地方創生、地域活性化という言葉は、コニュニケーションから生まれる田舎の良さや、競争より共創や協奏といった一体的な取組をイメージします。私自身、競争より共創や協奏を大事にしたいと考えていますし、自治体職員という仕事上、補助金を扱ったり地域コミュニティの強化や自治力の向上など共創的な意識醸成に力を入れています。
そんな地域活性化の波が小さな島で起こり、ここ5年間で独立開業される方が多数現れました。これまで、バブル崩壊以降、衰退の一途を辿ってきた島は、稼げる手段が第一次産業(畜産、漁業)の中でもほんの一握りの人たちだけという状況でした。それが10年前から空前の畜産牛の価格高騰と地方移住、地域おこし協力隊のブームが重なり、奇跡の人口増加が起こりました。(私もその時移住した一人です。)
村は地域おこし協力隊の様々なチャレンジを応援してきましたが、人口600人の内需では到底利益を上げることはできません。コロナ禍で来島者が少なくなった状況では観光需要も見込めないという大変厳しい状況でした。畜産のように大きな販路(輸出先)がある業態は安定して利益を増やしていましたが、近年は原油価格の高騰や輸出規制など国際情勢の影響で肥育業者の原料調達、販路縮小による買い控えがおこり、子牛の市場価格が低迷しています。
地方創生系の起業や新たな商品の開発などをマスメディアが報じますがその多くが想いの部分です。それをどのように持続可能な事業としていくか、多くの人が悩んでいて、どのように経営をすればよいかがわからないというのが現状です。
そもそも個人事業主、零細企業にとって大変に条件の悪い離島という環境で、地方創生や地域活性化といった共創的な活動を持続していくためには何が必要なのか?そんな問いを立てていた時に、島根県内の若手自治体職員向け研修でMG(マネジメントゲーム)に出会いました。
MGはまず、経営を体感すること(自転車に乗る練習のように頭でなく、身体で覚える)、論理的思考で経営戦略を立てること、計画は利益から逆算すること、そして楽しく、美しく経営(仕事)とすること、といった本来経営の基盤となる重要要素を体験できます。
また、経営者の理念、ビジョン、パーパスが明確でなければ付加価値をつくることができない、ということもMGは教えてくれます。社会をより良くするためのビジョン+論理的思考に基づく経営戦略がなければ価値を生成し続ける組織にはなれないでしょう。
さらに知夫村MGには2つの狙いがあります。
1つ目はコロナ禍で住民が交流する機会が失われたため、異業種での交流などほとんどありませんでした。小さな島の中で、試行錯誤しながら新たな試みを日々研鑽している人たちがいます。MGを通して「経営」という共通言語のディスカッションが生まれる機会になります。
2つ目は人材不足で維持することが精一杯となっている事業所が数多くある中で、今後は自社の採用を「定住対策」という切り口で意見交換ができれば、移住者が何を求めているのか?どんな地域をづくりしていくのか?(どんな地域を目指すのか)といった方向性が見えてきたり、そこに新しい発想が生まれることが期待されます。
皆で何かを共創しようとするフォロワーシップが少しずつ作られていく気配に、とてもワクワクします。このワクワクが伝播していけば、そんな楽しいことってないですよね。