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セブンデックスのBCS事業部で、ビジネスディレクターをしている「すぴすた」こと平井です。普段は大手メーカーのブランド戦略立案や、スタートアップの生成AIを用いた新規事業立ち上げなどを担当しております。
突然ですが、先日のM-1グランプリをご覧になりましたか。まだご覧になってない方は是非ご覧になってください。記憶を消してまた見たいと思うほど、2024年の中で一番笑いました。
(TVerで12月29日までは見れるはず)
2024年M-1グランプリ王者「令和ロマン」
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「お笑い」は人間がAIに勝てる領域なのではないか
M-1グランプリ自体の個人的な感想みたいなものはここでは割愛させていただきますが、日本最高峰の笑いの賞レースを見た後、翻って自らの仕事について考えた時、「お笑い」は人間がAIに勝る高度でクリエイティブな行為なのではないかと気づかされました。
令和ロマンのケムリさんが大学卒業した当時、大和証券副社長の父親にお笑い芸人になる旨と伝えたら「(お笑い芸人は)AIにできない仕事だからいいんじゃない?」と言われたというエピソードは有名ですよね。
令和ロマンのケムリさん
例えば、今回のM-1の中でも、令和ロマンの「凛太郎をビャンビャン麺のビャンみたいにしんにょうで括る」だったり、真空ジェシカの「ピアノがデカすぎるアンジェラアキのライブ」のような発想は、2024年現在の最上位の生成AIモデルを使用したとしても捻り出すことは不可能でしょうし、それをAIが面白いと判断することも困難でしょう。
ビャンビャン麺の「ビャン」の部分の漢字
AIに代替される可能性が高い職業
特に自分の周りだとデザイナーやエンジニア業界では、生成AIの発展によって、「どんな影響があるのか」「仕事がなくなるんじゃないか」「どうやって生き残っていけばいいのか」みたいなトピックスは非常に注目度が高く、度々議論を起こしています。
2024年に内閣府が発行した「世界経済の潮流 2024年 I」の第1章AIで変わる労働市場(第1節)によると、AIの影響度合い・代替性・補完性の観点から以下の3つのクラスターに分類できるようです。
(1)AIの影響が大きく、代替性が高い職業:事務的タスクのシェアが大きい職業。
(2)AIの影響が大きく、補完性が高い職業:事務的タスクのシェアが大きいものの、意思決定の重要性が高く、AI任せとすることが社会的に望ましくない職業。
(3)AIの影響の小さい職業:物理的タスクのシェアが大きい職業。
世界経済の潮流 2024年 I|内閣府
第1-1-10表 AIの影響・補完別の職業(主な例)|世界経済の潮流 2024年 I
(1)のAIの影響が大きく、代替性が高い職業:事務的タスクのシェアが大きい職業には、「15:プログラマー」、「25:ソフトウェア開発技術者(WEB系)」、「33:グラフィックデザイナー」が分類されております。
確かに自分も実際問題ちょっとしたコードやグラフィックであれば、わざわざエンジニアやデザイナーに依頼せず、ChatGPTやAdobe Fireflyを使って生成するようになったので、代替性は高いと言えそうです。
Adobe Firefly
では、お笑い芸人はどうでしょう。この表はアメリカの職業分類で作られているようなので、お笑い芸人が入ってませんが、(3)のAIの影響の小さい職業:物理的タスクのシェアが大きい職業に分類されている「17:舞踊家・演出家」が最も近そうです。ですので、お笑い芸人は、AIに代替される可能性は低いと言えそうです。
惜しくも優勝を逃した舞踊家(?)
AIが人間に「お笑い」で勝てない理由
AIが人間に「お笑い」で勝てない理由を、AI(ChatGPT 4o)に聞いてみました。
AIは膨大なデータ処理能力を持ちますが、ユーモアに必要な文脈理解、意外性の創出、感情の共感、自己超越、リスクテイクといった複雑で柔軟な要素が欠けているため、人間レベルのユーモアを実現するのは難しいのです。
ChatGPT 4o
なるほど。確かに的を得ているような。それぞれ深ぼって考えてみます。
1. 文脈の深い理解が難しい
ユーモアは、文化的背景や状況、社会的文脈に依存します。AIは膨大なデータからパターンを学習できますが、人間特有の微妙なニュアンスや隠喩的な意味を完全に理解するのは困難です。 特にブラックジョークや皮肉には、その単語の意味以上に深い文脈が絡むため、AIは適切に反応できない場合が多いようです。
ChatGPT 4o
エンジニアやデザイナーにおいても、ここは代替される可能性は低そうです。その会社独特の制約だったりを考慮しながら仕様を設計したり、会社の歴史や哲学や想いみたいなものをV.I.に落とすなど、高度な文脈理解が必要な行為においては、それを主導する専門スキルを持った人材が必要でしょう。
2. 意外性の創出が困難
ユーモアの核心は「意外性」にありますが、AIは統計的パターンをもとに予測や生成を行うため、「期待を裏切る新しい発想」を意図的に生み出すことが苦手です。AIは「データから学んだ確率の高い選択肢」を生成するよう設計されているため、意外性を持たせるのが難しい。
ChatGPT 4o
これは自分もChatGPTを使っててよく感じる部分です。かなり優等生な回答は出てくるのですが、やはりぶっ飛んだアイデアを生成するのはプロンプトを相当工夫しないと中々生成できません。というか、むしろ意外性のあるアイデアを生成するために、意外性の高い状況や前提をプロンプトで入力すること自体が、人間側に大きく依存しているという体感があります。
3. 感情や社会的なニュアンスの欠如
ユーモアは、相手の感情や反応を即座に読み取り、適切に調整する能力を必要とします。AIは感情を持たず、相手の表情や声のトーンを完全に理解することもできないため、この適応が不十分です。相手が不快にならない限度でのジョークの調整は、人間的な共感力が求められます。
ChatGPT 4o
詰まるところ、ビジネスは人対人なので、確かにここの代替性は低いと言えるでしょう。不快にならないように、表情や声のトーンを考慮しながら、その場で話の展開をコントロールする技術は、流石にまだAIにはできない部分ですが、なんか個々の技術組み合わせたらできそうな気もする…
4. 自己超越的な視点の欠如
ユーモアには、自己嘲笑や逆説的な思考など、自己を超越する能力が関与します。AIは自己意識がないため、こうしたメタ的な視点を持つことができません。つまり、AIは「自分自身」を主題にするユーモアを生成する能力が根本的に欠如しているので、自虐ネタのようなものを出すことは苦手としているようです。
ChatGPT 4o
自己超越的な話というよりかは、その手前の話にはなるのですが、今のAIには自己意識がないので、某リクルートさんの「お前はどうしたいの?」の問いに答えられないんですよね。つまり意志がないというか。
逆に言えば、今の時代は意志さえあれば、コードもデザインもAIが作ってくれるので、スキルや経験がなくても事業だったりプロダクトを形にすることができますよね。
5. リスクをとる勇気がない
ユーモアはときにリスクを伴います。失敗を恐れずに挑戦し、必要に応じて修正する能力は人間の特性ですが、AIは事前プログラムされた安全策に従うため、このような挑戦ができません。
ChatGPT 4o
もはや人間のバリューは「リスクをとれること」しかない感ありますね。
どれだけAIが発展したとしても、リスクを取るのは最終的には人間であって欲しいものですが、核ミサイルの発射ボタンのコントロールをAIが持つこととかってあり得るんでしょうかね。
結論:AIに駆逐されたくなければNSCに行け
ドラゴン桜より
割とこれは冗談ではなく、真面目にそうかもなと思います。
今まで求められていた、特定領域の知識がたくさんあることだったり、専門的なスキルみたいなものはAIによってコモディティ化していく可能性が高い。そうなると、個人的な解釈ですが、これからの時代に求められるのは「高度な対人コミュニケーション能力(ソーシャルの含む)」と「リスクを取る覚悟(意志)」なのかなと思っております。
なので、その中でも「高度な対人コミュニケーション能力」を身につけられるお笑い養成所は、AI時代に求められるビジネスパーソンを育てる有望な教育機関として、東大並みの難関になる未来が近いのかもしれません。