巷に溢れるFintech関連のニュース。色々あった気はするけれど、なにかと記憶が曖昧になりがちな皆さんのために、当社Fintech研究所長の瀧が独断と偏見で振り返る「月刊 瀧」。今回は2018年の総決算。国内を中心に、今年の金融界のニュースを前編と後編の2回に渡って振り返ります。それでは後編をどうぞ!
2018年 金融界の重大ニュースを振り返ってみた(後編)
...今年、大崎さんは、PayPay、LINE Pay、Kyashを使い始めたとのこと。
大崎:Kyashはリアルカードが登場して、あのキャンペーンが出た瞬間に、2%だっていうことでみんなに普及しましたね。私は前職のベンチャーではぜんぜんキャッシュレスになっている人がいなかったんですが、マネーフォワードではこんなに広まってるんだ!って。使い始めて、3日連続で財布忘れたみたいなこともありましたが、それでもApple Payあるし、LINE PayとかKyashでも送れるので、困らなかった。
瀧 :なくてもいいじゃんって言うことに気づくんですよね。初日じゃないんですよ。忘れた初日は忘れたとしか思ってなくて、だんだん財布触ってないことに気づくまでの、ラグが大事だと思います。
高橋:あと、PayPayのリアルライフガチャって、めちゃめちゃすごいね。(編集注:収録が行われた日はまさに100億円キャンペーンの真っただ中)
瀧 :SNSで当たった場合だけポストするから、ある意味みんな当たるように見えますよね。
高橋:たしかに。
大崎:あの画面も、詳細を押さない限り決済情報が見えないようにデザインされてて、スクショでSNSで拡散できるようになっている!って、デザイナーの人がツイートしてて、なるほどと。みんな急にキャッシュレスになりました。
高橋:Paymoの個人向けサービスが終了っていうニュースは、聞いたときちょっと寂しくなりました。
大崎:あれはどういう背景なんですか?
瀧 : 割り勘という枠組みで、「換金できる電子マネー」に必要な本人確認をしなくてすむアプリだったのですが、大型のライバルが出てきたし、規制面での変化も出てきた、という理解です。
そういう意味では、今年のもう一個のテーマですけど、郵便が使われている本人確認のあり方を、現代化させないといけないよねというのがありました。11月30日に施行となった新しい制度では、ビデオチャットで本人確認するのが可能になりました。問題は、それがどれくらい使われていくのか。でもね、来年以降、そのあり方って変わってくると思うし、 マネーフォワードモールとかもMFID (マネーフォワードの各サービスを共通IDでログインできる仕組み)連携とか始めていて。モール上ですぐに口座開設できたよ、みたい時代がくるんですよ。KYC(顧客確認)の提言は2年くらいしてきたのですが、第一歩が進んでよかったと思ってます。
そうだ、大崎さんのメモの「よちよち投資部」っていうのがずっと気になっていて。これはなんですか?
大崎:社内のプロジェクトで、金融リテラシーを上げていこうっていうのがあって、よちよち投資部っていうのが始まったんですよ。トレダビってバーチャル投資サービスがあって。それにみんな登録していて、現在1位が、高橋さんなんですよ。
高橋:そうそう!
大崎:で、みんなそこでやり始めて。
高橋:今日ちょっとヘコんだけど、なんとかまだトップですね。
瀧 :疑似体験はすごく重要ですよね。あと、1万円でいいから本物のリスク資産を持つことで、さらに面白くなってくると思うんですよね。今年、お金のEXPOでアクティブファンドピッチをやったのですが、すごいよかったなと思っていて。
投資で銘柄を選ぶのって、理論的には時間の無駄って言われたりもするのですが、そう言われるとそもそもやりたくなくなるじゃないですか。そこにゲーム性とか、失敗してもいいから何か人よりで勝ちたいとか、そういう山っ気とでもいうのでしょうか。そういうものがないと、人間ってそれまでとは行動を変えませんよね。それを必死でキャリアをかけてやっている人たちに、思いの丈を話していただくことができたので、すごい個人的にやってよかった。それを目指して、よちよちの次はなんですかね。韋駄天とかになるといいと思います(笑)
大崎:駆け抜ける感じですね(笑)
瀧 :ちなみに、やる気(大崎のあだ名)さん一番の推し銘柄は何ですか?
大崎:いま全部下がっちゃって、ラクスルがすごい上がってそれを売ったんですけど、今はそうですね・・・ビックカメラ上がらないかなみたいな。
瀧 :なんでその銘柄選んだの?よく使うから?
大崎:...っていうのと、PayPayで自社からお金が出ていかず、売上が上がるから、単純に売上が上がるとその株を持ちたいと。それで逆に、ソフトバンクとヤフーは、100億使うって言っちゃってるから、下がるんじゃないかと。まぁちょこっと上がりましたけど、でもそんな上がらないなって。
瀧 :へぇー、なるほど。
大崎:アクティブファンドマネージャーの人たちが、すごい考えてやってることをやるって、自分は財務諸表とか見ても全然わからないし。。
瀧 :前職時代にですね、野村證券と日本経済新聞でやってる日経STOCKリーグの、裏方の審査員をやったことがありまして。これの審査やってると中学生から大学生に至るまで、2つの大きな傾向があるんですよ。超マニアックな銘柄を選んでくるか、よく知っているB2C銘柄を選んでくるか。ある意味、投資のバランスとしては間違ってるかもしれないけれど、しっかり調べて、いいと思うんだったら、入り口はそれでいいはずなんですよ。
アメリカだと誕生日とかに、ディズニーやティファニーの株を、実際に額縁に入れて送ってあげるサービスがあります。昔、私も一つ買ったことがあるんですが、毎年議決権行使書まで送ってきてたので本当の株式だった(笑)
そういうものから馴染むのは、第一歩としてとても大事です。ぜひ、本当の投資を、よちよちの延長でやってみてください。
大崎:はい!それと、もう一つ気になっているのが、セレブがVCを作っている話です。サッカーの本田圭佑さん、NBA(バスケ)のケビン・デュラントとか。少しずれますが、ウィル・スミスとかが、ベンチャー投資をしている背景が知りたいです。
瀧:セレブファンドには一つ有名な事例があって、映画だと「バタフライ・エフェクト」で有名なアシュトン・カッチャーさんなんですよね。シリコンバレーのわりと実績ある投資家なんですよね。Yコンビネーターのデモデイにデミ・ムーアとアシュトン・カッチャーがいるっていう。
私も素人意見ですが、インフルエンサーとして、鶏と卵のどちらかをやってくれるのであれば、セレブに投資してもらうというのには合理性があるはずなんですよ。オーガニックに宣伝をしたとしても、本田圭佑さんの動員できる層や人数には届かないところがあって。
どんなベンチャーにも、大なり小なり鶏と卵の要素があるじゃないですか。みんなに使われているから、ユーザーが増えるみたいな。有名人が知名度をレバレッジして、他の人にはできない資産運用をするっていうのは、全然ありだと思うんですよね。
海外のセレブで相当の財をなした人たちは、ファミリーオフィスって呼ばれる、自分用の資産管理会社を作るんですよ。そこで、元々資産運用の会社にいた人とかを雇って、ファミリーのお金をマネージさせたり、要は人間版PFMです(笑)。
大崎:なるほど(笑)
瀧 :またも前職の頃の話ですが、ファミリーオフィスっていう本の翻訳に少し関わったことがありまして。富裕層は、お金の怖さを知っているので、娘がその、パリス(ヒルトン)みたいになってほしくない、って思うわけです。小さいうちからそういう教育を、逆に証券会社とかから受けるんですよ。
でも、金融教育や投資は、一部の人たちのものではなくて、誰でも関われるものである必要があると思うんですよね。日本も、なんか投資が、教育が必要なエスタブリッシュなもののイメージがあって。
もっといろんな人が関わるといいじゃないんですか。みちょぱさん、とか、あいみょんとか?名前からハードル下げてくれそう。
瀧 :音楽に造詣の深い高橋さんに聞きたかったんですけど、Apple Music上であいみょんがランキング独占してる理由ってなんですか?
高橋:なんですかね(笑)でも、ああいう90年代後半っぽい感じの歌って最近あまりなかったから今いいんじゃないですか?
瀧 :あいみょんの「死ね」っていう歌があって(貴方解剖純愛歌 ~死ね~)。ナチュラルに死ねって言っていて。GoogleとかFacebookの言語的なAIに怒られそうな勢いがあるんですけど(笑)実際に聞いてみると馴染む感じ。こういう、一見不思議な入口なのが流行るんでしょうか。
高橋:そうですね、内容はともかく、アーティスト名とかバンドの名前を外すのは流行ってますよね。最近、下の子が Pythonで電撃文庫みたいなラノベのタイトルを自動生成するっていうプログラムを書いてました(笑)なんか長いタイトルあるじゃないですか。「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」みたいな。最近そういう外し方が音楽でもトレンドなのかもしれないですね。
瀧 :パスワードみたいですね。長いほうがおすすめみたいな(笑)
大崎:昔、ホッテントリメーカーってあったけど、それが使えなくなっちゃったんで、多分その文脈であるのかなって思いました。
来年の三大予想
瀧 :来年の予想どうしようかな、と思いましたが、この3本でいきます。
1.電子マネーの利用比率が上がる
スマホ決済なり、お年玉の授受とかで、もっと飛躍的なユーザーの拡大に期待します。電子マネーで支払われている金額ってせいぜい5兆円とかなんですよ。それが2倍ぐらいにならないかな。いままで年間10%とか20%とかで伸びてたところを、2倍とか4倍にならないかなって。20兆円ぐらいいってくれないかなと。これで上がらなかったら、しばらくチャンスがないとも思うので、それくらいみんな必死に考える必要がある
2.Fintechっていう言葉は使われなくなる
もうさすがにFintechの検索が減る。日経とかの記事に使われた数が、減る。流石に違う言葉に代替されても良いのかなと。それはなんでかっていうと、若くないセグメントとか普通の人に使われるようになる。ある意味、普通の電子マネーとか、○○ペイだ、って表現に変わる。Fintechは範囲が広すぎる言葉なんですよ。Fintech研究所のカバー範囲も広すぎる、といわれるようになりたい。
3.運用を始める初心者が増える
もう一つの明るい話題です。相場も大分低調になりつつありますが、そういう時に、運用を始めるといいんですよ。証券会社にいた人間として、こういう時に仕込んでくれるといいなと思っています。初めて投資を知ったり行動に移せたりする場所は、今後ももっと身近かつ、多様化していくので、それが目に見えた形で実現する。
瀧 :さて、子育ての話。
赤外線暗視カメラを買ったんですよ。それで、本人の動きを夜とかに分析したりしてます。おかげさまで5ヶ月を迎えまして、元気ですよ。なんの病気もせずにここまで来ていて。
大崎:まだ言葉は?
瀧 :まだ全然なんですよね。寝返りもまだで。
大崎:今、興味関心が高いものとか食べ物ってあったりするんですか?これ手から離さないとか。
瀧 :まだ母乳かミルクで。もうすぐ離乳食開始なんですけど、離乳食って、切ないぐらい少ないんですよね。え、これだけっていう。だって、半期総会の飯でこんなの出てきたら大崎くんキレるでしょ?(笑)
大崎:もう暴動ですよ(笑)
瀧 :「こんなところから人間始まるんだ」っていうのが、毎日新鮮です。知育玩具とか、洋服とか、本人に何の意思決定権もないから、こっちが買ったものを全部使ったり、着させられるっていう感じが。
この一年でよく言っていたのは、消費にも選択疲れがあるよね、と。消費のサブスク化ともいえますが、人間は本当は選択なんてしたくなくて、両親に選んでもらうみたいに、ECから届けてもらいたい、ていうのがあるんではないかと。
赤ちゃんに対して親はこっちの方が着ててウケるからみたいな理由で服を買うわけですよね。人間の活動の9割ぐらいが繰り返しなんだすると、選択疲れを認めると人間性の喪失を意味する気もするんだけど、結局それが支持されている気がしています。
またも日経産業新聞のコラムの引用なのですが、今年の初めに僕は、ZOZOSUITSに採寸されると困るって書いたんですよね。単におしゃれじゃないとバレるのが怖いって思っていたんですが、結論から言うと、ジーンズが超よかったんですよ。ピッタリで、これでいいじゃん!って本当に思ったんですよ。
服を選ぶエネルギーが、もったいないっていう偉そうな表現をしていたんですけど(笑)意外とサブスクが色々やってくれるのもいいなって思い始めてる自分が、去年以上にあって、そこって純粋に変化なのかなと思いましたね。
大崎さん、なにかサブスクしてるものありますか?
大崎:結構ありますね。基本的に映像は、NetflixかAmazonでしか見ないですね。
瀧 :そうですよね、僕もそうですよ。
大崎:雑誌も、dマガジンで、病院とかで紙の雑誌を見ますけど。絶対自分のお金では買わないようなやつとかも、例えば、SPAにお金の話がちょこっと書かれているらしいとかで読める。
瀧 :ネットの世界って自分で物を探しに行く動線が主でしたが、だんだんと「知らなかったもの」「目に入ってくるもの」の消費を取り戻そうとする部分があるのかもしれないですね。
高橋:...瀧さん、そろそろお時間です。
瀧 :読者の皆さま今年もありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください!
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