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【そねせん! 第5回 】「乾けない世代」と「好き嫌い経営」。働く「個人的大義」を大切にせよ

こんにちは。ランサーズの曽根です。「そねせん」シリーズ、今週で第5回目になります。キャリア・働き方編もいよいよ今回で最終回。ひとまずはここまで来られてほっと一息。先週の自己成長・自己変革に続いて、今週は、働く大義について書きたいと思います。誰もが避けては通れない、「人はなぜ、何のために働くのか」、というテーマです。キャリア・働き方編の最後、うまくしめくくることができれば、と思います。

「乾けない世代」が追い求めるもの。それは「生きがい」「ライフワーク」

尾原和啓さんが少し前に出版された『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』に、面白いことが書いてありました。

曰く、最近の世代は、一世代前の「乾いている世代」に比べて「乾けない世代」である、と。

一般的な用語でいうと、アメリカでいわれているミレニアル世代、日本でいわれているところのゆとり世代・さとり世代、といったところでしょうか。

自己成長と社会貢献がつながっていたひと昔前の「乾いている世代」は、国や社会を動かし、支えていくという大きな枠組みで作り上げられてきた。

一方で、「乾けない世代」のモチベーションは、家庭、友人、自分という小さくて身近な枠組みで作り上げられている。


「ないものがない」時代を生きている「乾けない世代」は、上の世代に比べて、達成や快楽よりも、意味合いや良好な人間関係、没頭することに幸福を感じる。

わかりやすくいうと、「自分ががんばる意味が持てるものに、自分が好きな人たちと、とことんハマる」ことを重要視する。

別の言葉でいいかえると、みんな「生きがい」や「ライフワーク」を探している、ということです。(小沼大地さんの『働く意義の見つけ方』では、仕事ではない「志事」なんていう表現も使われていましたね)

そういう意味でいうと、少し前にSNSで流行った、”Ikigai”のフレームワークが参考になるかと思います。

Mission(使命):「好き」×「必要」であるもの
Passion(情熱):「好き」×「得意」であるもの
Vocation(天職):「必要」×「稼げる」であるもの
Profession(職能):「できる」×「稼げる」であるもの

これらすべての交差点に位置するもの、それが”Ikigai”である、と。


正確な出所は不明らしいですが、今の時代を言い表して妙な概念だな、と思います。

「ワーク・ライフバランス」という言葉が使われだしてから久しいですが、もはや現代においては「ライフ・ワークバランス」というべきなのかもしれません。

ライスワーク(好きではないが稼げる)よりライクワーク(稼げないが好き)、ライクワーク(稼げないが好き)よりライフワーク(稼げるし好き)、という価値の序列が、よりはっきりしてきたということかもしれません。


「社会的大義」への昇華はトップがやる。一人ひとりが「個人的大義」へ消化できるか

こうした価値観がどんどん大きくなっていく潮流の中で、ぼくが最近とても重要視しているのは、「個人的大義」です。

一言でいうと、「その仕事をなぜ自分はやるの?」という問いに答えられるものです。

対立的な概念となっているのは「社会的大義」です。

たとえばランサーズでいうと、「個のエンパワーメント」というミッション、「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」というビジョンを掲げています。

これ、手前味噌ながら、とても(というか圧倒的なまでの)社会的大義があると思うんです。多分ぼくが声高に叫ばなくても「まぁそうだよね」と99%の人は賛同してくれると思う。

ありがたいことに賛同していただけている一方で、採用面接をしているときに毎回、ぼくがじっくり見させていただくのは、その社会的大義が、その人の個人的大義につながるか、という観点です。

「良いビジョンですね」「ビジョン共感しました」と言ってくださる方に、「なぜそう思うのか?」「何を見て・聞いてそう思ったのか?」ということを色々な角度から聞く。

すると、うーん、と考えながら言葉に詰まる人もいれば、うれしそうに、あふれ出るように自分の体験談を語る人もいる。

平たくいうと、「うちのビジョン、あなた自身の言葉で語れますか?」ということです。

社会的大義というのは、企業が、社会に向けてビジョンを「昇華」させるものですが、個人的大義というのは、一人ひとりが、自分の心の内に向けてビジョンを「消化」するものだと思います。

ランサーズに一人、この社会的大義と個人的大義が強烈につながっている役員がいます。2013年からランサーズで活躍している根岸という人間です。

彼が自分の原体験から語ってくれるのは、「努力する権利を守りたい」ということ。結果の格差はあってもよいが、機会の格差はなくしたい。努力をさぼったわけではないのに頑張る権利を奪われてしまった人たちがいる状況に対して、テクノロジーを使ってその課題を解決しようじゃないか、と。

ぼくは彼を見て、この個人的大義というものを強烈に意識するようになりました。

起業家とかトップは大体、自分の原体験がそのままビジネスやビジョンにつながっていることが常だから、ある意味そこがつながるのは当たり前なんですよね。

トップが掲げるそうした社会的大義を、まわりの一人ひとりが自分の原体験やストーリーに意味づけていって、個人的大義に消化していく。そうすると、圧倒的な一体感が組織に生まれていくのだと思います。


「良し悪し」ではなく、「好き嫌い」。カルチャーが働く意義を増大させる

ビジョンの話ばかりしていますが、ビジョンと並んで大事なのがカルチャーですよね。

冒頭、「自分ががんばる意味が持てるものに、自分が好きな人たちと、とことんハマること」が乾けない世代の幸せの源泉と書きました。

それで言うと、「自分が頑張る意味が持てるもの」=ビジョン、「自分が好きな人たちと、とことんハマる」=カルチャー、なんだと思います。

先ほど、起業家やトップは、社会的大義が個人的大義と当たり前のようにつながる、と言いました。ビジョンづくりは、確かにそう。でもさらに難しいのは、そのビジョンを実現するためのカルチャーづくり。

ビジョンが社会的大義と個人的大義の結節点につくられるのだとすると、じゃあ、カルチャーはどうやってつくられるのか。

結論、好き嫌いだと思っています。「良し悪し」ではなく、「好き嫌い」。

ここでも一冊、本を紹介したいと思います。経営学者として著名な楠木健さんの『好き嫌いと経営』という本です。

そのまんまのタイトルですね(笑)。

そのまんますぎて、出版された当時は手にとるのをやめようかと思ったのですが、読んでみたら思いのほか面白くて、引き込まれてしまいました。

日本電産の永守さんやユニクロの柳井さんなど著名な経営者14名の好き嫌いだけを聞いていく、という至極シンプルな本なのですが、楠木さん流に、なぜ「好き嫌い」が重要なのか、なぜ「好き嫌い」の復権が必要なのか、が語られています。


「好き嫌い」というと大変幼稚にも聞こえますが、『ビジョナリー・カンパニー:時代を超える生存の法則』『ビジョナリー・カンパニー2:飛躍の法則』でも、”Good”はなく”Great”な会社の特徴として、「誰をバスにのせるか」を重視すること、特定の人にとってのみ素晴らしい会社である(=それ以外の人にとっては居心地が悪い)ことなどが挙げられています。これはつまるところ、強烈なカルチャーをもっている、ということですね。

楽天にいた時も、強烈なまでにこのカルチャーを実感させられました。ランサーズでも、この熱狂できるような独自のカルチャーをとても重要視しています。(※ランサーズの社内では、このカルチャーづくりをよく「祭り」や「儀式」にたとえて話したりします)

高尚なことを書いているようですが、シンプルに言うと、好きな人たちと気持ちよく働ける場をつくろうよ、ということなんだと思います。

で、トップはその「好き」、あるいはその逆の「嫌い」をカルチャーとして育てていって、それを強みに変えていきましょうよ、と。

「乾けない世代」の20-30代の人たちは特に、大義に変えられるビジョンとあわせて、そういう夢中になれるカルチャーを求めている。

もちろん好き嫌いの世界なので、合う・合わないはあると思います。でも、ひとたびこの好き嫌いが合えば、きっとビジョン以上に大きなドライブ=動因が組織にかかる。

ぜひ、自分の好き嫌いを意識することで、一人ひとりが、働く意義をさらに大きくしていっていただければと思います。


今回のポイント

というわけで今回のまとめです。

「乾けない世代」が追い求めるもの=「生きがい」「ライフワーク」
「社会的大義」への昇華はトップがやる。一人ひとりが「個人的大義」へ消化できるか
「良し悪し」ではなく、「好き嫌い」。カルチャーが働く意義を増大させる


最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。これでいったん、5回(第3回が前後編にわたったので実質は6回)にわたったキャリア・働き方編も終了です。いやぁ、ひとまずようここまで来た(笑)。

次週からはビジネス・ノウハウ編ということで、最初に「課題解決」について書きたいと思います(ひょっとすると、総集編もしくは対談的なものを挟むかもしれませんが)。エモい系の話が続いたキャリア・働き方編と変わって、すぐにでも日々の仕事に使えるようなノウハウ系をまとめていきますので、ぜひ引き続きお付き合いください。

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これまでのバックナンバー

【キャリア編】
第1回:キャリアを「えらぶ」のではなく「つくる」方法―キャリアの「タグ化」のすすめ
第2回:市場価値の磨き方―ステージ×役割でとらえるキャリア論
第3回(前編):1億総デザイン社会の未来―モデルなき時代に、働き方をハックする
第3回(後編):1億総デザイン社会の未来―働き方は、よりフリーに、スマートに、クリエイティブに
第4回:成長は失敗を糧に―非連続な成長は、アンラーニングと意識の変革から
第5回:「乾けない世代」と「好き嫌い経営」―働く「個人的大義」を大切にせよ


【ノウハウ編】
第6回:「ネクタイ事件」で学んだ、本当の問題解決―ポジティブ思考でいこう
第7回:「伝わる」プレゼン―聞き手が「自分ごと化」できるストーリーをつくる
第8回:ブレストはアイデアをひきだす脳内スパーク―「ブレスト筋」を鍛えよう
第9回:SMARTなゴール設定と早めのトレードオフ決断でプロマネを成功させる
第10回:知的生産性の上げ方―時間の使い方を設計し、会議をプロデュースする


【事業編】
第11回:「4次元チェス」的戦略―不確実な未来のシナリオに、骨太な仮説をそえて
第12回:『新規事業のつくり方―アセットを活用するか、リーンに立ち上げるか』
第13回:予算計画のつくり方―楽観と悲観、経営と現場を反復横跳びする
第14回:本質的なKPIをモニタリングし、計画と予測の「ギャップを埋める」
第15回:M&A、それは究極の意思決定。PMI、なんて深淵な人間ドラマ


【経営/組織編】
第16回:ユーザーに学び、社会に訴えかけ、組織を動かすミッション・ビジョン
第17回:強い言葉で行動指針をつくり、模倣困難なカルチャーづくりに投資する
第18回:安心感×成長実感でエンゲージメント・ドリブンな組織をつくる
第19回:マネジメントに必要なのは、矛盾に向き合い、乗り越えるための真摯さ
第20回:「開き直り」の境地で51/49の意思決定し、自らの人生の主権を握る


【番外・総集編】
番外編①:エン・ジャパン主催の「ワーク&プライベート・シナジー勉強会」での登壇
番外編②:ランサーズ勉強会(L-Academy)の「戦略ケーススタディ」のレポート
総集編(前半):「一億総デザイン社会」を生きるためのキャリアと仕事の考え方
総集編(後半):「VUCA時代」を勝ち抜くための事業と組織の考え方

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