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【特別取材】コロナをチャンスに変えたplayground代表が語る、エンタメDX構想【後編】

前編に引き続き、スポーツ・エンタメの DX を推進してきた弊社代表の伊藤が語るエンタメ業界における現在の課題と今後の展望をお送りしています。(前編のストーリーはこちら
後編では、日本でエンタメDXが進まない理由や、実際にplaygroundがおこなっているDXについて詳しくお話ししていきます。

playgroundによる“入場管理DX”

ー今playgroundが目指そうとしているエンタメDXっていうのは、どういうものをどういう風に“一切を変える”話なんでしょうか。

「入場管理関連のオペレーション」をDXすることです。

ー入場管理を全てデジタルに変える?

チケットの販売に関してはうちは関わってません。
チケットの販売をコアとしてやってらっしゃるところは多く存在しているし、結局チケット販売で一番重要なのは「販売力」、つまり、いかにチケットさばけるかっていうところだったりするので、それはうちの範囲じゃないって思ってます。

うちがやるべき、DXの効果を一番享受しやすい場所はどこだ?って考えると、そのチケット買ったあとの世界だったんです。発券後の世界ですね。

発券前までの世界って、既にチケットぴあさんとか、ローチケさんとかそういった会社さんがしっかりシステム組んでらっしゃるんです。
イープラスさんはそもそも店舗販売を無くしてwebで販売しようとするところから会社が始まってますし。
こっちの世界は少なからずデジタルが取り込まれています。

それに対して「チケット買ったあと」って、ほんと完全に紙なんですよね。

ーそうですね。購入まではもうパソコンの前以外でやることでなくなりましたけど、結局発券はコンビニとかあるいは郵送で届くとかで。
結構それは今のところ当たり前な感じですよね。

“なんでコンビニ行かなきゃいけないの?(笑)”って、よくよく考えたらなりませんか?

この令和の時代に、わざわざ店舗に行かないと受け取れないものが存在しちゃってるわけじゃないですか。
これって結構無茶苦茶な話ですよね。

更にいうと受け取れるコンビニが決まってたりするんですよ。
都内にいるとそこまで気になりませんが、地方だとセブンがありませんとかファミマがありませんみたいなのがあって。

コンビニに行かなきゃいけない、ホームプリントじゃ駄目、とかいう話ってよくよく考えると何のために存在しているのかわからないことで。

“権利”っていわゆる物理的である必然性は全くなくて、本来バーチャルであるべき存在だと思うんです。

考えてみてください。Netflixを視聴する権利をゲットするために、コンビニに来てください!とか。
Googleのパスワードを再発行するのにコンビニまで取りに来てください!とか、ありえないですよね?

ーそれはだいぶ手間に感じますね。今すぐGmail見たいのに!って(笑)

これがスニーカーだったら「仕方ないなぁ」ってなるんですけど、権利なんで、物理で存在している必然性って本来ないんです。
株式ですら、今や紙の株式なんて存在しないわけじゃないですか。

でもなぜか入場権利を取り扱うチケットは紙のまま。
この無茶苦茶なギャップにいわゆるDXをする価値があると思ったんです。

ーなるほど。発券作業の部分はすごく便利になることは分かったんですが、それ以外はどういう点が便利になるんでしょうか。

さっきの本田さんの話じゃないですけど、まず、シンプルに友達に渡すのがとっても楽になります。

野球場なんてめちゃくちゃ広いんで、遅れてきた友達にどこかで手渡ししようかってなると大変ですよね。
「15分遅れるから先に座っててー」って言われても、そもそも席との往復で15分以上かかるから先に席に座れないわけですよ。

もぎりの担当者がビリビリやらなきゃいけない部分も解消できますね。
実はチケットを紙でもぎったあとって、実数を出すために半券1枚1枚数えてるんですよ。
内野席こちら・外野席こちらとか言って全部繰り分ける作業を全部やった上で、その数を数えるっていう作業をみんなでやってるんです。
なかなかスタッフ数を削減できない要因にもなっていますね。

これがうちのサービスだと、何人入場しましたっていうのがリアルタイムで現場スタッフの個人スマホに出せちゃいます。

あとはコロナを受けてって話でいうと、払い戻しが発動するケースがめちゃくちゃ増えましたよね。
「体調悪いから払い戻ししたい」って言われるとコロナになってからは受け付けるしかなくなったわけですよ。

例えばですが、ローソンで発券したチケットって、ローソンの店舗に持っていっても払い戻しされないって知ってます?

ーローソンの店舗にいっても払い戻しされない?

はい。正確に言うと、ローソン渋谷店で発券したチケットを、所沢のローソンで払い戻してくださいって言っても駄目なんです。
発券したところと全く同じ店舗に返さないといけないんですよ。

さらに受け取ったローソン側はチケットエージェンシーに発送して、チケットエージェンシーのオフィスで回収した紙チケットで1枚1枚バーコードをピッてやって、専用の端末で1枚1枚確認して、本物であることを確認した上で、返金処理。っていうのを1個1個手打ちでやっているんですよ。

この業務がコロナで爆発的に増えて、去年の4-5月とかはチケットエージェンシーのスタッフ総出で処理していたわけです。

これらすべて、チケットを電子にするだけで解消出来ちゃうんです。

そもそも発券する瞬間、入場の権利を誰に渡すかっていう取り扱いの瞬間から、払い戻し、入場管理、友達に渡すところまで、そういうのを全部デジタルネイティブな発想でゼロベースで再設計する。

そうするとチケット発券窓口はいらないし、そのための事務員も全く不要。
払い戻し作業のために裏側でめちゃめちゃ働く人たちも不要になるし、もぎりの人も終わったら試合見ていいよ、みたいな話になるわけですよ。
ずっと課題と言われてきた不正転売も全然気にしなくて良くなっちゃう。

こんな便利になり、このインフラが全部不要になり…っていうのはまさにDXらしいDXかなと思っていて。
ここに、うちがやりたいことがあります。


DXが進まないのは、「まともな人」が多いから!?

ー今お話を伺っていると、DXするべきだっていうことは割とわかりやすく見えている話だと思うんですが、それでも日本のDXが遅れている原因どこにあるんでしょうか。

これすごく逆説的なんですけど、「まともな人が多いから」だと思ってます。
要はちゃんとROIを考えられる人が存在している組織って、トランスフォーメーションできないと思ってて。

ーROIは、かけた投資に対して返ってくる利益のことですね。

Return On Investment。今時はコスパって一般用語でも言われるようになりましたが。
ビジネスの世界では「この施策をやって、ROIはどうなの?」って必ず聞かれるじゃないですか。
それをちゃんと考えない稟議書なんてふざけるな、みたいな。

ーROIを考え始めるとトランスフォーメーションできないと?

できないと思います、ROI考えていると。
部分的にでも「蒸気機関の方がいいよね。残すべきだよね」っていうところが見つかっちゃうんですよね。ばれちゃう笑

ー既存のところでも利益が出てるからってことですかね?

紙のベネフィットも、(当たり前ですが)確実に存在はしてるんですよね。
だから、そのベネフィットを超えるだけの価値はあるの?ってパーツを1つ1つ切り取ってディスカッションを始めると、「ここは従来通りのオペレーションを残した方がいいじゃん」っていう話が必ず出ます。

例えばチケットの文脈で言うと、いわゆる電子についていけないお客さんは、やっぱりチケットを買うのをためらうようになるんですよね。

エンターテイメントの世界ってチケットが売れるか売れないかが圧倒的に大事で。DXによるベネフィットよりも、チケット1枚でも売れる方が大事っていうのが、スポーツエンタメのリアルな話です。

全席売れてる興行なんて、実は日本でも本当に数組しかいないぐらいの話だったりするので。
どれだけ人気があっても、席を埋めるのは至難の技ですし、それによってほとんどが固定費で、変動費はほとんどかからないビジネスですから、席が埋まるかどうかって、シンプルに利益に直結してくるんです。
5万人のドーム公演であっても1000人追加で来てくれたらどんなに嬉しいかっていう話になってくるんですよ。

そうなってくると、集客力を少しでも落とす可能性のある施策ってまず敬遠されるんですよね。
DXによるベネフィットはいくらですか、それに対してマイナスはいくらですかって計算すると、絶対にマイナスの方が大きいです、短期的には。
だから進まない。


どうすればDXが進むのか

ー皆さん企業やられるときって利益を追求するわけなので、そうすると利益が少しでも下がる可能性のあるDXを進めるってものすごく難しいと思うんですけど、どういうふうにやるとDXって進むんですかね?

僕はもう途中で諦めて、説得は悪だって、決めるようにしました。
特にスタートアップみたいな、10年以上先の未来を見据えなきゃいけない企業がお客さんに営業するときって、下手に頑張って説得しちゃいけないんだなって。
自分で会社経営して9年目で、ようやくその境地に達したんですけど。

結局、業界や市場を10年20年後を見据えて思いっきり変えたい!って心から思えている相手じゃないと、まともな誰かがちゃんと考えると「一部紙は残そうか」とかいう話になるんです。
それは少なくとも短期的には非常に正しいんですが、DXしようという野蛮な挑戦に於いては厳しい。相手が大変革に踏み切るマインドセットに変わるまでは説得を頑張らないというのが、一番の方法だと思うようになりました。

それで言うと、今一番本気で一緒に取り組んでくださっているのは、ヴォレアス北海道さん。
バレーボールの2部リーグのチームなんですけど、むちゃくちゃイケてる。

チームが始まって3年、4年かな?まだ始まったばっかなんですけど。
今V1上がれるかどうかの戦いを絶賛やっていて、今2位かな?1部昇格目前、まで来てるむちゃくちゃ優秀なチームなんですけど、強いだけじゃなくて、創設時から、一番下のリーグなのに一席1万円とか1万5000円の席とかを普通に販売していたんですね。
そして完売させるっていう、バレーボール界ではありえない、ビジネス的にも結構すごい革新を起こしているチームだったりするんですけど、「もう紙なんてどうせなくなるから、うちは全部デジタルでいくよ」って最初からうちの思想に完全に乗っかってくださって。
チケットを売るのも、チケットを発券した以降も。

いまはplaygroundが提供しているMOALA QRというQRコードをかざすだけで本人確認も発熱者検知も一発で全部終えるっていう、弊社で開発した入場の最新技術があるんですけど、これをもう100%導入するっていう決断を速攻してくれたんですよ。

MOALA QR|世界のチケットが変わる、究極の入場認証機能
MOALA QRは、QR コードなのに不正転売を防止できる、世界初の入場認証機能です。
https://moala.live/moalaqr

ー紙をゼロにするってことですね。

そうです。もうみんなQRコードで入場してくれと。
QRコードっていうだけじゃなくて、顔も表示してもらうっていう世界中、誰も体験したことないUXを導入してくれているんです。

旭川のバレーボールチームがですよ、デジタルに慣れた都会のチームではなく。

ーご高齢の方も多いような地域ですね。

その通りです。もちろん、高齢化が進んでいる町で、ヴォレアスの試合を見てくださる方もそんなに若い方ではなく、いまだにガラケー率がむちゃくちゃ高い、っていうエリアなんです。

けどその人たちに、QRコードを持ってきて!顔かざして!それ以外入場出来ません!ってやり切っちゃったわけですよ。

ーでもそれをやると結構クレームきたりするんじゃないですか?
あるいはさっきおっしゃった通り、来場者が減って売り上げが落ちるとか。

めちゃめちゃあった、と聞いてます。
クレームはちゃんとくるし、スタッフに対してお怒りもちゃんとくるし。
こんなもん、このおじいちゃんおばあちゃんがいっぱい来てる興行でありえないだろうって。そらそうですよね(笑)

ーどういうふうに対応されてるんですか?

「やらない人は来ないでいいです」って答えるらしいです。

ーすごい思いっきりですね。それで、ビジネス的には大丈夫なんですか?

はい。コロナ関係の影響を除けばちゃんと売れてます。
結局、おじいちゃんおばあちゃんに対して「ヴォレアス見たいならやってよ、おじいちゃん」って説明をしたらちゃんと応じてくれるらしいんです。

よくよく考えたらおじいちゃんおばあちゃんも結局ネットでコロナ対策調べたりとか、ネットスーパーで買い物したりとか、旅行のチケットをオンラインで取ったりとか、あれ、みんなネットでやってるんですよね。

ー旅行は確かにもう直接宿に電話してとかやらなくなったりしますね。
あるいは旅行会社に店舗に行ってとかっていうのは、年配の方でもしてないかもしれません。

そう。実はできるんですよ。顔写真登録するくらいの話しって、旅行の予約できるぐらいの人に対してなら「やってほしい」 って言ったら当然できるんですよ。

要は能力の問題じゃなくて気持ちの問題なんですよね。

ここの気合いを運営側が持てるかどうか次第で、(僕らも含め)DXっていうのが出来るのか、それとも単なるデジタライゼーションにとどまるのか。

つまり、興行がこの後5年10年っていう先に、いわゆる文字通り、桁が違うアメリカみたいな世界に持っていけるかどうかっていうのは決まってくる。そういうもんかなと思ってます。

ーその意味でも、マインドが一旦ゼロベースになった今回のこのコロナは、エンタメDXにとってはチャンスっていうことですね。

めちゃめちゃチャンスですね。明確に大義名分ができたんで。

playgroundのMOALA Ticketを活用して、顔認証なりQRで入場し、非接触で入場しようよって言えるようになったのは追い風だなと思ってます。

MOALA Ticket(モアラチケット) | コミュニケーション型電子チケット発券システム
「MOALA Ticket(モアラチケット)」は既存チケット管理システムとAPI接続するだけでLINEで発券できる電子チケット機能を使えるようになる「電子チケット発券サービス」です。来場者とLINE経由のコミュニケーションを実現すると共に、不正転売・利用抑止機能も実装。
https://moala.playground.live/


MOALAの更なる利便性

ー入場とか、あるいは払い戻しみたいなところで電子チケットには利点があるよってお話を伺ってきたと思うんですけど、さらに今後、こういうふうにビジネスに生かせる、とか、こういう利便性が挙げられる、とかっていうのは他にありますか?

マーケティングに活かせるっていうのは、もう早速よくわかってきています。

ヴォレアスさんは今まさにチケットが何枚売れてて、何枚売れ残っているのか、過去に誰が購入していて、誰が実際に来たのか、などのデータをすべて管理出来ています。

これって実は結構革新的な話で、チケットを買った本人の同行者のデータまでは一切取れなかったりするんですね。

ライブやイベントのチケットって複数のチケットエージェンシーで販売している事が多いんです。
なので、顧客データもチケットエージェンシー毎にバラけてしまっていてまとめられなかった。

でも弊社のMOALA Live Storeを活用して自社でチケットを販売しているヴォレアスさんは管理が出来ている。
チケットを一度でも持ったことのある人っていうのが全部わかって、その人たち全員に連絡取れるんですよ。

なので、過去試合に来たことあるけど最近ご無沙汰な人に対してクーポンを配ったりとかができるんですよ。
それでシンプルに、じゃあ何人増えたねっていうのが明確に数字ベースで分かったり、リピート率を把握できたりしています。

MOALA Live Store
エンタメ特化の自社EC構築サービス。ライブのぜんぶを自分のお店で直接ファンに届けませんか。エンタメ販売のすべてをデジタル目線で作り直し、デジタルネイティブなエンタメコンテンツ販売の仕組みを構築。ファンと興行の距離を縮める理想的なお店のかたちを実現しました。
https://moala.live/store

ーなるほど。いわゆるECサイトとかリテンション施策のようなもんですよね。

全くそのとおりです。いわゆるどれくらいの頻度で来てるかっていうところを、購入金額×最近買ったかを把握してリテンションを促す。

ーなるほど。やっぱりそれってスポーツエンタメ業界ではほとんどやられてなかったことなんですか。

全然ないですね。

一番進んでいる例でいうと、パ・リーグの3球団、ロッテ、オリックス、ロッテが早かったんですが、CRM施策を2000年代入ったぐらいからすごい真面目にやられていたんですよ。
ファンクラブの会員に対するCRM施策を徹底してやった結果、3球団ともすごい動員数増やしてるんですよ。
確か10年で、2倍?忘れちゃいましたけど。すごい動員を伸ばしました。

けどそれも結局、ファンクラブの人だけが対象で、そのファンクラブの人たちと一緒に来た人については全然データが取れないから、固定客の年間来場頻度をいかに上げるかで止まってて、次の一手がない。
ファンクラブっていうかなり閉じられた世界でしかマーケティングCRMが出来ていないのが現状ですね。

ーなるほど、その辺りのCRM活動がきちんと機能する、っていうことが見えてくると、新しくお客様を集めるとか、ファンを増やしていくことに対する予算配分みたいなもの変わってきそうですね。

はい。変わってくるというか、ようやく予算を使えるようになるのかなと思っています。

あと、スポンサーの取り方も変わると思います。

ースポンサーも変わる?

はい。某大手興行さんに「どうやってスポンサー営業してるんですか」って聞いたとき、もちろん冗談半分ではあるんですけど、でも本当に「古今東西、老若男女、様々なお客さんが来てます」って言ってスポンサー営業にしているらしいんですよ。

ーいわゆるどんなっていうセグメントが無いわけですね。

そこはわかんないって言ってました。
この興行に限らず、それこそ最先端なイケてる球団ですら「どうやって計測してるの?」って聞くと「最終的には目視」って答えるわけです。

ーなるほど。きちっとデータには残せてないわけですね。

そうなんですよ。
ファンクラブのデータは持っているのですが、それって一部の本当に熱狂的な人たちじゃないですか。そこだけ持っていてもマーケティングとしては偏ってるわけですよ。

こういったところもDXして、入場管理DXの「MOALA Ticket」とかエンタメ販売DXの「MOALA Live Store」とかを本気で活用する所が増えて、スタジアムに来ているライトファンも含めた全員のデータを管理できたら、だいぶ変わっていくだろうなと思います。

(写真:伊藤の愛猫)

今回は話題の音声通話アプリ「club house」を利用し、公開取材という形でおこないました。
自宅で愛猫を抱えながら…という非常にリラックスした状態での取材だったたため、より深くまで伊藤の頭の中を覗き見ることが出来たように思います!
ニューノーマル時代のエンタメ業界を支える弊社の取り組みに、これからもご注目頂きたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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