medibaのデザイナーたちが、取り組みや知見を月イチで発信していく連載企画「mediba Designers」。
第17回は、UIデザイナーの渡邉 圭貴(わたなべ たまき)による上手なプロジェクトの進め方について。「ゴールに向けてプロジェクトをどう進めていいかわからない」「思ったようにプロジェクトが進まない」などとお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
プロジェクト進行の極意=“ラーメン屋”になる!?
お久しぶりです。UIデザイナー渡邉です。
これまでは就活生や新卒に向けた記事を書いてきました。
(末尾で紹介。ぜひお読みください)
新卒入社から早6年が経ち、いまはリリースしたての新しいサービスを育てています。様々な会社・部署・ 立場の人とひとつのものを作るという環境に身を置き、その大変さを身をもって体験しています。
例えば、数社合同でプロジェクトを進めるなどといった場合、試しにボタンの位置を変えるだけでも、一つの資料が会社間を行ったり来たり…。知らない場所で要件が変わっていたり、返事がくる頃にはこちらの状況が変わっていることもあったりと、各々の役割や情報の整理に多くのリソースが割かれています。
みなさんの現場でもこれに近いシーンがあるのではないでしょうか?
私はこういったプロジェクトを俯瞰して捉え、UIデザイナーとして対応すべき優先度を整理するために、頭 の 中 に ラ ー メ ン 屋 を構えています 。
…唐突でしょうか?今回はそういったお話をさせていただきます。
頭にラーメン屋を構える
さてさて、頭の中にラーメン屋を構えるとはどういうことか?それはプロジェクトの状況をラーメン屋の運営に例えるということです。
ある設定を下に用意しました。
40代向けのプラットフォーム内に、新サービスが立ち上がりました。
あなたはこのサービスの推進リーダーとして、ようやくサイトをリリースさせました。
仲間はデザイナー、エンジニア、コンテンツ調達、クライアントです。
新たなミッションはユーザーの集客と定着。
さあ、このサービスを人気サービスへと成長させることができるでしょうか。
しっかり覚える必要はありません。
つぎにこれをラーメン屋に置き換えたものが下記になります。
頭に描きながらお読みください。
古い商店街に、新しいラーメン屋がオープンしました。
あなたはこの店舗の店長として、お店のオープンまでこぎつけました。
仲間は内装屋、厨房長、オーナーです。
新たなミッションは、地元や圏外のお客さんを取り込むことと常連化。
さあ、この店を人気店へと成長させることができるでしょうか。
…こちらは覚えようとせずとも、状況や関係性がわかりやすい気がしないでしょうか?
それぞれの関係性はこんな感じに置き換えられます。
・プロジェクト:ラーメン屋
・UIデザイナー:内装の企画屋
・エンジニア:内装の施工屋
・コンテンツ編成:厨房長
・ユーザー:お客さん
・クライアント:店のオーナー
※執筆者は内装の企画屋にあたります
ではつぎに、ラーメン屋で起こり得るシチュエーションをもとに、サービス運用でどう考えていくかをみていきましょう。
ラーメン屋を育てていく
オープン当初は地元の客で賑わっていたものの、1カ月経っても客入りが伸びません。厨房では新メニューの考案が動き出すなか、オーナーから集客強化のために「味の追求に妥協なし!」のチラシ配りを依頼されました。
このシチュエーションをWebサービスに置き換えてみると……
・コンテンツの見直し
・プロモーション施策
このふたつが同時に進行している状態です。
きっと成果までの筋道が立てやすい後者が優先され、バナー作成などで早めに対応するようにデザイナーに依頼が来ます。
あなたならどう行動するでしょうか?
デザイナーとしては出せる情報をなるべく魅力的に伝えることに注力するのかもしれません。
ただ、頭にラーメン屋を持つと、ちょっと未来のストーリーが想像しやすくなります。
・チラシ配りをしても、新メニューの開発が間に合わなかったら効果薄ではないか?
・遅れて新メニューが登場すると、改めてプロモ施策が必要にならないか?
・そもそも客が来ないのは宣伝不足ではなく“興味を持ってくれた層を刈り尽くした状態”ではないか?
・もし商店街の客層の舌に合っていなかった場合、改善前に集客することが逆効果にならないか?
などです。
このように、ラーメン屋に例えることでコンテンツ編成の大切さ、それを優先させるべき理由、すぐやれる施策でも闇雲に優先されるべきではない背景がわかってきます。
ズバリ、ラーメン屋に例える最大の利点は、「プロジェクトの状況や関係性がわかりやすくなる」ということなのです!
もうひとつ別のシチュエーションも紹介します。
ラーメン屋で伝えていく
今度はWebサービスから入っていきましょう。クライアントからこんな依頼が届きました。
ある関連サービスがキャンペーンを催すため、これを我々のサービスサイトで大々的に宣伝したい。一般的なバナー掲載ではなく、サイト上に派手なセクションを新設して送客を強めたい。
ユーザーをサービス経済圏内で回遊させるための施策です。素敵なデザインに仕上げて、どんどん送客しましょう!
…と、ここでラーメン屋の例えを使ってみます。
「ある関連サービス」とは姉妹店でしょうか?お隣の店でしょうか?より具体的に想像するために、依頼時に足りなかった要素を仲間から聞き出し、ストーリーに組み込んでいきます。
オーナーの友人が、期間限定でTシャツ屋を開くらしい。お世話になっているので、ラーメン屋のお客さんをそっちにも流したいそうだ。
壁にチラシを貼るような一般的なものではなく、店に入ったら注文の前にTシャツ屋をご案内することになったよ。
私は疑問に思います。
・来るのは地元の中高年(Tシャツ欲しがる層かな?)
・来る人は腹が減っている(ラーメン屋からすぐTシャツ屋に向かうかな?)
=充分に送客できないうえに、お客さんたちの満足度を下げてしまわないだろうか。
…このシチュエーションは実話ベースですが、実際、目標の送客は獲得できませんでした。
そして後日、別のプロダクトにも同様の依頼が届きました。鵜呑みは早計だと、ラーメン屋の例えをそのまま同僚に伝えたところ“関係性が理解できた”とのこと。
さらに、このように噛み砕いた内容を、例え話としてそのままクライアントにお伝えしたところ“マズい感じが伝わった”と返答をいただきました。
そう、人に共有しやすいのもラーメン屋に例える利点なのです。
自転車屋?カラオケ店?やっぱりラーメン屋!
私はラーメン屋に例えるのがしっくりきます。存在が流行に左右されず、様々な業態を持ち、サービス性に幅があり……、実案件に例える際の間口が広いためです。
それに誰でもイメージしやすく、ラーメン屋の例えを共有しあえるのも魅力です。新規案件なら店舗企画。改修なら寂れたラーメン屋の立て直しなどと、応用も効くと思います。
あなたが “寂れたラーメン屋の立て直し” をする立場だったとして、こんなプランが出てきたらどう思うでしょうか。
「イスを高級なものにしてみよう!」
「タピオカが流行ってるから具に混ぜよう!」
これを本質的でないと感じて「座り心地は入店後に体験すること、まずは外から見える看板を改修するのはどうか」とか「結局美味しくないとリピーターが増えないのでやめませんか?」などと言えることが大事ではないでしょうか。
例えずとも「そんなことわかるでしょ??」と思われるかもしれませんが、企業同士それぞれの思想や利害がある中で、知らず見失ってしまうこともあるのです。
大きな組織と一人ひとりの背景が邪魔して「ではタピオカも…」となりがちなのです。ですので是非、頭の中にラーメン屋を設けてみてください!
少しでもみなさまの素敵な ラーメン モノづくりライフの糧になると幸いです。