「いい会社と繋がれました! また来る!」 作業着姿の男性がそう言いながら、笑顔で手を振る。今回は、そんな光景を何度も作り出す出会いの場をご紹介します。
コロナ禍を経てオンラインのマッチングサービスが一般化した現在。会わなくても受発注ができる時代に、クラフトバンクはあえて「直接顔を見る出会いの場」を作っています。その名もずばり「職人酒場」!
建設業界のデジタル化で職人の地位向上を目指すクラフトバンクが、なぜ今リアルイベントを手がけているのか? どんな思いで企画・運営に取り組んでいるのか? 溌剌とした笑顔が魅力的なイベント運営責任者、八木橋さんにお話を聞いてみました。
人と人の出会いを紡ぐ「職人酒場」という場所
職人酒場ってなんですか?
北は北海道から南は福岡まで、現在全国11都市で毎週開催している、建設工事会社向けのビジネス交流イベントです。基本的には先着50〜100名ほど募集しているのですが、募集開始から1ヶ月程度で埋まるほどに認知されてきました。
職人酒場のコンセプト「一夜で十年付き合える元請・協力会社が見つかる」に惹かれて応募される方も多いですね。実際に良い出会いに恵まれたことで満足して、何度も参加してくださる方もいらっしゃいます。最近では、未開催の地域からも開催要望の声が届くようになりました。
(写真:八木橋さん)
「職人酒場」を始めた経緯は?
もともとクラフトバンクでは、元請会社と協力会社をマッチングするサービスを提供しています。しかし建設業界では、懇意な工事会社に発注をするのが一般的。元請企業からすると、ネットで見つけただけの業者の情報は鵜呑みにできないし、オンラインでは信頼関係を築くのが難しいと感じる方が多いようでした。
同じく工事会社の方も、人手や技術が足りない時の協力会社探しで同様の課題を抱えていて、悩んでいるという声も聞こえていました。
ネットの便利さもみなさんご存じではありますが、それでも現場主義で仕事されている建設業界の方々にとって「直接会い、顔を見て話す」ということはすごく価値のあることなんです。
コロナ禍で出会いの場が軒並み無くなってしまった今だからこそ、そうした「直接顔を合わせて話したい」「人柄まで知った上で受発注したい」というニーズ・期待に応えたい。そんな思いで始動したのが、職人酒場です。
(写真:職人酒場の様子)
出会いのチャンスに交流し尽くしてほしいから
運営する上で工夫していることは?
ネットでは伝わらない魅力をしっかり伝えられるような、濃いコミュニケーションの場にしたいと思って、試行錯誤を重ねています。
たとえばコロナ前に当社主催で実施していた「向上委員会」というイベントでは、100人が余裕で入る規模の大きな会場を借りて、イベントスポンサー企業に代表講演をしてもらっていました。参加者は着座したままそれを聞き、その後で交流してもらう流れです。
それを、まず参加者全員に順番に前に出てきていただき、自己紹介プレゼンをしてもらう流れに変えました。わざわざ会場に来てくださったみなさんが会いたい人にちゃんと出会えるように、アピールタイムが必要だと考えたんです。
さらに参加者のみなさんの社名や工種を記載した「参加者リスト」を作成して、受付時に配布しています。アピールを聞いているみなさんが参加者リストにメモをして、誰から話しかけようかと作戦を立てている姿があちこちで見られます。
席も着座だと自由に交流しにくい面があるので立食形式にし、最初は似た工種ごとに集まってもらう形にしました。近い業務をしていらっしゃる企業さんだと、知っている方がいることもあるし、深い仕事の話ができるので盛り上がりやすい。そこで気持ちをほぐしていただいてから、他のテーブルにいるお目当ての方に話しかける勢いをつけてもらっています(笑)。
また、会場にさまざまな工種の方をお招きできるように意識しています。一言に職人と言っても、クロス屋さん、左官屋さん、資材屋さん、足場屋さんなど多彩ですし、それぞれ求める出会いも違います。多様な工種の職人が集まることで、職人にとっても、元請会社にとっても、魅力あるマッチングの場になると考えています。
参加者の方は、どんな出会いを求めているのでしょうか?
職人酒場に参加される方のニーズは、主に次の3つがあります。
1、元請会社と出会いたい
2、協力会社と繋がりたい、繁忙期にお仕事を融通しあいたい
3、経営者同士で語り合える仲間がほしい
参加者がどの目的で来てくださったのかを把握して、バランスよく話せるようお声がけをしています。ここがまさに、私たちのウデの見せ所!
最初の自己紹介タイムでアピールの時間をとっていますが、参加者はお話上手な方ばかりではありません。自社の魅力や会いたい相手を伝えきれていない場合もあります。緊張や遠慮で会いたい人に話しかけられなかったり、名刺交換の順番待ちに躊躇してしまう人も少なくありません。
そういう方には積極的に話しかけて、私たちが話したい方とお繋ぎします。時には「行っちゃいましょ!」とぐいぐい背中を押したり、マイクを使って「〇〇様いらっしゃいますか? △△様がお話されたいそうです〜!」と呼び出したり(笑)。
参加者の方から、「あの会社の人に紹介して欲しい」と頼ってもらえることもあって、今のところ「繋がりたい会社さんと繋がれなかった」という不満の声はありません。手厚いフォローができていると自負しています!
最初は照れたりしながらも、参加者の方が新しい出会いを広げられている姿を見ると嬉しいですね。
参加者の反応は?
参加者の方からは「普段出会えない、大きな案件をやってる会社と出会えました」とか、「前回参加したら早速発注もらって、また来たんです」という声をいただいています。本当に嬉しい限りです!
一般的な交流イベントでは、「業種ごとの内輪ノリで終わったり、他社の成功事例を聞いて終わっちゃうこともある」という声を聞くこともあるんですが、職人酒場は誰もが主役になれる場所。特定の人にだけスポットライトが当たる場ではなく、参加者全員がいい出会いに恵まれる場になればいいなと思ってやっています。
参加されたみなさんの表情って、会場にいらした時と帰る時で全然違うんです。最初は緊張した様子で相手の出方を伺っていた方も、お酒が入ってくると段々盛り上がってきて「楽しかった〜!またくるわ〜!」と嬉しそうに手を振ってくれて! 中には「おかげでいい会社と繋がれました! ありがとう」と握手を求めてくれる方もいて、私も嬉しい気持ちでいっぱいになります。
交流イベントはすごくアナログなコミュニケーションですが、実際に会うからこその熱量も感じられ、より深い信頼関係を築けているなと感じています。
夢は大きく全国制覇!
フラットな立場だからできる場づくり
職人酒場の1番の強み・魅力は?
どこか特定の業界や都道府県が開催しているわけではなく、第三者のイチIT企業が先陣を切っているところ、ですかね。フラットな立場の私たちが、このイベントを主催していることに意味があると思っています。
特定の立場に偏らずに、つながりの場を作ることは意義のあること。シンプルなイベントを通じて元請会社と職人さん、工事会社と協力会社の良い出会いがあれば、業界特有の多重請負構造や賃金問題から抜け出す一歩に繋がります。
元請会社と職人の「正しい出会い」の場があれば、職人の地位・報酬向上につなげられるはず。だから職人が主役になる職人酒場って、エモいイベントだなって思うんですよね。
発注する側もされる側も主役になる場を作ることは、業界をより魅力的にして職人を豊かにするというクラフトバンクの目標にも直結しています。業界のペインに対して、リアルとオンラインの両輪で戦っている会社は唯一無二。私たちにとって、職人酒場はすごく大事な位置付けにあるからこそ、本気で取り組んでいます。
(写真:酒場の片隅には相談ブースも設置)
これから「職人酒場」をどう育てていきたいですか?
とりあえずやってみよう!という感じでスタートした職人酒場ですが、「うちの地域でもやって欲しい」「エリアで人集めるよ」と言ってくださる社長さんもいて、開催地候補がどんどん増えています。
もちろん、地方都市ではまだ東京ほどの認知はないので、各地域のお客様にご協力いただいたり、集客の電話をしながら参加者を集めることもあります。でも、その際の反応はかなりいいし、開催後の手応えもすっごくあって。職人酒場のニーズは、全国にあると感じています。
今年は北海道から福岡まで全国16都市で職人酒場の開催が決まっていますし、これからさらに頻度を増やして、週2回開催(主要都市+地方)でやっていきたいと思っています。企画運営は大変ですが、「苦労はあっても職人さんたちのために!」という熱い気持ちで挑戦を続けています。この気持ちと勢いがあれば、職人酒場を通じてもっとクラフトバンクを知っていただけるし、業界の中で突き抜けた存在になれるんじゃないかと思うんです。
今後はもっと、職人酒場での偶然の出会いや実際の空気感を、SNSなどでどんどん発信していきたいなと思っています。建設業界に対して訴求していくことはもちろんのこと、他業界の方の目にもこの盛り上がりを届けることで「面白そう!」「建設業界、いいじゃん!」の輪を広げていければ嬉しいですね。
先日、社内で職人酒場の未来会議をしたのですが、野心的な意見もたくさん出て来ました。「全国の職人たちを手伝うために、47都道府県制覇!」「2年後には東京ドームで、都道府県を超えた大・職人酒場!」なんて声も(笑)。ちょっと壮大すぎるけど、実現できたら建設業界は絶対おもしろくなる! そんな想いを胸に、これからも頑張ります!
最後に、どんな方に仲間になってほしいですか?
職人の交流・業界・地域を盛り上げたい方や、いろんなアイデアを試すバイタリティがある方と、ぜひ一緒にやっていきたいです!
職人酒場の運営担当業務のおすすめポイントは、ご当地の美味しいご飯を打ち上げで食べられること(笑)! 運営側の一体感があって、毎日が文化祭前夜!って感じです。セールスのメンバーも含め、全社一丸となって職人酒場を良くしようと頑張っているので、どの職種で働くことになっても「一緒に作ってる感」が味わえるはずですよ。
それに、クラフトバンクでは「こんな事業をやりたい」と手を挙げれば任せてくれる社風があります。やりがいは間違いなく120%あるので、業界を変えていくために一緒にやりたいと思ってくださる方がいたら嬉しいですね。
これからも「パッション・ミッション・エモーション」って感じで走り続けますので、やってみたい気持ちでうずうずした方がいたら、ぜひぜひお気軽にお声がけお願いします!
(執筆・撮影:青柳ゆみか)