2021年11月5日に「WHY CRAZY? #3 〜ここでしかできないクリエイティブ〜」オンラインイベントを実施しました。
今回は「ここでしかできないクリエイティブ」をテーマに、執行役員 クリエイティブディレクター 林隆三 (通称:リュウ)とアートディレクター 東和香(通称:のん)の対談を行いました。現在、社内外問わず、CRAZYのクリエイティブの多くを手がけるふたり。実際の事例紹介とともに、「なぜCRAZYでクリエイティブを続けるのか?」「ものづくりにおけるこだわりは?」といったトークテーマで対談が進みました。その中から、ふたりのものづくりへの姿勢やクリエイティブな生き方が垣間見える会となりました。
本記事では、クリエイティブディレクターの 林隆三に焦点を当てて、対談内容を振り返っていきます。
※イベント対談内容の書き起こしを、一部編集しております
(モデレーター:高市祐貴)
「結婚式を作ったことのない人に、結婚式を作って欲しい」
高市:
今回は登壇者の3名のCRAZY年表をご用意しました。こうやってみるとリュウさんの在籍期間は圧倒的に長いですね。
林:
ボクはCRAZYが創業して1年目の2013年に入社しています。
当時東はまだ美大生だったんだね。
高市:リュウさんはなぜ建築事務所に勤めながら、外部のアートディレクターとしてCRAZYに参画することになったんですか?
林:
CRAZYに入る直前までは美術スタイリストとして空間のスタイリングをしてたんだよね。例えばミュージックビデオとかCDジャケットとか。
その時偶然、女性アーティストのスタイリングをすることが多くて、いわゆる可愛い女の子のワンシーンを表現した空間をつくってたんだよね。それを観たCRAZY WEDDDINGの創業者の山川から「一緒に仕事しませんか?」と声をかけられたことが初めのきっかけ。
だけど最初は、「結婚式は作ったことないのでボクには出来ないです」とお断りしました(笑)
高市:
一度断ってるんですね!なぜそこから入社するに至ったんですか?
林:
断った時に山川から「結婚式をつくったことのない人に、結婚式をつくって欲しい。」「林さんとやりたい。」と言われた時に、「あーなるほど。面白いかもしれない。」って思ったんだよね。
高市:
なるほど。そんなきっかけがあって創業メンバーに次ぐ初めての中途社員として入社をしたんですね。
林:
そうだね。
そこからCRAZY WEDDINGのアートディレクターとして結婚式の空間をつくりながら、チームを組成した後、2018年にCRAZY CELEBRATION AGENCY(通称:CCA)という法人向けのクリエイティブ事業を社内で立ち上げたんだよね。それが自分にとっては大きな節目になったな〜。
HOTEL SHE, ×CRAZY
「結婚式の定期便」という新しい提案
高市:
今回は、イベントの参加者の方へCCAが中心となって手がけた企画の中から特に聞いてみたいと思う企画についてアンケートを取ってみました!その結果、「結婚式の定期便(HOTEL SHE,様)」の企画について聞きたいという声が多かったので、今回はこの事例を紹介していきたいと思います。
林:
一つの事例を通じて、「CRAZYのクリエイティブってどんなものなのか?」や「私たちがなぜこんな想いを込めてつくっているのか?」をお伝えしていけるといいな!
高市:
いいですね。
では、まず「結婚式の定期便(HOTEL SHE,様)」の概要をお伝えしつつ、リュウさんとのんちゃんの二人の目線から、このクリエイティブは何がユニークでどんなところで自分の個性を発揮したのかなど聞いていきたいと思います。概要はボクから少しお話しますね。
この「結婚式の定期便(HOTEL SHE,様)」は、カップル宛に1ヶ月おきにふたりをより知るためのきっかけが手元に届くというプロダクトです。半年に渡って合計6回届き、たった1日の「結婚式」ではなく時間をかけてお互いのことを知り、最後に想いを伝え合うという、新しい結婚式の選択肢として世の中に届けていこうというものでした。
高市:
半年間、違った角度からパートナーを知るためのコンテンツをHOTEL SHE,の皆様と一緒に考えていくという長期プロジェクトでしたね。
林:
HOTEL SHE,さんについてはご存知の方も多いと思いますが、京都・大阪を中心にホテル事業を展開している会社で、いわゆるZ世代の方は得に注目されてるんじゃないかな。
「必ず誰かが必要としてくれている」
プロダクトへの確信
東:そうですね。
そういえばこの企画が始まった頃は、コロナ渦で結婚式やイベントが全く出来なくなったタイミングでしたよね。
林:
そうそう。その中で「私たちに何かできることはないか」を考えていて、何かを生み出していこうというエネルギーがすごく強かったよね。
なのでこれはクライアントワークではなくて、自分たちからやりたい!と思って進めていたということにとても意義があったと思うんだよね。このエネルギーでものを生み出すことがボクはとても大事だと思っている。
高市:
確かに。本当に全員がこのプロダクトの可能性を信じていましたね。
林:
それに加えて、この企画は特に、社会的意義を明確にチームの中で見出すことができて、「このプロダクトは必ず誰かが必要としてくれる」という確信を持てていたのもポイントだね。
オーダーメイドの結婚式や、法人向けイベントプロデュースのアートディレクションを中心に担っていた頃は、「欲しいと思っている誰か」に向けて作るというスタンスだったけれど、今回は全く逆で、ボクたちが世の中に必要だと思うプロダクトだったね。
高市:
そうですね。
ボクはプロデューサーのみんみんさん*1と一緒に、HOTEL SHE,さんへこの企画を直談判しに行ったことがすごく印象に残っています。
その際、プロダクトのアイデアに加えて、ボクたちの想いとエネルギーを伝えるために最適な様式は企画書ではなく手紙だと思って、当日はお手紙を書いて持っていったんですよ。
林:
そうだったね!
〇〇さんへという書き出しで始まって、お手紙に込めた想いやそこにある背景を綴りました。もちろん、企画の内容もしっかり書いてあるものだったけれど、担当者の方からも、手紙という形式が斬新で面白かったと言ってもらえたよね。
高市:
今思うとこの伝え方は、CRAZYにいなかったら思いつかない方法でした。
アイデアと想いをトップスピードで即企画として走らせることができたのが、CRAZYらしかったな〜。
林:
本当に価値があると確信できたものにチーム全員で一気にコミットできるのは良いよね。
HOTEL SHE,の皆様もこの想いに乗っかってくれて、クライアントではなくてチームという感覚だった。クライアントではなくチームとして一つのプロダクトを作っていくという経験は意外となくて、貴重な体験だったし楽しかったな。
感情と記憶に残り続けるものを作りづづけたい
高市:
そんなリュウさんが考える「ここでしかできないクリエイティブ」はなんですか?
林:
このイベントにあたり、これまでのクリエイティブを振り返ったりする中でいつまでも想いをのせてものづくりができることが、CRAZYでつくっている意味だと思ったね。
消費されるものだと本当の意味で自分が納得できなかったり、つくっている意味を見出せなかったりということが世の中には意外とあると思っている。ボク自身も過去にそういう経験があったし。
ボクがCRAZYで結婚式を作り始めたのもそこに背景があると思っていて、なぜなら結婚式の装飾はたった3時間ぐらいでお開きになると形としてはなくなっちゃうんだよね。
そんな刹那的なものなのに、一生語ってくれたり、支えにしてくれるるお客さんがいる。無形だとしても感情や記憶の中に劣化しないで残り続けるものをつくれているっていうことが、ボクはすごく幸せなことだと思っていますね。
高市:
いや〜いいですね。
もののつくり方って無数にあると思うんですけど、CRAZYのクリエイティブには本質を諦めず記憶に残るものにしていくというスタンスが、結婚式の経験をベースとして築かれてきたんだと感じました。
東:
「一生に一度」を任せてもらう責任と、そこへのこだわりを持って結婚式を作るという経験はここでしかできないことだと私も改めて思いました。
非効率を愛し、最後まで届け切る
高市:
ところで、質問の中に「実際に現場で施工をしているのもアートディレクターやクリエティブディレクターご本人ですか?」というのがありました。
林:
はい、全部やってます。
東:
創業から変わらず、うちの伝統芸ですね。
林:
きっと生産性を上げることだけを重視したら違うやり方もあると思う。
でも創業当時から「非効率を愛する」という言葉を大事にしていて、やっぱりものづくりには想いが大事だと思うんだよね。
自分が考えたものを自分の手で届けきってこそ、やっと一生に一度の特別なものを届けるという責任を果たせるという考え方。
東:
最後まで責任を持ってやり遂げるというスタンスです!
感度を上げるためのルール
「ヤバい」禁止
高市:
では最後に、クリエイティブの仕事をする上でセンスを磨いたり、自分の引き出しを増やすために日常的に意識していることってありますか?
林:
一つ挙げるとすると「ヤバい」って言わないようにしてます。
東:
確かにリュウさん言葉にすごくこだわっている印象ありますね。
林:
何かの感想を伝えるとき、究極「ヤバい」の一言で何でもで表現できちゃうんだけど、それだと語彙力が劣化していくと思うんだよね。
だからできるだけ具体的に、何がどう良いのか、だめなのかをちゃんと言葉で表現する事を意識しているかな。東には「ヤバいって言うな」ってよく言ってたよね(笑)
東:
私が「かわいい」とか「ヤバい」という言葉を使う度にリュウさんから「何がヤバいの?どうヤバいとおもったの?」って何度も聞かれていました。
林:感度をあげるのが大事だよね。
例えば「かわいい」で終わらせずに、なぜ自分がそれをかわいいと思うかを知っていることがセンスがいいということだと思っています。
高市:この話題、永遠に話せそうですね・・・!
*1 みんみんさん・・・ 株式会社CRAZY マーケティング室 責任者 松田佳大
CRAZYの創業期から長きに渡り数多くのクリエイティブを生み出してきた林。
今もなおCRAZYでものづくりをし続けるのは、「誰かの記憶に残り続け劣化しないものを、自分の手で届けたいから」。クリエイティブの仕事におけるこだわりから日常で意識することまで、林の個性が詰まった内容となりました。