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「会社の目指す方向がわからないんですよね...」
全社員の前で幾度となく語り、採用面接でも大切にしているはずだった理念が、若手社員の心には全く響いていなかった。認知はしているが理解は浅く、共感にはほど遠く、行動への落とし込みなど、さらに遠い場所にあることを知りました。
これが、数ヶ月かけて練り上げた理念の現実なのか・・・と。
30人、50人、100人の壁で多くの組織が停滞し、時に崩壊していくことも知っていたし、その多くは「企業文化の形骸化」が引き金になるので、創業からとても意識はしていた。
耳の痛い一言は、経営陣にとって、頭を悩ませる出来事と同時に、会社をさらに前進させる貴重な機会になりました。
なぜ経営陣が必死に練り上げた企業理念は、現場で静かに死んでいくのか
近年、多くの企業において「企業理念」が本来の機能を果たしていないという課題が浮き彫りになっています。形式的には立派な理念を掲げていても、それが従業員の行動指針として活きていない、あるいは経営判断の基準として機能していないケースが散見されます。
私たちもまた、この課題に直面しました。本記事は、企業理念が機能不全に陥る原因から、その再構築に必要な取り組みについてまとめました。
これまでの事業運営で得た知見や、私たち自身の失敗と成功の経験から、組織に「魂」を吹き込むために必要なことを書いていきたいと思います。
経営と現場の分断が生む「理念の空洞化」の正体
理念と現実の乖離
企業理念は本来、組織の存在意義を示し、全従業員の行動指針となるべきものです。しかし、多くの企業で経営層と現場の間に大きな認識の隔たりが生じています。経営層は理念を掲げることで満足し、現場では日々の業務に追われ、理念との接点を見失っているのが多くの企業で見る光景です。
コミュニケーションの断絶
経営層からの一方的な理念の押し付けは、現場との対話不足を生んでいます。理念の解釈や実践方法について、双方向のコミュニケーションが不足している企業が多く見られます。結果として、理念は「お飾り」と化し、実務との関連性を失っています。
評価制度との不整合
多くの企業で、理念の実践度合いと評価制度が連動していません。短期的な数値目標の達成が重視され、理念に基づく行動や判断が正当に評価されない状況が、理念の形骸化を加速させています。
国内100社調査から見えた、理念が機能不全に陥る3つのパターン
2024年 全国の従業員100名以上の企業100社を対象とした調査(当社調べ)
1. 概念先行型
調査対象企業の約40%が該当するこのパターンでは、理念が抽象的すぎて具体的な行動に落とし込めない状態に陥っています。
- 特徴:
- 美しい言葉の羅列に終始
- 実務との接点が見出せない
- 解釈が個人任せ
2. 埋没型
約35%の企業で見られるこのパターンは、日常業務の中で理念が完全に忘れ去られている状態を指します。
- 特徴:
- 入社時以外で理念に触れる機会がない
- 業務判断に理念が活用されていない
- 経営層も理念に言及しない
3. 形骸型
残りの25%の企業に見られるこのパターンは、理念の存在は認識されているものの、形式的な遵守に留まっている状態です。
- 特徴:
- 理解や共感が伴わない
- 現場での実践方法が不明確
これらのパターンは、多くの場合、複合的に発生しており、その解決には包括的なアプローチが必要とされます。
この後の章では、これらの課題を克服し、理念を組織の求心力として機能させている企業の具体的な取り組み事例を紹介していきます。
経営陣の理想が現場の重荷に変わる瞬間
多くの企業で見られる「立派すぎる理念」は、皮肉にも組織の分断を深める結果となっています。経営陣が数ヶ月かけて練り上げた崇高な言葉は、現場の日常とかけ離れたものになりがちだからです。
なぜ「立派すぎる理念」は組織に浸透しないのか
- 理想と現実のギャップが大きすぎる
・高邁な理念と日々の業務の距離が遠すぎて、現場が具体的なアクションを見出せない
・「素晴らしすぎて、自分たちには届かない」という諦めが生まれる - 共創プロセスの欠如
・経営陣だけで考え抜いた理念は、現場の実感や言葉と乖離している
・策定段階から現場を巻き込まないことで、当事者意識が育まれない - 実践の難しさ
・日々の判断や行動に落とし込む際の指針が不明確
当社の失敗事例:経営陣が本気で考えた理念が、なぜ社員の心に届かなかったのか
当社でも、経営陣が6ヶ月かけて練り上げた新しい理念が、社員に浸透しきらないという経験をしました。コピーライターも入れ、経営陣が徹底的に議論を重ねた末に完成した理念は、自分達としては納得のいくものでした。
しかし、前提の土台作りや届け方を後回しにしてしまったことにより、想定していた効果を得るまでには、大きな遠回りをしてしまったなと反省しています。。
具体的な事象
- 「素晴らしい理念だと思うけど、日々の判断にどう活かせばいいのかわからない」という戸惑い
- メンバーは理念に共感しつつも、自分なりの解釈や実践方法を見出せずにいた
- 経営陣と現場で、理念への"解像度"に差があった(経営陣は具体的なイメージを持っているのに対し、現場では抽象的な理解に留まる)
この失敗から得た学び:
「完璧に言語化される」ことも重要だが、組織全体で対話を重ねながら、その本質への理解を深めていくプロセスを取る方が望ましかった。
理念は、経営陣の知恵の結晶である以上に、組織全体の共通言語となれるかどうかが重要です。時に荒削りでも、現場が自分事として捉えられる理念のほうが、組織の成長には有効だと感じました。
インナーブランディングが証明した「カルチャードリブン経営」の真価
理念経営が組織にもたらす本質的な変化とは
2年間の取り組みを経て、理念を軸とした経営スタイル「カルチャードリブン経営」が組織にもたらす本質的な変化を、数値とストーリーの両面で確認することができました。それは単なる表面的な改善ではなく、組織の根幹に関わる質的な変化でした。
具体的な成果:
特筆すべきは、採用面接での変化です。以前は「なぜ当社を選んだのか」という質問に対し、「成長できそうだから」「案件が面白そう」という一般的な回答が多かったのに対し、最近では「御社の〇〇という価値観に共感した」「実際のプロジェクト事例から、理念の実践を感じた」という具体的な言及が増えています。
そして、最も効果を感じているのは、これらの変化が一時的なものではなく、持続的な改善のサイクルを生み出している点です。理念への共感が個人の成長を促し、その成長が組織の進化を導く。その進化が更なる理念への理解を深める。この好循環こそが、理念経営の本質的な価値だと実感しています。
ある社員の言葉が、この変化を端的に表現しています。
「以前は『会社の理念だから』と言われて従うものだと思っていた。今は『自分の理想』と『会社の目指すもの』が重なって見えるんです」
この言葉こそ、私たちの目指してきた「インナーブランディング」の真価を示すものだと感じています。
理念浸透の成功は、経営層の体現と対話の掛け算で決まる
なぜ「体現」と「対話」の両輪が必要なのか
理念浸透の成功は、「経営層による体現」と「現場との対話」のどちらかが欠けているために起こります。体現なき対話は、どんなに丁寧に言葉を重ねても「絵に描いた餅」となり、対話なき体現は、経営層の独りよがりな思い込みに終わってしまうためです。
理念に基づいた弊社での体現例
弊社が運営している事業は、理念に基づいて決定、拡張されている点。また、その提供価値の水準による体現もあると考えています。
その他、経験者偏重の業界で、中には未経験者を採用し、育成するというスタンスも取っています。「機会を手にできない人材に、挑戦の機会と新しい選択肢を提供する」という理念を体現した判断です。
対話の実践:現場の言葉に"翻訳"していった具体的プロセス
1.翻訳の土台づくり
・全メンバーでワークショップを実施し、理念を「自分たちの言葉」に落とし込み
・日々の業務における「理念との接点」を見出す対話の場を設定
・部門ごとの「理念実践の定義」を言語化
ワークショップの一例
2.継続的な対話の仕組み
・朝会での理念実践の好事例共有
・日報での体現例発信に対する称賛とフィードバック
・1on1での理念と自身の行動の接点対話
・表彰制度による体現者への称賛
このように、経営層による体現と組織全体での対話によって、互いを強め合う関係にあります。体現が対話に説得力を与え、対話が体現をより確かなものにしていく。この好循環を生み出すことこそが、理念浸透の本質なのです。
変化は「小さな成功体験」からしか生まれない
理念浸透の成功は、壮大な変革プロジェクトからではなく、小さな成功体験の積み重ねから始まります。なぜなら、抽象的な理念を具体的な行動に落とし込むには、「これが理念の実践なのか」という実感を伴う経験が必要だからです。
組織変革における成功体験の連鎖が持つ力
こうした小さな成功体験には、組織を変える力があります。なぜなら、一つの成功体験が「理念を実践するとこんな良いことが起きるのか」という気づきを生み、その気づきが次の行動を促すからです。私たちはこれを「成功体験の連鎖」と呼んでいます。
具体的成功事例:
- 依頼された業務に加えて、クライアントの本質的な課題を見据えた「+αのアウトプット」を提供。この姿勢が信頼関係を深め、新たな支援機会の創出につながっています。
- 営業提案では、担当者個人の思いつきではなく、チーム全体で徹底的に作り込むプロセスを重視。この姿勢が、難易度の高いコンペでの受注を実現しています。
- 採用面接を「一部の担当者」のみで行うのではなく、全社員が関わってカルチャーフィットを見極める仕組みを構築。その結果、理念に共感する優秀な人材の採用につながっています。
- 会議における「生産性」への意識徹底。時間管理やファシリテーションへのこだわりが、全メンバーのビジネススキル向上という予想外の効果を生んでいます。
- 「個人の成果」より「チームとしての総和」を重視する価値観の共有。一人ひとりの強みを活かしながら、チームとして高い成果を追求する姿勢が、プロジェクト全体の質を高めています。
- コミュニケーションの基本である「元気の良い挨拶」の徹底。この小さな心がけが、社外からの「気持ちの良い組織」という評価につながっています。
これらの成功体験に共通するのは、いずれも「小さな行動」の積み重ねから始まったということです。しかし、その一つひとつが理念実践の手応えとなり、より大きな変化を生む推進力となっていきました。
理念浸透において重要なのは、劇的な変革を目指すことではありません。むしろ、日々の判断や行動の中に、理念を少しずつ織り込んでいく。その積み重ねが、やがて大きな変化を生み出すのです。
理念への「共感」は、数字では測れない変化から始まる
組織における「共感」が生まれる心理的メカニズム
理念への共感は、トップダウンの号令や形式的な浸透施策からは生まれません。それは、日々の小さな気づきや実感の積み重ねによって、自然と醸成されていくものです。
弊社の経験談として、理念が組織に根付き始めた瞬間は、数字では捉えきれない些細な変化として表れました。
変化が表れ始めた5つの具体例
- 会議の質的変化
かつての会議では、数値目標や進捗率といった定量的な議論が中心でした。しかし次第に「これは私たちらしい選択だろうか」「本当の価値提供につながっているか」という、価値観に基づく発言が自然と増えていきました。 - 現場発の価値創造
ある若手メンバーの「与えられた要件だけを追いかけていていいのだろうか」という問題提起から、「夢デカ会」というものが生まれました。クライアントから与えられた要件に留まらず、「このプロジェクトで本当に実現したい価値は何か」「クライアントの理想の未来とは何か」を、チーム全体で構想を膨らませていく場として定着。現場発の自発的な取り組みが、表層的な課題解決を超えた本質的な価値提供への共感を生み出していきました。 - 健全な違和感の表明
特に印象的だったのは、若手社員から「これって私たちらしくないのでは?」という指摘が自然と出始めたことです。経営層の判断に対しても、理念を判断軸に率直な対話ができる関係性が育まれています。 - 採用面接での変化
現場選考などでメンバーが「うちの会社らしさ」を自然と語れるようになり、その言葉が応募者に響く場面が増えてきました。理念が「建前」ではなく、実感を伴う言葉として語られ始めたのです。 - 対外的な評価
クライアントとの対話でも、「御社の大切にしていることがよく伝わる」という評価を頂けるようになりました。理念が社員一人ひとりの言葉となり、自然な形で外部にも伝わり始めているのです。
そして最も嬉しい変化は、社内の何気ない会話の中に理念の言葉が自然と登場し始めたことです。会議でも雑談でも、理念の言葉が「共通言語」として使われ始める。この些細な変化こそが、理念が本当の意味で組織に根付き始めた証でした。
こうした変化は、一朝一夕には生まれません。しかし、理念への共感は、まさにこのような「測れない変化」の積み重ねによって、確実に組織に浸透していくのだと改めて感じています。
「対話」を組織文化に定着させる、3つの仕組みづくり
なぜ「仕組み化」が対話継続の鍵を握るのか
理念への共感は対話から生まれます。しかし、「対話を大切にしましょう」という掛け声だけでは、日々の業務に追われる中で立ち消えていってしまいます。重要なのは、対話を「してみよう」ではなく「せざるを得ない」状況をつくることです。
私たちは試行錯誤の末、現状3つの仕組みで対話文化の定着に取り組んでいます。
具体的な仕組みと実践例:
- 全社会議の再設計
毎週1時間の朝会と月末会を、単なる情報共有の場から「対話を通じた文化醸成の場」へと進化させました。経営層からの企業文化や組織課題の透明性の高い共有に加え、メンバーが持ち回りでビジョンを発表する機会や、実践事例("カマした"こと)の共有を通じて、双方向のコミュニケーションを実現しています。 - 1on1を通じた深い対話の実現
隔週で実施する1on1を、単なる業務上の課題解決の場から一歩進化させました。個人の意志(Will)と会社の方向性を丁寧にすり合わせることで、一人ひとりの成長と組織の発展を有機的に結びつけています。 - クロスファンクショナルな対話の場「コミューン」の創出
職種横断の定期的なミーティング「コミューン」では、持ち回り制のオーナーシップにより、多様な対話の形を実験しています。能力開発のワークや、課題解決のブレインストーミングなど、創造的な対話の場を生み出しています。印象的だったのは、画面上に炎を投影しながら事業部のビジョンを語り合うという独創的な取り組みでした。(写真を撮っておけばよかった)
「コミューンで扱うべき題材」スライド
これらの仕組みづくりがもたらした具体的な成果として、
経営層と現場の距離が縮まり組織の一体感の醸成、キャリアビジョンの明確化による主体性の向上、企業文化への共感に関する指標の向上などが見られました。
特筆すべきは、これらの取り組みが単なる「施策」ではなく、私たちの組織に根付いた「文化」となりつつあることです。日々の業務の中で自然と対話が生まれ、その対話を通じて新たな価値が創出される。そんな好循環が、確実に形作られています。
企業理念に「命を吹き込む」ための3つの法則
これまでの内容を踏まえ、理念経営を成功に導くための法則を3つのフェーズに分けて整理してみました。
- 「完璧な言葉」より「共感できる実感」を重視する
・経営陣だけで練り上げた「美しすぎる理念」は、現場との距離を生む
・むしろ、荒削りでも、社員が「自分ごと」として捉えられる言葉を選ぶ ・理念は「正解を示すもの」ではなく、「対話を生むきっかけ」として機能させる - トップダウンとボトムアップのバランスを取る
・経営陣による明確な方向性の提示
・現場からの解釈と実践例の抽出
・両者の対話による理念の深化 - 「理念と現実の距離」を認識する勇気を持つ
・理想と現実のギャップを隠さない
・課題に正直に向き合う組織文化の醸成
・変化のプロセスを楽しむ姿勢
明日から始められる具体的なアクション
経営層
・理念に基づく意思決定の言語化
・小さな成功の積極的な称賛
・「不完全さ」を受け入れる姿勢の体現
マネジメント層
・1on1などでの丁寧な対話
・日常業務での実践例の抽出
・評価基準への組織的な組み込み
現場メンバー
・自分なりの理念解釈づくり
・小さな実践の積み重ね
・建設的なフィードバックの発信
完璧な理念など存在しません。しかし、理念を軸に組織全体が対話を重ね、進化し続けることはできます。その積み重ねが、やがて強くて大きくて面白い組織を作り上げていくのです。
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