世界有数のシステム開発企業2社を渡り歩いた後、業界シェア1位のSaaS(クラウドで提供されるソフトウェアサービス)企業ではマネジャーを務めた。そんな成田麗子がヘッドハンティングを経て4社目に選んだのは、社員100人ほどのSaaSベンチャーであるFaber Companyでした。「日本のベンチャーに入りたかったんです。成長過程の組織で、大きな裁量権を持って“売れる仕組みづくり”ができるって面白いなと」。入社2年目に入った現在地と、これからについて聞きました。
成田麗子(なりたれいこ)
SIer(システム開発や運用などを受託する企業)2社を経て、CRM/顧客管理システムを提供する外資系SaaS企業に転職。インサイドセールス、フィールドセールスを経てシニアマネジャー(インサイドセールス本部・広域営業部長)に就任。2020年6月にFaber Companyへ入社。レべニュー・マネジャーとして営業部門、カスタマーサクセス(CS)部門を見ながら横断的な売れる仕組みづくりに挑戦中。「子育て終了後の常夏の国での自由な老後」が夢。60代でのマレーシア移住を夫と計画中。
お客様のオーダーにあえて応えず、勝ち取った受注
ーー入社丸1年経ちましたね。まずは「面白かった!」という仕事があれば教えて下さい。
あるウォーターサーバーの通販(EC)事業の案件は、とても勉強になりました。お客様が求めるものと違う提案をして、受注できた案件です。
その企業様では、通信販売での販売がメインであり、主に広告経由で集客していらっしゃいました。しかし会社から「販売台数を増やすこと」「CPA(新規顧客を獲得するのに費やした1人あたりのコスト)を下げること」というミッションを命じられたとのこと。「じゃあ広告を減らし、SEOで集客しよう」という流れで、当社に相談をいただきました。
ーー「SEOで集客する」ってどうやるんですか?
「水 宅配」など、関連キーワードで検索したユーザーに対し、自社サイトに掲載したコンテンツ(記事)を見せて興味を持ってもらい、販売につなげる方法です。ざっくり言うと、この方法をSEO、コンテンツマーケティングといいます。
お客様からの最初のオーダーも、「『ウォーターサーバー』と検索バーに入力したら、自社サイトのコンテンツが検索結果画面の一番上に表示されるようにしたい。記事をたくさん書いて納品してください!」というものでした。
しかし、当社に持ち帰って“職人”たちに相談した結果、限られた予算のほとんどをコンテンツ制作ではなく、商品サイトの改善に使う提案をすることに決めたのです。
ーーオーダーと違う提案ですね。お客様の反応は?
「斬新ですね」と驚いたご様子でした。
「検索結果順位を上げるだけが目標じゃないですよね?最終的に販売台数を上げるには、サイト改善が必要なんです」「コンテンツ制作の前に、ユーザーが求めている情報が正しく表示、クリックできるサイトの構造になっていない。また自社のブランド価値も正しく訴求できてない。これではGoogleからの評価は上がらず、いくらコンテンツを書いても、検索上位に表示されづらいのです」と、分析結果を元に解説したことで、納得してくださいました。
最終的に、お客様のオーダー通りに「コンテンツ◯本納品します」「うちは本数で勝負します!」と提案していた複数の競合他社に競り勝ち、当社が選ばれました。
目先の数字よりゴールを見据えた提案を
ーー本質を突いた提案だったんですね。
はい。目先の成果ではなく、一貫してゴールを元に提案したことが響いたと思います。
入社してすぐの競合案件だっただけに、受注できてホッとしました。いろんな部署の仲間を巻き込み事故みたいに巻き込みまくって得られた成果です(笑)。アナリストたちがサイト改善の指示書を作ってくれて、先輩の営業担当やマーケ担当が、まだSEOの経験値が浅かった私をサポートしてくれて。
でも最後の決め手はやはり、「ミエルカ」の機能でした。将来的には自社内でコンテンツ制作を内製化していかないと、お客様が会社に課せられた「CPAを下げる」ゴールに到達できません。「外注任せにせず、ゆくゆくは検索順位の計測や分析の方法を覚え、自社内でコンテンツ制作できる体制づくり、私たちにお手伝いさせてください!」と訴えて、決断していただきました。
ーー施策を始めてから、そのお客様に変化はありましたか?
もう見た目から変化が(笑)。打ち合わせに毎回笑顔で登場してくださるようになりました。サイト改善の結果、10位前後をウロウロしていた検索順位が、現在は1位〜2位。販売数は順調に伸び、いったん広告ストップするほど売れて、部署の人員補充も社内で交渉しているそうです。次の施策にも弊社の提案を極力受け入れてくださり、信頼してくださっているのを感じます。
密かな創意工夫を掘り起こす「売れる仕組みづくり」
ーー現在、マネジャーとして担当している業務は?
一言でいうと「一気通貫でお客様のLTVを上げる仕組みづくり」です。
- 1.新規のお客様をより大きな提案で受注する。
- 2.お客様のミエルカ使用頻度や定着率をあげて解約率下げる。
- 3.お客様のニーズに合った別商材・サービスを見つけ、クロスセル・アップセルにつなげる。
この3つができれば、結果として顧客数、LTV(取引開始から終了までに1顧客から得られる収益総額)を上げられます。
私がメインで携わっているのは営業とCS(カスタマーサクセス)ですが、営業とCSがどう分業/協業をすれば効率的に数字が上がるのか。また、有効な案件を対応していくために、営業の前段階であるIMC(マーケティング)/IS(インサイドセールス )とどう協業すれば上記3つにつながるのか。プロダクトオーナーとどう連携すればよりよいサービス開発ができるのか。そのための施策を作って回していくのが私の役割です。
とはいえ、営業マンが足りず、私自身営業もしています(笑)。
ーー他社でのマネジメント経験と違いを感じる場面はありましたか?
一番強く感じたギャップは「CSの受け身問題」でした。
前職でインサイドセールス のチームを統括していた時、なにか方針を伝えると、メンバーから必ず「どういう背景ですか?」「それよりこっちをやりたい」といった意見がたくさん出ました。彼らをどう納得させるかを先に考えて、発表の場に臨んでいたぐらいです。
でもFaber Companyに来てCSのミーティングに出たら、誰もしゃべらない。「これはヤバいぞ…」と。
何人かになぜ意見を言わないのかを聞いたら、「だって言ったって論破されるから」と。経営層に方針を伝えられたらそれは“絶対的な指示”と捉え、意見を言うのを恐れていた面があったのだと感じました。
さらに詳しく日々の業務内容を掘り下げると、彼らはすごく優秀だったのです。複数のお客様をコンサルする中で、自分なりに商談の準備を仕組み化していたり、お客様サイトの健康指標の分析手順やメール送付のテンプレートを作っているメンバーもいました。
そういった「密かな創意工夫」を全体で共有しないのはもったいない。彼らの意見を求めているんだと何度も伝え、「言っても大丈夫」という心理的安全性を確保したら、積極的にメンバーから話してくれるようになりました。
業界最大手から100人規模のベンチャーに入った理由
ーー経営陣は、そういった現場の声を反映させるために成田さんを入れたかった?
どうでしょう。そこまでメンバーの意見を反映させるとは想定されていなかったかも知れません。経営層には他のSaaS企業を経験した「外の目線」で、業務の効率化や人数比率を適正化することを期待されています。ただ、お客様のことを一番わかっているのは現場です。「中の目線」なくして改善はないと思っています。
あともうひとつ期待してもらっている点は「女性の活躍」ではないでしょうか。
現状、フロント部門の女性マネジャーは私一人です。経営層のジェンダーギャップも改善したかったのだろうなと。
2021年10月4日、Faber Company17期のキックオフにて、経営層のメンバーと
ーー大手企業から100人規模のベンチャーへの転職は覚悟が必要だったのでは?
前職は業界シェア1位の素晴らしいツールを売っていましたが、反面、外資大手が市場を席巻することで、競合である日本のベンチャーが育ちづらい環境になってしまうことに、日本人として疑問を感じていたのです。「もう一度、組織の成長過程に携わりたい。次はベンチャーに入ろう」と考えていた頃、ヘッドハンティング会社を通じてFaber Companyと出会い、ミエルカに将来性を感じました。
ただ、面接を受けた後に2人目の子の妊娠が発覚したのです。一度は「いつ入社できるか分からないから」とお断りしたのですが、「それでも」と内定を出してもらえた。
確実に入社できる保証もない妊娠初期の人間に内定を出すなんて、それほど期待いただいているんだなと心を動かされて。その期待に応えたいと入社を決め、産休復帰のタイミングで入社しました。
SEから営業へ。SaaSに見出した将来性
ーーこれまではずっと営業でしたか?
違うんですよ、実は。1社目の職種は、SE(システムエンジニア)です。
ーー意外です!大学の専攻だったんですか?
いいえ、法学部卒です。最初は営業職で就活したのですが、ちょうどその頃、コンサルブームが始まって。「ロジカルに物事を考えてプレゼンできる職種はカッコいい!」というミーハー心からSEになりました。毎日お客様の情報システム部の執務室に出社して、システムの要件定義をする業務ばかりやっていましたね。
3年後、もともとの志望だった営業として転職。そこで法人営業を2年やってから、前職のSaaS企業に転職しました。
当時はオンプレミスといわれる社内運用型のシステム構築と、クラウドサービスが競合する機会がたびたび出ていた頃です。どっちに未来があるのか考えた時に、私はクラウドだと思いました。
オンプレミスとクラウドの違い。「ミエルカ」もクラウド型サービス(SaaS)。
結論、今でも自分では何が合ってる仕事かわからないのです(笑)。
営業職は楽しいし、「私は一生営業で生きていくんだろうな」と思うのですが、SEの頃の楽しさもたまに思い出すんですよ。障害の要因を突き止めたり、夜中のシステム更新で無事リリースできた早朝5時に、同僚と居酒屋で乾杯した時の感覚とか。
あのままSEやってたらどんな人生?と時々想像しますが、それも悪くないなと思うんです。やってみたら、結構なんでも面白いんじゃないか?と。
「高すぎる評価より逆境が好き」なドMタイプ
ーーご自身はどんなタイプだと思いますか?
仕事においてはけっこうなドMだと思います。ドSのカリスマ営業タイプもいますが、私はMタイプです。逆境があったほうが燃えるという(笑)。私なんてまだ下っ端で、上にもっとすごい、賢い人たちがいるという環境で切磋琢磨されたいタイプです。思いがけない高い評価をしてもらえると「こんなもんか」とつまらなくなってしまう傾向があります。
あとはキャッチャータイプかな。お客様の意見を何でも受け入れつつ、実はゲームコントロールする、という点に醍醐味は感じます。
ーー体育会系タイプが営業には合っていると言われますが…。
とも限りません。逆境経験だってなくても大丈夫。ただ「将来どうなりたいか」あればいいと思います。そこさえあれば、仮に逆境に遭ったとき、「このキャリアが将来役に立つかどうか」と判断できます。
若手こそ打席に。チャンスは平等に。
ーーご自身はどうやって営業のスキルを磨いてきたんですか?
前職の新人育成プログラムがすばらしかったので、そのおかげで成長できたのが大きいですね。入社初期から、どんどん打席(商談)を任されて、まわりのマネジャーや先輩に相談しながら提案内容を一緒に作り、実際にお客様にぶつけることを繰り返して、成長できました。
一方、当社は現在、インサイドセールスが取った打席(商談)が、比較的安定して受注できるスキルがあるメンバーに集中しがちなのが課題です。この仕組みも私は変えたくて。まず打席は若手優先に振る。ただしマネジャーがセットでフォローに入る。
ーー主客を逆転させて打席を増やすんですね。
はい。そうすることで均一的なトレーニングができます。例えば上層部が気に入った人だけを大事に育てたり、チャレンジの機会が与えられると、そうではない大多数が必然的に売れなくて、仕事が面白くなくなり、辞めていっちゃいますよね? それでは中間層が育ちません。若手の育成も「売れる仕組みづくり」の一環として、力を入れていきたいですね。
ツールとコンサル、両方売ることで身につく生涯スキル
ーー最後に、Faber Companyに入社して得られるメリットについて教えて下さい。
インターネットの最前線に関わる仕事なので、ここで得たデジタルの知識は絶対に無駄にならない。どこでも一人で食べていけるスキルが身につけられると思います。
また営業では、SaaS(ツール)とソリューション型コンサル、両方を売る経験ができるところは強みですね。一件一件、そのお客様の事業の仕組みを理解して、自分で料理しながら提案できる。そんな経験が積める会社はなかなかありません。
特にコロナ禍以降、ECサイトなどデジタルに販売経路を広げた企業様がすごく増えています。限られた商圏で商売をしていたのに、コロナ禍でデジタル化したら、一気に全国のユーザーを獲得できるようになった成功例も。お客様の事業成長を考えて、ユーザーとの新しい出会いを創出する戦略を立てる仕事、やりがいありますよ。