株式会社誠勝にて社長室室長を務める上級デジタルアーキビストの寳德真大が2023年9月10日(日)、「地域産業研究会(※)」にて、地域・企業史の継承と利活用の事例共有と課題について、ワークショップ形式で学術発表を企画・実施しました。
今回の記事では、研究会での発表内容・今後の展望についてお話します。
※「地域産業研究会」とは・・・ 分野・領域・職業を超えて地域産業の発展と地域社会に寄与しようとする人々の交わりと思索と行動のコミュニティー形成を目指し、2019年3月に設立された研究会で、毎年1回『地域産業総合研究』(ISSN:2434-9313)を編集しています。
定例研究会は年2回開催しており、今回が第10回目となる定例研究会でした。
発表内容
まず、「AIを活用した企業史・団体史の継承と利活用 ”3つのハードル” 〜企業のサステナビリティ向上へ〜」をテーマに以下について発表しました。
・誠勝が創業以来担っている貴重史料のデジタルアーカイブ化についての取り組みを紹介
・現在直面している課題としてそれらのデジタルアーカイブを、いかに地域・企業の課題解決に利活用するか
・その社会的なロールモデルをいかに創っていくか
そして、企業史・団体史の継承と利活用を進めるための課題として以下の ”3つのハードル” について今回の参加者の方々とディスカッションしました。
"3つのハードル"
1.「どうなれば企業文化が継承されたことになるのか?」
2.「企業史・団体史にどうしても入ってしまう編纂者の主観をどうクリアにするか」
3.「企業文化の継承が企業にとってどう活きるか?」
参加者からは「企業の歴史を知ることで、その価値観への共感を社内外に浸透し、活きたマーケティング戦略を実行できる」「創業者の主観そのものが価値になっている点」「会社のことを知りすぎている人ほど逆に書くことを躊躇してしまう」といった意見が出され、活発な質疑応答が展開されました。
そして最後に、当社の今後の取り組みの展望についても紹介しました。
▲研究会で発表中の様子
今後の展望
誠勝は創業以来、蓄積してきたデジタルアーカイブ構築に関するノウハウに加え、デジタルアーカイブ構築後の利活用を見据えた活動を進めています。団体・企業などのデジタルアーカイブが有効に利用され続けるためには、組織内の過去の編纂資料の電子化にとどまらず、日々更新される組織内外の新たなデータと組み合わせて利活用できる仕組みが不可欠です。
当社ではその一環として、AI関連技術を活用し、団体・企業が持つ編纂史料から従業員などの“潜在的課題指摘能力”(※1)を評価できるアセスメントツール「AIDARD(読み:アイダ―ド)(※2)」を開発しています。本ツールはまちづくり人材育成事業「まちづくりの誠勝」にて、本ツールを地域活性化に資する人材育成に活用したいと考えています。
今回の学術発表を機に、これまで以上に多くの地域企業の経営企画・社史アーカイブを担う人材育成や、学芸員や司書などの貴重書・文化財に関わる人材に対し、博物館が所蔵する史料の調査研究や地域課題に対する理解を深める活動を行っていく予定です。
※1.潜在的課題指摘能力とは・・・団体・企業の従業員などが、社史などの編纂史料を読み解き、所属団体の潜在的な経営課題を察知・把握する能力
※2.「AIDARD」とは・・・社史や自治体史などの編纂史料をベースに、事前に用意された述式テストの回答から「理解度」「共感度」「伝達度」「実践度」を数値化、従業員の“潜在的課題指摘能力”として評価できるツール
誠勝は「"文化を継承するアメーバ"を創る。」をミッションに掲げ、より多くの方々にデジタルアーカイブを利活用いただける社会の実現を目指し、研究開発にも尽力して参ります。