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あなたの体験や考えを温故知新に持ち込んでくれませんか?

前編では「総支配人の履歴書」として総支配人の過去を深掘りしました。後編では瀬戸内リトリート青凪by温故知新(以降、青凪)の運営にフォーカスを置きます。「ワールドラグジュアリーホテル・オブザイヤー – 2020」 を受賞するほどに成長した青凪のホテル運営とは?総支配人がどういった考えを持ってスタッフと日々接しているか?をお伝えします。

青凪は「考えること」を止めない

青凪を運営していく上で大事なこととしては、いくつかあるのですが、第一に挙げるとしたら「当事者意識」を持ち続けることですね。いわば慢心せずに、もっと良い方法はないか?と「考え続けること」です。そこについては、新卒・中途関係なくスタッフ全員へと伝えています。

熟年のホテルマンであったとしても、考えることを辞めてしまうと作業者になってしまいます。青凪に8年勤めている私でも、思考停止をしているなと感じる瞬間はあります。そうなった瞬間に、青凪の成長は止まり変化を起こすことが出来なくなります。

なので、大小関係なく流れ作業のように仕事をこなすのではなく、常に「今以上を」を目指してもらうべく、考え続ける重要性を伝えています。

そしてもう1つ大事なのが「意見を言い合える雰囲気・文化作り」です。年功序列関係なく、入社年数関係なく、感じた違和感・新たな案は積極的に共有するように伝えています。思っているだけでは何も変わりません。改善して形にしていくことで初めて変化を起こせます。

また、一部のスタッフだけに伝えるのではなくチーム全体に伝えている意図として、1人では物事を大きく変えられないからです。1馬力よりも20馬力、働いているスタッフ全員が同じ意識・視座を持つことが大事だと考えます。

ただ、どうしても若手スタッフからすると私は総支配人であり青凪のTOPなので「初学者の自分が言ってはいけないのだろうか、言わない方がいいのではないか」と萎縮してしまうのは当然だと思います。そこで意識していることとして、ため込むような雰囲気を作らない、また私に言えなくても同僚やマネージャーには言えるような関係値を構築することを意識しています。お客様に最高品質のサービスを提供するために考え提案するのですから、意見出しは何んら悪いことではないです。

考える余白を意図して作る

一般的なホテル運営においてマニュアル至上主義を徹することで、ミスも減り一定水準を保ったホテル運営が実現出来ますが、それは青凪の成長を止めるのと同義と考えています。

マイクロマネジメントを行い、マニュアルレベルでスタッフの行動を決めることで、柔軟性がなくなり、マニュアル以上の成長(行動)はしないからです。課題意識を持つスタッフが減り、青凪の成長は一定以上を超えることはなくなります。それではどこにでもある一般的なホテルと同じで、青凪らしさは一切なくなってしまいます。

前述した通り、私1人だけでは物事を変えていくには時間とリソースが足りません。なので、新卒であったとしても、今までの常識を変える決断になったとしても、新たな発想を持っていく必要があるのです。

そのために、一人一人を何も出来ない子供のように扱うのではなく、同じ社会人としてリスペクトするからこそ「理念・考え方」をシェアした上で、意図して全ての答えを教えずに、自走させています。

考える余白を作り、当事者意識を持たせることで仕事に対して、責任感を持つスタッフが増えていきます。現在所属しているスタッフも、真面目で責任感がある人間で構成されており、自ら「やっておきます」といった台詞も出てくるほどです。

「誰でも」出来る仕事の重要性

誰でも出来ること、言わば意識をしていないと気づかずスルーしてしまうような仕事・気付きが青凪においては重要となってきます。

青凪は、日常から離れその場でしか味わうことができない、特別な空間・体験を提供しているからです。「これぐらい大丈夫だろう」といった1つの甘えが、青凪全体に影響します。凡事徹底の考えですね。

どんな時であっても最高の青凪を提供すべく、目立つ仕事・役回りだけを全力で行うのではなく、誰でも出来てしまうような仕事を日々怠らず続ける。それが積み重なり今の青凪に繋がっています。

また、そういった小さい仕事であっても全力で取り組む人材は周囲が放っときません。必ず誰かが気付き評価をしてくれます。それは、面倒な仕事を押し付けるといった物ではなく「あの人であれば率先して取り組んでくれる。任せる事が出来る」といった形で、責任ある仕事が回っていきます。

最初こそ小さな仕事かもしれませんが、青凪内において、会社において、信頼関係が積み上がっていき仕事の規模も変わっていきます。新たなことを始めようとした時に味方もいるため、活動もしやすくなります。更に仕事の規模感は拡大していき、面白みに連鎖していきます。

ホテル運営は「衣・食・住」に関わるので、出来ることは探せば幾らでもありますし、特に青凪は少数精鋭で行っているため、縦割りではなく、横断的に仕事を担当することも出来ますので、活動した分だけ自身の成長に寄与します。

「"安藤忠雄” 建築・高品質なサービス」の2つが揃って、青凪が完成する

青凪が提供しているのは、独特な静けさを持った安藤忠雄建築を贅沢に使った、20時間の滞在による「体験」だと思っています。30年経過している建築物であるにも関わらず、8年近く働いている私でも飽きることがありません。また安藤忠雄建築ファンは国内外に存在しており、海外のお客様にも数多く宿泊頂いております。

3,500m²ある空間を7部屋で構成しており、静けさを重視し、むやみやたらと物を増やすのではなく、どの部分を切り取っても唯一無二な空間が提供出来ています。そこにいるだけで、普段と違った感覚を得られるような場所にするためです。そういった建築・空間に見合ったスタッフであるために、青凪のスタッフは日々成長していきます。

時代にあった柔軟な空間を提供するために

2020年には「ワールドラグジュアリーホテル・オブザイヤー – 2020」を受賞し、ホテル業界の中でも一定の認知度は得ましたが、過去に受賞した賞は過去として、日々アップデートをしていかないといけません。20時間の価値をいかにあげていけるか?どう成熟していけるか?現状に満足せずに、スタッフ総員で考えています。また、新型コロナウイルスが出てきたことにより、ホテルに対する世の中の見方が変わっていくことで求められるものも変わっていきます。

更にNFTアート、メタバース、といった「無形の体験」の流れが来ているのも感じています。非対面のサービスが世の中に浸透していくことで旅・宿・接客業がどう移り変わっていくのかは常に考えています。だからこそ、私は対面接客が貴重になってくるのではないかと考えています。それが正解か分かりませんが、そういった新たなサービスや世の流れから目を背けることで、すぐに浦島太郎のように取り残されてしまいます。なので「自分たちには関係ない」と目を背けるのではなく、その時代・ニーズに合った青凪としての存在意義を、考え続ける必要があると思っています。

23年2月には「Meet THE 1st NFT コレクティブ」といったテーマでNFTアートを実施しました。詳細はこちら( https://okcs.co.jp/7934 )からご参照ください。

青凪が担うべき役割、世界観を保ちつつ、単なる宿で終わるのではなく、他の業界とのコラボレーション、世の中の動きに合わせたアップデートを今後も継続していきたいと考えています。

ライター所感

全2回にわたり青凪で働くスタッフ、運営方法の術をライティングしてきた。そこで見えてきたのは、スタッフ一人一人が青凪で働くことを自ら選択している、ということだ。間違ってもやらされ仕事をしているスタッフは1人もいない。

総支配人が孤軍奮闘しているのではなく、全スタッフで考えることでホテル運営といった枠を超え、青凪は変化を続けることが出来ている。総支配人の言葉を通して「自分以外、誰がやるのか?」といった強い意志を感じることも出来た。

ホテル運営の知識、経験は後から幾らでも培っていける。青凪で得られるのは「プロで在ることの誇り」だ。


前編のストーリー 「瀬戸内リトリート青凪」総支配人 下窪 日登美の履歴書 を読む

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