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フードデリバリー需要が拡大する中、日本発のデリバリーサービスとして急成長を続ける出前館では、バラエティ豊富かつ膨大なデータが集まっており、出前館サービス向上のための企画開発や事業・経営における課題解決などに幅広く活用されています。今回は出前館に集まるビッグデータと向き合い業務を遂行するお二人にインタビューしました。
【徳原希望(写真左)】
株式会社出前館 プロダクトマネジメント本部 本部長
株式会社リクルート、グルーポン・ジャパン株式会社、グリー株式会社、LINE株式会社(以下、LINE)にてJV設立や新規事業の立ち上げおよび、グロース期におけるコア事業のプロダクトマネジメントを複数担当。2020年より出前館のプロダクト企画に参画。
【宮崎耕助(写真右)】
株式会社出前館 経営企画本部経営企画部アナリティクスグループのグループマネージャー。トランスコスモス株式会社にて分析サービス開発業務・Webマーケティングの分析業務などを担当。その後LINEにてLINEショッピングなどO2Oサービスのデータアナリストに従事し、2020年より出前館のデータ領域を担当。
――まずはプロダクト企画とデータアナリティクスの組織や役割を教えてください。
徳原さん:
プロダクト企画の組織を説明する前に、企画と開発チームが向き合いのユーザーに合わせて別れているので、出前館プロダクトのユーザーから説明しますね。
出前館のユーザーは大きく分けると、出前館App・Webなどのサービスをご利用いただいているエンドユーザー(コンシューマー)、出前館に出店頂いている加盟店(カスタマー)、料理や商品を配達してくれているドライバーの3者います。
私がマネジメントしているコマース企画部は、エンドユーザーと加盟店向き合いのチームを抱えており、出前館App・Webサービスや管理システムの企画を行っています。
プロダクト企画の役割は、プロダクトの力でユーザーや事業の課題解決・目標達成に貢献することはもちろんですが、不確実性のある中で限られたリソースを効率よく使うために、MVP(必要最小限のプロダクト)の整理(ファーストリリース時に「やること・やらないことの明確化」等)や、リリースの「成功・失敗」定義と、セカンドリリース以降の方向性を決めるための「効果の可視化」を行い、それを社内で共有できるように整備することです。
宮崎さん:
アナリティクスグループは、プロダクト企画を始めとした事業部の方々の課題をデータで解決する業務を行なっています。施策KPIの設計支援からそれを定量的に追うためのレポーティング、企画のヒントになるようなFact提供など、PDCAを機能させるための支援が中心です。
また、GMV(取扱高)・加盟店舗数・ユーザー数といった全社KPIの予実をウォッチするためのBIレポーティング環境の提供も行なっています。
出前館のアナリティクス組織は、経営企画本部の所属という所もあり、営業・マーケティング・プロダクト・事業企画・経営企画と、事業部の全部門に対して、関わる点が特徴の一つです。出前館のデータの根幹を担うセクションなので責任を持って仕事をしていますね。
――お互いの組織の具体的な業務内容を教えてください。
徳原さん:
事業の企画はリーンで考えて評価し、実現するための開発プロセスはアジャイルで管理するイメージで企画を進行しています。
リーンとアジャイルの違いはGoogleで検索すると沢山の有識者の方が記事にしてくれているのでここでは割愛しますが、事業の企画はプロダクトを市場に投下した後の結果を重視するのでリーン的な考え方の相性がよく、開発は市場投下するためのサイクルを短くし、動くものを確認しながら改善を繰り返すアジャイル開発を推奨しているので、両者の組み合わせで企画と開発のサイクルまわしています(ウォーターフォールなプロセスもまだ残っている部分もあるので、実験しながら段階的に改善している状況です)。
もう少し具体的に言うと、まず、企画は「どの数字を、どのような状態にしたいのか」を明確にします。
例えば、ページや機能の改善であれば課題を事前に分析する必要があるので、SQLを利用してアクセスログの解析や、Google Analytics、TableauなどのBIツールを利用した分析を行い、改善すべきメイン指標とサブ指標を定義します。
改善したいメイン指標は、どのような関連数値(サブ指標)があり、その数値に影響のあるプロセスは何かを明確にして改善に必要な手当を設計します。
企画のメイン指標は、組織のKGI・KPIと基本的に関連があるので、このプロジェクトがどのように組織のKPI等に貢献するのかも明確にします。
また、効果検証の方法なども明確にしておき、新たに取得するログがあればログ設計も行います。
これらを土台に企画の骨組みを組み立てていき、開発とMVPを整理します。
宮崎さん:
アナリティクスグループでは、まさに徳原さんが話したような新しい施策や企画が走り、データが必要となるフェーズで支援に入ります。まずは施策や企画の概要を理解した上で、具体的なデータ要件・レポーティング要件を明確にしていきます。例えば、以下のような観点です。
・効果検証を適切に成立させるために必要な指標はそもそも何か?
・どのサイクルで指標を追い、対応すべきか?(日次・週次・月次)
・PDCAを回すためデータ提供の仕方は何がベストか?(TableauかSQLか)
・指標がどう動くと、どのようなアクションに繋がるか?
具体的な要件が定まって初めてSQL・レポート作成を行います。重要なのは「データが業務や施策にどう活きるか」の設計です。常に上記の観点で整理・すり合わせをした上で、データ活動を行うことがポイントになっています。
徳原さん:
必要に応じてアナリティクスグループの支援も受けながら、企画を判断するための定量的な数字を事前に決めていき、企画をどのように実現するかをエンジニアとすり合わせながら簡単な要求・要件定義を作成します。
アジャイル開発を推奨しているので、仕様は作り込み過ぎずに素早く開発フローに入れるように進行します。
ただし、プロジェクトを組む際にどの程度の粒度でまとめるかなどを企画と開発ですり合わせし、MVPの要件として必ず担保したい要素などは仕様として定義します。
また、効果検証の方法なども明確にしておき、新たに取得するログがあればログ設計まで行います。
更に、UI改善系の企画で挙動部分に実現したい要素があれば、画面仕様と合わせて簡単なモックを作ることもありますね。
そして、これらのタスクをProduct BacklogやKanbanを作成・利用し可視化します。
進捗の管理はScrumのイベントに沿って今週はどのタスクを消化するか計画し、週の終わりに計画に問題がないかレビューを行い、企画開発のサイクルをまわしています。コマース企画は1Sprintを1週間で設定しています。
また、チームは毎日30分程度のDaily Scrumを行い、ブロッカーなど進行に課題がないか共有し、リカバリーを行いやすい状態にしています。
各チームの企画者は、大小複数の企画案件を抱えており、エンジニアはもちろん、アナリティクスグループや、様々なステークホルダーと連携・協力して同時並行にプロダクト企画を進行しています。
――プロダクト企画とアナリティクスグループは具体的な連携の仕方や、コミュニケーションの方法に関して教えてください。
徳原さん:
プロダクト企画の分析業務について先程も触れましたが、主に企画立案時と、リリースしたものの効果検証時に分析を行います。
企画のチームメンバーもSQLを書き、事前分析や効果検証はもちろんおこないますが、広範囲のログから改善の糸口となる特徴や、傾向を分析する際など、分析対象が複雑になる際はアナリティクスグループに協力してもいます。
プロダクトマネジメントは業務を迅速に進めることも大切なので、専門性の高いメンバーのリソースを調達できるように、常に他部署の専門家とも情報連携して必要な時に相談できるようにしています。
アナリティクスグループのメンバーは、分析のアウトプットの提供がいつも早いのでとても助かっていますね。
宮崎さん:
市場の変化や成長スピードに対する素早い対応は重要ですし、データがトリガーになって施策や企画が動くので、スピード感は意識しています。今後も実現できるようにしていきたいですね。あとは、アナリティクスグループとしても常に事業状況を理解しているからこそ、スピーディに対応できるという側面もあると思います。
徳原さん:
そうですね。アナリティクスグループのメンバーがプロダクトの優先度の高いタスクや、今後どのような改修を行う予定なのかを把握できるように、情報共有は毎週行っており、お互いのタスク状況も可視化して共有できる体制にしています。
プロダクトで設計・追加したログの仕様共有も都度行っています。
また、アナリティクスグループは、プロダクト以外の分析も行っているので、リソースを独占しないようにプロダクト企画で分析することと、アナリティクスグループに相談して対応してもらうことは、両グループですり合わせながら決めています。Ad hocなダッシュボードの作成はプロダクト企画でも行えるような体制にしています。
宮崎さん:
そうですね、データ課題は必ずしもアナリティクスグループが解決しなくて良いと思っています。事業部内で完結できるとそれが一番早いですから。僕らとしてのコミットは、事業部が欲しいデータへのアクセスをいかに最短にできるか。その仕組みと環境作りだと思います。SQL等のデータナレッジの整備もそうですし、日報配信の手配、BI環境構築なども責任範囲です。
徳原さん:
また、アナリティクスグループには企画が分析した際のレビューアーとしての役割も果たしてもらっていますね。分析した内容に間違いがないか、もっと効率の良い方法はないのか、ブレスト的にコミュニケーションしながら分析の精度を上げています。
コミュニケーションを通して組織内の分析スキルの向上も意識的に行えるようにしています。組織にナレッジが溜まれば企画だけで完結できることが増え、アナリティクスグループに依頼する際も効率よく行えるので依頼精度も向上されていきます。
結果、分析の短縮化や、企画サイクルの高速化も実現できるようになるので好循環が生まれますね。
宮崎さん:
プロダクトとアナリティクスグループの連携が上手くいっているのは、Slackなどでカジュアルにやり取りできている点も大きいです。直接コミュニケーションしたければ都度Zoomと。距離感近く、テンポよく進められている点が大きいですね。
連携のあり方として、事業部から要望をもらいそれに対して、データチームが応えるというリクエスト&レスポンス型のモデルだけでは限界があると思っているんですよね。まず提供スピードが遅くなりがちという点と、事業理解が追いつかずクオリティが伴わないことが多いからです。細かい事業ニーズや機微をすくい取りながら、かゆいところに手が届くような進め方。共創ないしは伴走型のようなモデルでいかに攻めの課題解決ができるかが問われていると思います。
――今後、目指すべき方向性について教えてください。
徳原さん:
デリバリーサービスは、エンドユーザーが自分のエリア情報を入力し、配達可能エリアを設定してから好きな商品や、お店を選んでもらうことになるのですが、少し前まではエリア情報が近ければ誰が見ても店・商品が基本的には同じような順番で並んでいたのですが、これをエンドユーザーの購入履歴や、年齢・性別などの属性情報、特徴データなどを利用して、一人ひとりに合った陳列を実現出来るようにレコメンドの仕組みを導入しています。
サービスのパーソナライズ化を目指しており、よりきめ細やかなおすすめや、お得情報を提供できるように設計しています。
また、レコメンド以外にも、エンドユーザーが自身の好みで複雑なフィルタを設定し、検索できる仕組みの強化も進めています。
出前館のサービスに来てくれている時点で、エンドユーザーは「何かを食べたい、何かが欲しい」と思っているので、複数ある選択肢から最適な選択を可能とするアシストの強化を目指しています。
加盟店向けの管理システムは、忙しいお店の方にとってより使いやすく、負担を減らすための改善を計画しています。
また、新規のお客さんの引きになっているメニューの特定や、リピーター化に貢献しているメニュー情報の提供など、商品開発や、陳列のヒントになる情報の提供も充実させていく予定です。
更に、販促機能の充実化も計画しており、加盟店がお客さんの獲得から育成をより行いやすくする仕組みの企画開発を進行しています。
そして、店の立地や内装など、料理や商品以外の要素を除外して、デリバリーサービスならではの「料理や商品だけで勝負できる仕組み」の充実化も計画しています。
また、以下のようなプロダクトビジョンと、チームカルチャーを掲げており、企画進行や判断を行う際の指針にしています。
■プロダクトビジョン
あらゆる人が求めるものを最高な状態で届ける仕組みを創造し、食と生活をより豊かにする
Enriching food and life by creating a system that delivers what people want in the best possible condition.
■チームカルチャー
1.数字に基づく意見を持ち、議論の活性化を促す
2.成功のために柔軟に主張や方向性を変えることを推奨
3.定量的に評価できる仕組みに不足があれば、迅速に構築し展開する
4.市場に素早く投下して結果を得る
5.データ管理・セキュリティ要件担保を徹底する
6.得意分野を明確にし、チームで補完・強化する
宮崎さん:
徳原さんのチームは良い文化を持っていますよね。私たちのチームでも「Knowledge to Action」というべき、データをただ出して終わるではなく、その先の業務や成果にコミットする考え方を持っています。その上で大枠のモデルとしては以下のような枠組みで活動しています。
⓪ データ環境構築(データ環境構築による戦術実現)
①事業健康診断(KPIをもれなくモニタリング。事業リスクと機会を把握)
②PDCAドライブ(施策と効果検証のサイクルでKPIを改善)
③勝ちパターン実装(分析で発見した勝ちパターンを実装・仕組み化して再現)
特に、これから強化したい所が、②のPDCAドライブから、③の勝ちパターン実装の流れ。結局、マーケティングもプロダクトもいかに再現性ある勝ちパターンを生み出せるかだと思います。その発見・気づきを得るために、日頃のクイックレスポンスのようなデータ提供・レポートワークももちろんですが、少し腰を据えたAnalyticsの質と量を今後より上げていくと良いと考えています。ちなみにアナリティクスグループでは、一つテーマを決めて分析するので「ワンテーマAnalytics」と区別して呼んでいます。
――最後に出前館の魅力について教えてください。
徳原さん:
プロダクトそのものや、市場規模、働く人・環境の3つの魅力があると思います。
1つ目は、フードテック領域の市場規模は2025年には700兆円(SKS2017発表)にもなると言われており、グローバルの投資も活発に行われています。競争も激しいですがグローバルと勝負している経験は今後のキャリア形成上も大きなプラスになると思います。
2つ目は、出前館はプロダクトビジョンの中で「食と生活」と謳っているとおり、食だけでなく日用品配達などの分野も今後強化予定なので、広がりのある魅力的なプロダクトだと思います。
先日、発表したとおり出前館は「15分以内の即配[1] 」実験も行っており、「今、欲しいものは出前館」という文化を作るための改善を繰り返しています。
即配するための配達手段を持ち、現場でプロダクト改善を行えるリソースがあることが大きな強みにもなっています。
最後に人ですが、今、出前館は優秀なエンジニアや企画者が集まっているので、短いサイクルで改善・改修を繰り返し行える環境です。
改善すべきところは、まだまだ沢山ありますが、LINEの企画や開発体制と比較しても負けないぐらい整備されてきています。
また、先に述べたようなチームカルチャーを明確にすることで、個々のメンバーが安心して議論やプロジェクトを進行できる基盤が整っており、新卒からベテラン社員まで平等にチャンスがあります。
若手でも本人のキャリアプランと実績に応じてマネジメントに関わるチャンスもあり、新卒二年目でマネージャーになったメンバーもいます。
更に、エンドユーザー数も順調に伸びており、同意が取れている範囲である前提ではありますが、改善に必要な質の高いデータが豊富に溜まってきています。
これらを利用することで、エンドユーザーに対して質の高いパーソナライズ化したサービスの提供が実現可能になっています。
企画案件は常にリソースが足りないぐらい沢山あるので、「食の日本ブランド」でグローバルとの競争をリードしたい方、コロナ禍で影響を受けた「地域経済の活性化」に奮起する方等、優秀な仲間を常に募集しています。
宮崎さん:
2つあります。一つは、アナリストとしてはデータのボリュームもそうなのですが、データの種類・バラエティが豊富という点が面白いと思います。出前館は、ウェブとアプリのサービスなのでユーザーの行動ログが溜まっている。また出前館は配達拠点をもっているので、そこに紐づく配達員、配達時間、配達エリアのデータも一緒に取れているという点が出前館データの特徴だと思います。オン×オフ双方のデータを持ち、各種IDでJOINでき、かけあわせた分析ができるということです。他にもデリバリーならではの特徴的なデータがあり、そこは魅力ですね。
もう一つは、出前館自体がデータ活用に積極的というか、もはや貪欲な文化なので、よく聞くような「データ活用をそもそも啓蒙しなければ」や「提供したデータがどう活かされているかわからない、全然活用されない」といった悩みとは無縁です。データを使った業務が当たり前で、SQLやBIを事業部で使い判断しているので、後はそこに何が提供できるかを考えるだけです。デリバリーはホットな市場という所もあり、施策や業務にすぐ反映される点は楽しいと思います。そうしたデータを用いたビジネス課題解決を楽しめる方とは是非一緒に働きたいですね。