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ハッカズークは『退職で終わらない「企業と個人の新しい関係」を実現し、退職による “損失” のない社会を作る』をビジョンに、「アルムナイ(企業の退職者/卒業生/OB・OG)」という領域でサービスを提供している会社です。
具体的にはアルムナイ特化型のSaaSシステム「Official-Alumni.com」と、企業とアルムナイの関係を構築するためのコンサルティングサービス、オウンドメディア「アルムナビ」の大きく3つのサービスを展開しています。
10月にはプレシリーズAで合計1.2億円の資金調達。この資金の多くを採用に使い、サービスの提供価値をさらに高めていきたいと考えています。
そんなタイミングの今、ハッカズークにジョインする人にはどんなチャンスがあるのか。今のハッカズークはどんなフェーズにあるのか。そもそもなぜ「アルムナイ」という耳慣れないテーマで起業をしたのか。
そんなあれこれを創業者であり代表の鈴木仁志に、10月に入社したアルムナビ編集長の天野が聞きました。
『いずれは自分の子どもたちの世代から「親父の時代は退職者は裏切り者扱いされてたの?超古いじゃん」って言われたい』
そんな話をする鈴木が、ハッカズークの事業を通じて実現したいこととは? 2時間を超える取材を凝縮した、約1万字のロングインタビューです。
株式会社ハッカズーク 代表取締役CEO 鈴木仁志
カナダのマニトバ州立大学経営学部卒業後帰国し、アルパイン株式会社を経て、T&Gグループで法人向け営業部長・グアム現地法人のゼネラルマネージャーを歴任。帰国後は、人事・採用コンサルティング・アウトソーシング大手のレジェンダに入社。2017年、ハッカズーク・グループを設立し、アルムナイとの関係を築くプラットフォーム『Official-Alumni.com』やアルムナイ特化型メディア『アルムナビ』を運営。自身がアルムナイとなったレジェンダにおいてもフェローとなる
「俺がやらなきゃダメだ」と唯一思ったのが、アルムナイだった
——まずは今のハッカズークについて教えてください。
今は創業から3年4カ月、4年目に入ったところ。日本のフルタイムメンバーが6名、業務委託メンバーや海外メンバーも含めて20名強で事業を行っていて、今年プレシリーズAの資金調達を実施したばかり。SaaSのスタートアップとしては、外から見たときの成長スピードは遅いと思われるかもしれません。
ただ、「アルムナイ」という領域で勝負する会社という意味で言えば、当初の予想よりも早く成長していると僕は考えています。これまでの日本になかった「アルムナイ」という領域をゼロから立ち上げるには、もっと時間がかかると想定していましたから。
——そもそもの質問ですが、なぜ「アルムナイ」というテーマで起業をしたんですか?
明確なプランがあったわけではないけど、昔からいずれ起業したいとか、経営者になりたいという思いはあって。いろいろな可能性を探りつつ情報収集はしていました。
その中で「これは俺がやらなきゃダメだろ」と唯一思ったのが、アルムナイだったんです。
もともと同世代の起業家と接する中で「普通に勝負したら絶対に勝てない」という思いがあったからこそ、自分が勝てるニッチな場所はどこなのか、ずっと考えていました。そんな発想で見たときに、「海外×HR×テクノロジー」の3つを掛け合わせた人はそれほど多くないと気付いた。
まず「海外」ですが、僕はカナダの大学で経営を学び、グアムやシンガポールなど、通算7年現地でビジネスをしてきました。
「HR」に関しては、ハッカズークを設立した2017年時点でHR領域に約10年間携わっています。人事・採用コンサルでの実務経験をメインに、自社の人事視点での経験もある。
そして「テクノロジー」でいうと、前職のレジェンダでは自社開発の採用管理システムや人事管理システムを扱っており、販売から運用まで携わっていました。
アルムナイは海外のカルチャーで、日本にアルムナイの文化を浸透させるためには、日本らしさを踏まえた上で取り入れる必要があります。そう考えた時に、英語での情報収集、人事採用の実務の理解、テクノロジーの知見、コンサル経験……全部ひっくるめて「いけるな」と。
——同世代の起業家に勝てないと思うのはなぜなんでしょう?
何かにずば抜けてる人が多いんですよね。事業への洞察力がすさまじい人、とんでもないレベルの実行力がある人、人を動かす魅力に溢れた人など、皆さん何かにめちゃくちゃ秀でている。
片や自分は昔から一般人だという自覚があって。実際にいろいろな人から「平均点」とよく言われるんです。全くできないことも、めちゃくちゃできることもない。
それは昔からコンプレックスでもあって。例えばスポーツも、何でもそこそこできるんですよ。ただ、一定以上は伸びない。もちろん努力が足りないんでしょうけど、突き抜けた経験がないんですよね。
かといって、二番手、三番手のままだと、いつまでも一番手がやっている枠組みの中で戦わないといけない。自分が本当にやりたいことを実現するには、勝てるフィールドを探すか、つくるしかないわけです。
僕はよくネットワーキングがすごいって言われるんですけど、ネットワーキングをしているつもりはなくて。ただただ、いろいろな経営者や起業家など、何かの領域のプロフェッショナルとの議論を通じて「どこなら自分が勝てるのか」を知りたいんですよね。
——ハッカズークの創業は2017年7月で、最初の資金調達は2018年5月。どうして最初から資金調達をせず、自己資金で起業したんですか?
うーん……。理由は大きく2つあって、一つはサービスを軌道に載せるのに一定の時間がかかること。
アルムナイの市場やサービスは全く存在しないところから、ゼロからつくる必要があるわけです。SaaSとはいえ、業務改善ツールなど、既存のものを改善したりデジタル化したりするサービスではない。そうなるとエクイティでの調達との相性は悪いですから、それなら自己資金だなと。
もう一つは、投資家の方への事前ヒアリングの反応があまり良くなかったこと。「何がビジネスなるのかわからない」と言われることが多かったんですよね。しかも前例がないから参考にするサービスもないじゃないですか。
一方で前職でクライアントの人事担当者からは「採用や育成に投資をしても、辞めた瞬間にゼロになってしまう」という声をよく聞いていました。確かに現状のHRサービスは入社前と入社後に関するものばかりで、退職後はノータッチ。
また、定着率を上げるのはもちろん大切ですけど、個人が本当にやりたいことをするために転職したり複業ができるようになることも同じくらい大切なはず。それなのに「辞めさせないこと」にばかり力を入れることにも疑問がありました。
そういった課題を僕は肌で感じていたんですが、投資家からは「そんなニーズあるのか?」と言われてしまう。そこにギャップを感じて、課題を立証するところまでは「とりあえず一回好きにやって、まずは自分のエネルギーの全てを事業に向けよう」と思ったんです。
今振り返れば、まだ世の中にない考え方を周りに理解してもらうことの難しさに直面して、やや面倒くさくなったところもあったんでしょうね(笑)
今のハッカズークで働いてほしいのは「常にちょっと不安な人」
——今のハッカズークの事業はどんなフェーズにあると思いますか?
0→1、1→10、10→100と分けて、0→1が立ち上げ初期フェーズだとすると、その半分は越えた気がしています。今は立ち上げ初期の後半戦みたいなイメージで、10段階中の6ぐらいかな。
例えばカスタマーサクセスに関しては、「このタイミングでこういう課題が出てくるだろう」「将来的にこの辺で登録者数が頭打ちになりそう」など、クライアントに起こり得ることが予想できるようになってきています。
1年半前は導入決定後に何からやってもらうのかを社内で話し合っていましたから、打つべき手がある程度見えるのは大きな進化。今はある程度型ができてきたので、それをベースにクライアントに深く入り込んでいくことで、より価値が提供しやすくなりました。
とはいえ、まだまだ課題の解像度を上げていかなければいけない段階です。大企業でのサービス導入も進み、アルムナイ領域の可能性が少しずつ理解され始めた今、必要な資金を調達し、頼もしい株主の皆さんも仲間に入ってくれました。
つまり、あとは実行するのみ。それをやるのが今いるメンバーであり、このタイミングで入ってくる人たちだと思っています。
——そんな今のタイミングで、一緒に働きたいのはどういう人でしょう?
一つは「満足感が長く続かない人」。たとえ上手くいったとしても「やった!」が長く続かずに、「いや、でもまだまだこれができていない」と思える人のイメージです。「常にちょっと不安な人」とも言い換えられるかもしれません。
僕自身、「みんな満足してくれているのかな」「嫌になっていたらどうしよう」「ちゃんと価値が提供できているのだろうか」と、常に不安があります。
それに関連するところで、「自己承認ができること」も重要です。高い目標に向けて自分でメンタルを保ちながらやり続けるときは、自己肯定と自己否定を繰り返す必要がある。
ちょっとした成功に満足しないためにも「ここはできていないから、もっとやらなきゃ」と否定して考え、逆に追い込まれそうになったら「これはできているから大丈夫」と自分を肯定してモチベートする。その双方がないと頑張れないし、折れちゃいますよね。
特に今のうちの会社のフェーズって、課題はなくならないんですよ。アルムナイはこれからの日本企業に絶対に必要な考え方だという自信はあるものの、まだまだ世の中に浸透はしていない。そういう中で、都度生じる課題を解決するチャレンジを楽しめない人は厳しいだろうとも思います。
——私は10月に社員に切り替える以前は業務委託でハッカズークと仕事をしていて、社員と業務委託の垣根がないのが印象的だったんです。ただ、いざ社員になってみたら垣根がないというよりも「個人事業主の集まり」にそもそも近いんだなと感じて。
そうですね。まとめてしまえば「自立/自律している人」ということになるんだと思います。実際にうちのメンバーはそういう人が多いですね。
とはいえ各々がバラバラに動いているわけではありません。未経験の業務に試行錯誤しながら取り組んでいるメンバーもいますし、「企業と個人の関係を再定義する」というビジョンに向けて、各ポジションが協力し合って仕事を進めています。
——この手のスタートアップの記事には、「行動力」がキーワードとして出てくることが多いと思います。それがこれまでの話に全く出てこないのが面白いなと。
あー……。当たり前過ぎるというか、行動力がなくてどうやって仕事するんだろうと思っちゃいますね。
——私は自分自身のことを「行動力はない」と思っているんです。基本的に腰が重いタイプだし、自分一人で何かやろうとすると考えすぎて結局やらない。だからチームで時に人の勢いを借りながらやりたいと思っていて。
行動を起こすのに何かしらの環境や条件が必要だとしても、結局行動できているのであればいいと思うんですよ。
僕は自分のことを「気が小さくてビビりな慎重派」だと自覚しているんですけど、そんな性格を理解した上で、時に「これは慎重になりすぎてるな」と自分で自分の背中を押してあげることもしています。
そういう工夫ができればいいわけで、むしろ「スタートアップだからとりあえず行動してやってみればいいんですよね」みたいな発想の方が嫌ですね。圧倒的な行動力は必要だけれども、圧倒的に考えてからじゃないと無駄になりかねません。
ただ、矛盾するようですけど、合理的に考える一方で、理屈を吹っ飛ばして「よくわかんないけど楽しそうじゃん」という感情も大事だと思っています。そう思えることがないと、こういうフェーズは乗り越えられないですからね。この前も「また夢みたいな話してる」って天野さん(インタビュアー)に言われましたけど。
——たしかに、ちょっとした出来事を膨らませて、「こういう展開になっていったらすごくない!?」みたいな話はよくしている印象がありますね(笑)
▲天野(写真左)の指摘に「たしかに……」という顔をする鈴木(写真右)
一緒に働きたいのは「コンプレックスがある人」
——スタートアップであることや会社のフェーズを無視したピュアな気持ちで、鈴木さん自身が一緒に働きたいのはどんな人ですか?
「コンプレックスがある人」ですね。仕事や自分の将来への多少の自信がありながら、同時に不安も抱いている人。自信だけの人って、折れやすい気がして。
先ほどの話にも通じますが、常に不安で現状に満足しない人って、根源にはコンプレックスがあると思うんです。そのコンプレックスを原動力に変えられる人って、めちゃくちゃいいなと思う。
例えばカッコ良くなるために日々勉強して、知的な喋り方を研究して、運動して見た目をスマートにして……というのは良い方向に作用するコンプレックスだと思うんですよね。
メンバーを見ていても、執行役員の山口は同世代や下の世代の経営者に対する焦りがあるし、開発責任者の谷口も、同世代のエンジニアが経営者になっていく姿を見ながら焦ったり将来の自分への不安を感じたりしている。そういう思いがあるからハッカズークで頑張ってくれています。
▲執行役員の山口(写真左)と開発責任者の谷口(写真右)
8月に入った實重も一度自分で起業しようとして挫折しているわけで、もしも最初の出会いがアクセンチュアを辞めた直後だったら採用はしなかったかもしれません。
——「成長意欲のある人」とは違う?
うーん……成長意欲って言葉はあまり好きじゃないし、成長ってあくまで手段じゃないですか。目的に向かう過程で結果として成長するわけで、手段が目的になるのは嫌ですね。
——なるほど、「コンプレックスを払拭することで何かを実現したい」という目的があって、そのために成長という手段を選んでいる人が、鈴木さんが一緒に働きたい人なんですね。
そう。そもそもコンプレックスへの不安や不満って、いつまでたっても解消しないものだと思うんですよ。だからこそずっと成長しなきゃいけないわけで。
でも、一生不安を抱えながら生きていると、いつか潰れちゃうじゃないですか。だから自分を律してコントロールすることが必要だし、そのために必要な条件や環境があるのであれば、それを用意するのは経営者の仕事だと思っています。
——鈴木さんにとって、自分をコントロールするために必要な条件や環境はどんなことですか?
僕の場合、厳しい環境に身を置かないとダメなんです。「人性善なれど性怠惰なり」って言葉がありますけど、僕はまさにそうで。基本的に自分に甘いから、ケツを叩いたり背中押したりしてくれる人がいてほしいし、常に見られている緊張感も必要だと思っています。
振り返れば高校を卒業してカナダの大学に行ったのも、姉が大学でめっちゃ遊んでる姿を見て「俺が日本の大学行ったら絶対勉強しないな」と思ったから。まぁ「モテる大人になるためには外資系企業で金を稼ぐのが良さそうだ、よし海外に行こう!」っていう不純な動機も強くありましたが(笑)
▲実際は「モテたい」動機の方が強かったらしい
あとは、自分に対してNoと言ってくれる人に囲まれるよう、意識しています。僕は頑固で物言いが強くなりがちだから、Yesばかりを言う人を置いてしまうとお山の大将になってしまう。それは不安でしかないから、否定してくれる人は重要だと思っています。もちろん建設的じゃないNoとか、否定するためだけのNoはぶっ潰しにいきますけど(笑)
——見た目も相まって怖いんでやめてください(笑)
ただ、たとえ的外れなNoだとしても、否定されるのは自分の中では大事なことなんです。メンバーが「これはどうなんですか?」っていうクエスチョンを投げかけてくれるから考えることはたくさんある。そういう意味では株主に入ってもらったのもよかったですね。
——自分のコンプレックスや弱みを自覚していないと、何が必要なのかもわからない。そういう意味では自己理解が大切になりそうですね。「個人事業主の集まりみたいな組織」と言いましたけど、それぞれが自立/自律しつつも、お互いにとってプラスに作用するような関係でいられるといいなと思いました。
究極的に言えば、うちの組織は「みんなのため」ではなく「自分のため」を追求する組織でいいと思うんですよ。自分が成し遂げたいことがあって、そのためには周りの力が必要で、だから周りの人のために動くっていう。逆に「人のために」だけを目的にし続けるのは無理がある気がして。
もちろん他者から搾取をするっていう意味ではなく、自分の目的を達成するために人の助けが必要だって理解していたら、その人たちの目的を必死で理解して、その実現を助けるためにめちゃくちゃ尽くすはず。その結果、自分の目的も達成されていると。少なくともうちの会社はそういう集まりでいいと思っているんです。
「会社をうまく使う」という発想で全然いい
——これから働く人が得られるものは何でしょう?
2つあって、一つはまだガタガタだけど最低限の土台がある中で、ないわけじゃないリソースを活用し、ゼロに近いところから何かを作っていく経験。うちの会社はまだ立ち上げフェーズですけど、あらゆる面で「あるわけじゃないけど、ないわけでもない」状況にあります。
例えばマーケットはまだまだこれからつくっていく必要がありますけど、とはいえ何もかもゼロから始める段階ではない。アルムナイはまだまだ知られていない領域だけど、その中でハッカズークはパイオニアであり、市場をリードする存在になる素地があります。さらに今はアルムナイ領域を広げやすい社会環境でもあるわけです。
そして、大企業を中心とするクライアントからのシステムとコンサルティングの売上があるうえに、3回の資金調達を経てキャッシュポジションは良い。
組織やカルチャーも、今は各ポジション一人ずついるくらいで組織と呼べるものはないけれど、そろそろ組織のことをもっと考えなきゃいけないところまでは見えてきています。
つまり潤沢ではないけど、それなりに使える資金や一緒に働くメンバーを含めたリソースはあり、大きなことに挑戦するだけの材料が揃っている状況です。
——もう一つは?
ちょっと背伸びをした機会を掴んで経験が積めること。僕を含めたメンバーみんなが、自分のコンフォートゾーンを超えた仕事をしていると思っています。
天野さん(インタビュアー)も広報は未経験だけど「広報責任者」なわけで、自分のスキルや本来の実力に見合ったポジションを超えていきなり上流に行けてしまうのは、今のうちの会社だからできること。この機会原資は限られたものですから、早く入ってきた者勝ちみたいなところはあります。
まぁ、これはやや綺麗事な部分もあって、要は人が足りないんですけどね(笑)。8月に入ったアクセンチュアアルムナイの實重にはマーケティングを中心に未経験分野を担当してもらっているんですけど、「やらせてもらっているのに結果が出せなくて申し訳ない」という趣旨の発言をよくするんです。
でも、適任者が他にいるの中で担当してもらっているわけではなく、彼が最適だと思っているんです。本人の実力以上の仕事だから、できないのはある意味で当たり前というか。
——背伸びした仕事を担当してもらうというのは、意思決定も含めてでしょうか?
そうしていきたいと思っています。初めはどういうプロセスを経て意思決定をしているのかをしつこく聞いて、その上で自分と同じか、それ以上に適切な判断ができると思ったら、基本は任せるようにしています。
とはいえ経験がない中で最初からうまく意思決定できるわけがないから、「大きな怪我はしないだろう」と判断したらGoを出すようにはしています。
これを「7割ルール」と言っているのですが、6割程度だと怪我をすることが多いし、8割まで求めるとスピード感が足りなくなりがち。だから「7割」なんですけど、意思決定の精度が7割であることを理解した上で、残りの3割を埋める努力をしてほしいというのはメンバーにもよく伝えています。
ただ一方で、全ての意思決定をメンバーに託すのは無責任だとも思っていて。特に事業の方向性に関わる部分について「当事者意識を持って自分たちで決めなさい」と言うのは嫌いなんです。
もちろんみんな当事者だし、当事者意識は強く持ってほしいけど、事実として株を一番多く持っているのは僕なわけです。会社のオーナーシップが僕にある以上、メンバーに僕と同じか、僕以上の当事者意識を求めるのは自分のエゴな気がして。
——そうなると、鈴木さんはメンバーに何を求めているんですか?
先ほどの「自分のため」を追求する組織でいいという話につながるんですけど、会社を使い倒してほしいですね。今のうちの会社は本当に良いフェーズとポジションにありますから、「会社を踏み台にしてやろう」っていう発想で全然いい。
僕はリチャード・ブランソンのこの言葉が好きで。
Train people well enough so they can leave, treat them well enough so they don't want to.(この会社を辞めてもやっていけるくらい、従業員を十分に鍛えなさい。そして、この会社に残りたいと思わせるくらい、十分な扱いをしなさい)
僕はみんなの市場価値がどんどん上がっていってほしいし、やりたいことができる状態にあるけど、それでもハッカズークで頑張りたいと思ってもらえるのが一番ハッピーで理想の状態だと思っています。
ずっとこの会社にいるのが前提になってしまうと、お互いに緊張感がなくなるじゃないですか。それは性格上、好きじゃなくて。
もちろんめちゃくちゃ心配性だから、葛藤はあります。「みんなにいい会社からオファーが来たらどうしよう」「今日の会社の雰囲気大丈夫かな」って毎日不安ですし(笑)
——意外……!全然そんなふうに見えないです。
それでも、メンバーの市場価値が上がって、会社がより多くの価値を提供できるようになれば、世の中にもっと大きなインパクトを与えられる。そして、それがさらなるメンバーの評価にもつながります。
前に会社がメディアに出た時、「前職の人からすごいって言われた」「田舎の親戚から連絡が来た」と、メンバーの築山がうれしそうに教えてくれたことがあったんですけど、会社や事業に注目が集まることをうれしいと感じてくれていることが、僕はすごくうれしい。
これまでは主に僕がメディアに出ていましたけど、これからはメンバーにもどんどんメディアに出てもらって、その結果としてみんなの市場価値を上げていきたい思いが強くあります。積極的に自分のブランディングにつながるような仕事をしてほしいですね。
——最後にハッカズークに興味を持ってくれた人へ、伝えたいことはありますか?
僕は12年間人事採用領域に携わっていますが、語弊を恐れずに言えば、「この10年、日本の企業と個人の関係は変わっていない」と思っています。
人事の面で見ても、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、タレントマネジメントなど、いろいろ新しい手法や考え方は出てきたけれど、根本的なところは変わっていない。
そういう意味では、アルムナイは大きな人事の変化をつくれる可能性を秘めた領域です。
僕たちがやろうとしているのは「辞めた人は裏切り者」という考え方を変えて、新しい「企業と退職者の関係」をつくること。
これまで人事のジョブスコープ外だった「退職後」に目を向ける提案をしているわけで、いわば「企業と個人の関係」の根本を変えようとしています。ここが変われば、リファラル採用やタレントマネジメントだってもっと大きなインパクトを持つようになる。
日本の人事史に名を刻むぐらいのことだと思ってやっていますし、それだけのことをやろうとしているから大変なのは当然。もっと課題や目指すべき姿の解像度を上げていかなければいけないし、そのために何をするのかをもっと考えなければいけない。
でも、実現できたら本当に日本の人事を変えたって言える。
いずれは自分の子どもたちの世代から「親父の時代は退職者は裏切り者扱いされてたの?超古いじゃん」って言われたい。そしてその時に「その文化を変えたのは俺たちだから」って言えるのが、今の立ち上げフェーズのチームです。
最後までご覧いただきありがとうございました!少しでもご興味を持ってくださった方はお気軽にご応募ください。まずはカジュアルにお話しましょう!