こんにちは。ランサーズの曽根です。「そねせん」シリーズ(全20回)、今週で第3回目です(前回はこちら)。先週、とあるキャリア系のイベントで登壇させていただく機会があったのですが、「『そねせん』、楽しみに読んでます!」と声をかけてくださった方がいらっしゃって、素直にうれしかったです。期待に沿えるよう続けていきたいと思います。
今回は、キャリア編(全5回)も中盤にさしかかり、ずばり「働き方」をテーマに書きます。といってもテーマが広すぎるので、ぼくの書きたいことに限定する形で、おもいっきり未来志向で自由に書いちゃいます。(今回は、テーマ的にボリュームが多くなってしまうので、前編・後編にわけて書きます)
「1億総デザイン社会」がついにやってくる
「働き方」を語るうえで何から書こうか悩んだのですが、ここから始めます。
「1億総デザイン社会」がやってくる!
2017年5月、ぼくがとてもワクワクしたニュースが2件続きました。クラウドファンディングとコワーキングスペースの世界的雄であるKickstarter(2009年創業)とWeWork(2010年創業)の日本上陸に関するニュースです。
なぜ、このニュースに、ワクワクしたのか。
「1億総デザイン社会」がついにやってくる!!
そう感じたからです。
ぼくがそもそもこの「1億総デザイン社会」というコンセプトに関する妄想を始めたのは2010年の末ころ、Kickstarterのサービスを知ってからです。
その当時ぼくが思った(というか着想した)のは、「もしかして企業っていう概念はこれからなくなっていくかも?」ということでした。
企業の経営に必要なリソース。ヒト、モノ、カネを中心に。
ヒト? クラウドソーシングでヒトを調達する。社員を雇わなくても組織ができるということ?
モノ? クラウドコンピューティングや3Dプリンタでモノを形にする。設備がなくても製造できるということ?
カネ? クラウドファンディングでお金を調達する。金融機関に頼らなくても資金が集まるということ?
そんな感じです。
マッキンゼーの大先輩でもあり、データサイエンティスト協会の理事も務められているYahoo CSOの安宅和人さんにしてみると、「ヒト・モノ・カネ」の時代から「ヒト・データ・キカイ」の時代へ、ということなのかもしれません。
でも、ぼくはこう思ったんです。
1億総消費社会、1億総表現社会、そして次は1億総デザイン社会なのだ!!!
今ぼくがランサーズにいる理由も、究極的には「個のエンパワーメント」によってこの「1億総デザイン社会」をつくっていきたい、という思いがあります。
それで、「1億総デザイン社会」って何なの?と聞きたくなりますよね。
「1億総デザイン社会」を僕なりに少し分解すると、それは↓みたいなことかな、と。
個人が自分の生き方・働き方をデザインできる社会(価値観の多様化→可能性)
デザインすることが思考のプロトコルになる社会(価値源泉の変化→必然性)
今回は、この来る「1億総デザイン社会」における「働き方」についての考えを、ぼくなりに前編、後編に分けて語りたいと思います。
モデルなき時代。不安な個人、ゆらぐ価値観
経産省の若手「不安な個人、立ちすくむ国家」(次官・若手ペーパー)が少し前に話題になりました。
称賛も批判もひきこもごも、という感じだったとは思いますが、「サラリーマンと専業主婦で定年後は年金暮らし」という「昭和の人生すごろく」のコンプリート率がすでに大幅に下がっている、というのはまぎれもない事実だと思います。「あがり」や「正解」のない時代。
社会はどんどん変わる。個人はますます不安になる。でも国はなかなか変わらない。じゃあどうすればよい?
もちろん、日本という国家の構造的な問題(=課題先進国・日本)という側面もあるのでしょう。ただ個人の価値観の「ゆらぎ」については、リンダ・グラットンの『ライフ・シフト』を読んでいても感じたのですが、世界的な潮流なのだと思います。
グラットンの(前作の『ワーク・シフト』もあわせて)『ライフ・シフト』の要点を勝手に短くまとめると、以下のようになるかと思います。
いまの40歳の約半分が95歳まで。いまの30歳の約半分が99歳まで生きる時代。
当たり前だけど、きづいていなかった事実。数値でじっと見て、あらためて感じる不安。
たとえばワーク・シフトのなかで個人的に印象深いのは「大量消費から情熱を傾けられる経験へ」の第三のシフト。ぼくもこの記事を書く中で、Newspicksでプロピッカーもされている産業医の大室正志さんの話を思い出しました。
大室さんの持論によると、自分の行く道を自らデザインし選択しなければならない中で、流動的なキャリアを歩む人には2タイプいるとのこと。
(優等生的にとりあえず)「可能性を限定しない」道を選びがちな人
(多動力的な考え方で)「ハマって飽きる」を繰り返しがちな人
この2タイプは、キャリアを固定しないという意味で似ているようで、実はまったく違うのだ、と。前者と後者では、連続的なスペシャリストに見えても、過ごす時間の濃密さ=「ハマった」経験の多寡が違うがゆえに、一定期間を経た後の果実(=内的なパッション・情熱)の実り方に大きな差がでる。
これは、ぼくがコンサル出身だからこそ、身に染みてよくわかります。(コンサルが良くないと言っているわけではないですが)可能性を限定しないことによって主体的な選択をしていかないと、結果的に自分の潜在的なポテンシャルを引き出せなくなってしまう。
怖いけれど、自分の働き方を「決めてもらう」のではなく「決める」時代。
決める際には、「可能性を限定しない」のではなく「ハマる経験を得にいく」。
主体性をもって自分の経験をデザインする中で、見えてくるものがあるのだと思います。
プロボノも副業も起業も同じ。不安をこえて自らの働き方をハックする
「自らの働き方をデザインする」という話になると必ず出てくるのは、自由であることにつきまとう不安とリスク。
リンダ・グラットンの指摘するような↓の新しいステージを例に考えるとわかりやすいと思います。
エクスプローラー:選択肢を狭めずに幅広い針路を検討(=自分探し)
インディペンデント・プロデューサー:自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす(=ミニ起業)
ポートフォリオ・ワーカー:さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる(=複業)
それぞれ、概念としてはよくわかる。でも、「何から始めていいかわからないよ」「なかなか勇気がなくてできない」「そもそも社内で認められてないし」という声もある。
先日ぼくも登壇させていただいた「40歳サバイバル~人生100年時代の新しいキャリアとは~」のイベントで似たような議論をしたときに面白かったのは、『「副業」ひとつとっても、みんな真剣に考えすぎなんじゃないの?』という話。
副業で「お金を稼ぐ」というと大それたことに聞こえるけど、異業種交流会に参加するとか、少し前に流行った朝活をとりいれてみるとか、お金を稼がなくてもよいのであれば、社外活動という広い意味での副業の敷居は急にグッと低くなるし、それによるリスクも低くなる。
なにしろ、色々な調査を見ていると、7-8割の個人は副業してみたくて、でも副業を許可している企業は2割くらいしかなくて、実際に副業している個人は1割もいない状況。
もちろんお金を稼げるにこしたことはないけど、一方で、一歩踏み出すために、日本人らしいリスクのとり方ってあると思うんです。
そういう意味でいうと、たとえば無償のボランティアやいわゆるプロボノの活動領域で、面白い取り組みはいろいろと増えてきているように思います。
ぼくの近しいところでいうと、たとえば、小沼大地さんが代表を務めるNPO法人クロスフィールズの「留職」とか、廣優樹さんが代表を務めるNPO法人「二枚目の名刺」の活動など。何かしら社会貢献したい、社会改題を解決したいという社会人の自己実現の欲求に見事にこたえるすばらしい取り組みです。
でも一方で、「せっかく副業するなら稼ぎもほしい」という声があるのも事実。
手前味噌ながらランサーズの話をすると、ランサーズで成功する人も、最初はちょっとした副業、特にタスクやコンペと呼ばれる簡単な仕事から始めてみる人が多い。
で、副業をうまく続けるコツのひとつは、個人と会社のおいしい共生関係をつくること。
↓の記事で紹介しているYahooデザイナーの岡直哉さんは、副業で結婚資金を稼いだ(なんと!)という素敵なシンデレラ副業ストーリーの持ち主なのですが、副業で自分のスキルを試し、副業で得た知見を本業に還元している、とても良い事例です。
もっというと、これは起業のあり方でもあてはまること。
こちらもひとつ事例。ぼくのマッキンゼーの同期入社で柴田陽さんという方がいるのですが、彼はすでに5社創業して3社のエグジットを経験しているシリアルアントレプレナーです(直近では今年の2月にクラウドポートというソーシャルレンディングサイトを創業しています)。彼が特徴的なのは、これまで多くの場合において、副業の形でリスクヘッジをしながら起業をしてきたということ。
たとえば、2013年に楽天に売却したSpotlight社(O2Oの「スマポ」というサービスを運営)は、彼がフィールドマネジメントという会社に在籍しながら立ち上げた会社。彼曰く、「命綱をつけずに山登りする人はいない」よね、と。起業するからといって、会社を辞めてあたらしい会社にすべてを費やすのではなく、ある程度のリスクヘッジをしておくべきだ、と。(※下記のリンクに上記のコツがまとめられています)
https://www.slideshare.net/schoowebcampus/20140707-schoo
ここまで、自分探しや社会貢献のためのプロボノ(cf. エクスプローラー)、個人も会社もおいしい副業(cf. ポートフォリオ・ワーカー)、命綱をつけた形での起業(cf. インディペンデント・プロデューサー)、と紹介してきました。
共通していえることは、一歩先に進める自由にともなって生じる不安やリスクに対して、不安に対してはハードルを下げる、リスクに対してはきちんとヘッジする、ということ。当たり前に聞こえるけれど、そういうことだと思います。
でも、それ以上にもっと大事なのは、本業で手を抜かないこと。本業で成功できない人は副業で成功しない可能性が高い。新しいことやってみたい、ただリスクはとりたくない、いやでも楽もしたい、というのはわがまま。しっかり本業で成果を出しながら、自分なりのやり方で適度なリスクをとることをおススメします。
今回のポイント
というわけで今回のまとめです。
「1億総デザイン社会」がやってくる!1億総消費社会、1億総表現社会の次の波
モデルなき時代。不安な個人、ゆらぐ価値観。主体的に経験をデザインする
プロボノも副業も起業も同じ。不安をこえて自らの働き方をハックする
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。昔から考えていた「1億総デザイン社会」の話から始めてしまったので、思わず長くなってしまった。。
次回はこの「働き方」に関して、今日の続編を書きます。ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!
曽根率いる新規事業「Lancers Top」立ち上げメンバー募集
曽根の率いる新規事業室では、経験豊富なメンバーを集結させた最高峰の布陣を敷き、新規事業「Lancers Top」をスタート。そして・・・! サービスローンチに向けてのカウントダウンも迫ってきました。
事業責任者は、フリーランスのエンジニア向け仕事マッチングビジネスの社長として業界を先駆け、牽引してきたスペシャリストです。また、根幹を担うプロダクトには、ランサーズの新卒エンジニアとして入社し、これまでも数多くの新規事業に参画してプロダクトの成長に大きく貢献してきた最年少マネージャーの上野をアサイン。その他にも、大手人材業界のトップセールスの経験者がジョインするなど、少数精鋭のチームで事業を作っています。
一人ひとりが大きな裁量をもち、経営に近い立ち位置で社会の課題と新しいマーケットに挑んでいます。
私たちは、そんな新規事業室の仲間を募集しています。これまでとはまた違う新しい働き方を一緒に作っていきませんか?
これまでのバックナンバー
【キャリア編】
・ 第1回:キャリアを「えらぶ」のではなく「つくる」方法―キャリアの「タグ化」のすすめ
・ 第2回:市場価値の磨き方―ステージ×役割でとらえるキャリア論
・ 第3回(前編):1億総デザイン社会の未来―モデルなき時代に、働き方をハックする
・ 第3回(後編):1億総デザイン社会の未来―働き方は、よりフリーに、スマートに、クリエイティブに
・ 第4回:成長は失敗を糧に―非連続な成長は、アンラーニングと意識の変革から
・ 第5回:「乾けない世代」と「好き嫌い経営」―働く「個人的大義」を大切にせよ
【ノウハウ編】
・ 第6回:「ネクタイ事件」で学んだ、本当の問題解決―ポジティブ思考でいこう
・ 第7回:「伝わる」プレゼン―聞き手が「自分ごと化」できるストーリーをつくる
・ 第8回:ブレストはアイデアをひきだす脳内スパーク―「ブレスト筋」を鍛えよう
・ 第9回:SMARTなゴール設定と早めのトレードオフ決断でプロマネを成功させる
・ 第10回:知的生産性の上げ方―時間の使い方を設計し、会議をプロデュースする
【事業編】
・ 第11回:「4次元チェス」的戦略―不確実な未来のシナリオに、骨太な仮説をそえて
・ 第12回:『新規事業のつくり方―アセットを活用するか、リーンに立ち上げるか』
・ 第13回:予算計画のつくり方―楽観と悲観、経営と現場を反復横跳びする
・ 第14回:本質的なKPIをモニタリングし、計画と予測の「ギャップを埋める」
・ 第15回:M&A、それは究極の意思決定。PMI、なんて深淵な人間ドラマ
【経営/組織編】
・第16回:ユーザーに学び、社会に訴えかけ、組織を動かすミッション・ビジョン
・第17回:強い言葉で行動指針をつくり、模倣困難なカルチャーづくりに投資する
・第18回:安心感×成長実感でエンゲージメント・ドリブンな組織をつくる
・第19回:マネジメントに必要なのは、矛盾に向き合い、乗り越えるための真摯さ
・第20回:「開き直り」の境地で51/49の意思決定し、自らの人生の主権を握る
【番外・総集編】
・ 番外編①:エン・ジャパン主催の「ワーク&プライベート・シナジー勉強会」での登壇
・ 番外編②:ランサーズ勉強会(L-Academy)の「戦略ケーススタディ」のレポート
・ 総集編(前半):「一億総デザイン社会」を生きるためのキャリアと仕事の考え方
・ 総集編(後半):「VUCA時代」を勝ち抜くための事業と組織の考え方