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「公共政策」は民間と行政を繋ぎ、建設業界の未来への貢献を目指す

アンドパッドのプロダクトやサービス開発・運営とは別の側面で建設業界の発展に寄与していく重要な業務があります。それが経営推進本部の公共政策業務です。今回は、主に国や行政との関係を築き、日本の建設業界の前向きな未来への貢献を目指して活動する公共政策の役割や働き方について、上級執行役員の岡本に話を聞きました。

岡本 杏莉 上級執行役員 経営推進本部 本部長

西村あさひ法律事務所に入所し国内・クロスボーダーのM&A/Corporate 案件を担当。2015年3月に株式会社メルカリに入社。日本及び米国の法務を担当。2021年2月に株式会社アンドパッドに参画。2023年上級執行役員、2024年 経営推進本部 本部長に就任。

公共政策の業務領域

ーまず、経営推進本部について教えてください。
大きなミッションとしては、中長期における成長戦略の立案・実施を担っている部署です。役割は多岐に渡っていますが、コーポレートアクションやバックオフィス業務・リスクマネジメント等、日々のフロントでの事業推進とは別の様々な角度・側面から事業を支援していくのが大きな役割です。

経営推進本部の重要な業務の1つが公共政策です。会社のミッションとして、「幸せを築く人を、幸せに。」をかかげているわけですが、日本の建設業界においては人手不足が喫緊の課題になっています。私たちのITの知見を活かしながら、建設DXの推進により業界課題を解決していくという目標を持っています。住宅建築はもちろん災害復興等社会生活に不可欠な役割を担う建設業界の課題は、国全体の社会課題であるともいえ、課題解決のためには国交省などの行政側ともコミュニケーションを進めていくことが重要です。そうした取り組みに力を入れているのが公共政策の活動です。

ーでは実際に、公共政策の活動についてお聞かせください。
建設業界に限らず、DX推進の場面では、これまでになかった先進的な技術やサービスを社会実装していくため、従来の法律では白黒はっきりと判断できないような局面に出くわすこともあります。加えて建設DX推進においては、安全性を担保していくことも非常に重要な要請となります。私たちも国や行政も、社会課題を解決したいという思いは同じはず。だからこそ、国や行政とともに話し合いながらお互いにとって最適なルールを作っていくことが、これからの時代に求められることなのではないか、という考えが公共政策活動の根本にあります。国交省や行政とのコミュニケーションはもちろん、現状の法制度や建設DXの技術動向に関する情報収集、建設現場における政策課題のヒアリング等、幅広い活動を行っています。

国や行政と二人三脚で公共政策への提言を

ー具体的にはどのような業務を行われているのでしょうか?
公共政策においては、建設DX研究所とANDPADの双方の活動をしています。

前者は建設DXに携わるスタートアップ企業6社で構成された「建設DX研究所」としての活動。有志での活動自体は3年ほど前から始めていましたが、23年1月に正式に任意団体として設立し、より活動範囲を広げています。具体的には、①情報発信、②勉強会、③政策提言という大きく3つの活動を行っています。1つ目は、主に建設DXに関するオウンドメディアを通じ、建設DXに関する最先端事例のインタビューや政策動向のレポート、活動報告などの情報発信を行っています。2つ目は、会員で集まって月に1度の勉強会を定期開催しています。各会員からの事例・情報共有、建設DX最新技術や建設DXベンチャー企業の紹介、政策課題に関するディスカッション等、まだ小規模ながら活発な議論・意見交換ができる場となっています。3つ目は政策提言活動です。建設DX推進の必要性に賛同してくださる議員の先生方が有志で開催されている建設DXに関する勉強会があり、建設DX研究所が事務局としてお手伝いをさせていただいています。勉強会における発表や議論を通じて政策提言の形にまとめ、国交省・デジタル庁等の関連省庁へ提出するなどの活動を行っています(昨年提出した提言の概要についてはこちらの記事も参照)。その中には、IT補助金のSaaSへの適用範囲の拡大や、建築BIM加速化事業の今年度からの要件緩和など、既に実際に政策へ反映していただいているものもあります。中には時間がかかるものもあると思いますが、建設DX推進による業界全体の生産性向上を後押ししていけるような法改正・政策実現等に向けて、活動を続けていきたいと考えています。


▲建設DX研究所では、建設DXに関連する様々な情報を発信(関連法規制の動向・建設DXの推進事例紹介・有識者インタビューなど)

ー建設Tech系企業と情報交換及び、そこから得た知見をまとめて提言を行っていくわけですね。二つ目の活動はいかがでしょうか。
二つめはアンドパッドとしての活動です。アンドパッド個社としても、国交省・デジタル庁等の関連省庁との意見交換を日頃から行っています。

国交省等としても建設業界の課題に対してDXの必要性を感じています。しかしながら、中小や地場の建設企業の現場に関する実態は把握しづらい状況にあります。こうした状況において、私たちはもともと地場の工務店に向けたサービスからスタートし拡大してきた背景があるので、現場の実態や声をしっかり把握しています。当社の顧客である中小の建設事業者から、現場の実態や政策課題といった声を拾い行政側に届けるという活動をしています。加えて、ANDPADのサービス提供を通じ、中小工務店などの建設DXによる生産性向上の事例を数多くサポートしている実績やITに関する知見も有しています。私たちアンドパッドが、国と中小建設現場を繋ぐ役割をすることで双方にとって役に立てるところがあるのではないか、と考えて会話を続けています。

━そのような意見交換を通じて具体的に取り組んでいるプロジェクト等は何かありますか。

一例ですが、国交省の補助事業に採択いただき実証実験や検証を行った事例があります。
令和3年度には「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」に採択いただき、BIMを活用して木造住宅を建築するという先進的なプロジェクトに取り組みました。木造住宅建築のような小規模なプロジェクトにおけるBIM活用はまだ一般的ではないと思いますが、BIM活用によりほぼリモートでも関係者間でのスムーズな情報共有や意思決定ができる等、様々なメリットや可能性を感じられる実証結果となりました。

また、令和5年度には「住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進補助事業」に採択いただき、住宅建築・リフォーム向け補助事業の申請・審査手続の更なる電子化に向けた調査事業を行っています。普段私たちがサービスを運営する中で見聞きする声に加えて、あらためて建設業界で働く業界の方々の業務時間の実態を把握しようとリサーチを進め、行政関連の手続きの負担が非常に重いという声を多く耳にしました。衝撃を受けたのは、現場監督の方の業務時間の約6割が、補助金申請や公共工事の報告に関する書類の作成などのいわゆるペーパーワークに追われていて、それ以外の業務を圧迫しているという現実でした。本来ゼロから家を建てるようなクリエイティブな役割なのに、実際はこうした事務作業に追われている。さらに、こうしたアナログな事務手続きの場合、申請する事業者側も、受理・審査する省庁側も、アナログゆえの非効率が多く、DXの推進で効率化できる余地が大いにあることがわかりました。調査レポートを出して終わり、ではなく、具体的に見えた課題をいかに国交省とも連携しながら解決していくか、ということに今後チャレンジしていきたいと考えています。

━なるほど。"現場の声”を届けるのはアンドパッドの強みでもありますからね。
仰る通りです。さらに、地方自治体との取り組みも行っています。
これは先述した行政手続きと重複する部分もあるのですが、国へ提出する手続きのほかにも、地方自治体への手続きの煩雑さも課題としてあることを目の当たりにしました。地方自治体はゼロから建設物を建てる手続きに加えて、市庁舎や学校などの公共の建物を管理・修繕する営繕(えいぜん)業務もあり、ここにもDXの余地があります。

こうした実態を踏まえ、昨年の5月から東京の町田市と協定を結ばせていただいて、実証事業というかたちで、公共施設などの工事の発注や管理をする紙のフローをANDPADへ一部切り替えてもらっています。その後はサービスの効果をすごく感じているという声も頂いていますし、さらに利用範囲を拡大したいと仰っていただいていますね。

現在は、日本の建設工事の約4割を公共工事が占めているので、サービスの成長としても建設業界のDXとしてもまだ大きな伸びしろがある。これらの領域に対していかに国や行政と二人三脚で進めていくか、という点も公共政策にとっての大きなミッションです。

建設業界の未来を、自分の意思で築いていく

ー公共政策の業務において、やりがいと感じる部分はどこにありますか?
少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、建設DXがいかに浸透していくかは、建設業界の未来を大きく左右すると考えています。私たちは現場の声を間近で聞け、ITに関しての知見もあり、誇れる開発技術もある。さらにこれまでの実績からも、建設事業者のIT活用による変革・まさにDX(Digital Transformation)をサポートしてきた私たちだからこそ、直面している課題に対して応えられる要素があるのではないかと考えています。その中で私たちがどういう役割を果たせるかということは重要だと思っています。現場に近くてIT事業者であるというアイデンティティを活かして、国と連携して建設業界のあるべき姿を想像しながら、その前向きな未来に向けた道筋をつくっていくこと。ここに少しでも貢献できればと思っていますし、これが公共政策活動において得られる大きなやりがいだと思います。

さらに、今お話していることは机上の空論ではなく、小さな部分からでも現実になっています。当社において公共政策活動を本格的にはじめてまだ3年くらいなのですが、政策に反映いただいている事例も知見も徐々に蓄積されつつあるので、国や私たちの生活を支える建設業界の明るい未来の実現に微力ながら携われ、かつ手応えも感じられるという喜びは大きいですね。

ー特に事業会社であるアンドパッドだからこそ、得られるものもあると思いますか?
例えばコンサル企業において、国や企業等から委託を受けてアドバイザーの立場で公共政策関連の業務を行うこともあると思います。その場合、「◯◯を調べて欲しい」「◯◯に対しての解決策を考えて欲しい」という風にクライアントのリクエストに応えるようなフローが一般的かと思います。色々なクライアントの要望を受けて多様な事例に触れることができる面白さはあると思いますが、他方、課題が生まれた背景や、コンサル提案後の意思決定がどのようになされたのだろうなど、1つ1つの案件について知ることができる範囲はどうしても限定的になってしまう側面はあるのではないかと思います。

━確かにコンサルの立場だとそのスコープになりがちです。
個人的には、自分が推進していきたい案件について、より深く関与できる環境に面白み・やりがいを感じています。事業会社に所属していると、良くも悪くも、自分の意思で何をすべきか、どのような解決方法があるかといったあらゆる角度から考えた結論が、サービスや事業に影響します。ときにコンサルや外部のプロフェッショナルの力を借りることはあっても、どのような判断をすべきかは最終的に自社で決めることが必要です。端的にいえば「意思を持って実現していきたい」という人にはすごくいい環境だと感じます。

ー公共政策のチームとして、現在はどのようなフェーズですか?
チームとしてはまだまだ立ち上げ期です。ようやく行政とコミュニケーションを取れるような土台ができたので、まだまだこれから、という感じでしょうか。

建設事業者の全体数の95%が中小企業だといわれているような業界で、中小建設事業者の声を政治・行政に届けるという活動の意義も大きいと感じています。今深刻な問題はなるべく早く解決しなければ、将来的にはより解決が難しい問題になっていくことが想像できるので、この話に危機感を覚える方、課題に共感してくれる方とご一緒できるとすごく心強いです。

個人的には、建設業界は未経験・業界知識が全くない状態で入社して現在に至っているので、日々互いに学んだことをシェアしながら並走できるような方が増えると嬉しいですね。

ー岡本さんご自身としての目標はありますか?
建設業界は未だに力仕事のイメージを強く持たれている方も多いかもしれませんが、最近ではIT活用をはじめ、力仕事ではない領域もたくさん出てきています。

そのため、建設業界で当然のように女性が活躍できるような業界にできればいいなと思っています。特に担い手が少なくなっていく現代においては、そうなっていかなければならないとも思いますし、女性が普通に活躍できる社会を実現するための一助として、私も使命感を持って取り組んでいます。



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