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社員インタビュー | 世界最高の料理は家庭料理

株式会社一井は2021年8月10日に、旅館「浜の雅亭一井」(以下、一井)の事業を承継しました。旅館にかかわるすべての資産と従業員を引き継ぎ、新しい経営陣のもとで旅館の事業再生に取り組んでいます。

10月25日から一井に新しく加わった料理長の三浦博昭さんにこれまでのキャリアや料理についての想い、これからの一井について考えていることについてインタビューをしました。インタビュアー:片桐陽(グッドハイブ株式会社 コンサルタント/株式会社一井 業務推進アドバイザー)。


三浦さんとの出会い

片桐:三浦さん、今日はよろしくお願いします!

三浦:よろしくお願いします。今日のインタビューがこわくて昨晩は眠れませんでした(笑)

片桐:笑。僕と三浦さんがはじめて会う前に、社長の岡本(株式会社一井/代表取締役)と一度会っていろいろ話をしたと聞いていますが、そのときはどんなことを話したんですか?

三浦:岡本さんとはじめて会ったときには、一井の現状と、求めている料理人について話してもらいました。そのあと僕自身の料理への考え方とか、これまでの経緯を話して、その中で意気投合する部分が多かったです。

片桐:そのときはまだ三浦さんは一井(現地)に来たこともなかったんですよね?

三浦:そうですね。そのときは直接一井に来たことはなかったんですが、岡本さんから色々と話を聞いて、現場の雰囲気とかイメージが掴めました。そのなんとなくの青写真が自分自身に合ってるのかな、と思ったのと、そのときに僕自身も自分で何かやりたいと思っているところがあったので、お互いの求めているところが合致するのかなと思って、一井にジョインしてみようと思いました。

片桐:なるほど。三浦さんが自分自身でなにかやりたいと思い始めたきっかけとかってあったんですか?

三浦:仕事の中で自分自身に求められていることと、自分がやりたいことが、少し違ったことがきっかけですね。自分に求められていることは間違っていなかったと思いますが、思い描いていたものとは違ったかなと思っていたところで、たまたま岡本さんと出会いました。

片桐:そのタイミングで岡本と出会わなかったら、どうしてんですか?

三浦:これを言ってしまって良いのかわかりませんが、自分でお店をやろうかなと思ってました。

片桐:いろいろな選択肢があった中で、一井を選んでくれてありがとうございます!


料理人の常識ではなく世間の常識へ

片桐:僕もこの業界にはいったときは日本料理のレストランがスタートだったんです。そのときの料理長が、僕の中のザ・料理長のイメージなんですよね。寡黙で、職人気質で、料理のこと以外はあまり口出ししないとか、そんな感じの。

三浦:わかります。

片桐:盛り付け崩してめちゃくちゃ怒られたり、作り直しをお願いしなきゃいけないときなんて、もうこわくて仕方なかったです。ビクビクしながら配膳してました。

三浦:料理長が絶対的といった感じですね。

片桐:そうそう。レストランサービスと調理場の関係も、調理場が上でレストランサービスが下のような感じでした。これまで何人かの料理長とお会いしてきましたが、個人的にはそういった現場が多かったように感じています。それの善し悪しは置いておいて。なので、三浦さんに会って、これまでの僕の中の料理長イメージと良い意味でまったく違うので、びっくりしました。

三浦:笑

片桐:コミュニケーションもとりやすいし、全然こわくないし。

三浦僕自身も、料理長は絶対的な存在として教わってきました。その良い部分は自分も引き続き続けていこうとは思っています。ただ「これは違うな」って思うところもあります。それは変えていこうと強く思っています。

片桐:うんうん。

三浦:調理場の在り方を、料理人の常識ではなくて、世間の常識に変えていこうと自分自身に誓ったところもあるので。まだまだできていないところもありますけどね。


これまでのキャリアについて

片桐:三浦さんのこれまでのキャリアをざっくり聞いていきたいなと思います。

三浦:僕は工業高校を卒業して、住設機器メーカーに4年勤めました。大きい会社の中で歯車になるのがいやで、独り立ちしたいなと思い始め、実家が寿司店だったこともあり、自然と飲食の道に進むことに決めました。最初は蕎麦店に入って、先輩たちにもすごくかわいがってもらえて、毎日すごく楽しく働いていました。その蕎麦店で働いている中で、たまたまご縁があって、お店を出してくれないかという話を頂いたんです。

片桐:おお、いいじゃないですか。

三浦:ただ蕎麦だけじゃなくて、お寿司とか他の和食もやってほしいというリクエストだったんです。そのときの自分は蕎麦以外の料理があまりできなかったので、お店を出すのは諦めました。そのときに、このままじゃだめだと思って、27歳にして和食の世界に飛び込みました。

片桐:それが和食だったのは、実家がお寿司屋さんだったからですか?

三浦:そうですね。小さいころから身近にあったのは和食だったので。和食の世界に入っていろいろと勉強させてもらって、31歳のときに料理長になりました。そこからは淡路島で料理長をして、そこで請負でやってほしいという話になって、自営という形で10年ほどやってました。そのときに体調を崩してしまって、淡路を離れて伊豆、渥美半島と渡って今の一井に至ります。

片桐:なるほど。三浦さんは料理人になる前にビジネスマンとして働いてたわけじゃないですか。それが今に影響してたりしますか?

三浦:一般的な会社に勤めた4年間は、基本的な社会人としてことを学べた時間だったので、それがなかったら今の自分はなかったかもしれませんね。料理人は偏った考え方をしなきゃいけないんですけど、それが世間ではおかしいといった部分もどうしても出てきてしまうものなので、ビジネスマンとしての基本があったことで、その擦り合わせがうまくできているんじゃないかなと感じています。


―――三浦さんのつくる春の献立の一品「焼物八寸」。左から、新若布ポン酢、桜鯛味噌漬け、酢取り茗荷、三色寄せ、厚焼き玉子、キャラ蕗、一寸豆塩蒸し、桜寿司。季節を料理で表現する三浦さんならではの技術が光る。

和食の魅力

片桐:三浦さんが考える和食の魅力について教えて下さい。

三浦僕の中の世界最高の料理は、家庭料理です。僕がいつも目指しているのも、家庭料理です。

片桐:家庭料理、というと?

三浦:家庭料理って技術的なことじゃなくて、メンタル的なこととか、気遣い、心遣い、いろんなことをするじゃないですか。それを目標にしています。家庭料理に技術を加えて洗練されたものにする、それが料理人のすべきことだと思っています。

片桐:なるほど。

三浦:お母ちゃんが「自分の旦那、これ好きやな〜」とか、「子どもはこれがええな、これは嫌いやな」とか、全部把握したうえでベストな時間にベストな量のベストなものを出す。そのうえでコストも家計の中でやりくりしてっていうのが、家庭料理で、自分の中ではこれ以上もこれ以下もないと思っています。

片桐:家庭料理が究極のかたちだと。

三浦:はい。プロフェッショナルとして、その家庭料理の形、考え方、姿勢に技術を加えて、和食にできたらなといつも考えています。

片桐:すばらしい考え方ですね。その料理を飲食店ではなく、宿として提供する際に、思うことや感じることはありますか?

三浦:それは僕の中でもまだ解消できていない部分でもあります。宿として料理を集約しなければならなかったり、オペレーションに縛りがあったりということは理解しているんですが、どうしてもできる限り、一般のお店と同じ感覚でおもてなししたいな、という気持ちがあります。

片桐:なるほど。例えばどんなことですか?

三浦:例えば、一井の献立も今は1ヶ月半に1回変えていますが、本当は1ヶ月に2回は変えたいんです。ただその僕のわがままだけでお客様は満足してくれるわけではないので、できることできないこと、理想と現実に上手に折り合いをつけながら、その中でできることを探していかないとと思っています。…でもやっぱり宿だからできないって、安易にあきらめたくはないですね。


事業再生について

片桐:一井は事業再生という、三浦さんがこれまでに経験したことのない現場かもしれませんが、実際にジョインしてくれた11月から4ヶ月ほど改善に取り組んでみてどうですか?

三浦:正直、日がたつにつれて大変さが増しているのも事実で、やりがいがあるのも事実です。そして焦りがあるのも事実です。

片桐:よくわかります。

三浦:僕が今まで働いてきた環境は、色々なことがきちんと整っていたところもありましたが、新規開業のお店だったり、閉店しないといけないところを立て直すとか、一井で今やっていることに似ている部分も多かったなと感じてます。

片桐:なるほど。

三浦:自分はそういうのが好きなんだと思います。それが性に合ってる部分もあるので、自然とそういう場所に引きつけられるのかなと。

片桐:一井に三浦さんが来てくれたご縁も、なんか納得というか、必然だったのかもと思いますね。


あの手この手で束になってかかろう

片桐:これから一緒に働くチームメンバーに求めるものとかありますか?

三浦希望を持っている人と一緒に働きたいですね。

片桐:希望、というと?

三浦:どんなことでもいいんですけど、こういうことをやりたいと自分の中で思っていることがある人。レストランでも、調理場でも洗い場でも、部署関係なく、「私はこういう風にしたいので、こんなことを変えていきたいんです」って人ですね。自分がこういう風にしたいってことに向かっている人って素晴らしいなと思っています。

片桐:うんうん。

三浦:上手にできるとか、うまく立ち回れるとか、そういう人は個人的にはあまり好きじゃないです。

片桐:たしかにこの仕事はそういう人にはしんどいかもしれないですね。日々泥にまみれながら進んでいく世界なので、単純に合わないんじゃないかな。

三浦:そうかもしれないですね。僕が今一緒に改善をやらせてもらっている中で、感じることがあって。

片桐:どんなことですか?

三浦:それぞれの専門分野があるじゃないですか、僕は料理だし、片桐さんは片桐さんの専門分野がある。みんなにそれぞれ専門分野があって、それをお互い尊重して、尊敬している。それがすごくいいなって感じてます。だからやってて楽しい。そのやってて楽しいってのは僕が仕事に求めている絶対条件で、やらされている感とか、ギスギス感とかがあったら、それは成立しないなと思っています。

片桐:そうですね。三浦さんをはじめ、いろんな人が一井にジョインしてきてくれているので、一井の文化というか、組織の雰囲気というか、そういったものもどんどん良い方向に向かっていっている実感はありますね。

三浦:ゴールは同じかもしれないですけど、全部同じやり方、教科書に準じてやります、ってのは僕は面白くないなと思うんです。あの手この手で、束になってかかっていくみたいな、それに面白みを感じます。一井にはいろんな人が集まってきていて、それが叶いつつある。だから楽しいです。

片桐:僕も今いろんな人が集まって、いろんなことがすすんでいて、楽しいです。

三浦:もちろん結果も大事ですけど、今の段階ではいろんな専門分野の人が集まって、同じ方向に進んでいくことが大事なんじゃないかなと思っています。いろんな環境でやってきた人が集まって、いろんな目線があって、それをお互い尊重し合って認め合っていくことでいろんな答えが出てくるんじゃないかなと。

片桐:うんうん。

三浦:だから僕はNoは言いたくないんです。チームメンバーから要望があったときにも、お客様からリクエストがあったときも、Noは言いたくないってポリシーがあります。みんなから意見や要望が出てくるってことは、そこにゴールがあるんじゃないかなって。だから今すぐはできなくても、そこに向かっていかないと、やりがいもなにも生まれないんじゃないかなと。みんなから出てきたアイデアが消滅してしまうのが嫌なんです。それじゃつまんないな、って。

片桐:三浦さんからその姿勢はすごく強く感じていますし、とてもありがたいことだなと思ってます。

三浦:いろいろ話をしてきましたが、あんまり自分でもうまく説明できないことも多くて、それこそ気持ちで!なんて思ってしまうこともあるんですけど、そこはやっぱり僕が料理人だからなんですかね(笑)

片桐:三浦さんは根っからの料理人です!笑


―――このインタビュー(3月3日実施)のあと、三浦さんは調理場に戻って、その日のまかないに「ちらし寿司」「お蕎麦」「お吸い物」「3色団子」を全員に振る舞ってくれました。歳時記を重んじる和食、そして家庭料理を大切にしている三浦さんだからこその嬉しいおもてなしでした。

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