技術の領域でさらに経験を積みたいと考えていたWingKitさん。エージェントから複数の企業を紹介された中で出会ったのが、エクサウィザーズだったという。
「『投資用AI』のように、一つの分野に特化したシステムを開発している会社も面白そうだと思いましたが、エクサウィザーズは、金融や人事、介護などの幅広い領域に事業を展開して、様々な分野に挑戦できることが魅力に思えました。自分の開発したものを世の中に広く役立てられるのは非常に魅力的でした。
さらに「社会課題の解決」をミッションとしている点にも惹かれました。私自身、エンジニアの仕事を始めてからずっと、『自分のつくったものを社会の役に立てたい』と思ってきたので」
エクサウィザーズに入社して1年半が経った。WingKitさんは今、「HR君Analytics」「エクサコミュニティ」の2つのプロジェクトに所属し、その両方でテックリードを務めている。仕事で最も心がけていることを聞くと、 その答えはチャレンジ精神旺盛なWingKitさんの返答としては少し意外な、硬派なものだった。
「 技術負債を抑えることです。ものづくりは速さだけではなく、品質がとにかく大事。そこをおろそかにすると、将来メンテナンスする人が困りますから 」
そう考える背景には、自身の苦い経験がある。
「Corbel Systems Limited時代では、まだ経験が浅かったので、1年目の頃に私自身が技術負債を作り出してしまっていました。2年目、3年目になったときに自分自身でそれを解消するリファクタリングをしなくてはならず、大変な思いをしたんです。こういう思いはもう二度としたくない。自分だけでなく、他のエンジニアにもさせたくない。将来のメンバーや現在の同僚のためにも、コードの品質は非常に大切にしています」
WingKitさんは現在、「HR君Analytics」チームにガイドラインを導入するなど、コードスタイルの統一を図ることで技術負債の発生防止に努めている。徹底した品質へのこだわりは、同じシステムに関わるエンジニアへの思いやりがもたらしていた。
今後の目標を聞くと、「今までにないAIの使い方をして、社会課題を解決してみたい」と話してくれた。日本の労働人口不足を解決する仕組みづくりに貢献したい想いがあるそうだ。しかし、根本的にモチベーションとしているものは、今も昔も変わらない。
「やっぱり私は、新しい技術にチャレンジし続けたい。もし自分で企画してシステムをゼロから立ち上げられる機会があったら、それが一番嬉しいですね」
ゼロからものをつくりたい。そのときに、できるだけ難しい課題を解決したい。パソコンづくりやソフトウェア開発に無上の喜びを感じていた少年の心は、今もWingKitさんの中に生き続けている。
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