日本海の隠岐諸島に位置する島、海士町。
人口約2300人のこの離島には、なにかの引力がはたらいているかのように、
多様なバックグラウンドを持つ人々が引き寄せられ、生活をしています。
離島の営みを紹介する連載「わたしの離島Life」。今回は、Entô Diningの徳岡あやなさんを紹介します。食材の仕入れから朝食メニューの開発まで、多岐にわたって活躍する彼女に離島でのライフスタイルについてお伺いしました。
Profile:徳岡 あやな(とくおか あやな)
鳥取県鹿野町出身。調理師免許を取得後、料理人として結婚式場のコース料理を担当。その後オーガニックな料理やデリカテッセンを提供するカフェレストランにて調理やマネジメントを行った後、Entô Diningへ加入。生産者との関係性を築きながら、Entô Diningのマネジメントを行う。
主にEntô Diningで、朝食とディナーを担当しています。日々のゲスト対応だけでなく、新メニューの考案・試作を行ったり、朝から漁港に仕入れにいったりもしています。株式会社海士に入社する前は、ブライダル業界と飲食業界で合計10年以上働いていました。飲食業界では、新メニューの開発や新店舗のオープニングにも関わり、多岐にわたる経験をさせていただきました。
もともと接客が好きだったので、自分のスキルを活かしながらお客さんとも話せるこの仕事がとても楽しく生活は仕事中心になっていました。しかし、コロナが流行りだしたタイミングで私生活の充実についても考えるようになり、離島に暮らしながらおもてなしをする、この海士町に引っ越してきました。
10年働いたお弁当屋さんから、離島のホテルEntôへ
鳥取県鳥取市、鹿野町出身で、海士町と同じくらい田舎町出身です。学生時代は、調理師免許が取得できる学校に通っていたので、将来は大きな厨房で働くんだろうな、と想像していました。最初に入った会社はウェディング業界で、その次はお弁当販売やカフェ運営など、飲食業を中心に展開している会社に転職しました。
10年ほどそこで勤務をしていた頃、コロナウイルスが流行りだしました。お弁当屋さんだったので、その頃急にテイクアウトのお店が増えてきたことが印象に残っています。顧客も、団体客から個人客がメインになり、どうやって既存のお客様に買い続けてもらうか、戦略を練る毎日でした。一方で、おうち時間が増えて1人で考える時間も増え、このタイミングでどこかまた別のところで働いてみるのもありなんじゃないかと考えるようになりました。
10年も働けたほど環境もよく仕事も好きだったのですが、その分やりすぎてしまう仕事中心の生活になってしまっていました。また、やりたいことはあるのですが日常に忙殺されてそこまで手が出せないな、ということにも気が付いていました。
そこで、タイミングもよかったので新しい仕事を探してみる気になりました。都会は便利で住みやすく、情報もたくさん入ってくるので魅力的でしたが、当時の私にとっては情報が多すぎるように感じていました。なので自然豊かな場所にある職場に絞って探していました。
Entôのことは前から知っていました。鳥取県という地理的にも近い場所で暮らしていたので、SNSやテレビなどで存在を知っていましたが、ふと求人を見てみるとEntô Diningで働くというものがありました。職を改めると同時に、少し深呼吸がつけるような生活も求めていたので、試しに応募してみたのがきっかけです。
オンラインで面談をしてから、実際に「お試し来島」として海士町に訪れたのですが、みなさん言葉は違えど、「馴染めなかったらまた地元に帰ればよいよ」「とりあえず一回きてみたら?」と声をかけてくださりました。また、島の中を案内してもらった際に、島ならではの移動方法だったり、自然の迫力だったりが新鮮なものばかりで面白かったのをおもいだしました。隠岐諸島という土地とそこに集まってきた方たちと実際に出会うことが移住を決めたきっかけになりました。
- 隠岐諸島の自然
多様性のある、ひとが循環する島での暮らし
実際に海士町に引っ越してくると、思ったより様々なバックグラウンドを持っている人が多いことに驚きました。Entô Diningには国籍も出身地も年齢もバラバラなメンバーが働いています。それぞれ、将来やりたいことがあったり、探し中だったり、私のように私生活も大切に働きたい人もいたり、多様性があるからこそそれぞれの「好き」や「得意」を活かして働けています。
日常生活でも多様性を感じることがあります。現在はシェアハウスに暮らしているのですが、海士町の別の事業所(株式会社海士ではなく、複業組合や半官半X)で働いている方と一緒に暮らしています。同じ海士町ですが、別の働き方をしているメンバーと住んでいるので、日々あったことを話すことがとても楽しいです。
シェアハウスでは、お互いの地元から送られてきたものや、ご近所さんにもらったもので皆で料理をすることが多いです。特に、全員がコロナの濃厚接触者になってしまったときは、集団隔離だったので全員が一週ほど外に出られず、あるもので生活して、暇になるとうどんを打つ、という毎日でした(笑)
- うどんを打つ徳岡さんのシェアメイト
- ご近所さんからお裾分けでいただいた新鮮な野菜
もちろん、シェアハウスのメンバーと気が合うかどうか最初は不安ではありましたが、それはみんな同じだろうし、だめだったら帰ってくればいいや、くらいの気持ちできたのでそんなに問題はありませんでした。個人的には、短い滞在でもすごく面白い経験になると思います。
Entôでテイクアウト朝食の開発と和朝食リニューアルに取り組む
Entôでは、Entô Diningで頂ける朝食とテイクアウト朝食の2種類を提供しています。テイクアウト朝食の方は、お部屋で朝食を頂きたい方や、離島のフェリーの時間が朝早い方によくご利用頂いています。
今までのテイクアウト朝食では、島にあるパン屋さんに依頼したサンドイッチを召し上がっていただいていましたが、朝食は和食を好む、というゲストのために今回お弁当を開発することになりました。私が担当したのは、監修に入っていただいているシェフのイメージを聞いてそれを形にすることです。
正直、そのときは職場に合流したばかりでイメージに対する理解度が不十分な部分が大きく上手く開発を進めることができませんでした。イメージが既に出来上がった状態での参加だったので、それを聞いて形にする→修正するの繰り返しの作業でした。実際に出来上がったお弁当をスタッフに試食してもらったときは冷めても美味しいと言ってもらえましたが、ゲストは帰りの船で召し上がられる方も多く、実際の感想が届くことが少ないように感じることが唯一残念なことですね。
しかし現在はホテルにあるEntô Diningにて召し上がっていただく朝食のリニューアルを進めています。こちらは私も1から参加し、現在の朝食を担当しているメンバーと、メニューを監修してくださる外部のシェフと話し合いながら進行中です。ここではお客様の声をリアルタイムで聞けると思うので、朝から元気がでるようなメニューにしていきたいと思っています。
- 最近のEntô Diningでの朝食
私の場合は、ちょうど一息つきたい、と思っていたころに離島、海士町にあるEntôで働くという道を選びました。離島暮らしが楽しめる、自然と暮らしてみたい、という方には向いていると思います。また、私は飲食業で働いていたのでEntô Diningで働いていますが、実は飲食だけではなくホテルの仕事全体に興味があります。入社してからこの半年間は慣れる期間だと感じていて、次年度はよりEntô全体に貢献できるように業務を超えた役割に挑戦していきたいと思っています。