1
/
5

7つのベーシックス

共有する価値観、ベーシックス

ダイレクト出版には、組織で働くときの指針とするものがある。それが「ベーシックス」だ。
ベーシックスとは、社内で共有する価値観のこと。この会社におけるすべての行動は、このベーシックスに照らし合わせておこなうことになる。これは、あなたが誰に指示されなくても、主体的に考えて、主体的に行動するための指針だ。ただし、「ベーシックスに従って行動しているか?」というのは、必ずしも簡単にできることではない。

一般的に言って、価値観からは行動が生まれ、行動からは現実世界での結果が生まれる。ある価値観からは優れた結果が生まれるが、別の価値観からは悲惨な結果が生まれたりする。だから、優れた結果を生む価値観を共通のものとして示しておくことが重要だと思うのだ。

組織で働くということ、顧客に奉仕するということは、その組織、顧客と結婚するようなものだ。1日のなかでもっとも多くの時間を使うのだから。結婚するときは、お金があって価値観が合わないよりは、お金は普通でも価値観が合うほうがいいと思うだろう。でも面白いことに、ビジネス世界の現実は、価値観が合う人間が集まったほうが、お金も多く生み出せるものなのだ。共有の価値観を持つことは、経済的にも心理的にも、極めて理にかなったことだ。日々の充足感ももたらしてくれる。

また、これらは生きた価値観なので、日々、実践を心がけるだけでなく、「おかしい」「合わない」と思ったら、毎年アップデートさせていく。社員への「行動」を事細かに指示するという方法もあるが、それは現実的には不可能だろう。未知のことにはまったく対処できないし、なにより窮屈だ。
ベーシックスが具体的な行動指示ではなく、抽象的な概念になっているのは、「行動」ではなく「考え方」を示しているからだ。好ましい考え方、好ましい価値判断として提示したのがベーシックスである。


ベーシックスはなぜ必要か?

とはいえ、なぜ価値観を共有する必要があるのか、なぜ会社の目的やら行動規範みたいなのが必要なのかと思う人もいるだろう。「利益が上がってればいいじゃん」「こんなの、上辺だけの飾りで意味がないだろう」と思う人もいると思う。

実際、ぼくも昔はそうだった。ミッションとかビジョンとかいうのはただの綺麗事だと思っていた(事実、大抵の会社では綺麗事で終わっている)。
しかし、ぼくも経営者としていろいろ学んだが、学べば学ぶほど、こういうことの大切さが身に沁みるようになった。つまり、組織としての方針や存在意義などを強く意識し、メンテナンスしている組織こそが、いわゆるエクセレントな企業になっているのだ。

ハーバード・ビジネススクールの調査によれば、企業の業績を決めるファクターは、なんだかんだ言って次の2つしかないという。1つは事業ドメイン。つまり、どの分野で事業をやっているかということだ。スタバならコーヒービジネス。ウチならコンテンツ出版ビジネスといったところだろうか。
もう1つのファクターは、企業文化、企業の風土だ。この企業はどんなこと、どんな価値を大切にしているか―なんとなくそこにある共通の認識というか、そういうもの。
企業の業績を決めるものにはこの2つの要素があるのだが、実際のところ、その8割が企業文化によるという(JALなんかがいい例だね)。だから同じ事業ドメインでも(同じコーヒービジネス業界でも)、圧倒的な成果を出すところと、まったく成果が出ずに事業をたたんでしまうところが出る。


たった1つの成功要因

ハーバードつながりで、もう1点付け加えたいことがある。ハーバードの卒業生を分析したところ、卒業生の成功要因を分けるのは、究極のところ「時間スパン」というたった1つの要因だったという話だ。
才能ではない。要領のよさでもない。意志力、忍耐力でもない。「時間スパン」である。つまり、ものごとを考えるとき、なにかの判断をするときの「視野に入れる時間の長さ」だ。
たとえば、自分の就職先を考えるときに、わずか2~3ヶ月のスパンで考えて行動するのか、1~2年のスパンで行動するのか、5~10年、あるいは40~50年のスパンで見るか。それによって成功するかどうかがまったく変わってくるということだ。

それはなんとなく分かるだろう。日雇い労働者のように、その日のことしか考えてなかったら、判断の質はかなり落ちてしまう。一方、孫正義さんは、まだ20代のころ、キャリアの最初のほうで「人生50年計画」を考えていたそうだが、こうなるとやることが違ってくる。

あなたが自分のキャリアを考えるとき、どれくらいの年数で考えているだろうか? 3年くらいなら恐らく考え直したほうがいい。ぼくが昔、大っ嫌いな仕事をやっていたころ、5年10年スパンで自分のキャリアを考えただけでも、「これはないな……」と思ってその仕事を辞めることにした。収入はかなりよかったが、5年続くと思うと耐えられなかった。

そういう意味では、「死ぬとき」までのことを考えてみるのが、もっとも重要なことだと思う。あるいは「死んでから」のこととか。自分が死ぬとき、死んでからのことを考えると、大抵の人がいま追いかけているモノがくだらなく思えるはずだ。年収が死ぬときに話題になることは100%ないだろう。となれば、別の価値観を追いかけるようになる。

それが何かは分からないけれど、1つ言えば、死ぬときのことを考えたら、やっぱり他人にどれだけ貢献したか、充実した人生を送ったか、あるいは何を残したか、ということになるのではないかと思う。


自分の生きた証、レガシーを残す

人は何か自分より大きなことにチャレンジしたいと思う生き物で、そういう人生を送りたいと心の底では思っている。そして、何か生きた証を残したいと思っている。
コヴィー博士はそれをレガシーと呼んだ。レガシーにはいろいろある。仕事だけがレガシーではない。家族もそうだし子どももそう。知らない人を通じて残す知識や感情などもそう。他にもいろんな形があるだろう。

しかし、われわれは事業のためにここに集まっている。だから事業の話をしよう。
目的があれば、それをどうやって達成するかという戦略が生まれる。戦略が生まれれば、その戦略を実行するためのプロセスや仕組みが生まれる(この辺りにチェックリストなどが出てくる)。プロセスや仕組みから実際の行動が生まれ、そして行動から結果が生まれる。

しかし、日々の仕事は戦略で定義できるものではない。細かい判断は、何らかの共通の「こうあるべきだよね」という像に従って、毎日、判断をする必要がある。かくして、優れた結果を生み出すには、目的と価値観・行動規範が必要になる。


目的、価値観を持った企業は、他にはない独自の魅力を持つ。これがブランドと呼ばれるものだろう。

スタバと他のコーヒー屋の違いは何か?
リッツと他のホテルの違いは何か?
マッキンゼーと他のコンサル会社の違いは何か?
同じ業界で、同じ商品を扱って、同じ事業をしているにも関わらず、どうしてこんなにも差が出るのか?

恐らく、違いは目に見えるものではない。本質的な違いは、その企業が持つ目的意識であったり、哲学であったりする。それがすべての細部に影響して、1つ1つは小さな違いでも、全部を合わせるとまったく違うモノになってしまうのだ。

まさにこれが今、われわれがやっているミッションであり、ベーシックスをベースにした組織づくり、方針だったりする。ベーシックスを守っていくと、われわれの組織もエクセレントな組織になれるだろう……というわけだ。われわれがエクセレントカンパニーの第一歩を踏み出せるかどうかは、このベーシックスにかかっている。


そーゆーわけで、自分のキャリアを考えるときは、長いスパンで見てほしい。そうすればあなたの意思決定の質は上がるし、仕事の質も上がる。仕事に取り組む姿勢も変わるだろう。そのときには、日々の行動や判断、意思決定はベーシックスを指針として考えてほしい。「あの会社で働いてたんですか!」と言われるくらい立派な事業を作ろう。

ダイレクト出版株式会社からお誘い
この話題に共感したら、メンバーと話してみませんか?
5 いいね!
5 いいね!

同じタグの記事

今週のランキング

小川 忠洋さんにいいねを伝えよう
小川 忠洋さんや会社があなたに興味を持つかも