後悔から生まれた“メンタル天気予報コンケア”
開発のきっかけは、2010年~2012年頃にメンタル不調者が社内で相次いだことでした。ちょうどリーマンショックの悪影響がIT業界にも襲ってきており、エクスブレーンの各案件においても縮小や停止などの具体的な影響が出ているときでした。当時、社員数約30人の会社でしたが、全社員でなんとかこの危機を乗り越えようとしていました。当時はいま以上にお客様に常駐する勤務形態のエンジニアが多く、社員の勤務状況がリアルタイムには把握できない状況でした。
『おたくの社員、今日来てませんよ』
ある日、唐突にお客様から「おたくの社員が今日きていませんよ」という連絡が入りました。焦りました。慌ててその社員に連絡を入れますが、連絡がつながりません。そして、その社員の連絡がつかないまま、間髪入れずに別の現場から同じような続報が入りました。幸いにもその後それぞれの社員と連絡も取れ、お客様にもお詫びを受け容れていただけました。それぞれの社員の話を聞くと、異口同音に「お客様先の担当者の対応が自分とは合わない」、「プロパー社員が上から口調できつい」というような話でしたので、たまたまお客様と社員の馬が合わなかっただけだろうと安易に納得してしまい、現場の異動を相談する程度でお茶を濁すような対応をしてこのことを終わらせてしまったのです。
5メートルも離れていない社員が急にこなくなった。
ところが、今度は自社オフィス内で異変が起きました。自席から5メートルも離れていないデスクで働く入社2年目の社員が突然出社しなくなったのです。何日か経ってようやく本人と連絡が取れました。会社には出社できる状態ではないとのことなので、本人の自宅近くの喫茶店で話を聞くことになりました。そのときの本人からの第一声に深く考えさせられることになったのです。
『みんなに迷惑をかけてしまい、大変申し訳ございませんでした』
第一声にこう言って、涙を浮かべ、深く頭を下げ、私に謝ったのでした。会社側の人間と無断欠勤を続けた社員。この関係性でいけば、ある意味自然な謝罪の言葉だったのかもしれませんが、私にはとてもつもない違和感がありました。私はなんと答えたらよいか分かりませんでした。悪いのは誰だ。こんなことを言わせてしまっている会社の方ではないかと。本人に事情を聞いてみると「実は仕事がつらかった」「周りの人は忙しそうで言えなかった」という言葉が出てきました。つい先日、お客様先で連続で起きてきたことも同じことが場所を変えて起きていただけなのではないか。責任者としてなんとかしなければとこの時強く決意しました。
でも、どうすればよいか、全く分からない。
なんとかしなければと強く決意しつつも、では、どうすればよいか全く分かりませんでした。企業向けにメンタルヘルス対策のサービスを提供する会社を片っ端からあたり、考え方などが自社に合っていた東京メンタルヘルス株式会社(東京都豊島区)に依頼。アドバイスにしたがい、まずは管理職向け研修を実施しました。業務後、池袋駅前の貸し会議室に群馬本社から通勤する社員も集まってもらい、メンタルヘルスに関する研修を実施しました。研修講師のお話は、そうかそうかと頷く話すばかりで、こういった研修を実施したことがなかったので、社員も皆、乾いたスポンジが水を吸い込むように話に聞き入っていた様子を記憶しています。
ただし、不安だけが残った。
研修内容は良かった。ただ、研修が終われば、研修ルームを一歩外に出れば、明日になれば、これまでとは変わらないリーマンショックの影響から這い上がるための怒涛の勤務が続くだけだ。「メンタル不調に陥る社員が近いうちにまた出る」、そんな直感がありました。「メンタル不調者を出さないためにはどうすればいいか」を自分なりに考え始めた。
毎日気分を記録するツールを使って、予防する。
そこで考え着いたのが「毎日気分を記録するツールを使って、予防する」というアイデアでした。勤務管理の仕組みを合体させて、自社のIT技術を使って開発もできるのではないか。ただ、私たちはメンタルヘルスの専門家ではありません。そこで、無謀にも管理職研修を実施してもらった東京メンタルヘルス社にこんなアイデアはどう思いますか?と打診してみたのです。ある意味研修の内容を否定することになるので反応が怖ったのですが、そこでとても意外な反応が返ってきたのでした。
『うちも悩んでいたところです』
30年以上にわたり官公庁や大手・中堅企業向けにEAPサービスを提供してきた会社の担当者の言葉として重く受け止めました。さまざま心の支援を行っているが、支援の実態はメンタル不調が発生した事後対応に終始してしまい、事前の予防対応にうまいやり方がないか真剣に考えているというのが担当者の方の話の主旨でした。
『それでは、一緒にやりましょう』
システム開発会社としてのエクスブレーンとメンタルヘルスの専門家が集まる東京メンタルヘルスの『世界中に心の支援を届ける』ための共同作業はこの時から始まりました。一番大事にしたかったのは、これが単なる思い付きではなく、困っている人の役立つものになるかどうかでした。最初に聞いたのは、自社でメンタル不調になってしまった社員の声でした。プロトタイプを見せたときの反応に耳を澄ませました。
『こんな仕組みがあれば、自分だけで悩みを抱えずに、SOSを発信できたかもしれない』
この言葉が真の意味でのGOサインでした。
実現までにたくさん障壁がありました。『これは占いですか?』という嘲笑も多くいただきましたし、出来上がるまでに社内でさまざまな負担をかけてしまったのが、いまでも申し訳なく思っているところです。
リリースして約8年。日本を代表するような会社から数人規模の会社まで、たくさんの皆様にご利用いただきました。そして、物珍しさもあったと思いますが、様々なメディアに取材・紹介いただきました。世の中に広げるために、特許取得や論文発表を行ってきました。その一部を下記にご紹介します。
<認定・特許>
2013年11月 日本の人事部HRアワード2013にノミネート
2014年7月 国内特許取得(特許第5572752号)メンタルヘルスヘルス支援の為の気分変化感知システムと管理支援方法
2014年9月 全国心理業連合会 推奨商品認定
2014年7月 クラウド勤怠No.1『KING OF TIME』連携開始
<研究・調査>
(日本産業衛生学会)
・天気マークを利用した気分表現の出現割合と分類方法についての検討
・天気マークの選択とストレス状態の相関に関する研究
(日本産業精神保健学会)
・インターネットを介したメンタルヘルス支援ツール研究-
天気マークの選択は選択者の気分を反映しているかについての検討-
(その他)
・「こころの天気1000人アンケート」調査結果
・保育士における早期離職者と非離職者のコンディション実態調査結果
・従業員満足度と組織別コンディション結果の調査結果
<メディア掲載・放映等の実績>
2014年8月 メディア 『季刊へるぱ』
2014年8月 雑誌『経済界』
2014年9月 上毛新聞
2014年9月 看護管理人材育成
2014年9月 高齢者住宅新聞
2015年2月 日本金融通信社ニッキン
2016年3月 東京都社会福祉協議会「変わりゆく福祉職場」
2017年5月 MXテレビ「モーニングCROSS」
2017年5月 ITmediaビジネスONLiNE(特集記事)
2018年5月 NHK「クローズアップ現代」
2018年5月 NHK「おはよう日本」
2019年2月 朝日新聞「be report」
2019年5月 NHK「ニュース7」
2019年5月 テレビ朝日「報道ステーション」
【メンタル天気予報コンケア提供会社】
2015年10月 株式会社エクスブレーンと東京メンタルヘルス株式会社の共同出資の形で『メンタル天気予報コンケア』の企画・販売等のための法人を設立しました。
株式会社コンケア https://concare.co.jp/