株式会社CRAZY(以下、CRAZY)では、「人々が愛し合うための機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消する」をパーパスに掲げ、運営しています。
そのパーパスを実現する手段のひとつが、IWAI OMOTESANDO(以下、IWAI)。結婚式をはじめとする、さまざまなお祝いの機会を提供する場です。
今回スポットを当てるのは、IWAIでプロデューサーを務める添田瑠璃さん。
前職では、ベンチャー企業の採用責任者として、年間1000人以上の候補者と向き合ってきた彼女。なぜ、まったく異なる職種・業界への転職を考えるようになったのでしょうか。
「誰しも生きているだけで価値がある」ことを信じたかったという彼女に、CRAZYに入社した経緯や、入社後の変化を伺いました。
「この人生でよかった。私はこれからも大丈夫」と思いたかった
―まずは、現在の仕事内容を教えてください。
添田:IWAIで式を挙げると決めてくださったおふたりに、結婚式準備からから式当日までご一緒する“プロデューサー”をしています。プランナーではなくプロデューサーと言っているのは、おふたりのこれまでの人生に寄り添って、大切にしている価値観や想いを振り返ることに重きをおいているからです。
お客様との1枚
結婚式を通じて、自分の人生を棚卸しし、パートナーを含めた大切な人たちとの関係性を更新する。その節目をプロデュースするのが、私たちの役目です。だから、日々の仕事でもおふたりの人生や大切にしている考えを伺ったり、それについて考えたりする時間が多くを占めています。
―IWAIのプロデューサーは、式までの打ち合わせはもちろん、式当日の司会も行いますよね。一般的なウエディングプランナーよりも、実戦経験や求められるスキルが多いのでしょうか。
添田:いろんな考え方があると思いますが、私は経験やスキルよりも「目の前の人と向き合い続けられるか」というマインドのほうが大事だと思っています。
IWAIの結婚式は、「人生を祝う」ことをテーマにしています。目の前のおふたりに「この人生で良かった」「この私で良かった」と心から感じてほしい。そのためには、まず私たちプロデューサーがおふたりと向き合う必要がある。そのときに大事なのは、経験やスキルよりも「人と人として向き合えるか」という心持ちだと思うんです。私自身も、ウエディング業界未経験でCRAZYに入社しています。
―ウエディング未経験の添田さんが、CRAZYに入社を決めた理由はなんだったのでしょうか。
添田:「自分の人生は、そのままで素晴らしい」と思える人を増やしたかったから、ですかね。
少し話が遡るのですが、子どもの頃、私の父はよく「家族を養うために、毎日しんどい思いをして働いているんだぞ」と話していました。父は仕事で心身を崩して入院したこともあり、「生きていくことって苦しいことなんだ」と思うように。
「少しでも将来苦労しないように、ちゃんと有名な学校や大きな会社に入りなさい」そんな父の言葉に、いつしか“人生のレール”を外れることが怖くなり、気づけば優等生でいること、周囲に評価されることにこだわるようになりました。
でも、大学生のときに参加した地方創生に関わるインターンで、その価値観が崩されたんです。そこには、私が“正しい”と思っていた道を歩いている大人はほとんどいなかった。でも、それぞれが自分の人生に納得して、目を輝かせながら生きていて。
―インターンの経験から「自分の人生は、そのままで素晴らしい」と思えるようになった、と。
添田:はい。間違いなく、そう思える最初のきっかけだったと思います。私自身、「誰かの正解を生きることよりも自分の正解を生きることを大切にしたい」と思うようになりました。
ただ、長年の思考の癖は抜けなくて……。頭では「どんなその人らしさも素晴らしい」と分かっているのですが、心のどこかで「誰かに評価されなければ価値がない」と思っている自分がいました。この矛盾した考えで、周りを傷つけてしまうことがあって。
―周りを傷つけてしまった?
添田:仕事がうまく行かず「自分なんて生きている価値がない」と落ち込んでいる友人に、彼女の努力や能力が足りないだけだときつく当たってしまったり、一人ひとりの可能性を信じたくて始めた採用の仕事では「会社の役に立つか立たないか」で目の前の人の価値を決めつけてしまったり。
本当は「あなたはあなたで大丈夫」「あなたにはあなただけの価値がある」と伝えたいのに、心からそう思うことができなかった。でも結局それって、自分が自分の価値を信じられていないことの裏返しだったんですよね。
―そこから、添田さんが、「私は私のままでいい」と思えるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
添田:それが、CRAZYで挙げた結婚式なんです。
CRAZY WEDDING ordermadeで結婚式を挙げた添田
結婚式を挙げるまでの私は、とにかく自信がなくてネガティブでした。私がいてもいなくても社会は変わらないし、誰も困らないと本気で思っていましたね。でも、担当してくれたプロデューサーが私と本気で向き合ってくれたから、「私は自分のことも、人のことも信じたいんだ」「自分と、人と向き合うことを諦めたくないんだ」と気付くことができて。
結婚式をきっかけに、家族に今までの苦しさを打ち明け、友人たちからも沢山の愛情を受け取り、自然と心が軽くなりました。そうしたらじんわりと「生きててよかったな」という気持ちが湧き上がってきました。
CRAZYの結婚式には、人生を変える可能性がある。私自身の体験から、そう感じたんです。
―では、ご自身の結婚式の後にCRAZYに転職したと。
添田:はい。でも、実は一度目の採用面接には落ちているんですよ。諦められなくて、二度目に受けたときに内定をもらい転職しました。
―え!一度不採用になっている?
添田:そうなんです。当時の私は「CRAZYが私を幸せにしてくれる」と思っていたんですよね。逆に言うと、「CRAZYで働けない私は幸せじゃない」と思っていました。
でも、健全なパートナーシップは「お互い1人でも幸せだけど一緒にいたらもっとハッピーだよね」という状態です。そう考えると、当時の私はまだCRAZYと健全なパートナーシップを結べる状態じゃなかった。一方的に依存していただけでした。
それに気づいてから、まず目の前のことに全力で向き合おうと思いました。環境に言い訳していた自分を辞めて、目の前の仕事で覚悟を持って結果を出しきることにこだわりました。そして次にCRAZYを受けたときには、「採用でも不採用でも、私の価値は変わらない」と思えるようになっていました。
「あなたの人生は、そのままで素晴らしい」結婚式を通じてそれを伝えたい
―では、CRAZYで働き始めてからのお話も聞かせてください。実際に働き始めて感じたギャップなどはありましたか。
添田:「目の前のおふたりとの向き合い方」には何度もギャップを感じました。たとえば、先輩プロデューサーたちは、どんな小さなことでも、ふたりが既に持っている素晴らしさに目を向けて、それを丁寧に伝えてあげるんです。でも、入社したばかりの私にはそれが難しくて……。
入社間もなく、プロデューサーメンバーたちと
目の前のふたりの足りないところにばかり目を向けそうになってしまったり、「仕事に一生懸命な人のほうが価値がある」「何かを成し遂げる人生が素晴らしい」と心の中で決めつけそうになってしまったり。前職時代の、目の前の相手をジャッジする悪い癖がたまに出ていました。
でもプロデューサーという仕事を突き詰めていくうちに、変化が生まれました。
―添田さんにとってプロデューサーとはどんな仕事なんですか。
添田:私たちプロデューサーの仕事は、結婚式を成功させることじゃない。「これまでの人生、間違っていなかったんだな」「この人生、最高だな」と噛み締めていただくことだと思っています。
私があの日「生きていてよかったな」と思えたように、誰かの生きる希望になる日を届けたい。そんな想いに何度も立ち返りながら、目の前のおふたりと向き合い続けていくうちに、私の人生も含めて「どんな人生でも素敵だな」と心から思えるようになりました。仕事が楽しくなくても、それを忘れるくらい週末の飲み会が楽しい人生も最高。仕事はそこそこに、趣味に生きるのも最高。キャンプに明け暮れているのも最高。おふたりの人生の輝く部分を見つけて、それを言葉でギフトする。これが、私の思うプロデューサーの仕事のひとつです。
それと同時に、「人が生きていることに、理由なんていらない」と思うようになったんです。
―なかなか衝撃的な言葉ですが、どういう意味なのでしょうか。
添田:私はずっと、「人生には意味があるし、意味を証明しなくちゃいけない」「誰かにここにいていいと思われなければならない」と思って生きてきたんです。「人は生きているだけで素晴らしい」と頭では分かっていても、心の底からは納得できていませんでした。
でもCRAZYで働くうちに、「生きる理由なんて、自分が生きたいから以外になくてもいいじゃん。自分がやりたいからやる、それでいいじゃん」と思えるようになって。それは、IWAIに訪れるおふたりや、CRAZYで働く先輩たちが、自分の幸せに全力で向き合っている姿をたくさん見てきたからですね。
―ありがとうございます。最後にあらためて、「人はただ生きているだけで素晴らしい、と思える人を増やしたい」という願いは、CRAZYで叶えられそうですか?
添田:はい。実は、私がプロデューサーとして担当したお客さまが、「結婚式を通して人生が変わった」と言ってCRAZYに転職したんです!
結婚式を挙げる前は、思うように大きな仕事を成せない自分に「自分が生きている意味ってあるんだろうか」と、少し心が塞ぎ込んでいたそうです。でも、結婚式をきっかけに、周りの人の愛情や“身の回りの人や小さな幸せを大切にしたい”という自分の本当の価値観に気づけた、と。大袈裟ではなく、人生観までもが変わったと伝えてくれました。「私が結婚式を通じて届けたかったものが、ちゃんとお客さまに届いている」と分かって、すごく嬉しかったです。
正直、まだまだ反省することも多いんです。全力でふたりに向き合っているつもりだけど、うまく伝えきれなかったり、誰かに自分の正解を押し付けてしまいそうになったり。でも、どんな人生も素敵だから。生きていたら壁にぶつかる日もあるけれど、それでも人生は素晴らしいと伝え続けたいから。これからも、プロデューサーとして前に進み続けたいですね。
執筆:仲奈々
企画・編集:池田瑞姫
撮影(一部):kuppography
デザイン:岩田優里