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意外と知らない!?新規事業のネーミングで気を付けるべきこと(別記事の続編)

この記事はdotD公式noteの転載です。

執筆者は、Managing Director 山中健太郎さんです。

https://www.wantedly.com/companies/company_7005547/post_articles/371963


こんにちわ。dotD山中です。3回目の更新です。始めた時は継続できるか心配でしたが、これだけ続けばしばらくは大丈夫そうですね。

今回の投稿は、以前onedog CPOの後藤が当社のonedogがリブランディングの一環で名称変更した際に取りまとめた「グローバルサービスのネーミング方法」の続編になります。

https://note.com/sayao_o/n/n38e040e01763


何かの名付け親になる機会って人生でそう何度も訪れないですよね。普通に生きていて、「私は名付けの専門家です」って言える人は、特別な職業の方を除けば、あまりいないんじゃないかと思います。
でも、我が子にせよ、ペットにせよ、名前は一生その子について回るものなので、どうせなら本人も親も関係する全員が気に入る素敵な名前をつけてあげたいですよね。

記憶の限りでは、私はこれまで3回ほど名前をつける機会に恵まれました。
最近だと、2018年に生まれた娘の名前。音の響き・漢字の意味・字画にこだわり結構時間をかけましたが、夫婦共にとても気に入る名前にできました。娘は2歳なので好き嫌いはまだないと思いますが、きっと気に入ってくれるんじゃないかと思います。
残り2回は実家で飼っていた犬の名前です。子どもの思いつきで、見た目の特徴を名前にしただけ(天パ気味のゴールデンレトリバーだから「カール」、カールより小さいミニチュアダックスフントだから「プチ」)ですが、シンプルで可愛らしくて今でも気に入っています。

そんな私、仕事では10年近く新規事業に携わってきたのですが、よくよく考えてみるとサービス名・プロダクト名のネーミングはしたことがありませんでした(コンサル時代はお客様にお任せ、前職時代は社長の特権でした)。

今回自分が立ち上げにチャレンジしている教育系新規事業で初めて名付けの機会に恵まれたのですが、やってみると意外に知らないことが多い。そしてなかなか難しい。

私の担当事業でも後藤の記事にあるノウハウにそってネーミングをしたのですが、いくつか新たな気づきがあったので、ここでは過去の記事では触れられていないポイントを中心に、事業責任者/プロダクトマネージャー/プロダクトオーナーの視点で書いてみます。

シリアルアントレプレナー/シリアルイントレプレナー/ブランドコンサルタント等の限られた職種の人を除けば、プロダクト名・サービス名のネーミングはお手の物という人はあまりいないんじゃないかと思います。

「言われてみれば...」と思った方、是非後藤の記事と合わせて読んでみてください。

目次

  1. meepaのネーミング検討プロセス
  2. 学び①:ネーミング要件は議論の進捗に合わせて具体的に
  3. 学び②:パイプラインはリッチに
  4. 学び③:商標調査は区分・有効期限まで調べる
  5. 学び④:ドメイン調査はお名前.com(未登録のみ)→GoDaddy(買取も)の順で、価格も含め調査
  6. おわりに

meepaのネーミング検討プロセス

私が担当する新規事業は、「子どもの本当の好きに出会えるAIによる課外活動マッチング」というコンセプトなのですが、これを英語に意訳し("Meet your passion")、省略し、最終的にはmeepaという名前に落ち着きました。

Meepa | 子どもの本当の好きに出会う 課外活動マッチング子どもの本当の好きに出会う 課外活動マッチング。meepaは親の思い込みや限られた情報にとらわれない、子どもの「本当の好きmeepa.io

ここでは、meepaという名前に至った検討プロセスについて、その概要をご紹介します。

meepaという名前は、計2回のワークショップを行って決めました。

ワークショップの参加者は、当時のmeepaメンバー4名+onedogのネーミング検討経験者2名の6名。職種としては、ビジネスサイド2名、エンジニア2名、デザイナー2名という構成です。

ワークショップは以下の要領で進めました。各2時間です。

WS Day1のアジェンダ:
1. ネーミング要件の伝達
2. 背景情報・ヒントの提示
 2-1. 事業構想
 2-2. ブランドDNA
 2-3. EdTech/KidsTechサービス名事例
3. ブレスト・全体共有
4. 人気投票(途中経過として)
WS Day2のアジェンダ:
1. ネーミング要件(update版)の伝達
2. 再ブレスト
3. ピッチ

ちなみに、当時は緊急事態宣言中ではなかったものの、普段からリモートワークで仕事を進めることが多いので、zoom + miroでワークショップを開催しました。(miroはオンラインホワイトボードツールです。詳細はこのブログ等を参照してください)

ざっくり言ってしまえば、Day1・Day2ともに、概ね普通のブレスト会なのですが、いくらか進行上工夫した点があるので、工夫した点と結果を、以下に簡単に記しておきます。

【事前準備の工夫】
主催者として事前に以下の3点を準備しておきました。

①ネーミングの要件を決めておくこと
②『ブランドDNA』について一通り検討しておくこと
③参加者の発想のヒントとしてEdTech/KidsTechサービス名とその由来を調査しておくこと

これらの準備はちょっと手間がかかりますが、振り返って、やっておいてよかったと思います。中でも特に①②。
①ネーミング要件は、ブレストで出てくるアイデアの幅を規定する非常に重要な要素となります。今回の一連の活動から得られたとても重要な教訓なので、要件作りのポイントは後述します。
②ブランドDNAに関する詳細は以下の記事を参照してください。ユーザー・顧客にファンになってもらうために、という観点で情緒的な側面から事業を検討し言語化しておくことで、参加者全員が同じような事業イメージを持ちながらワークショップに参加することができました。
③EdTech/KidsTechサービス名事例については、発想のヒントになる反面、参加者にバイアスをかける副作用もあるため、参加者や事前準備に割ける時間との兼ね合いで実施を判断するのが良さそうです。

https://note.com/kyamanaka/n/n8877de7c58b3


【Day1の工夫】
Day1の目的は発散です。発散を促すために、「2. 背景情報・ヒントの提示」パートでは、リマインドも含めて様々な情報を私から参加者に提示しました。
そこで伝えた内容については上記アジェンダを参照して頂くとして、今回はブレストの準備運動として、参加者には私のプレゼンを聞きながら気になった・連想した単語をmiro上にメモしてもらいました。思いついた名前に飛びつくのではなく、事業の特性やキーワードを拾い、それらの想いを名前に組み込めるようにしたかったためです。
このようなやり方を採用したのも、私が提示したネーミング要件に「名は体を表す」というものがあったからなのですが、それについては後述します。

「背景情報・ヒント」を聞きながら参加者が書き出したキーワード

【Day1の結果】
Day1では6人から約100個のアイデアが出てきました。人気投票結果を踏まえても20個くらいが候補として残りました。
もちろん責任者としてはワークショップ開催前から色々と名前を考えていたわけですが、やはり多様なメンバーから出てくるアイデアの中には、自分では発想できないものが多く含まれており、発散という目的を十分に達成することができました
ただし、まだこの段階では心の底からしっくり来る名前に出会えたわけではありませんでした。

【Day1~Day2インターバル期間】
インターバルは1週間あったのですが、その期間で有望案に対して、商標や検索結果、ドメインのチェックを行いました(詳しくは後藤の記事を参照)。Day1終了時点では20件(派生形も含めると30件)くらい候補に残っていたので、それら全てをざっと調べたのですが、思った以上に引っかかるものが出てきて、特にお気に入りだった候補たち(3つほど)は全てNGになってしまいました。脱落率の感触を得るという意味では絞り込み切る前にやっておいてよかったです。一方で、後々使われない名前の調査に時間をかけてしまったのはちょっと反省で、次やるとしたらDay2の議論後にこの作業は寄せてしまうと思います。

【Day2の工夫】
Day2はインターバル期間中の調査結果もインプットにしながら、今一度知恵を振り絞り再度発散した上で収束させるような形で実施しました。
そんなDay2の進行で工夫したのは、最後の「3. ピッチ」です。各人が最も気に入った名前を、サービス紹介サイトのキービジュアル・解説文章とセットで表示させ、第三者向けのサービス紹介をしてみて、どれがしっくりくるかを見てみました。
人間は視覚から得る情報の方が多い生き物なので、このやり方によって、付箋に書かれた名前と耳から聞こえる理由だけで判断するよりも、よりしっくりくる判断ができました。

【Day2の結果】
派生形も含め10個程度まで絞り込みました。
Day2のピッチや議論を経て、自分としては「この名前にしたい」と思えるものも2~3個現れました。それらはワークショップ前の自分には思いつけなかったものだったので、ワークショップとしては大成功だと言えます。

【Day2後】
Day1後のインターバル期間と同様に最終候補に対して、5つの観点でのチェックを行いました(詳しくは後藤の記事を参照)。
ここでいくつか落とし穴を発見したので、それらは後述します。

meepaのネーミングにあたっては、概ねこのような形で検討を進めました。そして、結果的に大満足の名前にたどり着くことができました。

もう一度別の事前準備のネーミングをする機会があったとしても、同じやり方で進めたいと思える出来だったのですが、いくつか気をつけたいと思うことがあるので、以下ではその学びを紹介させて頂きます。

学び①:ネーミング要件は議論の進捗に合わせて具体的に

Day1では、添付画像のようなシンプルな要件を提示し、それに沿った名称を考案してもらいました。


結果的にDay1の発散はうまく行きましたし、いま改めて眺めてみても、OBゾーンはハッキリするし思考を疎外しすぎることもない、ちょうどいい塩梅での要件だったんじゃないかなと思います。

ただ、「いい感じだな」と思える案はいくつもあれど、残念ながら「この名前にしたい!」と思えるものはありませんでした(少なくとも、Day1終了時点の自分の視点では)。
Day1でのブレスト・投票を通じて、チームメンバーや自分の好みが見えてきたことから、Day2ではもう少し範囲を狭めて深掘りしたいと思うようになりました。

そこで、Day2を迎えるにあたって、自分の好みを言語化し、ネーミング要件を更に具体化しました。添付の画像が実際にDay2で提示したものです。

Day1に示した①~③の構造は不変ながら、それぞれかなり具体的に言語化されていることがわかって頂けると思います。

この結果、Day2では好みに合う名前が密度濃く発案され、結果的に複数個「この名前にしたい!」と思えるような名前に出会うことができました。(Day2終了時点の名称例は前章の「ピッチ」の画像をご覧ください)

学び②:パイプラインはリッチに

「いいな」と思うものは既に誰かに考えられているもの。新規事業のアイデアでも、大学の研究でも同じですね。

dotDではネーミング検討の際に候補を、競合商標の有無、ドメイン名取得可否、リリース対象国での検索結果(同名の強いサイトがないか、画像検索で変なものが出てこないか)、対象国での意味合い(検索とネイティブヒアリング)の観点でふるいにかけることを推奨しているのですが、この過程で、「この名前にしたい」「この名前ならあり」と思えるものは半分くらい落ちてしまいました。

泣く泣く第二候補群で妥協する..なんてことにならないために、名称案のパイプラインはなるべくリッチに持っておいた方が良さそうです。目安とは上記のチェックにかける時点で10個近い名称案を持っておくと、生き残った複数候補で最後の贅沢な悩みを楽しめるくらいかなと思います。

学び③:商標調査は区分・有効期限まで調べる

実務的かつ基礎的な内容なので、知ってるよって方も多いと思うんですが、私は落とし穴にハマりかけてしまいました。

国内の商標を調査する際は特許情報プラットフォーム(リンク)を使うのが一般的なようなのですが、海外進出時も同名でいきたいと思っていたこともあり、最初、商標はWIPO IP Portal(リンク)で調べていました。日本も含め世界中の商標が一括で検索できるためです。

WIPOで"meepa"を調べてみると、ある日系大手企業に国内の商標が押さえられているように見えます。一方で、試しに特許情報プラットフォームで調べてみると何故か検索結果はゼロ件。なぜ日本の専門サイトよりも海外サイトの方が詳しいのだろう?という疑問をなんとなく抱きながらも、素直な私は一押しだった"meepa"を泣く泣く諦めかけてしまいました。ありがたいことに、"meepa"を一押ししていたメンバーが粘り強く調べてくれたところ、大手企業に押さえられていた商標は期限切れだとわかりました。

WIPOだと期限切れの商標も同じように検索結果に出てきてしまうことがあるというのは知っておいて損はないかと思います。

もう一つ、恥ずかしながら、知らずにハマりかけてしまった商標関連の罠があります。
それが、商標は区分が違えば被っていてもOKということ(商標区分一覧)。

それを知らずに調べているうちは、最終候補の名前のほとんどがどこかしらの国で商標が取られており、ネーミングのフェアウェイゾーンの狭さに驚いてしまっていました。
結局、何気ない会話の中から同僚に教えてもらって事なきを得ましたが、もし知らないままお気に入りの名前を諦めていたら...と思うとゾッとします。

学び④:ドメイン調査はお名前.com(未登録のみ)→GoDaddy(買取も)の順で、価格も含め調査

ドメインは.comを第一希望、.ioを第二候補として調査しました。
.comを第一候補にしたのは、安心感がありSEOにも多少有利だから。.ioを第二候補にしたのは、スタートアップっぽく当社のonedogでも採用しているから、という理由です。

.aiもいいかもしれないと思ったのですが、AIスタートアップではない当社にとってはやや荷が重い(AI縛りになっちゃう、AIのプロっぽくみられてしまう)と思ったので候補から外しました。

調査ははじめGoDaddyで実施しました。が、ここでもサイトの癖のようなものがあり、実務的にちょっとした罠がありました。

GoDaddyは既に誰かに押さえられているドメインの買取交渉の仲介までやってくれる便利なサイトです。故に、誰かが既に権利を押さえているドメインも買取可能価格とともに表示されます。
例えば、meepa.comをGoDaddyで検索すると以下のように表示されます。

金額をちゃんと見ておけば問題ないのですが、私はこれを早とちりして「meepa.com」は取得可能だと思い込んでしまいました。直前で金額を見たので結局、購入することは諦めましたが、危ないところでした。

その点お名前.comは取れるものは取れる、取れないものは取れないと表示してくれるので、よっぽどの拘りがあって、高い金を払ってでもこのドメインを買い取るのだ!という意思がある場合を除いては、お名前.comの方がわかりやすくていいんじゃないかと思います。

おわりに

今回は事前準備のネーミングの実務的な内容について書きました。
コンサルタントなどの職業で多くの新規事業の企画に携わられている方でも意外と知らないことも多いんじゃないかと思います。
次に何らかのプロダクト・サービスのネーミングに関わる機会があったら、是非読み返してみてくださいね!

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