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新規事業開発は不思議のダンジョン | アブダクション×プロトタイプで立ち向かえ

2024年12月5日に投稿された記事です。

この記事は dotD Advent Calendar 2024  5日目の記事です。

こんにちは。dotDの山口です。
今回はAdventCalendarの5番目ということで、久々の記事になります。デザイナーらしく、新規事業開発のデザインに関連するnoteを書いてみようと思いますが、事業会社に限らず、様々な方に届くと良いなと思っていますので、ぜひお付き合いください。

目次

  1. 新規事業開発の現場は不思議のダンジョン
  2. 前に進むためには、とにかく仮説検証
  3. 論理的な思考法
  4. 第3の思考法:アブダクション(仮説推論)
  5. デザイナーの武器「アブダクションライン」
  6. アブダクション✖️プロトタイプ
  7. 検証回数はプロトタイプ作成速度に比例する
  8. プロトタイプを爆速で作るには
  9. 大事にしていること
  10. おわりに

新規事業開発の現場は不思議のダンジョン

まずはじめに、dotDは様々な事業を自社で生み出したり、共創というかたちで企業さまと一緒に事業づくりをしている「事業創造ファーム」です。

僕は今でこそ事業づくりに携わっていますが、dotDに入る前はWeb系の制作会社に在籍していたので、当たり前ですが作るものありきでプロジェクトが発足していました。手戻りが無いように要件定義フェーズを経て、ウォーターフォール型の開発が行われていた環境で、そもそも前提条件が崩れるようなことは滅多にありませんでした。

dotDに入社した現在、新規事業開発の現場では不確実性や変化への対応が日常です。やりたいことはあるけれど、具体的には何も決まっていなかったり、ある課題に対してのヒアリングを実施したくても、素早くユーザーヒアリングを実施することが困難であったり…。状況は日々変わっていきますし、プロジェクト毎で様々な壁が出てきたりするので、決まったルートを進んでいけばゴールが見えるような状態では全くないわけです。

そう、足を踏み入れる度に構造が変わる不思議のダンジョンのように…。
(知らない人はググってみてください🥺)

前に進むためには、とにかく仮説検証

この不思議なダンジョンの内部においてプロジェクトを前に進めていくためには、仮説を立てて素早く検証し、事業の進むべき方向性を見極めていく必要があるわけです。
その際、ものごとを分解して捉えた上で仮説を導き出す方法として、論理的な思考法が役立ってきます。

論理的な思考法

一般的に知られている思考法を紹介していきます。
知ってるよ!という方は飛ばしてくださいね。
仰々しく説明と言っていますが、特に演繹(えんえき)・帰納という思考法については、みなさん普段から当たり前のようにやっていることだったりします。

①演繹法
演繹法とは、一般的な原理や法則を基に、特定の事例に対して結論を導き出す論理的な推論方法です。いわゆる「三段論法」が代表例で、普遍的な前提から個別の結論を導きます。

一般論:「運動不足になると健康状態に悪影響を及ぼす」
事象 :「Aさんが運動不足」
結論 :「Aさんの健康状態に悪影響を及ぼす可能性がある」

この例では、「運動不足は健康に悪影響を及ぼす」という普遍的な法則から、特定の個人に対して健康への影響を予測しています。

②帰納法
帰納法とは、個々の具体的な事例や観察結果から共通点を見出し、一般的な法則や結論を導き出す推論方法です。科学的な発見や統計的な分析でよく用いられます。

事象:A地方のカラスは黒い
事象:B地方のカラスは黒い
事象:C地方のカラスは黒い
結論:すべてのカラスは黒い

複数の地域で黒いカラスを観察した結果、「カラスは黒い」という一般的な結論を導き出しています。ただし、これは完全な確実性ではなく、例外が出る可能性もあります。

第3の思考法:アブダクション(仮説推論)

アブダクションとは、観察された事実に基づいて、最も可能性の高い仮説を導き出す推論方法です。演繹法や帰納法とは異なり、確実な結論を導くものではなく、仮説を構築することを目的とする推論、とされています。

アブダクションは、特に不確実な状況や原因がはっきりしない場合に役立ちます。

演繹法と似た構図になっていますが、結果から仮説を導き出します。
この場合、Aさんの健康状態が悪化していることから「運動不足である」仮説を立てていますが、これは必ずしも正解ではないのです。病気が原因で健康状態が悪化しているかもしれないので、検査やさらなる観察によって確定していく必要があります。

デザイナーの武器「アブダクションライン」

このアブダクションによるアプローチは、実はデザイナーも行っているものだそうで、書籍「オブジェクト指向UIデザイン」の中でも「アブダクションライン」として紹介されています。

説明を見ると、なるほど確かに思い当たる節はあるし、この流れでデザインを組み立てている実感がありました。

①ざっくりとした要件から
②重要なポイントを見定め、こんなものが欲しいのだろう、と想像して「あるべき姿」としてのデザインを創造する

非デザイナーの方から見ると、要件を伝えただけなのに一足飛びにアウトプットが出来ているように見えるので驚かれることもありますが、実際にはアブダクションラインで示しているように、これまでの凡例や経験などから「あるべき姿」を定めながら要件とアウトプットを繋いでいっているわけですね。

アブダクション✖️プロトタイプ

アブダクションについて紹介してきましたが、話を事業開発の現場に戻していきます。最初に「新規事業開発の現場では不確実性や変化への対応が日常」であると書きました。VUCA時代と言われる現在であれば尚更アブダクションが有効であろうことは想像に難くないですよね。

dotDでは解像度の低い超初期段階においても自律的に仮説を構築して、サービス企画・ユーザー体験等を導き出した上でプロトタイプを作成します。この仮説推論によるプロトタイプを用いて、関係者の解像度を⁨⁩上げていき、事業の具体化を加速する進め方を実施しています。

仮説ベースで結論となるプロトタイプを作成し、ユーザーに当てていく

検証回数はプロトタイプ作成速度に比例する

プロトタイピングの成否は「いかに早く仮説を検証し、学びを得るか」にかかっています。よって、当たり前ですが、より多くの検証を重ねるためにはプロトタイプを速く作り、フィードバックをプロトタイプへ反映していく必要があります。また、スピードを重視する理由としては下記のような点もあります。

  • 不確実性への対応
    初期段階では答えが見えないことがほとんど。多くの検証を重ねることで、少しずつ霧を晴らしていくことが出来ます。
  • 市場の変化
    時間をかけすぎると市場や競合の状況が変わり、仮説が無意味になるリスクも出てきてしまいます。

プロトタイプを爆速で作るには

では、検証回数を増やすためにプロトタイプを短期間で作ることが最善な訳なので、効率的にプロトタイプを作るポイントをまとめてみました。

①汎用的なコンポーネントを用意しておく
当たり前の事ですが、プロトタイプにおいては速度>意匠(クオリティ)を意識する必要があります。ある程度の世界観やクオリティは必要ですが、必要以上にそこを追い求めることは、この段階では「勿体無い」です。
そのため少しでも時短出来るように、よく使うUIパーツやデザイン要素をプロトタイプ用にコンポーネント化しておくことで、効率良くデザインできる状態を作りましょう。

②Figmaテンプレートを活用する
Figmaコミュニティ上に公開されている各種テンプレートをベースに使うことも選択肢に入れておきます。例えば、ある程度見えている姿としてのUIがダッシュボード風の画面であれば、0から自身で作るよりもダッシュボードのデザインテンプレートをベースにした方が圧倒的に時短になりますよね。

③インスピレーションを得てストックしておく
いわゆるデザインのリファレンスとしてPinterest / Behance / Dribbbleのようなサービスを普段から見ておいたり、都度新しいインスプレーションを得るために見ることは重要だと感じます。引き出しが多ければ多いほど、あるべき姿を描きやすくなります。

④生成AIの活用
Galileoのような生成AIは特定のタスクでは有効な場合もありました。使いこなせていないという問題も潜んでいるかもしれないですが、ある程度「あるべき姿」が見えているのであれば、現時点ではデザイナー自身が手を動かした方が圧倒的に早いと感じます。

大事にしていること

ちなみに、プロトタイプを作る際に個人的に特に重視しているのは以下の要素です。

引き出しを増やす
これまでの経験が大きく影響する部分ではあるのですが、やはり様々な業界・テイストの数多くのデザインを手掛けている場合は、表現の幅が広くなり「あるべき姿(結論の事)」を想定しやすくなる傾向があります。
ちなみにこれは「実務」かどうかはあまり関係がないと思います。
たくさんの事例を見ることや作ることで「引き出し」は増えていきます。

トレンドや潮流を知る
新規事業において、多くはこれまで抱えていた課題を解決するような新しい何かが必要になると思います。この課題解決のヒントとしてトレンドや潮流を知ることは、課題解決の手札を増やすことに繋がる可能性があります。とにかく無理矢理にでも新しい何かを含めれば良いというわけではありませんが、「新しい視点を入れられるのか?」を検討する事が重要だと考えています。

肉付けする
アブダクションにより導き出された仮説(ペルソナやユーザーストーリーなどを含む)から「あるべき姿」が見えてきます。実際の現場では、UIプロトタイプに落とし込む際には、単一の機能だけを具備したものではなく、その周辺の情報や世界観なども必要になってきます。この「肉付け」は、デザイナーにとって多くの「引き出し」や「発想」が必要となるプロセスだと思います。

例えば、商品を購入するようなユーザーストーリーを含んだプロトタイプを作る場合には、商品ページに購入するボタンが必要です。画面内に商品画像と商品の情報と購入ボタンだけあれば最低限成立してしまいますが、周辺情報として商品のレビューや関連商品などの情報があったほうが、より現実的であるし、新たな課題や仮説に繋がる可能性もあります。
このような理由から、肉付けを行う事は案外重要な事なのではないかと思っています。

置き換える
特にサービスやプロダクトの対象ユーザーが一般消費者ではないケース、いわゆる業務システムのようなものの場合、多数の数字やデータなどを画面に表示する必要があります。そのままの数字や文字列として見やすく並べることが最適解の場合もあると思いますが、例えばインフォグラフィックとして視覚的に分かりやすくするなど、あえて別の表現に置き換える事を試すようにしています。新たな仮説を発見出来るチャンスでもあるため、別の表現・視点を入れてみることを大事にしています。

正解がないことを知る
特にデザインにおいては「正解」が決まっている訳ではありません。つまり誰も正解を持っているわけでは無いので、自分を信じてあげましょう。
そもそもプロトタイプは、それを手掛かりにして正解を探していくためのものなので、作った時点で正解はあり得ないのです。


おわりに

今回、僕が普段携わっている新規事業開発を例に「アブダクション✖️プロトタイプ」の紹介をしてきましたが、様々な事へ応用のきく考え方だと思います。これをきっけかにして自身の仕事へ活かしてみてはいかがでしょう?
きっと不思議のダンジョンも攻略できるはず👍


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