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出前館はLINE株式会社(以下、LINE)と資本業務提携を締結後、組織が大きく変化し、現在、第二創業といっても過言ではないフェーズにいます。出前館サービスも高い成長を続けており、今後さらにフードテック領域をリードしていくために、プロダクトの刷新や強化を行っています。そのような中で今回、人々の目に触れる機会が一番多いビジュアルデザインを担当するUIデザイナーに焦点を当て、出前館のアートディレクターを務める井上賢治にインタビューを実施しました。
【井上 賢治】
株式会社出前館 プロダクト事業本部 コマース企画部 コマース企画グループに所属。ソフトバンクのグループ企業やアリババ株式会社にて、UIデザインやSEOなどを担当した後、グリー株式会社、LINE株式会社のゲーム関連サービスのプランナーを担当。2020年より出前館のアートディレクターに従事。
■デザインは、フードテック市場をリードするための最後の砦
――まず、井上さんが所属するコマース企画グループとしてのミッションや役割、その中でUIデザイナーはどのような位置づけになるのかを教えてください。
まずコマース企画グループは以下のプロダクトビジョンを掲げており、業務を進める上での指針にしています。
▼プロダクトビジョン
あらゆる人が求めるものを最高な状態で届ける仕組みを創造し、食と生活をより豊かにする
Enriching food and life by creating a system that delivers what people want in the best possible condition.
現在の主軸事業である出前館をはじめとするサービスで、人々にとってなくてはならない食、そして生活をより豊かにしようということです。その中で、2つのミッションがあり、さらに出前館が目指すべき結果を定めています。
▼ミッション
・人とモノの最高な組み合わせを実現するプラットフォームを提供し、地域経済を活性化する
・今欲しいものを最高な状態で提供してくれる相手と繋げることで、地域経済の循環機能としての役割を果たす
▼出前館が目指す結果
・デリバリーの日常化
・フードテック市場をリード
・地域経済を活性化
「地域経済の活性化」は特に重要な軸で、配達エリアを広げると配達員が必要になるので、その地域で新たな雇用が生まれますし、加盟店(飲食店)は美味しい料理を作ってもユーザーに見つけられなかったらリーチできないので、出前館を通してユーザーに「こんなお店があるんだ」と見つけてもらい、味を知ってもらうことで売上アップにつながりますよね。出前館のデリバリー事業は、ただできたてのものを届けるのではなく、地域経済の活性化に絶対つながるという思いをもっています。
また出前館が目指す結果に「フードテック市場をリード」とある通り、出前館は市場をリードできる規模の会社です。では、市場をリードしていくためにUIデザイナーがどう重要になってくるかというと、仕組みやサービス、事業計画などの見せ方を考えたときに、出前館らしさ(ブランド)を世の中にしっかりと示していくことができるポジションです。ブランドは明日すぐに作ることは出来ず、日々の積み重ねです。企画者が考えた企画を「こういう見せ方にします」と極限まで考えて、世の中に出す。それがUIデザイナーの一番の役割だと思っています。
デザイナーが妥協したら、ブランドの積み上げが遅れるだろうし、しっかりとやれば加速する。私は妥協することなく、ブランドのあるべき方向性、VI(ビジュアルアイデンティティ)をしっかりと考えて、アウトプットすることを常に意識しています。デザインは、出前館が目指す結果を達成するための、最後の砦だと思っています。
――ビジュアルデザインは人々の目に触れる機会が多いですしね。
そうですね。ビジュアルデザインは一番人に伝わる部分でもあると思っています。グラフィックの挿絵があるかないかでも違いますし、挿絵があるとしてもどのような形でまとめるかでも全然違います。また“出前館らしさ”をビジュアルで伝えていくのは長期戦なので、私は、戦略を立てて最終的に形としてどうするかを考えていく立場でもありますし、チームとしてもそこを追求しながら日々取り組んでいます。
■ブランドの基本となるガイドラインを確固たるものにするために
――基本的に、戦略や要件などの段階を経て、最終的にビジュアルデザインになっていくと思うのですが、具体的に出前館ではどのように企画が進められているのでしょうか?出前館のUIデザイナーの業務を具体的に教えてください。
大前提として、現在出前館は過渡期にあるので、ガイドラインやパーツ(コンポーネント)が体系立てられていないのが現状です。ただ昨年末にロゴを刷新しVIを作ったので、唯一そのガイドラインはありました。前述した現状の中で、少なくともそのガイドラインがあってよかったと思っています。なぜなら、サービスのミッションやビジョン、バリューがあって、それを形にしたのがロゴマークや色だと思うのですが、Webサイト、オフライン制作物、バナー、すべてのデザインがロゴから始まると思っているからです。なので、一番重要なロゴのVIをベースに、まだないガイドラインを作っている最中です。
もちろん案件はたくさんあるのですが、それを止めてはいけないので、ロゴのVIから逸脱しないように、新しい画面や企画を作りつつ、新たなガイドラインとして取り入れ、次から作成する画面はそのガイドラインに則って作成するような流れです。まとめると、ガイドラインを作りながら案件をこなしていき、徐々に新たなガイドラインにパーツを取り込んでいく作り方です。
企画者が作ったワイヤーフレームを、UIデザイナーがガイドラインを見ながらデザインを作り、それをエンジニアに渡して実装する。その後、デザインQAをやってリリース、といった流れが基本ですが、出前館が他社と違う点は、ガイドラインやルール、ブランドの在り方も作っていける醍醐味があるところです。そこに携われる機会ってそうそうないですしね。
――UIと聞くと、サービスを利用するユーザーとの接点となる部分のイメージが強いですが、ロゴのガイドラインやブランドの構築といったところにも携われるということでしょうか?
サービスのUIは最終的な表現のひとつではありますが、出前館はさらにその上流を作らなければならないフェーズにあります。いま募集しているUIデザイナーも、いきなり上流のコンセプトやブランドの在り方を考えるのは難易度が高いので、まずはサービスのUIから携わってもらい、デザインを作っていくうちにガイドラインが絶対気になってくると思うので、上流工程にも興味があれば、ぜひ携わってもらいたいと考えています。
ガイドラインは、仰々しく、格好よく、ドキュメントとして存在していることがゴールではありません。手段として作り、こういう理由でこういう風になっているという理解をしてもらって合意を得て、日々使われる、というのがゴールです。そのガイドラインだけでは足りないところ、例えばキャラクターの設定や、ライティングのルール、サイトのトンマナ、派生サービスのロゴマークのルールなど、そういうのをプラスしていって、新たなガイドラインを作っていく必要があり、そして守ってもらう、理解してもらう必要があります。
いろんな案件や企画、アイディアを、どういう風にロゴのガイドとしてまとめていくのかを考えるのは、正直大変です。メインのサービスだけでなく、それに関連するサービスや関連会社ができたときに、こういったルールでやりましょう!と、しっかりと取りまとめておかないと、色んなものが勝手に作られて、ブランドの統一感がなくなってしまう。出前館らしさがわからなくなってしまう。そういうことがないように、上流部分の構築をしています。
■攻めのデザイナーチームを作り、デザインが強い出前館を目指す
――今後の出前館のデザインチームはどのようになっていくのでしょうか?井上さんが描く未来図をお聞かせください。
デザインが強い出前館を目指しています。前職のLINEは、デザインが強い会社のイメージがあるのですが、出前館もそうなれるといいなと思っています。その方が絶対楽しいですしね。これからジョインする方は、そこまでも一緒に作っていけます。
まず内部的には、私自身の仕事のスタンスにもなるのですが、攻めのデザインチームを作っていきたいと考えています。デザインって受け手でやることが多いパートなんです。ワイヤーができて、それをただやります、となりがちなんですが、そういった案件は効率的にやりつつも、こちらから積極的に提案していくようなデザインチームにしたいですね。例えば、競合他社を分析して、「出前館としてはこんな風にしたらいいんじゃないか?」といった提案をするとか。私自身も「攻め」を意識して業務に取り組んでいますし、今後メンバーが増えても、チームとして攻めの姿勢を保ち続けたいと思っています。
因みに、いま業務委託の方にも協力してもらっているのですが、積極的にアイディアを提案してくれる方が多いです。「もっとこうした方が良い」とご自身の意見を持ち、且つそれをしっかりと伝えてくれる。そういったマインドで出前館のデザイン業務に携わってくださっているので、こちらも刺激を受けますね。このマインドは、よりよいものを作ることを考えたときに絶対必要になってくると思うんです。UIも時代によって変わるので、トレンドに追いついていくためには、あらゆるアンテナを張って情報をインプットし、そして自分たちの頭で考えてアウトプットしていかないといけないですし。
またすぐには難しいかもしれませんが、外部への情報発信を強化していきたいです。よくエンジニアがテックブログなどでナレッジを共有しているように、他社のデザイナーもメディアを使って情報発信をしています。出前館でも、新しいデザインや使いやすいUIの紹介、ABテストをした結果や、面白い取り組み、またFigmaのライブラリを提供し、自分たちのコンポーネントはこうなんですよ、といった情報を積極的に発信していきたいですね。
■ミッションに共感し、自分のゴールが描ける人
――最後に出前館のUIデザイナーに求めるスキルや人物像を教えてください。
私は、出前館は衣食住の一番需要なところを担っているサービスだと思っています。新型コロナウイルスの影響もありますが、日本はいま、さまざまな背景から人々のライフスタイルが変わり、デリバリーが浸透しやすい状況に変わりつつありますし、地域活性化の役割も担っています。なので先述したミッションに共感し、そこに自分のキャリアをアジャストして、私の最終ゴールはここです、と明確に言える人だといいですね。しんどくても、「最終ゴールに必要な過程にいる」と思って頑張れると思いますし。スキルに関しては教えられるので、ミッション的な部分はしっかり持っておいてほしいです。
また、やりたいことに対してNOとは言わないので、やりたいことを実現するためにも、ぜひ来てほしいですね。どんなことでも面白みを見つけて実行できる人がいいと思います。
出前館はいま、すべてを作り変えるフェーズにいます。そこは企画者としてもデザイナーとしてなかなか経験できないと思いますし、私自身、チームを作るというマネジメントの意味でもやりがいを感じています。ぜひ一緒に、攻めのデザインチームを作っていきませんか?