「ぼくたちの開業(奮闘)日記」、第3弾を担当する松本 拡です!
私はこの9月にStapleにジョインしたばかりですが、来春開業予定のSOIL Nagatoyumotoの開業準備を担当するため東京から長門湯本に拠点を移しています。
今回はその立場だからこそ見える景色や、現地での開業準備のリアルな温度感をお伝えできればと思います。
松本 拡 | HIROMU MATSUMOTO
1986年、兵庫県出身。生まれも育ちも関西。新卒で大手ホテル企業に就職、11年で神戸・大阪・東京のシティホテル計3施設で宿泊部門を担当。
その後、より1人のゲストにフォーカスしたサービススタイルを求め、2020年3月にTRUNK(HOTEL) CAT STREET、2023年7月からはTRUNK(HOTEL)YOYOGIPARKの開業を経験。15年携わった現場での経験を活かしキャリアの幅を広げるため2024年9月に企画・開発段階からホテル作りに携わることのできるStapleに転職。現在長門湯本にて開業準備に奔走中。
ホテルの現場で感じた”理想”と”現実”のギャップ
自己紹介にも書いた通り、新卒で就職してから、気づけばホテルの現場一筋15年目になります。
元々明確な夢や目標を持って就職活動をしていたわけでもなく、「人と話すのが好き」「じっと座ってるのが苦手」といった理由で(笑)何となく辿り着いたこの業界。それでも、”ホテルマン”というと、『キラキラしたイメージで多くのゲストと日々コミュニケーションを取り、きっとやり甲斐を感じられるのだろうな』と想像していました。しかし待ち受けていたのは、ひたすら業務に追われる日々。新卒で入社した企業で経験した3施設はどこも200室前後といった規模で、毎日次々とゲストが訪れ、目の前のゲストと話したくても次から次にチェックイン・チェックアウト業務、それが終わったらひたすらに顧客情報処理のルーティーン。『ゲストより効率』の状況が続き、理想と現実のギャップに悩んだ同僚たちが毎年のように去っていくのを見てきました。その後、客室数が多いとどうしても効率重視のマネジメントになりがちであると感じ客室数の少ないホテルを軸に転職活動、TRUNK(HOTEL)に入社しました。
1人のゲストに時間をかけることの楽しさと難しさ
実は、200室から15室規模のホテルに転職したとき少しホッとしていた自分もいたのですが現実は甘くなく、今度は、1人のゲストに時間をかけることの難しさに直面します。全てのゲストに対して館内案内をして客室までエスコートするため、長い場合30分近くチェックインにかけるケースも。それだけ時間をかけるには話すネタが必要で、自分の言葉でホテルの魅力を伝えるためにもゲストの個性、このホテルを選んだ背景、いまゲストが求めていることを深掘りし、言葉に落とし込むことが必要です。これまでとは違ったチャレンジがありながら、今までよりも更に自施設に愛着を持つことができ、次第に自らに求めていたパフォーマンスも兼ね備えられるようになりました。
TRUNK(HOTEL)での夏祭りイベント
そんな働き方をしているうち、『いずれは自らの手で小規模施設を開発、運営したい』と考えるようになり、開業前から運営まで横断的にホテル作りに関わることのできるStapleに入社することになります。
開業準備で大切にしたいこと
そんなホテル現場で働くことに心血を注いできたわたし松本が、SOIL Nagatoyumotoの開業にどのように情熱を注いでいるかについて紹介させてください。採用活動、備品選定、オペレーション構築など、この辺りの業務は想像の範囲かと思いますが、業務と並行して大切だと思っていることが二つあります。その中で直近で一番力を込めたのは、これ。
踊りの練習です。(笑)
「遊んでるやんけ!」という声が聞こえてきそうですが、これがとても重要なことで。この開業日記第1弾で近藤が語ってくれた通り、『湯本南条踊り』は地域にとってとても重要な歴史あるイベントで、新旧問わず街の人々が親交を深めるとても貴重な機会になっています。
私たちはまちに溶け込むため、仕事終わりににせっせと毎日練習に向かい、本番は猛暑の中で半日かけて計4箇所で無事踊りきることができました。
大事なこと1:まちに溶け込むこと。
毎日根気強く踊りを教えてくれた南条踊りメンバー
練習期間中には熱血集中指導を受けていた“問題児 近藤”も晴れて認められ(笑)、終了後の宴会で師匠2人と乾杯する姿を見届けた時はとても感慨深い瞬間でした。
それからというもの、地域住民の方々ともすっかり打ち解け、今では毎日、長門湯本の街の至るところで南条踊りメンバーに会っては立ち話、コミュニティを肌で感じる日々を送っています。そう、これも立派な開業準備。まちに根差したホテルを作るには、まちの人の協力が不可欠だと再認識する機会となりました。
大事なこと2:愛着が持てるホテルを自らの手で生み出す。
今回開業を控えている施設は、温泉郷の中心を流れる音信川のほとりに館を構える老舗旅館「六角堂」を受け継ぎリニューアルして開業します。現場では今も着々と工事が進んでいますが、その中で私たちは階段の壁紙と床のカーペット剥がしを担当することになりました。
これまた「剥がすだけかい」と言われてしまいそうですが(笑)、表面の素材を剥がし、下地を水で濡らし、工具を使ってできるだけ痕が残らないように剥ぎ取る作業は、長年使用した施設であることに加えまだまだ残暑厳しい季節であることも伴い、生半可な気持ちでは取り組めない、なかなか骨の折れる作業です。最近はおかげさまで知人の協力もあり、やっと3フロア分の作業を終えることができました。
解体現場の写真。この壁紙と床を全て剥がしていきます。
この作業をしながら想像するのは『開業後の未来』のこと。いつかここを訪れるゲストを案内する際、『実はこのカーペットは私がリノベーション前のものを剥がしたんです。元々はこんなカーペットで…』といったエピソードを添えることで、より想いのこもったエスコートをすることができます。近年日本のホテルマーケットが急速に拡大し、いいホテルが無数にある中で私が大切にしたいのは『愛着を持って自分のホテルのストーリーを語れること』。AI技術が進歩し、いくらでも効率化が図れる時代だからこそ、あえて手間暇をかけることで、AIには語れないストーリーを自分の言葉で伝えていきたいです。
開業準備って、こういうこと。
つい熱っぽくなってしまいましたが、ローカルで開業を迎えるということは、『まちの景色をつくり、自らもその景色になること』なのだろうと思っています。都心部のように高層ビルや商業施設があるわけではない景色に新しいホテルが建つということはまちの景色を変えることになるといっても過言ではなく、そのためには周囲の人々に受け入れてもらうことが不可欠。毎日顔を合わせ、挨拶を交わし、南条踊りのような地元イベントがあれば誰よりも積極的に参加する。こちらから『このまちが好き!』という姿勢を見せることで人々は喜んでくれて、あらゆる場面で手を貸してくれるようになりました。自分たちだけでなく周囲の人々と一体となってホテル作りをすることは、都心では味わうことのできない、また一味違ったやり甲斐を感じているこの頃です。
開業メンバー募集中!
長門湯本はとてもいいまちです。温泉はもちろんのこと、私は趣味でサーフィンをするのですが、少し車を走らせると沖縄にも劣らない透明度の海に、めっちゃいい波が来ます。そんな海で採れる魚も絶品です。
私のようにホテルマンとしてのキャリアの先でホテルの開業に興味があればお気軽にご連絡ください。足を運んでいただけたらご案内しますし、まだまだいいところ、開業準備の楽しさ、語ります。
今のところ現地メンバーは3名のみ。ゲストが楽しんでくれるホテルを作るにはまず自分たちが楽しむこと。「長門3兄弟」と銘打って寝ても覚めても一緒の生活をしており、男3人で下手くそな料理を作りながら、あーでもないこーでもないと理想のホテル像を語り合う、そんな時間が心地良いです。ぜひ開業チームに加わってもらえるのを楽しみにしています!
そして次回の開業日記は満を持してGM 黒木 涼の登場!思わず長門湯本に来たくなる素敵な日記を書いてくれる予定なので乞うご期待!