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ランニングに子育てに。異業種テックをヒント考える、ペットテックの新サービス。

2024年12月17日に投稿された記事です。

プライベートで6歳のチワワの男の子を家族に持ち、仕事ではペットのための健康サポートアプリ「auわんにゃんサポート」を担当している私。以前の記事では、ペットの家族化と長寿化、そしてそれらが引き起こす医療問題について触れました。要点は以下の通りです。

  • ペットの家族化が進み、一匹あたりにかける予算が増えている
  • ペットの長寿化も進み、同時にシニアの疾病も多様化・長期化している
  • 動物病院や先進医療がその変化に追いついていない現状がある

大切なのは、ヒトと同じく、病気にならないこと―いわゆる「未病ケア」です。今回はペットの健康管理の対策として、ペットテックについて書いてみたいと思います。ペットテックそのものの事例紹介記事は数多くありますから、少し趣向を変えて、異業種のテックサービスをヒントに、新しいサービスを考えてみましょう。

”褒め上手のランニングコーチ”

1つめのヒントは、スポーツテックから。私は趣味でトレイルランニングを楽しんでいますが、近年、世界中のランナーたちの間で急速にユーザーを増やしている「STRAVA」というサービスがあります。ランニングを趣味にしている人なら、「ああ、あれね」という感じでしょう。

Strava | アプリで簡単ラン、サイクリング、ハイキング - トレーニングの結果を追跡・シェア私たちのモバイルアプリとウェブサイトを通じて、Stravaは何百万人ものランナー、サイクリスト、ハイカー、ウォーカー、そのwww.strava.com

走ることを日常的な趣味とする人には、ランニングウォッチ(やApple Watch)を使っている人も多いでしょう。そういったデバイスを起動してランをすると、終了後にさまざまなデータが「STRAVA」のアプリに自動連携されます。

  • 走行時間
  • 走行距離
  • 走行ルート
  • 走行ペース
  • 心拍数 などなど

こうしたデータは、自分の目標管理や能力向上の把握に役立ちますが、多くの数値データを読み解くのは骨が折れます。そこで最近、AIを活用した新機能「Athlete Intelligence」が加わりました。これがなかなか、ランナーゴコロをくすぐるものでして。いわば”褒め上手のランニングコーチ”。走り終わると、その日の走行データをわかりやすく分析してくれます。たとえばこのように…


スピードが出なくても「安定した走り」と、とにかく何かしら褒めてくれる。いつもありがとうSTRAVA♡

"お褒めの言葉"を交えながら、数値やグラフだけではわからないその意味を、わかりやすく解説してくれるのです。
少し事例の説明が長くなりましたが…STRAVAを使っていると、"おさんぽアプリ"の未来が見えてきます。今日のおさんぽで、何キロ・何時間・どこを歩いたという記録だけでなく、わんちゃんにとってそのおさんぽがどういう意味を持つのかを、詳しくわかりやすく教えてくれるアプリです。たとえばうちの子は、心臓に"経過観察"の異常がある未病の状態です。日々のおさんぽで「心拍はこれくらいに抑えましょう」とか「心拍の数値が何%改善していますよ。今のおさんぽの距離とペースを続けましょう」といったアドバイスがもらえたら、うちの奥さんは泣いて喜ぶことでしょう。
わんちゃんの適切なおさんぽ量は、犬種・年齢はもちろん、その日の体調や食事量によっても変わってきます。特に疾患を抱えた子やシニア犬にとって、日常的な運動であるおさんぽを適切に続けることは、健康寿命に直結するはずです。おさんぽで得られるバイタルデータ(ウェアラブルデバイスも必要ですね)を分析し、わかりやすく解説して、しかも褒めてくれる。そんな"おさんぽコーチ"的存在は、おさんぽアプリの近未来像と言えそうです。

赤ちゃんも、小型犬も、歯磨きは難しい。

2つ目は、ベビーテックから。「ベビーテック」とは、乳幼児の育児や健康管理のためのテクノロジーです。物言わぬペットを育てる悩みには、乳幼児の子育てと通じるものがあります。
注目したのは、「QLFライト」というデバイス。

QLFライト (口腔検査ライト) 歯っぴー株式会社 on Strikingly口腔内だけでなく、皮膚や角膜への影響を考慮した光の技術で口腔内の細菌(歯垢・プラーク)を蛍光させる技術 ※歯垢着色液と異なha-ppy.mystrikingly.com

乳幼児の歯磨きをサポートするデバイスです。磨いたあとにこのライトで口の中を照らすと、磨き残しがチェックできるというもの。同様の役割を持つ薬品もありますが、面倒だし、毎回使う人は少ないでしょう。ライトで照らすだけなら、UXのハードルがぐっと下がります。
デンタルケアに着目したのには、理由があります。最近、ペット業界でもデンタルケアの需要が高まっており、富士経済によるレポート(2025年市場予測)でも、成長分野の一つとして取り上げられています。犬、特に小型犬の歯は鋭く小さく、磨くのを嫌がる子も多いため、歯磨きは困難で磨き残しも心配なもの。磨き終わったあとにスマホのライト(フィルターのようなものは必要でしょう)で照らすだけで磨き残しがチェックでき、さらに歯茎の色や状態から歯周病のアラートも出してくれる。そんなペット専用歯磨きアプリは、成長著しいデンタルケア市場で注目を集めそうです。

”ママの顔分析技術”を、あの社会問題に。

最後の3つ目も、ベビーテックから。「ママニエール」というアプリで、公式説明は、以下の通りです。

産後の今のあなたにぴったりなケアや情報を、顔分析から提案! 分析結果と、赤ちゃんの月齢を加味して、その方にぴったりな産後特有の悩みを解決するケア方法や乳幼児ファミリーを手助けするサービスが提案されます。

「mamaniere」公式サイトより

顔分析で産後ママの今の心と体の状態がわかる!ママに贈るケアアプリ|ママニエール登場|ポーラ公式産後ママにポーラがお届けするケアアプリ、ママニエール。肌分析に精通したPOLA研究所が開発!簡単セルフチェックと顔写真で「mamaniere.pola.co.jp

化粧品メーカー・POLAの新規事業であり、同社が持つ女性の顔分析技術から生まれたものです。
これを子犬・子猫の子育てに活用することもできそうですが…需要を考慮して、「ペットロス」のケアに活かすというのはどうでしょうか。顔分析とペットロスの期間から、その方に適したケア方法を提案するのです。同じ犬種・猫種で似た状況のオーナー同士が励まし合い、アドバイスし合えるコミュニティ機能も喜ばれるかもしれません。
先に述べたように、ペットの家族化・長寿化が進んでいるということは、喪失時の問題も深刻化しているということです。ペットロスの経験者は約6割、という調査結果があります。犬猫の飼育頭数は国内で約1500万ですから、6割換算で、のべ900万のペットオーナーがペットロス予備軍というわけです。数字から見ても、これは一種の社会問題と言えるでしょう。日本では心理カウンセリングという習慣があまり根付いていません。自力での解決を試みても、うまくいかない方も多いのではないでしょうか。POLAさん、顔分析技術を活かした社会的新規事業として、いかがでしょうか?

以上、思いつくままに綴ったアイデアですが、実現には大量のデータ解析が必要なことは言うまでもありません。ただ、愛玩動物の健康関連データはペット保険会社などが保有しており、実現の可能性はあるはずです。我が社のことですから、半年後には爆速でサービスインしているかもしれません。「ぜひカタチにしてほしい!」というペットオーナーの皆さん、「一緒にカタチにしたい!」というパートナーの皆さんからのお声を、お待ちしています。

追伸;AIはデータに”体温”を与えるか

この記事を書いてみて、近年よく議論される「AIの活用法」について思うことがあったのでメモ。前述の「STRAVA」と「ママニエール」は、どちらもAI(的な)解析技術を使っていますが、共通点として「定量データを定性メッセージに変換する」という役割を担っています。
走行データからランナーを褒め、顔分析からママに優しいアドバイスを送る―このように、データという無機質な情報を、温かみのあるメッセージに変換することで、そのデータをより扱いやすく、価値あるものにしているのです。しかも瞬時にその場で、という芸当は人間にはなかなかできません。「定性化装置」「体温製造機」としてのAIのポテンシャルに、注目してみたいと思います。という、備忘メモでした。

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