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【トップインタビュー後編】安定老舗人材企業を10年で5倍に急成長させた超ユーザーファースト戦術とは

総合人材ビジネスを手がける株式会社クイック。創業約40年の歴史を持つ当社は、ここへきて急速な成長を遂げています。2014年には東証一部に上場、さらに8期連続で大幅な増収増益と過去最高益を更新。その成長ドライバーといえる部隊こそ、10年前に発足して以来、自社のWeb・マーケティング部門を一手に担ってきた、WEB事業企画開発室です。


【One to Oneは本当にOne to Oneなのか。】

――前回は、ターゲットを絞って徹底的にユーザーファーストを貫く姿勢と、その大変さについて語っていただきました。いつ頃から小原さんはそういう考え方だったんでしょうか?やっぱりバンドマンでパチプロだった経歴が影響してますか?

いえ、全然関係ないです (笑)。何かキッカケがあったというより、時代の流れの中でそう思い至った…という感じでしょうか。

Webマーケティングの進歩と共に、ユーザー層はどんどん細かくセグメントされるようになりました。昔は「F1層」だとか「T層」だとか、ざっくり世代 や性別でしか分けていなかったものが、価値観や性格、行動パターンといったものを掛け合わせて細分化されるようになり、最終的には個々人単位…つまり「One to One」こそが理想だ、と言われるようになりました。でも、僕はそこにちょっと疑問を感じたんですよ。

「ターゲティングとアプローチをどれだけ個別化できるようになったとしても、それだけではユーザー志向って実現できないんじゃないの?」って。

――え!? One to Oneがユーザー志向でないと?

いえいえ、そこまでは言いませんよ。もちろん「One to One」の考え方は大切です。僕が違和感を覚えたのは、マーケッターが向き合う「One」が、人ではなく「ただのデータ」だということです。

データから、顕在化したユーザーニーズを読み取ることは比較的たやすいでしょう。でも、ユーザーの潜在的なニーズをデータから読み解くのは難しいです。どんなに個別にターゲティングとアプローチができるようになったとしても、潜在ニーズをしっかり拾えないと、プロダクトはどうしても「無難なもの」から前に進めないと思うんですね。

大切な人に何かプレゼントするとき、無難なものでいいのか? ということです。そこはやっぱり、相手が心の底から喜んでくれる、サプライズのあるものにしたいじゃないですか。そのサプライズは、データからは導けないんですよ。

【“肌感覚”の復権。】

――なるほど。でもデータドリブンを否定されるってことではないですよね?

もちろんです。現にデータドリブン・マーケティングにもかなり力を注いでいますから。どっちも大切だというのが僕らの考え方ですね。

糸井重里さんって、居ますよね。糸井さんがコピーライターとしてご活躍されていた20世紀末というのは、メディアといえばテレビや新聞やラジオで、今みたいな効果検証のしくみもありませんでした。そんな中、天才と呼ばれるコピーライターやデザイナーが大当たりを出せたのは、彼らの“肌感覚”が優れていたからだと、僕は考えています。

それが21世紀になりWebの時代が訪れると、より精度の高い 効果検証が可能になり、データの裏付けに基づくモノづくりが行われるようになりました。結果、「大外れするリスク」が格段に減ったわけです。データを元にPDCAを繰り返せば、確かにユーザーが求めるものに寄せることは可能ですから。でも、その結果、世の中のプロダクトが似たり寄ったりのものになってしまったら、それはユーザーから見たらどうでしょう?

――うーん、どれを選んだら いいかわからないし、つまらないし、かゆいところに手が届かないかもしれないです。

ユーザーの心をつかむ「ナナメ上の発想」を繰り出すために、今再び、20世紀型のアプローチが重要になると思っています。即ち、ナマのユーザーと向き合い、データからは読み解けない潜在ニーズをとらえるということが。

だから僕たちは、データドリブン的なアプローチは行いつつ、直接ユーザーと会うことを大切にしたいと考えています。単にユーザーを知るために会うのではありません。ユーザーを感じるために、会うんです。

相手の性格、価値観、容姿、声、機嫌、息づかい…といったユーザーそのものを五感で感じて醸成された肌感覚こそが、決定打となるような「ナナメ上の発想」を生み出す鍵になると思いますから。

【“恋わずらい的ユーザーファースト”】

――小原さんは、どんな人がWEB事業企画開発室に向いていると思います?

ユーザーを理解する過程を楽しめる人ですね。ユーザー理解にゴールなんてありません。人は自分自身のことさえ100%理解することはできないんですから。ユーザーを体で理解していく 長い道のりを、恋わずらいみたいに楽しめる人がウチにピッタリだと思います。

四六時中ユーザーのことを考えて、お風呂に浸かりながらでも「この時間、きっとユーザーはベッドに寝っ転がりながらスマホを操作しているはず。もしかするとこのアプリを使うシーンは立っているときより横になっているときの方が多いかもしれない。だとするとUIはもっとこうした方が使いやすいんじゃないか、ボタンはここに置いた方が押しやすいんじゃないか…」なんて想像する。そういう人たちが集まって、ワイワイガヤガヤMTGをする。そういう楽しい環境から良いプロダクトを生み出していってほしいですね。

――そんな「データドリブン」と「恋わずらい的ユーザーファースト」をポリシーに、今後WEB事業企画開発室はどこへ向かっていくのでしょうか?

僕たちは既存事業をドライブしていくことはもちろん、Webサービスに軸足をおいた新規事業を創出していくことがミッションです。ユーザーファーストを貫く風土を武器に、血の通ったサービスを創造し、ハッピーを生み出し続けること。それが、僕たちがやろうとしていることです。

具体的には、直接会ってお話しできればと思っていますので、ご興味を持った方はぜひ、お気軽に話を聞きに来て下さいね。

――ターゲットを絞り、データドリブンで堅実に守りつつ、かつての天才クリエイターのような“肌感覚”で突出したプロダクトを創り出す…。やっぱり小原さん、パチスロで生計を立てていただけあって勝負師の血を感じます(笑)。あ、バンドマン時代の写真とかありますか?

やめて下さい(笑)。もう昔の話ですから!

~この記事に出てきた人~
<小原努>
WEB事業企画開発室室長兼執行役員。大手プロバイダでインフラエンジニアや業務支援システムの開発を経験後、クイックに入社。新規事業の立ち上げや、社内システムの開発、広告運用体制の構築などを手がけた後、クイック本社内にWEB事業企画開発室を立ち上げる。メンバーのマネジメントを行う傍ら、サービスのプランニングからコンテンツの企画、システム開発まで幅広く関わる。

~前回の記事はこちら~
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